魔法科高校の劣等生〜魔法師達と魔法使い〜   作:破壊

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だいぶ時間がかかりました。
でもようやく形になりました。
でも最後の方は取って付けた様な感じになりました。
スミマセン。


傑と四葉と時の魔法

「それじゃそろそろ行こうか」

 

「そうね、おそらくお父様たちもこちらに向かっているはずだわ。」

 

空が明るくなりだした頃、傑と真夜は目を覚まし移動する準備を始めた。

 

真夜ははじめ自分がベッドで寝ていた事に驚き飛び起き、傑が椅子に腰掛け寝ているのを見てホッと息をついた。真夜が飛び起きたことで傑も目を覚まし事情を説明。そして部屋のドアに視線を移した。真夜もドアの方を見ると、土気色の肌の女性がこちらを見ていた。真夜は警戒した表情で傑に問いかけると、CADを取り出し女性に向けた。傑が女性は幽霊でここで寝る許可をくれた人だと説明すると、表情が一変(いっぺん)怖いモノを見たという感じになり傑の服を震える手で掴んでいた。そんな真夜を見て傑は「この世界では、幽霊は恐怖の対象なのか?」と思いながら真夜の頭を撫でて落ち着かせ、女性はなにもしない、見守ってくれてるだけと言うと、真夜は少し落ち着き、掴んでいた傑の服を離した。

 

傑は真夜が落ち着いた事に安心し、女性に向き直ると女性が手招きしている事に気付いた。真夜を連れて女性についていくと、ある部屋の前で止まり、こちらに一度振り返ってから部屋の中に入っていった。部屋のドアを開けると、まず巨大なくまのぬいぐるみが目にはいった。次に大きめのタンスと、漫画が収まっているこぶりの本棚、真夜を寝かせたベッドより少し小さいベッドに、机に鏡台と、埃を被っていたが綺麗に整理整頓された部屋だった。部屋の中を観察していたら女性がタンスを指差し、真夜を見ていた。傑は女性の意図を察して真夜をタンスの前に連れていきタンスの引き出しを引いて中を見た。引き出しの中は、赤やピンク、水色や黄緑など、色とりどりの服が入っていた。真夜が1着手にとって体に当てると少々大きめだがブカブカという訳でもない、そして良く似合っていた。他の引き出しを引いて見ると、ズボンにスカート、靴下、下着類が収まっていた。

 

この部屋は女性の娘さんの部屋だったのだろうと思いつつ真夜に服を着るよう言って部屋を出ようとした傑の袖を真夜が掴んだ。振り返るととても不安げな表情をしていた。事情を聞くと、1人でこの部屋で着替えるのが嫌なようだ。仕方なくその場で真夜に背を向け、着替えが終わるのを待っていると、女性が俺の前に現れ何とも言えない表情でこちらを見ていた。呆れてるような苦笑い的な表情を見て傑は首を傾げていた。

 

暫くすると真夜に声をかけられ、振り返ると、黒の靴下に黒のスカート、ベージュのトップス(長袖)と、割りとシンプルな姿で立っていた。傑が似合ってると褒めると真夜は頬を赤く染め視線をそらした。そらした視線の先で女性が頬に手を当ててニコニコと微笑んでいた。

 

その後、靴も貰い玄関から外に出た二人は、女性に礼と別れを告げ、真夜の端末の地図を頼りに東へ歩きだした。四葉の救出部隊が来るには、この場所は狭すぎるとのことだ。

 

郊外の道を暫く歩いていると、真夜の端末から音楽が流れ始めた。真夜が端末を操作し耳に当て、相手と連絡をとる。真夜が端末を耳から離し、また端末を操作しだすと、傑に端末の画面を見せた。

 

「今お父様からの連絡でここにヘリを停めてこちらに向かっているそうよ。距離は少しあるけど、後10分位で接触出来るわ。」

 

「ようやくか。しかし、敵の襲撃が無いのがおかしいな。俺たちの周囲にもう潜んでいてもおかしくない筈なんだが。」

 

「そうね。私たちが民家で休んでいたとは思わなかったとしても、さすがにもう捕捉しているだろうし・・・とにかく、合流地点に行きましょう。」

 

そんな会話をしながら二人は合流地点に向かった。

 

 

 

10分後、二人は何事もなく合流地点に着いた。

 

しかし、合流地点には誰もおらず、付近にも人影が見当たらなかった。

 

「ここが合流地点じゃないのか?誰もいないが。」

 

「変ね?私たちの方が先に着いたのかしら・・・」

 

辺りを見回しながらそう言っていると、

 

ドオォォォォン

 

『!!?』

 

突如爆発音が聞こえた。二人が音のする方へ走っていくと、爆発音に加え、銃声や怒号等も聴こえてきた。

 

二人は近くに高台を見つけ登り、音のする方を見た。

 

そこには迷彩服を着た一団と、スーツや燕尾服といった争いの場に合ってない服を着た集団がいた。迷彩服を着た方はアサルトライフルやロケットランチャーなどの重火器を構え、スーツや燕尾服を着た方は小型の拳銃のような物や手のひらを相手に向けていた。

 

「あれは・・・」

 

「間違いないわ!お父様達よ!」

 

傑が考察していると隣で真夜が叫んだ。

 

「成る程。迎えを潰してからゆっくり捜そうって訳か。理に敵っているが、俺一人に出し抜かれた連中が魔法に対応出来るのか?」

 

傑がそう言っていると迷彩服の一団の前衛数名が突如倒れた。

 

「今のが魔法ってやつか。突然倒れたようにも見えるが気絶じゃなく死んでるっぽいな。」

 

「あれは精神干渉系魔法よ。精神的に作用する魔法で幻惑を見せたり、ああやって相手を殺害したりできるの。」

 

傑の呟きに真夜が説明する。傑の見た限り、救出部隊の方が優勢に見えた。現に迷彩服の集団が徐々に後退して行くのがわかる。

 

しかし救出部隊が前進してすると付近の地面が爆発し何人かが宙を舞った。

 

「あぁっ!」

 

「地雷か。いや、あの辺りは何人かが行き来していた。・・・遠隔操作式の爆弾を埋めてたか。」

 

真夜が驚きの声を上げ、傑が冷静に分析している間も戦場の地面は爆発し救出部隊の進行を妨げていた。

 

「爆発の被害がでかすぎる、部隊の方も爆弾を警戒して進行速度が一気に落ちた、・・・このままじゃ不味いな、不安は部隊で伝播(でんぱ)する、そんな状態で反撃されたらひとたまりもないぞ。」

 

「ッ!!」

 

「待て真夜。何処に行こうとしている?」

 

傑の呟きに焦った真夜は、敵の部隊に向けて走りだそうとしたところを傑に肩を掴まれ止められた。

 

「みんなを助けるのよ!魔法で牽制すればあいつらの気も反れるわ!」

 

十師族の血を引いているためサイオン保有量はかなりのモノである真夜だが、

 

「これだけの規模の戦場で一人二人の注意を引いた所で戦況が変わるわけが無いだろ。やるなら戦場にいる全員の気を引かなきゃならない。真夜の魔法は、それができるか?」

 

そう傑に問われ押し黙る真夜。自分にはこの戦場を一変させられる魔法が無いと理解しているからだ。

 

反論できず、奥歯を噛み締め俯く真夜に傑は、

 

「でもまっ、助けることに関しては賛成だな。俺が派手なの一発ぶちこむから、その間に真夜は救出部隊の方に駆け込め。」

 

真夜の頭に優しく手を置き、真夜の考えに賛成していた。そして、自分が代わりに牽制するとも。

 

「・・・終わったら直ぐに来てね?」

 

「ん~~~、まっ、なんとかなるでしょ。」

 

曖昧な返事を返す傑に、真夜は不安に思いながらも自分を救ってくれた傑を信じ、救出部隊の方へ走り出した。

 

真夜の姿を確認しながら、傑は気を練り始めた。

 

「さてっ、ああ啖呵切った以上、半端な技は出来ねぇな。部隊を壊滅させるくらいのヤツだな。」

 

そう言うと練った気を左手に集中させ、左膝を地面に突き左手を引いて拳をつくり構えた。

 

「相手側一帯に津波が襲い掛かるように。」

 

そう呟き目を閉じ、技のイメージを頭の中に描き固定し直後、目を見開き拳を地面に突き刺した。

 

「【土竜重撃波(グランドウェーブ)】!!」

 

ズガアァァァァァァン!!

 

拳を地面に突き刺したと同時に気を放出。直後、傑の前方三Μの場所から土砂が吹き上がり、徐々に範囲を拡げ大漢の一団に向かって丘を(くだ)っていった。

 

 

───元造side───

 

抜かった。

 

ヘリで泉州郊外の拓けた平地に降り立った我々は真夜と連絡を取り合流すべく走り出した。しかし平地を囲っていた森林を抜けたところで大漢の一団と出くわすとは予想外だった。

 

恐らくこの一団も真夜を捕らえるべく動いていたのだろう。我等を目視した途端大声で言葉を発し、一斉に銃口をこちらに向けてきた。

 

我々も硬化魔法や防壁魔法等を展開し初撃をしのぎ反撃に移った。

 

奴等の前衛を崩し、後退したのを確認して前進させた。

 

そこまでは順調だった。

 

突如地面が爆発しなければ。

 

四葉兵馬(ひょうま)殿の率いる部隊が吹き飛ばされた。

 

兵馬殿を含め何人かは、咄嗟に魔法で防御した様だが他の者は爆発によって上空に打ち上げられ地面に叩きつけられたり、下半身が吹き飛ばされたりして死んでいた。

 

部隊の中心付近で爆発したとゆうことは地雷ではなく遠隔性の爆弾だ。

 

いきなりの爆発で騒然となるが取り乱してはいられない。敵の反撃が来たからだ。

 

再び魔法で防御するも、やはり先ほどの爆発で冷静さを欠いてしまったのか、銃弾での死傷者が増えてきた。

 

このままでは部隊が瓦解する!

 

そんな考えが脳裏をよぎった。直後──

 

ズガアァァァァァァン!!

 

──とゆう轟音と共に左手にある小高い丘から土砂がまるで雪崩のように降って来て大漢の兵士達を呑み込んでいった。

 

「お父様、これは?」

 

「解らぬ。魔法の兆候が全く感じられなかった。大漢が丘の上に仕掛けていた爆弾が何らかの理由で爆発して土砂が流れ込んできたと考えるのが筋なのだが、奴等がそんな間抜け共にも見えんが。」

 

近くに居た深夜が私に疑問を投げ掛けたが、私もこの状況は理解できていないため、憶測と推論を答えた。しかし、自分で言ってなんだが、これは正解では無いだろう。・・・と、

 

「お父様!!姉さん!!」

 

私たちの左前方から救出対象であった筈の真夜が駆け込んできた。

 

「真夜!!・・・よく、・・・よく・・無事で。」

 

深夜は真夜を確認すると勢い良く抱きしめ、涙を流しながら無事であることを喜んでいた。

 

真夜も深夜の背中に両腕を回し、涙を流していた。

 

「真夜、無事で良かった。しかし、再会を喜んでばかりもいられない。直ぐにこの国から脱出するぞ。全員!!真夜を無事保護した!!直ぐにこの場を離脱するぞ!!」

 

真夜の無事を確認した私は直ぐに部隊に撤退の指示を出した。

 

すると真夜が此方に顔を向け、

 

「お父様!まだ丘の上に傑さんが居ます!撤退はあの人も交えて行って下さい!」

 

と、撤退案を提示してきた。

 

「ふむ、真夜を救ってくれた恩人か、すると先ほどの土砂は・・・」

 

私が先ほどの光景について考えをまとめようとしていると、

 

「元造殿、考えるのは後にしましょう。今は急ぎ撤退を。」

 

と、兵馬殿と共に前衛の部隊を指揮していた黒羽重蔵(くろばじゅうぞう)が割り込んできた。

 

「そうだったな。真夜、すまんがその者を待っている時間はない。直ぐに撤退しなければ別動隊に遭遇する可能性が出てくる」

 

「いや、待つ必要は無い。すでに合流している。」

 

『!!!』

 

そんな声が背後から聞こえ、慌てて振り向くと、年若い男が立っていた。

 

私と重蔵は咄嗟にСΑDを男に向けようとしたがそれより早く、

 

「傑さん!無事だったんですね!」

 

と、真夜が男に抱きついていた。

 

「いや、無事も何も敵の不意を突いたんだから怪我する要素無いじゃん。それよりさっさと撤退してくれ危ないから。」

 

男は真夜を自身から離しながら私たちにそう告げた。

 

「・・・君が何者なのか知らないが、真夜を、娘を救ってくれたこと、感謝する。全員!!真夜と合流した!!これより撤退行動に移る!!」

 

『はっ!!』

 

「あのっ!」

 

「んっ?」

 

私が指示を出していると、今度は深夜が男に話し掛けた。

 

「・・・真夜を、妹を救い出してくれて、ありがとうございました。」

 

そう言って深夜は男に頭を下げた。

 

「・・気にしないでくれ、俺が良かれと思って行動したことだ、君が俺に頭を下げる必要は無いんだ。」

 

そう言いながら男は深夜の頭を撫でていた。深夜は頬を赤く染め視線を逸らし、男から離れた。

 

「・・・後退する。遅れるな、深夜。」

 

「っ!は、はい!」

 

私は深夜に指示を出し後退行動に移った。

 

「真夜も親父さんと一緒に行きな。」

 

すると男は、真夜にそう告げた。

 

「えっ?傑さんは?」

 

真夜は驚き、男に向き直った。

 

「俺は君達の安全が保証されるまで殿(しんがり)に付く。」

 

そう言って真夜と、そして深夜に視線を移した後、背を向けた。

 

後ろ姿を見ても解る。

 

この男は強い。

 

いくつもの死戦を越えてきた者が纏うオーラのようなモノを感じる。

 

そのオーラを感じたのか、真夜も息を呑んだ。

 

「行くぞ、真夜。」

 

「はい。・・・傑さん、必ず来てください。」

 

真夜が男にそう言って、我々はその場を離れた。

 

 

───元造side out───

 

傑は自分の背後から元造達の気配が遠ざかるのを感じながら大漢の部隊が埋まった土砂を睨み続けていた。

 

(魔法があるこの世界で、埋まった程度でくたばる連中じゃねぇよなぁ。)

 

傑がそんな事を思っていると、所々で土砂が盛り上がり大漢の兵士達が出てきた。

 

「まっ、こうなるよな、やっぱ。」

 

『やってくれたな貴様、本来ならなぶり殺しにするところだが、我等は四葉を追撃せねばならんのでな、早々に死んでもらう。』

 

「いやなに言ってっか解んねぇよ。」

 

大漢の兵士の一人がそんな事を口にしたが、傑は大漢の言葉を理解出来なかった。

 

『死体は研究所に運べ、頭は狙うな、魔法師の脳は色々と使い道があるからな。』

 

大漢の兵士はそう言いながら傑から視線を外し後方に目を向けた。

 

『・・・47人か。だいぶ殺られたな。だが別動隊と合流すれば、十分四葉にも対抗できるだ─』

 

兵士は最後まで言葉を紡ぐ事が出来なかった。

 

「敵を前にべらべら喋って視線も外すなんて・・お前ホントに軍人か?殺してくれって言ってるようなもんだぞ?」

 

傑がナイフを取り出し、べらべら喋っていた兵士の首を斬り飛ばしたからだ。

 

周りの兵士は恐怖していた。

 

傑から視線を外していなかった。なのに気付いた時には上官の首が飛んで敵の手にはナイフが握られていたのだ。

 

──見えなかった──

 

兵士達は即座に銃口を傑に向けた。しかし、まだ頭の中は、混乱が抜けていなかった。

 

兵士達の行動に傑は感心したが、銃口を見た途端・・・

 

「あっ。」

 

と、声を漏らし動きを止めた。

 

動きを止めた事に隙だと感じた兵士は引き金を引いた。

 

ボン!!

 

直後銃は暴発した。脇に抱えて構えていた為、多くの兵士達が絶命した。

 

銃が暴発した事に引き金を引かなかった兵士達が驚いていたが傑は暴発した原因に気付いた。

 

「そりゃ埋まった時に銃で土砂を掻き分けたら銃口土で塞がるよなぁ。そんな状態で撃てばまぁこうなるわな。」

 

傑の言葉にハッとした兵士達が急いで銃口を覗いた。

 

そこには傑の指摘通りに土が銃口を塞いでいた。

 

銃が使えないと理解した兵士が次の行動に移る前に傑はナイフの刃の長さを伸ばし、5人ほど斬り捨てた。

 

「だから、敵を前に余所見すんなって言ってんだろ。数の有利が無くなってってんぞ。」

 

大漢の兵士は残りが既に半数以下になっていた。

 

残った兵士達は銃を捨てナイフを構え傑に襲い掛かった。

 

「軍人の使うナイフ術の割りに随分と稚拙な動きだな。銃ばっか使ってっからそうなんだよ。」

 

3分後、残りの兵士達は全て傑に斬り捨てられていた。

 

 

───真夜side───

 

「正面から迎え撃て!獣の動きに注視しつつ一体一体確実に仕留めろ!けして後ろに通すな!」

 

お父様の激の様な命令が飛び、四葉の部隊は魔法を放っていた。

 

傑さんが敵の侵攻を抑える為に殿として残っている間に私達はヘリを隠してある地点に向かった。

 

しかし、後少しと言うところで敵の別動隊と遭遇してしまい、そのまま戦闘になった。

 

しかも、今度の敵には魔法師も多く混じっているのか肉食獣や猛禽類の化成体が群れをなして襲ってきた。

 

お父様の指揮の下、私達は魔法で対抗して敵の攻撃を防いでいたが、化成体が減らず立ち往生していた。

 

「深夜と真夜は部隊の中心から化成体に魔法を放て!無理に倒す必要は無い!魔法を当てて注意を引くんだ!」

 

「「はい!お父様!」」

 

お父様の言葉に返事を返した私と姉さんは、それぞれ魔法を放ち、化成体の動きを制限させていた。

 

私達は化成体を消し飛ばす様な魔法はまだ使えない。

 

けど広範囲に向けて放つ魔法は使える。

 

此方に向かってくる化成体に魔法を放ち動きを鈍らせ、その隙に大人たちが群れを減らしてゆく。

 

そして少なくなった所で魔法師に魔法を放ち化成体の術者を倒し、消す。その繰り返しだった。

 

その作戦が功をそうし、化成体の数が徐々に減ってきた。

 

しかし此方も多くの想子(サイオン)を消費した事で敵を一掃する様な大規模な魔法が使えず、一人、また一人と化成体の餌食になるものが増えていった。

 

その時、一体の鳥の化成体がお父様に襲い掛かった。

 

死角からのようでお父様は気付いていない。

 

「お父様っ!!」

 

私は咄嗟に叫びCADを操作し魔法を放ったが、化成体に魔法が当たるのと、化成体がお父様の持つ拳銃型の特化型CADを弾き飛ばすのがほぼ同時だった。

 

直後──

 

私の胸に痛みがはしり、全身から力が抜けていきその場に倒れた。

 

あれ?──

 

私は起き上がろうと腕に力を込めるが腕が動かない。

 

身体の先から冷たくなっていくのが感じられる。

 

そこで漸く気付いた。

 

自分はもう死んでいるんだと。

 

そう理解した直後、急速に意識が遠退いた。

 

──真夜side out──

 

──傑side───

 

「つまり俺は魔力と魔法を使える身体になったが、肝心の使用方法を何一つ修得していないから結局まだ魔法が使えないと。」

 

「そぅなんだよ。だから一度ゆっくりできる場所に移動して欲しいんだ。」

 

敵を斬り捨てて直ぐに、俺をこの世界に送ったクゥから通信?がきた。

 

その内容は、俺はこの世界に来た事で魔力と魔法を得たが魔法の使い方を修得していないので使えないとゆうものだった。

 

その為一旦俺の意識だけを戻して魔法を覚えさせようとのことらしい。

 

「ならさっさとあの娘たちを無事に逃がしたらどっかに身を隠すか。」

 

自己完結して再び駆け出した傑は四葉(子ども)の気配をたどり、木々が生い茂ってる場所を突っ切った。

 

──直後──

 

「真夜ああぁぁぁぁ!!!」

 

「っ!?、クソっ!」

 

聞き覚えのある声の悲鳴が耳に入り、傑は舌打ちして速度を上げた。目の前に大漢の兵士達がこちらに背を向けていたので手に持つナイフの刃を伸ばし、両足に力を込め敵の背後から突っ込んだ。

 

傑は一番手前の背中にナイフを突き刺し、そのまま真一文字に一回転して切り裂いた。その時、ナイフに気を込め、斬撃の範囲を広めて周りの兵士も斬り捨てた。

 

大漢の兵士達は、背後からの奇襲に動揺して統率が乱れ、傑から離れようと後退(あとずさ)りするも、

 

「何も学ばんようだな・・・斬時雨(きりしぐれ)

 

傑が言葉を発した後、光速で何度も振るったナイフの斬撃が飛び、兵士達を切り刻んだ。

 

大漢兵をあらかた片付けた傑は急ぎ深夜が泣きながら()(かか)えている真夜に近づこうとしたその時、

 

「!」

 

ガンッ!

 

「ッ痛!」

 

背後からの微かな殺気に振り返ろうとしたらこめかみに鋼鉄のように硬い何かが勢い良くぶち当たった。

 

「ッ痛~…なんだ?」

 

自分に当たったであろう物が地面に落ちたので拾って確認する。

 

「・・・パチンコ玉?」

 

それは先が少し尖り、反対側が平らになって、周りにいくつも斜めに溝が切ってある小さな鉛玉だった。

一瞬銃弾かと思ったが、頭に当たったのに痛い程度(・・・・・・・・・・・・)ですむモノが銃弾であるはずが無いと判断して弾が飛んできた方向に目を向けた。

 

「スゲーな。あんな遠くから当てやがったのか。」

 

傑が見つけたのは、約三百M離れた場所の小高い丘、そこから此方を観察していた兵士の気配だった。

 

兵士は動揺していた。無理もない。彼はスナイパーライフルで傑の頭を撃った。そして弾は傑のこめかみに命中したのだ。傑の動作に防御魔法を使用した形跡は視られない、なのに痛がるのみで倒れない。辺りを見回してる。此方を見た。目が合った気がする。あり得ない。スコープ越しの自分と目を合わせる。どんな視力だ。危険だ。もう一度傑の頭に狙いを定める。狙うは額ど真ん中。そこなら多少ずれても確実に死ぬはずだ。

 

傑は手に持った鉛玉(銃弾)を丘の上の兵士に投げ返した。

 

軽く助走をつけて、身体を捻りながら丸まり、止まると同時に全身の捻りを戻しながら勢い良く腕を振り抜く。

 

鉛玉(銃弾)は誰の視界にも映る事無く持ち主の元に戻っていった。狙撃手が引き金を引くと同時に弾が銃口を塞いだ為ライフルが暴発し右腕と顔半分が焼け爛れた。

 

「なんか爆発したけど、・・・まぁいいか。」

 

気にせずナイフを振り残りを殲滅した傑は真夜を抱えた深夜に近づいて気付いた。

 

真夜が動かない――

 

真夜の胸から血が流れ出てる――

 

真夜の目に光がない――

 

真夜は既に死んでいる――

 

「ふざけんなよ。」

 

気づけばそんな言葉が出ていた。

 

「この子にはまだ、これからの、楽しい人生が待ってんだよ。」

 

言葉が続く――

 

「笑って、泣いて、怒って、そんな事をこれからも続けていくんだよ。」

 

何かが溢れる――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなところで死んでいい命じゃ無いんだよ!!!!」

 

───傑side out───

 

傑が叫んだ瞬間、傑の周囲の空間が歪み、辺りを包み込んだ。

 

が、歪みは直ぐに無くなり元の空間に戻った。

 

「うっ・・・、うん。」

 

と、同時に死んだはずの真夜が呻き声を上げた。

 

「えっ?・・・真夜!?」

 

信じられないといった感じに深夜が真夜に声を掛ける。

 

「・・・姉さん?・・・わたし・・・・っ!」

 

朧気だった意識がはっきりしてばっと起き上がる真夜。

 

撃たれた胸に手をあてるも、身体どころか服にすら穴は空いていなかった。

 

なにが起こったのかわからず戸惑う真夜と深夜。

 

元造は暫く呆然と真夜をみていたが、ハッと我にかえり周囲を見渡してから、

 

「深夜、真夜に起こったことは後で検分しよう。今は一刻も速くこの場を離れる。」

 

そして傑に顔を向け、

 

「君も我々と共に来・・・て・・・・は?」

 

傑が立ったまま寝ていることに気付いた。

 

「何が・・・、まさか先ほどの現象は。」

 

「元造殿、それを考えるのは後にしましょう。今は急ぎ撤退を。」

 

「・・・あぁ、全員直ちにヘリまで後退!!急ぎこの国を離れる!遅れるな!!!」

 

元造が考え込もうとしているところに重蔵が声を掛け急ぎ撤退の指示出した。

 

「深夜、真夜、行くぞ。」

 

娘達に声をかけ、傑を肩に担ぐと、元造は部下をまとめ移動を開始した。




まだまだ原作開始には程遠いですがちょこちょこ書いて行こうと思います。

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