今回の真帆の話の中で登場する長谷川昴は、各キャラそれぞれがイメージした長谷川昴という形で登場しているため、本来のキャラと比べて著しいキャラ崩壊が起きている可能性があります。
「にひひーそんじゃー次はあたしの番だー! よっしゃー! すばるんをノーサツしちゃうシュミレーションバッチリだぜー!」
「おー待ってましたーぱちぱちぱちー」
「本当にどこからそんな自信が出てくるんだか。あと細かいようだけどシミュレーションね」
ひなたは待ってましたと言わんばかりの笑顔と拍手で歓迎し、紗季は半ば諦め気味に真帆の言い間違いを訂正している。
真帆の高らかな宣言と今までの前科にどんな話が飛び出してくるか不安でならない。
だけど、どこまでも自分の自信を信じ切れる積極的な姿勢に、みんなの中でも特に私と愛莉は少なからず憧れを抱いているのも事実だ。
「あーあー。せっかくいい手を思いついたのに、すばるんにはちょ~っと刺激が強すぎんのが残念だなぁ~」
「とりあえず、真帆。終わったら、ちゃんと後で長谷川さんに謝りなさいね」
「あはは……あんまり昴さんを変な人にしないでね?」
「真帆ちゃん、お手柔らかにお願いね」
真帆の自信に対して無駄とわかりつつも自重の願いを込めた釘をさす紗季。私と愛莉もこれから聞かされる話に不安も自然と大きくなってしまっていた。
「だー!! なんでみんなして、あたしが話す前からそんなこと言うんだよっ」
「だっていつも長谷川さんに失礼な妄想するからでしょうがっ」
「もーそんなことないってばっ! じゃー黙って聞いてろよーこれがあたしのそーだいなシミュレーションだー!!」
――どこまで自信満々な様子で、さりげなく最初の言い間違いを言い直しつつ、真帆が自分の作り出した世界を語り始めた。
*
こちらプレアデス・ワンこれよりミッションを開始する。
すっかり通い慣れ内部構造を隅々まで把握しきっている我が愛しのまほまほ邸(新館)。
意味もなく廊下をぶらついているように見えるかもしれないが、まほまほのスケジュールは完璧に把握済みさ。
俺の脳内にしっかりと焼きつけてある、この『今日のまほまほのスケジュール』に従い、今現在まほまほがいるであろう場所を目指している最中なのだ。
廊下を歩き、ついに念願のまほまほがいるであろう部屋の前で止まる。
――大浴場。まずはドアを開けると広がる脱衣場。そこに目的のまほまほの姿を見つけることはできなかったが、確実にいると確信した。
愛しのまほまほが直前まで着ていたと思われる衣服一式が脱衣カゴの一つに丁寧に折りたたまれているの確認。
いや、俺は紳士なのだから、決してカゴの中を物色する気なんてない。あくまでも、まほまほが浴室にいるという確信を得たかっただけなのだ。
そして、脱衣場から浴室へ続くドアをそっと開いて中を覗き見るが、やはりまほまほの姿は見当たらない――だが、これも予想通りだ。何も慌てることはない。
万が一、まほまほがその神聖な御神体を清めている最中の姿を覗いてしまう。というラッキー……じゃなくて、不幸な事故が起きてしまえば一大事だが、残念ながr……幸いなことにそのような事態にはこれまで一度も遭遇できていない。
そろそろ、ちょっとくらいニアミスが起きてしまってもいいのではないだろうか?……うん、故意ではなくあくまでも偶然に。
浴室の通路から先に進みミストサウナ室へのドアノブをわずかに回す――と同時に、中から俺がただひたすらに求めていた人物の声が聞こえてきた。
「あっれ~すばるんまた来ちゃったの~? ま、いいや。そんなコソコソしてないで早く入っておいでよ~」
「は! はい! 失礼します!! ま、まほまほ~~~ぉ!!」
ほんの少しドアノブが動いただけで、まほまほが俺なんかの存在に気づいてくれて、しかも入室の許可を出して頂いたっ!
なら、もう遠慮はいらない。ドアを一気に開くと――バスタオルを体に巻いた状態で、長椅子に腰下ろし笑顔で手招きしてくれている――まほまほへ全速力で駆け出した。
「ほい。そこでストップだよー。にひひーすばるん、どんどん足が速くなってきたみたいだね~いつかすばるんに命令出す前に捕まっちゃうかもしんないな~」
「あぁ! まほまほぉ!、あとほんの少しで手が届くのに……どうして俺の脚はもっと早く走れないんだ……こんなに! こんなにもすぐ近くにまほまほがいるのに、どうしてこんなに遠い存在になってしまったんだ!!」
まほまほの待て。という命令で緊急停止した俺とまほまほとの距離はわずか1~2m程度。だが、そこからどんなに手を伸ばしても俺の手はまほまほの身体に届くことがなかった――自分の不甲斐なさがどうしても許せない。悔しすぎる。
まほまほは、俺が本気で悔しがっている姿を満足気に頷き、ニヤニヤ笑いながら口を開く。
「で、どしたのすばるん? マッサージはもうしなくていい。って前から言ってるのに、どーしていっつも来ちゃうのかなぁ? も・し・か・し・てっあたしの身体が忘れられないのかなっ?」
「うぅ……わかってるくせにひどいっすよ~。俺は、まほまほの身体を知ってしまったあの日から、もうまほまほの身体以外をマッサージなんかできないっす!!」
「ま~別にすばるんのマッサージがなかったとしても、あたしならゼッタイにキューキョクボディになると思ってたけど。……ま、ほ~んの少しくらいは、すばるんのおかげの部分もあるかもしんないけどね~」
まほまほは嬉しそうに胸を張っている。今もこうしてミストサウナ室に入っているのはおそらく、より一層自分のプロポーションを完璧に引き立て、それを維持するためであろう。まったくどこまでも自分を磨くことに貪欲な方だ。
だからこそ、俺のマッサージが少しでも今のまほまほの身体を作ることに役立てたということが誇りにもなっているのである。
タオルに包まれながらも、隠し切れていない、愛莉に匹敵する程の大きさと形の良さを備えた双丘が――まるで自らの意志でタオルの束縛から逃れようとするかのように――ぷるんと揺れると、思わず俺の視線がそこにロックされてしまった。無礼とはわかりつつも、思わずおっぱいを応援したくなってしまう。頑張るんだ! もう少しで君は、君達は自由になれるんだぞっ。
――ふと、まほまほの視線がこちらの視線に気づいたように、面白そうに眺めていることに気づき、慌てて話題を絞り出す。
「まほまほのその豊満なお胸が今日もとても魅力的っす!」
「も~すばるんはしょーじきものだなぁ~」
視線は変えることはできても、思考はまほまほのおっぱいのことでいっぱいになっていた。それでもまほまほは怒らず、寛大な心でそれを許してくれている。
なら、もうこのまま本題に入っても、きっと怒られないよね?
「はぁはぁ……それで、宜しければどうか今日も俺にまほまほの……そ、その豊満なお胸をより一層魅力的に完璧なものにするためにどうか……どうかマッサージをやらせて欲しいっす!!」
「ん~気持ちはうれしーんだけどさー最近はよく肩が凝るようになってきちゃったし、これ以上大きくなっても少しジャマになりそうなんだよなぁ~」
ちらりと俺を見ると、腕を交互に回しながら反対の手で肩の辺りを抑えて、いかにも肩が凝ってますアピールをしている。
すぐにまほまほの後ろに回り込んで肩揉みを開始する。
透き通るような細く白い肩。そして、とても柔らかい。こんなにか細い肩で、まほまほはこの圧倒的重量物を支えているというのか。
肩越しにこっそり前を覗きこんでみると、タオルに包まれた二つの大きな球体が今も必死に自由を求めて揺れ動いていた。
何がとは言わないが、あと少しで見えそうなのに見えないもどかしさ。
ほんの少し前までは、マッサージをさせて頂くたびに思う存分見ることができたというのに、
それができなくなった今、あの時の自分がどれだけ恵まれたのかを痛感する。
失ってから気づく大切な物、瞬間、場所。
――いったい、どうすれば俺はあの時の最高の至福の時間を取り戻すことができる。
「そ、そんなぁ~……お、お願いします! ほんの少しだけ! さきっぽだけ……いえ、最初のさわりの部分だけでいいですからぁ~」
なりふり構わず、ただ必死に懇願した――もしかしたら、という一縷の望みにかけて。
「も~すばるんはしょうがないにゃあ~まぁ今まですばるんにいっぱいキョーリョクしてもらった恩もあるし少しだけだかんね~」
まほまほは困り顔から一転、ウィンクをしながら笑顔であっさりOKしてくれた。
――思った通りだ。まほまほは本当は最初から俺にマッサージをさせてくれるつもりだったんだ。
まほまほの自室がある本館側はたとえ内部構造を把握できていたとしても、俺の立場ではそこまで自由には動けない。
だからこそ、俺がそこそこ自由に活動できる場所である新館側の施設内で、まほまほが利用しているタイミングを狙うしかない。
そして、聡いまほまほもそのことに気づいてくれてるからこそ、あえて本館ではなく新館の浴室を利用してくれていたのだ。
「まほまほ~ありがとうございます! 本当に! 本当に光栄です!!」
「きゃっ……もぅ~そこまではゆるしてないぞっ」
まほまほから向けられていた俺への優しさに気づくと、その感激のあまり勢いそのままに抱き付くとあろうことか、その豊満なおっぱいに顔を埋めてしまっていた。
「す…すみません。でも…でも俺本当に嬉しくて……ぅぅ……まほまほぉ」
「こまった甘えん坊さんだな、すばるんは。ホントに今日だけ特別だかんねっ」
とんでもない無礼を働いてしまった俺を、まほまほが優しく抱きしめ、そっと髪を撫でてくれる。
表情は見えないけど、きっとすごく慈愛に満ち足りた優しい表情をしてくれているんだろう。
俺が今まで抱いていた多くの邪念――おっぱいとかおっぱいとかおっぱいとか――がまほまほの手によって浄化されていく。
「すばるんには期待してるんだから、これからもガンバってよねっ」
「はい! 俺の全てはまほまほのためにあります!!」
こうして俺はまほまほへの一層の忠誠を誓い、身も心も全てを捧げる忠実な僕となる決意を新たにしたのだった。
イエスマイまほまほ。全てはあなたの思いのままに。
*
どう? あたしの考えた完璧なけいか……「長谷川さんに今すぐ謝りなさい!!」「あんまり変な話にしないでって言ったのに真帆ひどいよぉ」「長谷川さんかわいそうだよぉ」「ぶーまほのお話。あんまりおにーちゃんっぽくないー」
真帆が言い終わるよりも早く、紗季が口火を切り、すぐに私や愛莉、ひなたまでも続いて一斉非難が始まる。
真帆だって本当は昴さんがそんな人じゃないってわかってるのに、いつも茶化してばかりなんだから。
「えーなんでみんなそんな怒ってんだよー面白くなかった?」
「まったく、いつも変な脚色ばかりしてふざけすぎなのよ。だいたい一番のぺったんこ胸なくせして何が豊満なおっぱいよ」
言った紗季本人だけでなく私ごと巻き込む覚悟で地雷を踏み抜く。
「私は隠れきょにゅーだって言ってんだろ!! 絶対に大きくなるんだから!」
「いい加減私みたいに認めて諦めなさいって、いつも言ってるでしょ。その方が気楽よ」
「さ、紗季……私も諦めたくないよぉ……」
「きっとみんなだって大きくなるから大丈夫だよ」
「おーあいりーひとりたかみのけんぶつー?」
真帆と紗季の言い合いの中、必死に仲裁とフォローを入れる愛莉とにこにこ笑顔でさりげなくみんなの気持ちを代弁するひなた。
紗季に怒られそうだけど、私も真帆の隠れ巨乳に賛同したい。
「愛莉。気持ちは嬉しいけど根拠のないフォローはかえって悲しくなるものなのよ」
紗季の淡々とした突っ込みと同時に私たちの矛先が一人余裕の態度の――本人はそんなつもりはないだろうけど――愛莉に向かっている。それに愛莉自身が気づいた途端、胸を庇う様に怯え出してしまった。
でも、すでに今日だけで何度も胸を揉んでいるから、これ以上はかわいそうだと、みんなも手を出さないようだ。
「あーあーやっぱ少し恥ずかしいけどマジですばるんに揉んでもらおうかなー」
「おーひなもおにーちゃんにお願いしてみるー」
「み、みんながお願いするなら……私も……」
「だからそんなこと絶対ダメだってばー!!」
真帆がなんの気なしにそんなこと言いだすと、すぐにひなたも紗季もつられて乗りそうになってしまう。
昴さんだって、みんなからそんなお願いされちゃったら、ご迷惑ですよね……とても真面目な方なんだし。よ、喜んで揉みに行くようなことしないですよね?
「ところで真帆。話は相変わらずメチャクチャでオチもひどかったけど、なんで急に長谷川さんを甘えん坊にしちゃったの?」
「んー別にー? なんかベタベタおっぱい触りたがるすばるんよりもさ、逆にこっちがこーギュッてしてみたいなーって思っただけ。もしかしたら、そっちのがコーカテキ? かもしんないし」
「なんとなくわかるような…でも、私はどちらかというと、昴さんにギュってされたいかなぁ……はぅぅ」
「真帆ちゃんの気持ち少しわかるかも。私もたまにひなちゃんをギュってしたいって思うことがあるし、あ、ごめんね。もしかして迷惑だった? ひなちゃん」
「お? ひな、あいりにギュってされるのもするのも、どっちも好きーあいりのおっぱい温かくて、とっても気持ちいいよ」
珍しくしたい派とされたい派に別れた。真帆と愛莉はしたい派で、私と紗季はどちらかというとされたい派で、どっちかに決められず、結局どっちも好きーと答えたひなた。
抱きしめられたい派とは言ったけど、抱きしめる側の方も少し気になる。
失礼は重々承知だけど、一度感じてしまった好奇心は抑えられない。
両手で頬を抑えながら俯いて、みんなにバレないようにちょっとだけ想像してみた。
普段よりほんの少しだけ子供っぽくて、私を真っ直ぐ見れずに目線をキョロキョロさせながら、恥ずかしそうに、抱きしめて欲しいとおねだりする昴さん。
そんな昴さんからお願いなんかされちゃったら、私はきっと………
少し甘えん坊な昴さん………………………………ちょっといいかもっ
昴さんのお顔を胸に抱いてギュッてしてあげたいな。そしたら、今度は昴さんもお返しに私のことを……きゃっ
――もっかんと紗季はされたい派かー。まぁすばるんも大きくないと嬉しくないかもなー
他人事のように放たれた真帆の一言に妄想の中で抱きしめていた昴さんが、ほんの少しだけ残念そうな顔をしてしまったような気がするのが、少し悔しい。
ふと顔を見上げると同じく渋い顔をし、自分の胸元をペタペタと触っていた紗季と目が合った。
「紗季……」
「……そうね。トモ達に偉そうに言っておきながら、私ももっと自分に正直になるべきだったわね」
どちらからというわけでなく差し出しあった手を互いに固く握り合い、共に先の未来の可能性を信じて、カミサマへ強く願った。
「真帆も私たちの仲間だからねっ」
「いつまでも自分は無関係って態度してんなら、私とトモだけで先に行くからな」
私と紗季の言葉に真帆も慌てて私たちが強く握り合い深め合っている絆の中に加わった。
――真帆、紗季。絶対にみんなで大きくなろうね。脱スットン共和国。愛莉とひなたには悪いけど、こればっかりは私達3人だけの固い絆だ。
愛莉と――その腕の中ですっぽりとおさまっている――ひなたが、微笑ましくそれでいてちょっとだけ羨ましそうに私達3人を見ていた。