以前も言った気がしますけども。
新たな大地に向かうことになったようなのです
海風が気持ちいい。うんと伸びをすると、銀色の髪が靡く。
今日は天気もいいので、絶好のお洗濯日和ではないだろうか。
ふと、背後を振り向くと草むらで赤髪黒メッシュの少年が最近島にやってきた猫人間とブリキ兵士と闘っていた。向こうはフル装備だと言うのに、赤髪の少年は素朴な木剣一本のみ。それで何とか戦えているのだから、彼の戦闘センスは天才的なのだろう。
アキト。白猫プロジェクトの主人公であり、生粋の戦闘狂。戦いのことになると我を忘れて延々と敵を狩り続ける。
数日前、晴れて彼のパートナーとなったのだが、食事よりも戦闘を優先する彼の姿は凄まじい執念を感じる。
そんなことを考えていたら、ブリキ兵士の一人の武器が真横を通り過ぎた。
横目で見ると、戦いながらこちらを訝しむような目で睨むアキトが居た。
「……私は何も見てない。見てないから」
なので、洗濯物を干すことで先程のことをすべて忘れることにした。
このまま彼に睨まれ続けたら命がいくつあっても足りない。
「アイリスー、アイリスー」
草むらで星たぬき達と追いかけっこをしていたキャトラが何かに気づいたのか、こちらへとやって来た。
どうしたのだろう、キャトラの方へ近づくと、地面に立て掛けられていたルーンドライバーから光の柱が出ていた。
「……そう、ようやく新たな島にいけるのね」
ここまで来るのに沢山の寄り道をしたような気もするが、それはきっと気の所為だろう。
気の所為に違いない。
訓練を終え、汗を拭きながらアキトがルーンドライバーを翳しながら小さな声で呟く。
「イスタルカ島とか言う場所に大いなるルーンがあるわけか」
相変わらず原作と違って口がともかく悪いが、彼にそれを指摘すると「俺は元々こんなんだ」との事なので気にしないでいる。
そんな時、キャトラがアキトの頭によじ登り、ルーンドライバーを覗き込んだ。
「ねぇねぇ、ルーンドライバーを見せてよ!」
「見せてやるから、俺の頭から降りやがれこのクソ猫」
アキトは思いのほか優しくキャトラを地面に降ろすと、ほらよとルーンドライバーをキャトラに見せた。
「……あれ?」
そこで変化に気づいた。ルーンドライバーから出ていた光が消えていたのだ。
「なんとこれは、どうしたことだ」
「……なんだ、いたのかバロン」
アキトは居たのかお前、と言わんばかりにバロンを見つめるも、特に気にした様子もなくバロンは進める。
「ふむ……いたし方ない。ここから先は、己の力で探し出すしかあるまい」
「……その間、この飛行時は無防備になる訳だが」
「任せておけ、アキト。お前たちがいない間、我々がこの飛行島を守ろう。幸い、猫兵士もブリキ兵士もお前が原因で大分強くなっている。大体の敵ならなんとかなるだろう」
アキトくんこの数日で何してるんですか。
冷めた瞳で彼を見つめるも、彼はさして気にした様子もなく空を見上げていた。ただ、視線が所々泳いでいるので自覚はあるらしい。
「じゃあ、俺たちは陸地に上がる準備をする。バロン、俺の武器を───」
「またあの
「ホコリ被るよりはいいと思うんだが」
「砥石どれだけ使うかお前知らんだろ!?」
「鍛冶屋はそれが仕事だろ。後で買い出しにも行くつもりだ、そこで砥石も購入しておく」
アキトはそれじゃあな、というと自らの拠点へと向かっていった。
残されるアイリスとバロン。彼の自由は今に始まった話ではないが、ココ最近はさらに酷いような気がする。
「……白の、巫女殿」
「……なんですか」
震える声で呟くバロン。
「あいつが暴走したら、止めてやってください」
「……頑張ります」
アイリスもまた、震える声で呟くのだった。
あうあうー!アキトくんは暴走しかしないのですよー!!