白猫あうあう物語   作:天野菊乃

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話が浮かばない


アイリス救出大作戦 その3

「アキト。ソウルを武器に流し込め。そうすれば、またやりようはあるんだろ?」

「……話を聞いていなかったのか? 暴走するリスクがあるんだぞ」

「安心しろ。もし暴走したら、お前を止めてやるからよ」

 

 カイルが唇の端を歪めてそう答える。アキトはしばらくカイルの目を見つめてから、やがて諦めたようにため息を溢した。

 

「…任せたぞ」

 

 迷っていることでは前に進めない。失敗を恐れる事は確かに大事な事ではあるが、それで足踏みしていては越えられる壁も越すことができない。

 やるしかない。今はこの手しか残されていないのだから。

 

「───バーサーカー、発動」

 

 それと同時に黒の剣の刀身が伸び、分厚い金属へと変貌する。月の意匠が鍔に出現し、紫と黒を主体とした部分が赤く染まる。

 

【壊せ】

 

 破壊衝動がアキトを襲う。剣を中心に凄まじい力が身体の中を駆け巡る。目に映るものはすべてが敵。アキトの青い瞳が黄金に染まっていき、髪が血色に染まる───瞬間、アキトの方をカイルが掴んだ。

 

「力を制御するんじゃない。力を上手く流すんだ」

 

 今アキトが攻撃をすれば、カイルは一溜りもないだろう。今のアキトは理性の吹き飛びかけた狂戦士一歩手前だ。そんなアキトの方を掴むなんて自殺行為でしかない。そんなカイルを目で補足してから───アキトは息を吐き出した。

 

「……カイ、ル。悪いがどいてくれ」

「───どうやら、力に使われることはなかったようだな」

「ああ、だが……長くは持たない。一撃で、決めるッ」

 

 何とか理性を繋ぎ止めながら、アキトは最早大剣と成り果てた黒の剣を頭上に掲げた。

 赤紫色の闘気がアキトを包み込み、ソウルが剣に集約されていく。

 

「───いくぞ」

 

 剣を両手で持ち、地面を駆ける。振るわれた蔦を、放たれた毒を回避しながら剣の間合いまで接近。アイリスがいる限り、バスターソードは放てない。ならば、使う技は一つ。

 

「グランディ───ヴァイドォオオ!!!」

 

 バスターソードを優に越える破壊力を持つ一撃。バスターソードを放っていた場合、アイリスを盾に使われる可能性があっただろうが、この技ならそうはいかない。タイミング、スピード、パワー共にバスターソードを上回る。その代償として身体に激しい痛みが走るのだが、いい方だろう。

 グラマラスクイーンの身体を袈裟懸けに切り裂き、胴体と頭部を切り離す。

 

「カイル!」

「───ああ!」

 

 アキトの背後からカイルが飛び出し、槍を構える。

 

「トルネードブラスト!」

 

 風を切り裂きながら振るわれた槍の一撃がグラマラスクイーンの頭部に突き刺さり、その命を刈り取った。グラスマスクイーンの体がソウルへと還元され、蔦に囚われていたアイリスが地面めがけて落下する。

 

「アイリス!」

 

 黒の剣を地面に投げ捨て地面を滑り、寸前のところでアイリスを抱き抱えることに成功する。地面に直撃する前に間に合ったことに安堵の息を吐きながらアイリスの顔を見やる。

 息はしている。怖い思いをしただろうが、命に別状はなかったようだ。

 アイリスをゆっくりと地面へと下ろしながらアキトは黒の剣と黒の大剣を回収していく。

 

「アイリスは大丈夫そうか?」

「……ああ、なんとか。でもきっと怖い思いをしたよ」

 

 カイルはアイリスの顔を見つめながら続ける。

 

「早く村に戻ろう。あいつが消えたことで、モンスターたちがやってくる可能性がある」

「……ああ、そうしよう」

 

 アキトは再びアイリスを抱き抱えると、カイルと共に村へと向かった。




光の王と黒の王子強すぎませんか?
課金せずに当てれたのでラッキーでしたね。ジェルは2955個消費しましたが

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