「邪魔するなッ」
は黒の剣でモンスターを薙ぎ払っていく。目の前に変異化したジャガーが迫るが、それを『ダブルスラッシュ』で薙ぎ払う。
「お、おい……アキト?」
「なんだよ」
「こいつら強すぎないか?」
ここのモンスターはあまりにも強くなりすぎている。これは、異常と言っても過言ではない。かつてアキトが生態系を狂わしたことはあったが、変異種が出現したことは一度もなかった。
アイリスがここに訪れたことが原因なのか。アキトはその考えをすぐに捨てる。
きっと他の原因なのだ。アイリスは関係ない。
「アキト。お前の戦いぶりを見ている限り、心配はしていないがソウルの解放はしないでおけよ」
「わかっている」
かつて。暴走し、自分の無力さを体感したアキトは、力を上手く扱うため、基礎能力の上昇を図った。今の強さを手に入れることはできたが、それでも力を解放すると、意識を破壊衝動に乗っ取られそうになる。
「……使うことにならないといいんだがな」
「伏せろ、アキト!!」
アキトが考えに耽っていた束の間、カイルが大声を上げた。が、コンマ一秒反応が遅れた。横薙ぎに振るわれた太い蔓がアキトの腹を叩いた。
地面を何度か跳ねながら勢いを殺し、一撃を放った相手を睨みつける。
「こいつは……!!」
グラスマスクイーン。しかし、妙だアキトの知っているそれとは色が違う。
「……グラスマスクイーンの亜種か!!」
カイルがそう叫ぶと、それに呼応するかのようにグラスマスクイーンの口から毒霧が吐かれる。アキトとカイルは真横に跳躍して毒霧を回避、武器を構える。
「……こいつ!」
血が出んばかりに黒の剣を握り締める。黒の剣にソウルを流し込み、一撃必殺の技を放とうとしたその時だった。
「アキト! 見ろ!」
カイルがそう言い、指をさしたその先。そこには、蔦に絡まったアイリスが。
「くそっ!」
黒の剣に注ぎ込んだソウルを霧散させ、地面を蹴る。今放とうとしていた技は『バスターソード』だが、この技を叩き込んでしまった場合、アイリスが無事でいられる保証はない。即座に蔦を切り裂く方向に思考を切り替えた。
「っ!?」
『ダブルスラッシュ』を放とうとした瞬間、横から恐ろしい速度で振るわれた別の蔦によってアキトは真横に薙ぎ飛ばされた。
「アキト!」
「大丈夫だ!」
「そうじゃない、次が来るぞ!!」
カイルはアキトに目配せしながら、槍を構える。
黒の剣を地面に突き刺し、杖代わりにして立ち上がろうとして、そこでアキトは一つのことに気づく。
自分の身体が重くなっているのだ。気が遠くなっているのかと思うが違う。アキトの意識は鮮明で、意識の混濁もない。そうなると、答えは一つしかない。
「状態異常か……!」
この個体は
「……グラスマスは毒。だがこれはアクーアと同じ水系統の状態異常……」
このグラスマスクイーンは、毒と水の二つの状態異常を操ることができるのだ。
「こんな亜種、聞いたこともないぞ!? ギルドは何をしてやがる……!!」
「言ってる場合か…!」
アキトとカイルは再び武器を構えた。