───私の総ての力と引き換えに───この世界の均衡を取り戻します。
───〈カリダ・ルークス・プーラン・ルーチェンム〉
───さようなら。
ふむぅ……私にこんな記憶ありましたっけ。何度か告白されたことはありましたがこんなことは言ったことありません。それにカリダ・ルークス・プーラン・ルーチェンム……。この詠唱が何なのかすら私には理解不能ですから。
───さぁて。そろそろ本題に入りましょう。
「アイリスー!高いわよー!!」
……私、今飛行島にいます。はい。
アキトくんがやって来たと思ったら急に地面が揺れだして空高く上がっていきました。
アキトくんは「おんぼろ宿屋があったから立て直してくる」と言って青い星たぬきとそこら中にいた赤い星たぬきを調教という名の拷問をして刃向かえないようにしてから手伝わせています。
……
「アイリス」
「なに?」
「失礼な事考えてないよな?」
「まさか、
「……?」
魔王と書いてアキトくんとルビを振る。
くぅ……これいいですね!これからはこういきましょうか!
……めんどくさいのでいつも通りでいいです。
というかなんでここにいるんですかこの人。さっきまで星たぬきさんたちとキャハハウフフしてたじゃないですか(死語)。
「宿屋は?」
「ああ、たぬきに任せてきた」
宿屋にいるたぬきさん達を指で差す。
表情は変わりませんが鬼気迫る表情でやっています。
「サボったら死ぬ……サボったら死ぬ……」オーラ出てますよ。アキトくんなにしたんですか。
「……さて、アイリス」
アキトくんはそんな私の思考に気づいていないのか、こちらにゆーっくりと満面の笑みを向けながら近づく。
え、なんですか。嫌な予感がするんですが。
「なんだあの腑抜けた剣術は」
「……え?」
「杖だからと思って大目に見ていたが、なんだあの隙だらけの剣は。速度もない、キレもない。なによりも力がない」
「……え?」
「というわけで」
アキト君が私の肩をガシッとか掴む。
……嫌な予感がしかしない。
「今から鍛錬だ。俺がみっちり鍛え上げてやる」
「……わ、私ご飯作ってこないと」
「ヘレナに任せる」
アキトくんはお姫様抱っこで私を担ぐとどこかへと運び出した。運んだ先は……剣術場。
顔が熱くなるのと青ざめるのが同時にやってくる。
「なに、手加減はしてやる」
アキトくんの手加減はボコボコにするということ。
あうあう、おばあちゃん。私生きて帰れるでしょうか……