アデルは周囲を見渡すと、鼻を鳴らしながら再度アイリスを見下ろした。
「よう、光の王。まあ随分と弱くなったもんだな」
「よ、弱っ?」
「俺の知っている光の王は剣を向けられてもビクともしねえ冷徹女だった筈だが───ってああ。そういう事か。ここは別の世界だったな」
アデルはどうなってんだったくとボヤくとロイドの方へと向き直った。
アデルを目にしたロイドは眉間に皺を寄せると低い声で呟いた。
「何者だ、お前は」
「あ?」
「この時代に、闇の王子の攻撃を防げる人間なんて殆どいないはず。お前は、何者かと聞いているのだ」
ロイドの言葉にアデルは唇の片端をあげると、剣の切っ先を向けた。
「それは直接聞き出した方が早えんじゃねえのか?」
「───いや、その必要は無い。君は、この私に倒されるのだからな」
ロイドの姿が掻き消える。
「空間転移?いや、違うな───これは高速移動か」
アデルは自分の身に置かれた状況を冷静に判断すると、剣を担ぐように持った。そして、アイリスを見やり。
「どけ」
真横に蹴り飛ばした。鳩尾を蹴られたアイリスは地面に何度も跳ね、転ぶ。蹴られた衝撃で失われた空気を必死に補給するように何度も呼吸をすると、アデルを睨んだ。
しかし、アデルはこちらに一瞥もくれることがなかった。アデルの踵がスローモーションで地面を蹴るのを、アイリスは呆然と眺めていた。
雷鳴のような魔力と同時に、アデルの姿もまた掻き消える。
「ッ」
同時に、凄まじいほどの闇の奔流がアイリスに襲い掛かり、再び呼吸をするのを困難にさせる。
「慈愛の、檻よ───」
苦痛に顔を歪めながら、レクスルークスを掲げる。力を使う度に力強く撃った場所が痛む。アイリスは思わず顔を顰めた。
「やるじゃないか。君のような男がこの時代にいるとはな」
「アキトの顔で気持ちの悪い言葉遣いするな」
「君のような男が世界崩壊の時に生きていたらと思うと悔やむよ」
「───てめえはどこまで俺の神経を逆撫ですりゃあ気が済むッ!!」
アデルがロイドの足を払って頬を殴ると、数メートル先まで移動。
闇の力を高めると、アデルの身体が赤黒い闇に包まれる。
「爆ぜ狂えッ!ドミニリング───」
剣を中心に爆風と雷が巻き起こり、地面を抉っていく。
「───ザロートッ!!」
アデルが剣を真横に振るうと、斬撃そのものか実体化し、ロイドに襲いかかる。しかし、ロイドは避けることも無くアデルの斬撃を真正面から受け止めた。
「なんだそれは。それでこの俺を倒せるとでも思っているのか?」
「ちっ……腐ってもアキトの肉体ってことか」
アデルは唾を吐くと、更に後方へ跳躍。アイリスの首根っこを掴むと無理矢理立ち上がらせる。
「光の王。そこで這いつくばってるならあそこにいるもう一人の光の王を連れて来やがれ」
「つ、連れてきてどうするの?」
「決まってんだろ」
アデルは悔しいがなと呟きながら剣を握りしめた。
「あのカスに捕らえられているアキトを解放する」
ドミニリングザロート
本作オリジナルのスキル。
簡単に言うと月牙天衝みたいな感じ。意味は横暴な狂信者。
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