アリア(♀)
【挿絵表示】
Lv:11
性格:いのちしらず
職業:剣士
特性:攻撃力10%UP
武器:はがねのつるぎ
防具:はがねのよろい
装飾:天竜のペンダント
HP:92
MP:39
攻撃力:63(+6)
守備力:40
ちから:30
すばやさ:19
みのまもり:17
かしこさ:15
うんのよさ:10
シオン(♂)
【挿絵表示】
Lv:12
性格:ぬけめがない
職業:アーチャー
特性:素早さ20%UP
武器:ショートボウ
防具:みかわしの服
装飾:なし
HP:62
MP:51
攻撃力:43
守備力:38
ちから:20
すばやさ:34(+6)
みのまもり:12
かしこさ:21
うんのよさ:14
ルイ(♀)
【挿絵表示】
Lv:5
性格:いくじなし
職業:賢者
特性:消費MP3/4減少
武器:チェーンクロス
防具:悟りの衣
装飾:なし
HP:25
MP:34
攻撃力:31
守備力:39
ちから:9
すばやさ:18
みのまもり:8
かしこさ:32
うんのよさ:21
王家の洞窟から戻った三人は、再び謁見の間に来ていた。
国王にとっては想定していたよりも早い帰りだったらしいのか、彼女らがこの場に来るとは思ってもみなかった顔だった。
しかし帰りが早いという事は、やはり非力な彼女の実力では無理だったのだろうと早期断念による帰還だと国王は察し、とても残念そうに顔を下げてしまった。
ルイ「……お父様。なんだか勘違いしているようですけれど、私はちゃんと行って参りましたのよ? ――ほら。『コレ』が見えませんの?」
国王「あい分かった。どうせその辺の石ころ……こ、コレはッ!?」
ルイが両手に持ち差し出したのは勿論ゴーレムの欠片。
食い入るように彼女の両手毎がっしり掴んだ国王はわなわなと震え、目が裂けるのではないかと周りが思う程に見開く。
国王「という事は……ほ、本当に『洗礼の儀』を済ませて来たのだな……!?」
アリア「本当です王様。ルイ王女は確かに他者に決して甘える事無く自分の力を発揮して、この欠片を手に入れたと私達が証明します!」
隣にいたシオンも力強く頷く。その瞳には嘘偽りなどなかった。
その事実に、国王も我慢の限界だったようだ。仮にも一般人だという事もはばからずルイに抱き着き泣き出してしまう。
ルイ「お父様、恥ずかしいですわよ……。そんな事よりも私は……」
国王「よいのだあああ! 今日という日に泣かずして、いつ泣けばよいと申すのだああああッ!」
昨日も同じような台詞を言ったばかりなのに、いつまでも泣き止まぬ国王にこれはどうしたものかと、この場にいた全員が思い始めた頃だった。不意に扉が開かれたのは。
ルイ「――お、『お母様』!」
扉から現れたのは煌びやかな装飾が施されたドレスを優雅に揺らし、王の妃の証でもある黄金の冠を頭につけたルイの母だった。
慈しみをもった柔らかな瑠璃色の瞳と胸元までやんわりとカールのかかった艶やかな紫の髪は、それだけでも高貴な印象を持ち合わせる。
国王「おおステラかっ! 喜べ、今日は宴じゃ! 遂に我が娘が!」
ステラ「そんな事はわざわざなさらずともよいでしょう? ……それともルイは皆で集まって賑やかになる事をお望みかしら?」
ルイ「い、いえ。結構ですわ……」
貴族という言葉はこの人の為に存在するのではないかと、アリアもシオンもステラ王妃が近づくだけで自然と身が引き締まり、思わず畏まってしまう。
ステラ「もっと楽にしてくださって結構ですのよ。貴方がたはルイの……いいえ。私達の恩人でもあるのですから」
アリア「そんな! わ、私達にはもったいないお言葉で……!」
慌てめいたアリアの言葉にも、ステラは首をゆらめくように横に振る。
そして母として長年秘めていたであろう想いを、堰を切って告白する。
ステラ「私も王も、ルイの将来につきましてずっと悩んでおりました。毎日娘の将来をと思うばかりにいつしか心を閉ざし、今日にわたってルイは戦いを忌み嫌ってしまった。このままでは帝国の将来が危ぶまれるとずっと考え、グランダリオンの先ばかりを昼夜問わずに案じました。……しかし今思えば、それこそが私が王妃である前に、彼が王である前に、『親』として成すべきことを間違えていたのでしょう。我が夫キーツは娘を思うばかりにいつしか過保護となり、私自身は娘の意志の尊重という言葉を盾に碌に顔合わせもせず、ずっと距離を空けていました。そんな娘の本音と長い間触れていなかった折に貴方達が現れ、ルイの本心と向き合ってあげた。本当に……ただ感謝するばかりです」
長い言葉で母親としての愛を語ったステラ。最後は二人に向かって深く頭を下げる。
アリア「……どうか頭を上げてください。私はただ、一人の人間としてルイ王女と向き合っただけです。今回の結果は王女が奮起してこそ掴み取れたものですから」
国王「……いや、それこそお主らが真正面からルイの心と向き合ってくれた故の結果であろう。本当に今回ばかりは恐れ入ったよ。つい昨日まで洗礼の儀とは無縁に近かったルイがこんなに大きく成長して帰って来るとはな……。だがこれで、ようやく帝国の名に恥じず堂々と振る舞う事ができる。いや、下手すれば我が血を引くルイの事だ。軍団の訓練課程なぞ軽々と乗り越え、近い内に真の賢者として活躍するのも夢ではないな!」
なんだかんだ言っても将来の末を考えてしまうのは最早親ならではの性なのか、気付けば先の事先の事とまた考えているのであった。
しかし愉快な国王を横目にしながら、何やらバツの悪そうな顔をするルイ。
ゴーレムの欠片を見せた辺りからずっと物言いたげではあったのだが、口を開くタイミングを見出せずにいたのだろう。
やがて場の和やかな雰囲気を断ち切る思いで口火を切ったルイは、恐る恐るではあるが自分の考えを少しずつ吐露し始める。
ルイ「……実はアリアと一緒に向かった頃からずっと考えておりましたの。洗礼の儀を終えた後、私はどうしたらよいのかと」
国王「……どういう事だ? どうしたらも何も、晴れて一人前の王女となれたのであろう? ならば喜んで今こそ賢者として働けるではないか。今のお前にならば誰も反対する者などおるまい?」
ルイ「そうではありませんのっ! 私は確かに生まれた時から裕福で、暮らしに不自由など何一つありませんでした。……だからこそ、今回アリア達と一緒に少しではありますけども、冒険の何たるかというのを初めて知る事ができました。……だから、その」
ルイは一番伝えなくてはならない事がどうしても言えない。
父親の真意が読めない表情を見れば見るだけ、尚更いたたまれない気持ちとなり手をこまねくだけで空回りしてしまう。
だがそれも、母ともなれば娘の考えてる事などステラには全てお見通しだった。
ステラ「――『旅に出たい』のでしょう? アリア達と一緒に」
国王「そうか旅か……。……な、何! それはまことなのかッ!?」
ルイ「……その通りです。自分の手で外の世界に触れて、そして戦って、ようやく私が如何に未熟な賢者……いえ、人間である事がよく分かりましたの。――だから、お願いです。アリア、シオン。この私もどうか旅に加えてくださいませ。今まで城に籠ってばかりで不甲斐無かった過去を、乗り越えたいのです……!」
寝耳に水だったのは国王だけではない。ゴーレムと死闘を繰り広げたシオンも同様だった。
シオン「どうするんだいアリア……。この旅はアリアの感覚だけが頼りの、はっきり言ってアテが無いも同然だ。そんな不明瞭な旅に王女を同行させていいのかい?」
お互いの立場から不安な視線を送られたアリアは板挟み。どちらの意見もないがしろにはできない。そんな彼女が下した決断とは――。
アリア「ルイがそうしたいって言うんなら、もちろんいいに決まってるよ。……ううん、むしろ私からお願いしたいな」
そう言って柔らかに差し出した手は、ルイと初めて会った時と変わりなかった。
そんな彼女に更に助け舟が渡る。
ステラ「キーツ……ルイがここにいてもいまいと、いつ危険な目に晒されるかは誰にも分からないのです。むしろ、ここが名だたる場所だからこそ、明日にも魔界から本格的に侵攻されてもそれこそ不思議ではありません。そんな時に貴方は今のルイを必ず守れますか? この娘の身だけを案じてしまって、帝国を支え切れますか? ……そんな事が無理なのは分かっていましょう? ならばアリアさん達と少しでも苦楽を共にして、強く逞しくなって帰って来るのを待っていればいいのでしょうか。……だって、私達が直接何をしなくとも、こうして『立派』になってくれたもの……」
母親としての真なる気持ちを聞かせられたルイは、またも瞳が熱くなる想いに駆られた。
最初は己の悔しさに。
二度目はアリアの友を想う心に。
そして今は母親としての愛情をその身に受けて。
ステラ「それにこう見えても、私もキーツも若い頃に四大大陸を踏み歩いたのですよ? だったら、ルイにもきっと。いえ必ずできる筈です。それにルイはもう一人ではないのですから……」
国王「す、ステラよ、何も今その話をせんでも……!」
流石は王を世界で一番知り尽くした人であった。
自分は世界を旅したのに、自分の娘には可愛さ故に籠の中の鳥にさせるつもりなのかと、容赦なく突くステラだった。
国王「あい分かった! 皆がそれを望むなら、ワシはもう何も言わぬ。黙って娘を見送り、強くなる日を待ち侘びておこうではないか! ――冒険者アリアよ。ルイの事、どうかよろしく頼んだぞ!」
ルイ「お父様……本当にありがとう……!」
アリア「……勿論です! ルイは私の友達なんですからっ!」
シオン「それを言うなら『私達』じゃないかな? 僕も陰ながらルイ王女をサポートしていきますよ」
アリア「あれ、いつの間にシオンも『友達』になっちゃったんだ? ふふっ。素直じゃないんだからー」
シオン「う、うるさいなあーもう!」
三人の少年と少女が無邪気にはしゃぐ姿を遠目に見ていたキーツとステラ。
長らく娘の笑顔も泣き顔も見ていなかった親としては、冥利に尽きる瞬間だった。
これでしばらく娘を見れなくなると思うと寂しくもあるだろうが、どの子も必ずいつか親の元を離れるのだ。それは王女の肩書きを持つルイであろうとも例外ではない。
ステラ「皆さん、今日は色々な事があって疲れたでしょう。旅立ちは明日にして、せめて今日だけでもこのグランダリオンで羽根を休めて、是非我が城にお泊まりになってください。重ねて申し上げますが、あなた方は私達の心からの恩人です」
謁見の間の窓から漏れる陽光は、橙色が混じりつつあった。
ステラの言う通りにアリア達はここは甘える事にした。
そして自由時間となった三人の中でいち早くアリアの手を取り、外に連れ出そうと走り出したのはルイだった。
アリア「ちょちょっと、そんなに引っ張らなくてもー!」
ルイ「折角なのですから今日は楽しまなくてはいけませんもの! この街にあるカジノに私ずっと行ってみたかったんですのよ!」
シオン「二人ともはしゃぎ過ぎないでよー!」
吸い込まれるように謁見の間から消え去ってしまった三人。
残ったのは、この国を担わなくてはならない大人達だけ。騒がしい背中をずっと見つめながら扉が閉まるのを待っていた。
国王「……行ってしまったか」
ステラ「……そうですね。少々名残惜しくはありますが」
旅をしろと勧めたのはお前だろうと目が言っていたが、あえて口には出さない国王だった。子を思う親として、寂しいのはどちらも同じという事だろう。
国王「確かに先日のダーマの一件もある。ここも同じ目に遭うのは確かに時間の問題なのかも知れぬな」
ステラ「それでも私達はこの国を守らなくてはなりません。民の為にも、そしてルイの帰る場所を無くさない為にも……」
ルイも新たな決意を秘めたのと同様に、この二人にも守るべきものがなんなのか、ルイの旅立ちで改めて知る事ができた。
国王「しかしダーマか……ミラルドは元気にしているだろうか。あの一件で怪我を負ったとの報せも届いてはいたが……」
ステラ「あそこには頼れるエマリー学園長もいるのです。余程ではない限り心配には及ばないでしょう」
国王「そうか。旧知の仲であるお前が言うのだから、間違いないのだろう。四人で旅をしていた頃が懐かしいな……」
今をひた走る三人を見て、過去の自分が映し出されたのだろうか。
二人の目はしばしの間、どこか遠くを見つめ続けていた。
ステラ「ルイ……。どうか、いつまでも強き心を持ち続けるのですよ……」