魔法科高校の劣等生〜魔法師達と魔法使い〜   作:破壊

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やっと書けました。

少し長くなりました。

あと小説が迷走しているので必須タグ以外を一旦消します。


第一話 転生者と囚われの女の子

俺は光の穴をくぐった。穴の先は薄暗いトンネルのような場所だった。足元はフワフワしていて歩いているのか浮かんでいるのか解らない。

 

しばらく真っ直ぐ進んでいると周りに映像が流れ始めた。

 

─楽しそうに野原を駆ける子どもの映像─

 

─親子だろうと思しき男性と少女の諍いの映像─

 

─野山を物凄い速さで駆け回っている坊主頭の男性の映像─

 

これらはきっと、俺がこれから転生する世界の映像なんだろう。そう思いながら映像を見ていると1つの映像に目を止めた。

 

映っていたのは大勢の老若男女。きらびやかなドレスを着た女性、大人しい色合いのスーツを纏った男性、可愛らしく華やかなワンピースを着た少女、明るいが落ち着いた色合いのタイやベストを身に付けて居る人たちが映っていた。

 

どうやらどこかのパーティーの映像のようだ。

 

魔法が科学的に使われてる世界と聞いて、もっと殺伐とした世界を連想してしまっていたが、このようなことが行われているのなら、少なくとも、俺の前の世界よりは明るそうだ。

 

そう思い映像から視線を外し、歩を進めようとした。

 

その時。

 

「ン?」

 

先程観ていた映像がぶれ始めた。

 

地震かと思っていたその瞬間、映像は白い煙に包まれた。

 

暫く様子を見ていると、次に映し出された映像は、1人の女の子が口を布で塞がれ、複数の男に拘束され連れ去られようとしている場面だった。

 

「なっ!?」

 

・・・なんだこれは。

 

こんなことが(まか)り通る世界なのか。

 

これならまだ俺の世界の豚頭族(オーク)の方がましだった。

 

奴らは人間を奴隷にしようとしてはいたが、子どもを拐うことはけしてしなかった。

 

傑は映像に近づきながら前の世界にも無かった卑劣な行為に怒りを覚えた。

 

──この子を助けなきゃ、でもどうやって──

 

傑は、映像の中の少女を救おうと決めたがどうすれば良いかがわからない為立ち尽くしていた。画面の向こうでは必死にもがいて逃げようとしては、頬を張られ、銃口を向けられ動けなくなる少女がいた。傑は、映像に拳を押し付け(・・・・・・・・・)、何もできない自分を不甲斐なく感じた。

 

次の瞬間、

 

映像から光が溢れだし、トンネル内を白く染め上げた。

 

「なっ!?なんだ、これは!!?」

 

傑は光に包まれ、映像に吸い込まれた。

 

・・・

 

・・・・

 

・・・・・

 

──???side──

 

暗い。

 

手足を拘束され、口を布で塞がれ拉致された私は、日の射さない薄暗い研究施設のような一室に放り込まれた。

 

これからどうなるのだろう。逃げようにもCADを取り上げられてしまい魔法が使えない。

 

台北(タイペイ)で開催された少年少女魔法師(マギクラフトチルドレン)交流会に参加した魔法師の中で、私を拐ったとゆうことは、奴らはたぶん初めから(・・・・)私を標的にしていたのだろう。日本の魔法師、その中でも十師族は其々特定の魔法に秀でた才能を秘めている。"四葉家"の私も収束系統魔法を得意とし、父や姉も精神干渉系統の魔法を得意とした。

 

そこまで考えたところで、部屋に白衣を着た男が3人、ガラガラと台車を押しながら入ってきた。1人はビデオカメラを設置し、もう1人は、サーモグラフィーのような機械を取り付けている。

 

あの機械はたぶん想子(サイオン)の動きを視覚化させるための機械なのだろう。それよりも問題なのは3人目、2人と違い液体の入ったビン、注射器、点滴にカテーテル。クスリの類なのは間違いない。しかし、この場において自分に害の有るものだろうと容易に想像がつく。

 

男は私に近づきクスリを打とうとする。私は身をよじりながら必死に抵抗するが、他の2人も加わり床に押さえつけられ、首にクスリを注射された。暫く様子を見ていた男たちは、私の拘束具を外し、猿轡(さるぐつわ)も解いた。

 

私は体を起こし逃げようとしたが、体から力が抜け再度床に倒れた。

 

頭もぼんやりしてきた。

 

そのことを確認したら男たちはクスリののった台車を残し、部屋を出ていった。

 

早く逃げないと、でも体が動かない、意識はあるのに、思考がハッキリしない。

 

そうこうしてるうちに、今度は別の男たちが5人部屋に入ってきた。

 

男たちの服装には見覚えがある。

 

私を拉致した連中だ。

 

動かない体で男たちを睨み付けていると、男たちが私に近づき、次の瞬間、私の服を下着ごと引きちぎった。

 

あまりの出来事に私は一瞬呆気にとられ、しかしすぐに悲鳴を上げた。だが男たちは気にせず私の体をまさぐり始めた。

 

──恐い──

 

この男たちは、自分に何をしようとしているんだ。

 

──恐い──

 

今すぐこの男たちの手を払い除けて逃げ出したい。

 

──恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐いこわいこわいこわいこわいこわいコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ・・・──

 

私はあまりの恐怖に気付けば歯をガチガチと鳴らし、目に涙を浮かべながら失禁していた。男たちはその光景を、ニヤニヤしながら眺めている。

 

すると1人の男が異様に興奮しながら立ち上がり、カチャカチャと音をたてながらズボンを引き下ろした。

 

そこには、赤黒い棒のようなものが生えていた。

 

──近寄らないで──

 

男が私に近づく。

 

周りの男たちもため息混じりの笑みを浮かべながらカチャカチャと音をたてている。

 

──来ないで──

 

男が私の両足首掴んで股を開かせ自分の体に引き寄せた。

 

──ヤメテ──

 

私の股に赤黒い棒を乗せて前後に動かしている。

 

──イヤ──

 

暫くすると男は赤黒い棒の先端を、私の股の間に押し付けた。

 

──イヤイヤイヤイヤイヤヤメテヤメテヤメテヤメテイヤイヤイヤイヤイヤヤメテヤメテイヤヤメテイヤヤメテイヤイヤイヤ──

 

「イヤアアアアアァァァァァァァァッッ!!!!」

 

ドゴォォォォン!!

 

私が叫び声を上げると同時に部屋の壁が轟音を立てて崩れ落ちた。

 

──???side out──

 

+ + + + +

 

──傑 side──

 

〜〜30分前〜〜

 

光に呑み込まれた俺が次に目にしたのは薄暗い建物の通路だった。

 

──何が起きた?──

 

あの時俺は、少女を救いたいと思い、映像に拳を押し付けていた。

 

そして映像から光が漏れだし、俺を包み込んだと思ったらここにいた。

 

──ここがあの映像の場所なのか?──

 

傑は通路を歩きながら考え、あることを思い出し走り出した。

 

──ここがあの映像の場所なのだとしたら、拐われたあの娘が居るはずだ──

 

傑は走りながら意識を集中し少女の気配を探りだした。

 

すると、多くの人の気配が感じる中で、とても小さい気配を、自分の前方やや下方辺りから感じた。

 

ここはそれなりに大きな建物なのかもしれない。傑がそう予想し下に通じる階段を見つけて下に降りると──

 

『なんだッ!?貴様はッ!!』

 

前方に黒い迷彩柄の服を着た男が立っていた。

 

男の着ている服には見覚えがある。

 

あの娘を拐った連中と同じ服だ。ここはこいつらのアジトか。

 

傑がそう結論付けていると、男は太ももに取り付けてあるレッグホルスターからナイフを取りだし、傑に襲い掛かった。

 

ナイフを傑の頭上から振り下ろし、傑がそれをかわすと今度は回し蹴りを放った。傑はその蹴りを左手で掴み、蹴りの勢いをそのままに右腕を男の太ももを抱え込むように回し、一本背負いの要領で投げた。

 

男は突然のことに反応できず、背中から床に叩きつけられ動けなくなる。

 

傑は男が動かないと判断し、少女の元に急いだ。暫く走っていると今度は3人の白衣を着た男たちが、空の台車を押しながらこちらに向かってきているのが見えた。

 

──研究者?何を研究しようと──

 

男たちは傑の姿を見て驚きの表情をしたが直ぐににやついた笑みを浮かべた。傑はその事を不思議に思いながら男たちに戦闘の意思が無いと判断すると、そのまま男たちの脇を通りすぎた。

 

『あの男もそうか。』

 

『好きだねぇ。あんなガキの体に欲情するなんてな。』

 

『そう言うな。あんなガキでも十師族だ。その血を引いた子が産まれれば、我ら大漢の戦力に申し分無いだろう。』

 

男たちの言葉を聴きながら傑は、彼らの言葉が理解できない事に気がついた。

 

──異世界だからか。種族が同じでも言葉が理解できない。これは暫く厄介な事になりそうだ──

 

傑はそんな事を考えながら少女の気配が感じられる部屋にたどり着いた。と──

 

「イヤアアアアアァァァァァァァァッッ!!!!」

 

部屋の中から甲高い悲鳴が聞こえた。声からして少女のものだろう。

 

ドゴォォォォン!!

 

傑はそう判断し、拳に気を纏わせ躊躇なく壁を殴って破壊した。

 

壊した壁から部屋に入ると、研究室のような室内に、服を破かれ、全裸で床に横たわった少女。驚きの表情を浮かべこちらを見ている5人の男、その内1人は下半身を露出して少女を今にも犯そうとしていた。

 

その光景を目にした傑は、怒りの形相で少女を犯そうとしていた男に一瞬で近づき、襟首を親指を上にして掴み、手首を捻り首を締めた。男は急に首が絞まったことに驚き少女の足から手を離し、喉元に手を持っていった。そのことを確認して、傑は手を勢いよく後ろに引き男を少女から引き剥がし、壁に叩きつけた。

 

傑は少女のそばで腰を降ろし少女の容態を確認する。

 

目は虚ろだが、涙を浮かべ恐怖を宿している。頬は赤く腫れ、少し血が滲んでいた。余程恐い思いをしたのだろう。歯をガチガチと鳴らし全身を震わせていた。

 

傑はその事を確認すると、立ち上がり少女に背を向け、

 

「直ぐに終わらせる。少し待っていてくれ。」

 

そう言って少女を犯そうとしていた男たちに近づいていった。

 

一方男たちは、何が起きたのか理解できず呆然と立ち尽くしていた。この男はなんだ、何処から来た、何処の手の者だ、今何をした、そんな事を頭に思い浮かべていた。すると、そんな事を考えていた男たちに傑は──

 

「この子をお前たちの穢い血で汚す訳にはいかんからな。遺憾ながら部屋から出す程度に留めよう。」

 

そう言って一番近くに居た男を破壊した壁の穴の方へ蹴り飛ばした。男の飛んだ方には2人の男が立っていたが慌てて避けて男は1人穴の向こうへ消えてゴシャッ!という音が聴こえてきた。男たちは我に返り傑に殴り掛かった。しかし傑は冷静に男たちの拳を、蹴りを捌き、1人、また1人と穴の向こうに殴り飛ばした。

 

殴った箇所は顔、ここならたとえ意識を失っていなくても直ぐに立つことは出来ないだろう。

 

残った最後の1人、下半身を露出している男を頭を鷲掴みにして持ち上げた。傑が歩く度に下半身がプラプラして実に見苦しい。傑は穴から部屋を出て男を窓に向かって放り投げた。男は窓を突き破り外に放り出された。

 

傑は窓から外を覗いて見た。雲に隠れた月明かりで見えにくいが、窓の外は崖になっているようで暗闇が広がっていた。男はその暗闇に消えていった。

 

次に傑は先程通路に飛ばした男たちを見下ろした。

 

1人意識を失わず呻いているものがいたが他は皆意識を失っているようだ。特に最初に蹴り飛ばした男だろう。柱の角に頭を打ち付けて死んでいる男もいたが、傑は気にすることなく少女の元に戻っていった。

 

部屋に戻ると、少女は先程と同じ格好で横たわったままだった。裸のまま足を広げ、仰向けのまま空虚を見つめたまま動こうとしない。

 

傑は少女に近づき腰を降ろし顔を覗きこんだ。

 

すると少女は、ビクッと体を震わせ、瞳をこちらに向けて顔を歪めた。

 

無理もない。

 

先程まで男に乱暴されていたんだ。男を見たらこんな反応するのは当たり前だ。

 

傑は、覗きこむのをやめ、着ていた上着を、少女に見られないように脱ぎ、少女の体に掛けた。

 

少女の見ている前で脱ぎ出したら、更に怖がらせる事になるだろうと判断したからだ。

 

しかし、服を掛けても、少女に動く気配が感じられない。疑問に思った傑は悪いと思いつつ、少女の額に手を添えた。

 

少女は傑が、自分の額に手を添えたことで再び恐怖し悲鳴を上げそうになったが、傑の、とても悲しそうな表情を見て、息を呑んだ。

 

そして次に目を閉じ、目を開けると同時に笑顔を自分に向け、頭を撫でながら優しい口調で囁いた。

 

「大丈夫。キミが怖がることは何もしない。ただキミの体の不調を治すだけだ。」

 

そう言うと傑は、額に置いた手から少女に気を送り込み少女の診察を始めた。少女は額から体に流れてくる暖かい何かに、驚きつつも心地好く感じ目をつむった。傑は少女の体に自分の気を巡らせ、不調の原因を調べ始めた。

 

──首筋に注射の跡。ここから何らかのクスリを流し込まれたのか。効果は、筋肉の弛緩と、恐らく思考障害の2つ。これなら俺の前世から持ち込んだ薬でなんとかなる──

 

そう判断した傑は、少女の額から手をどけ、腰から提げてた巾着袋から親指大の液体の入ったビンを取りだし、少女の体を起こし、ビンの蓋を開け少女の口元に持っていった。

 

「薬だ。飲めるか?」

 

傑がそう言うと、少女は少し戸惑いを見せるが、意を決し口を開けた。

 

傑はすぐさま少女の口に薬を流し飲み込み、少女が飲み込むのを確認すると、少女を横たえ、少し距離を取った。

 

暫くすると少女に掛けた上着がピクッと動き、少女が上半身を起こした。

 

「動・・・いた・・・・私の・・・体・・・・。」

 

少女は、動くようになった自分の体を抱きしめるようにしてすすり泣いた。

 

傑は、そっとしておきたかったが現状が現状な為、直ぐに少女に声を掛けた。

 

「済まない。ここで待っていてあげたいんだが、急いでこの建物を出なければならないんだ。その上着だけで悪いが、俺が後ろを向いてる間に着てくれないか?」

 

傑はすぐさま少女に背を向け壁の穴から通路を伺い始めた。少女はハッとして、傑に掛けられた上着を着て立ち上がった。傑の上着が大きかったことと、少女が小柄だったことが幸いし、太ももの半分くらいまで隠れた。

 

「あ、あの!・・・着ました。」

 

少女はしりすぼみになりながらも、傑に声を掛けて準備ができたと伝える。

 

「よしっ、ならさっさとここを出よう。足元に気をつけて。」

 

傑は、少女を恐がらせないよう、優しげな口調で話しかけ少女を促す。と同時に、少女とは会話が出来ていることに疑問を抱いた。

 

少女はコクンと頷き、穴から通路に出ようと、一歩、足を前に出した。しかし、体が動くようになったとはいえ、先程までクスリと恐怖で動かなかった体だ、直ぐに本調子に戻る訳もなく、膝がカクッと曲がり倒れそうになった。

 

「キャッ!?」

 

「おっと、まだ歩くのは無理か。」

 

倒れそうになった少女を、傑はサッと近づき支え、歩くのはまだ無理と判断し、少女の前にまわり、背を向けて片膝をついて座った。

 

「?・・・あの。」

 

「おぶるから。早く乗って。」

 

困惑する少女に乗るよう促し、少女が意を決し背に乗ると、傑は立ち上がり通路に出た。

 

幸いまだ敵の姿は無く、通路は静かで薄暗いままだった。

 

「よしっ、行くぞ、しっかり掴まってて。」

 

傑はそう言うと来た道を勢い良く戻り始めた。新たな道を行くよりも、一度通った道の方がいいだろうと思ったからだ。少女は傑の速さに驚き、ガバッと傑の首にしがみついた。途中、扉が少し開いた部屋があり、慎重に部屋の前を通り過ぎようとした時──

 

「あっ!私のCAD!」

 

と、少女が声を上げ部屋の中を見ていたので、部屋に入ると、部屋の真ん中にある四角いテーブルの上に、綺麗な意匠を凝らした通信端末のような機械が置いてあった。ここで調査していたのだろうか?CADを少女に渡し、部屋を後にした。

 

暫く走り、傑が最初に敵に遭遇した階段前にたどり着いた。今度は階段を昇らず、階段の前を直進した。

 

すると、──

 

ビー ビー ビー ビー

 

建物内全体に警報音が鳴り出した。誰かが少女の居た部屋に行き、通路に倒れた男たちを見つけたのだろう。

 

「少し急ごう。今見つかるのは得策じゃない。」

 

傑は足に気を巡らせ、脚力を強化すると更にスピードを上げて通路を駆けた。バタバタと音を立てずに走っているため、敵に遭遇すること無く建物の出入口らしき扉まで辿り着く事ができた。

 

ここまで来ると、少女も体に力が戻ったのか、自分で立つといい、傑の背中から降りた。

 

傑が扉の向こうを確認するために開けると、やはり外に出ることができ、運良く、建物の周りの塀の門も開いていた。

 

傑が少女に合図を送り、先に外に出ようと振り返ると、後方にサブマシンガンを装備した大漢の兵士が、こちらに走って来ているのが見えた。

 

「チッ、あれは不味いな。俺がやつらを抑えておく。君はその間に門の向こうに走れ。」

 

できることなら、近くで守ってあげたいが、銃が相手では、不測の事態が起きかねないと考え、傑は少女を先に逃げるようにいった。

 

「でもっ!」

 

「直ぐに追い付く。行け!」

 

少女が傑の言葉に躊躇していたが、傑の語気が強くなったため、傑の言葉に従い門に向かって走り出した。

 

その事を確認した傑は、向かって来る兵士に向き直り、腰に差していた気を固めたナイフを手に持ち、体勢を低くして突っ込んだ。

 

兵士たちは突っ込んで来る傑に驚きつつも、銃を構え一斉に掃射した。しかし傑は、弾道を予測していたのか、紙一重でかわし、ナイフで弾き、真っ直ぐ突き進んだ。

 

距離が詰まるにつれ兵士たちは冷静さを無くし、銃弾も傑の体の周りを通り過ぎ、避ける意味が無くなってきた。相手との距離が、残り10Μくらいになり、傑はナイフの刃を右端の兵士に向け射出した。刃は兵士の右腕に刺さり、呻き声を上げた直後、傑がその兵士に一瞬で近づき、手に持つサブマシンガンを他の兵士に向け乱射した。狭い通路に密集していたので弾は外れること無く兵士に当たり、命を奪っていく。無事な兵士たちは通路の角に身を隠し銃弾が当たるのを防いでいた。

 

暫く撃ち続けた後、傑はナイフの刃を作り兵士の首を切り殺害し床に落ちていたサブマシンガンを拾い通路の角を撃ちながら出入口に向かって駆け出した。兵士たちも傑に撃とうとしたが距離が空きすぎたため、傑に当たることは無かった。

 

扉から出ると、少女が門の向こうで手を振っていた。

 

──良かった、何も無かったんだな。──

 

傑が一安心と思いつつ後方に気を配りながら少女の駆け寄ろうとした。その時、

 

チリッ

 

「ッ!!」

 

首筋に焼けるような感覚を感じ、傑は横に跳んだ。すると先程まで傑の頭があった場所を何かが通過し地面を抉った。

 

傑は片手で側転するように体を回転させ体勢を立て直し建物の屋上を睨み付けた。するとそこにライフルを構えた兵士が、こちらを見下ろしているのが見えた。

 

傑はサブマシンガンを撃つが、4階建ての建物の屋上のため、直ぐに身を隠し避けられる。

 

傑が攻めあぐねていると、ライフルをこちらに向けて撃とうとしていた兵士が何かに押されたかように屋上から落ちてきた。突然の事に傑は驚きつつも、直ぐに立ち直り、少女の元に急いだ。

 

少女は門の陰で先程の兵士が居た屋上に端末を持った腕を伸ばして佇んでいた。

 

──さっきのはこの娘が?──

 

傑はそう考えたが、時間が無いと思い少女を横抱きに抱き上げ、下り坂の道を、駆け降りていった。全身に気を巡らせて走っているため、傑の速さは時速80km/hに到達していて、とても追い付けるものではなかった。

 

暫く走り続け、ようやく危機を脱したと判断した傑は、スピード緩め、少女に話し掛けた。

 

「なんとか切り抜けたが、これからどこに行けばいい?」

 

「わからないの?貴方あの施設にどうやって行ったの?」

 

そう少女に質問を返され、返答に困っていると、

 

「まぁ、今は良いわ。助けてもらっておいて困らせるなんて不義理が過ぎるもの。」

 

と、少女が自己完結して話を切り変えた。

 

「とにかく、現在地を特定して、お父様と連絡を取ってみるわ。」

 

「頼む。」

 

そう言うと少女は端末を操作しだした。傑は少女が端末を操作しやすいように揺れを押さえた走り方に切り替えた。

 

暫くすると少女が、

 

「えっと・・・、現在地は、大漢の泉州、〇〇地区の崑崙(コンロン) 方院の泉州支部研究所から南西に10㎞のところよ。」

 

「ふむ、つまりさっきの建物はその崑崙ていう研究所だったと。」

 

「そういうことね。」

 

と、ここで傑はあることに気付き少女に問いかけた。

 

「さっきから普通に会話してるけど、俺の言葉解るのか?」

 

すると少女は眉をしかめ、

 

「??貴方なに言ってるの?貴方は日本語を喋っているのだもの、日本人の私が理解できないわけないじゃない。」

 

「日本。それが君の国か。」

 

「・・・貴方、日本人、よね?」

 

「俺は元人類種だ。」

 

「??なにそれ?」

 

「数ある種族の中で、1番の弱者で、1番賢しい種族だ。」

 

少女の質問に、真面目に答える傑だが、少女からしたらずれた答えが返ってきて、少し怪しむ。

 

「そういえば、まだ君の名前を聞いて無かったな。俺は深鬼 傑だ。きみは?」

 

「・・・私は、真夜(まや)四葉(よつば) 真夜(まや)よ。」

 

ここでようやく、お互いに自己紹介をした。




書いてる途中、これ2話に分けられるんじゃ、とか。自己紹介何時にしたらいいかな?とか。あれこれやってたら8000字超えてました。

今度はもっと少なくするように頑張ります。

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