白猫あうあう物語   作:天野菊乃

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光ト云ウ名ノ黒

 騎士が近くの民に叫ぶ。

 

「───王宮へ!早く!時期にここも戦場になります!!」

 

 民を逃がしながら空に浮かぶ闇の軍勢を睨む。

 

「おのれ闇の軍勢め……!神聖なる白の大地で好き勝手しやがって……!!」

 

 騎士が闇に対しての憎悪を増幅したその時だった。

 

「───!?ぐ、ぐぉぉおお!!?」

 

 騎士の体が形を崩し始める。

 人の手だったものは鋭い爪へ。装飾華美な鎧は体の表面を覆い尽くす鱗へ。整った顔は崩れ、ケモノのものへと変貌する。

 

「オ、オオオオ!!がァァ!!!」

 

 闇の魔物へと姿を変えた騎士が白の民へと襲い掛かる。

 別の騎士が魔物と化した騎士へと斬り掛かり、何とかその攻撃を防いだ。

 

「大丈夫ですか!?」

「え、ええ……今のは……?」

 

 騎士が空を睨みながら呟く。

 

「おのれ……闇め……白を染めるほど濃く……」

 

 

 

 

 

 

 

 ───天を舞う白の大陸───

 

 アイリスは光の翼を羽ばたかせ、闇の軍勢を落としていく。

 

「───剣よ!」

 

 魔力で編んだ無数の刃を闇の軍勢へと飛ばす。

 魔力の障壁を貫き、ドス黒い鮮血を撒き散らしながら闇はソウルに還元されていく。

 

「……もう!執拗い!!」

 

 数秒で魔法陣を構築、空中に大量展開し、膨大な魔力を流し込む。

 

「───闇を払え!白き光よ!!」

 

 極薄の刃となった光の剣が闇の軍勢に襲い掛かる。

 音速を超えるその攻撃は為す術なく闇の軍勢を減らしていた。

 少し、また少しとアイリスの心を何かが蝕んでいく。朦朧とした意識の中、空を駆ける。

 

「……はぁ……はぁ……」

 

 アイリスの体力は既に底をついている。一対多なのだ。無理もない。

 それだというのに、力が無限に湧いてくるのだ。まるでどこからか注ぎ込まれているような───そんな時だ。アイリスの体を光が包み込んだ。

 

「───あ、あ……い、意識が……!?」

 

 懸命に藻掻くが抵抗虚しく、アイリスの意識は消えた。

 一瞬顔を項垂れるが、直ぐに顔を上げる。空のように澄んだ碧い瞳は鏡をそのまま埋め込んだような、全てを反射する白銀の瞳に変化していた。

 アイリスは上空へ佇む闇の王の元へと転移すると、剣を引き抜いた。

 黄金の剣身の上から魔力の刃が編まれ、魔法攻撃と物理攻撃両方が出来る剣へ。

 左右非対称だった剣は左右対称に。

 

 ───両者は対峙する。

 

『下は随分と賑やかになってきたな。良いのか?貴様一人悠々と空を飛んでいて。光の王よ?』

 

 アイリスは闇の王の言葉に耳を傾けず、闇の王に突進する。

 

『ぐっ!?』

 

 まさか言葉に耳を傾けないと思っていなかった闇の王は、反応が遅れ、そのまま右腕を焼き払われた。

 アイリスは白銀に輝く瞳で闇の王の落ちていく右腕を見つめる。

 

「───私一人が悠々と空を飛んでいてとか何とか言ってますけど、私は均衡を崩さないために戦っているんです。これは戦争なのでしょう?なら、()()()()()()()()

「……なに?」

「ここは戦場です。ならば、彼等も覚悟の上でしょう」

 

 アイリスは感情の抜けた瞳で闇の王を見据えると呪文を一瞬で唱える。闇の王が手に魔力を込めるが、アイリスの詠唱の方がコンマ数秒、早く唱え終えた。

 

「───エターナル・レイ。時間よ、止まれ」

 

 ───瞬間、世界が静止する。光の王、ただ一人を除いて。

 アイリスは闇の王に近づくとその肉体を切り裂いていく。

 心臓部を守る強固な骨を斬り落とし、角を叩き斬り、邪魔な目玉をくり抜き───普通の人間の精神状態では考えられないような残虐な行為を行っていく。

 

「───時よ、動きなさい」

 

 そして、世界がゆっくりと動き出し始める。

 

「うぐ!?ぐぉぉおおおお!!?」

 

 急な攻撃の嵐に闇の王は反応が遅れる。

 アイリスは何処までも表情を崩さない。何かに従うように。何かに命じられるように、攻撃を遂行するのみ。

 話は無用。そう言わんばかりに、光の翼を広げると、魔力の刃を闇の王向けて掃射。

 

『ぐぅ!?ぐおっ!?ここは一旦引いて様子見を───!?』

 

 何処かへ転移しようとする闇の王の魔法陣を一瞬で塗り潰し、光の光線をぶつける。

 

『おのれ……光の餓鬼がぁぁぁ!!』

「───」

 

 闇の王はアイリスとの交戦を激しくしていく。だが、アイリスの圧倒的な攻撃に為す術なく闇の王は段々とその姿を小さくしていき───

 

『うぉあああ!!おのれぇぇぇ!!!』

 

 ───呆気なく消滅した。

 しかし、アイリスは止まらない。

 ただ無情に。ただ非情に。白の大地で自分を見上げる白の民を。そして、黒の大地にいる民を見やった。

 戦いはまだ終わっていない。敵はまだ存在する。

 まだやらなければならないことは沢山ある。白も黒もすべて()()()()()()()()()()()()()()

 アイリスはおもむろに手を振り上げると、天空に巨大な魔法陣を作り出した。

 狙うは───白の大地。

 

()()()()───焼き尽くせ」

 

 放たれるは黄金の閃光。白の大地に蔓延っていた闇の魔獣たちを一掃する。

 しかし、それだけでは終わらない。兵士たちもその光に飲み込まれ、光が晴れた時には、その姿は炭となって消えていた。

 白の英雄として降り立つ筈だった光の王、アイリス。

 完全に歪んだ形で白の大地に君臨した。

 

 ───光ト云ウ名ノ黒として。




まさかの急展開。ラスボスはアイリスになった……?いえ、彼女は主人公です。
ラスボス?誰でしょうねえ……。

ハイスクールDxDと白猫のクロス……削除しようか迷っているところです。友人に何度も消すのはどうかしてると言われました。

感想など貪欲にお待ちしております。

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