ロウきゅーぶ!短編集   作:gajun

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前話の『お風呂会議プロローグ』で行われた『長谷川昴が各キャラに豊胸マッサージを行うとしたら』というテーマで行われた、みんなの妄想発表会の内容です。

今回の愛莉の話の中で登場する長谷川昴は、各キャラそれぞれがイメージした長谷川昴という形で登場しているため、本来のキャラと比べて著しいキャラ崩壊が起きている可能性があります。


みんなの長谷川昴コーチ。俺を信じた愛莉を満足させてみせる。

「よっしゃー次はだれがハッピョーするー?」

 元気な真帆の声とは正反対にビクビクしながらであるが、高らかに一つの手が上がった。

 

「じゃあ、私が……恥ずかしいけど」

「ふぇぇ!? 愛莉……いいの?」

「お、アイリーンが二番目か、ずいぶんとセッキョクテキになったなーあたしはうれしいぞっ」

「そうね。私もてっきり最後はトモか愛莉のどっちかになるかな?って思ってたけど、意外と早く愛莉が決心したみたいね」

「おーつぎはあいりのおはなしーひな楽しみー」

 みんなからの注目を浴びて恥ずかしそうにしている。

 ちょっとだけ体を縮こませてしまっていたが、それも一瞬。

 目を瞑りながら、一度だけ大きく頷くと、ゆっくりと顔を上げ目を開き、強い意志が感じられる瞳で私たちのことをしっかりと見つめ返してくれた。

 

「う、うん。みんなと話すのは大好きだし、みんなといっぱい秘密を共有すれば、もっと仲良くなれると思うから――それに、早い方が多分、みんなの話を聞いてもっと恥ずかしい話が思いついちゃっても話さなくてもいいかなって……」

 話し終わる頃には、また恥ずかしさが戻ってきてしまったのか、顔が赤いのは変わらずだが徐々に声が小さくなっていく。

 愛莉も自分と同じくみんなともっと仲良くなりたい。と思っていたことを知ることができたのが本当にうれしい。

 ちょっとずるいけど、愛莉が勇気を出して見せてくれた方法を私も使わせてもらおうかな?

 

――愛莉の次は私が話すね。そう告げようと思った瞬間、ほんの一瞬だけどメガネの奥の瞳が細くきらりと怪しい輝きを放っていた紗季と目があったような気がする。多分気のせいだよね?

 

「なんだーアイリーンすこしズルいぞーっ思ったことは、もっとバンバン口にだしちゃえよー」

「まあ、それくらいはいいじゃない。あ、でもトモは「愛莉の次は私が話すね」って言っても委員長権限で却下するから」

「ふぇぇ!? ど、どうして!?」

 真帆が少し不満そうな様子だけど、引っ込み思案の愛莉を気遣いつつ、同じく引っ込み思案なはずの私に対してはしっかりと釘を刺されてしまった。

 やっぱり目が合ったのは気のせいじゃなかった。しかも紗季に自分の考えが見抜かれていた。

 

「どうしてって絶対愛莉のまねして、すぐに終わらせて楽になろう。って思ったでしょ。トモの話が一番楽しみなんだから、私たちの話が終わるまでしっかり長谷川さんにマッサージしてもらう様子を想像してなさい」

「そうだぞーもっかん。カンネンして身も心もすべてさらけだしちゃえー」

「私も智花ちゃんのお話は気になるかな。智花ちゃんが一番長谷川さんを知っているんだし。きっと素敵な話をしてくれるんだと期待しているよ」

「おーひなもみんなのお話きくの楽しみー」

 気づくと、何故か逃げ道を完全に塞がれるどころか、さらにハードルまで上げられてしまっていた。

 私が昴さんにおっぱ……胸を揉まれる話にみんなはいったい何を期待してしまっているんだろう。

 頭の中では相変わらず笑顔の昴さんが私の胸を揉んでいる様子が浮かび上がってきては、恥ずかしくなる。

 

「おーいトモー構想を練り込むのはいいけど、ちゃんとみんなの話も聞かないとダメだぞー」

「練ってませんからっ!!」

 ダメだ。気持ちを切り替えないと。今は私と同じくらい恥ずかしがり屋の愛莉が勇気を出してくれてるんだから、私もしっかり見届けないとっ。

 

「あんまり真剣に聞かれると恥ずかしいから、そんなに期待しないでね?」

 そして、顔を赤くした愛莉が一言一言確かめるように彼女が想い描いた物語を語り始める。

 

                      *

 

「愛莉! ラスト一本。最後までがんばれ!!」

「はい!! お願い! 入って!!」

 俺が放ったボールがゴールボードに当たり強く跳ね返る。

 それを持ち前の長身とジャンプ力でしっかりとキャッチ、そして力強く着地すると同時にボールを抑え込む。

 一拍置いて再び跳躍し、シュートを放つ――放たれたボールは綺麗な放物線を描きゴールを潜り抜ける。

 

「よし。今日はここまでにしようか。おつかれさま、愛莉」

「はい。ありがとうございました。長谷川さん、無理を言ってお願いしてしまいすみませんでした」

 今この場にいるのは俺と愛莉の二人きりだ。

 なんでも俺に頼みたいことがあるらしく、せっかくだから少しバスケの練習も見て欲しいということで、こうして二人きりの秘密特訓を行なっていた。

 

「それじゃ、さっそくになっちゃうけど、本題の方を聞いてもいいかな? それとも少し休憩してからにする?」

 引っ込み思案だった愛莉が俺を頼ってまでしてくれた相談事だ、すぐにでも解決してあげたいという気持ちもあるが、まずは愛莉自身がしっかり話しやすい状況になった方がいいだろう。

 

「いえ。長谷川さんがお疲れでなければ、今お願いしたいのですが……」

「了解。愛莉のためにできることなら、なんだってするつもりだから、遠慮なくどうぞ」

 自分でも安請け合いしていると思われてしまいそうな言い方だとはわかっているが、きっとこの方が愛莉も気楽に話しやすいだろう。

 

「で、では……は、長谷川さんには大変申し訳なくて頼みづらいのですが……長谷川さんにしか頼めないんですっ」

 体操服の裾をぎゅっと握って、絞り出す様に必死に言葉を紡いでいる。

 もしかしたら俺には荷が重すぎる内容なのかもしれない。一瞬そんな考えがよぎるが、頭を振りすぐに気持ちを切り替える。

 たとえ無理難題であろうと、それでも愛莉は俺を信じて頼りにしてきてくれたんだ。ならば俺は愛莉のコーチとして悩みを正面から受け止め、自分ができる最善を見つけ出すだけだ。

 

「その…………」

「うん。愛莉のペースでゆっくりでいいよ。俺はちゃんと愛莉の言葉聞いてるし、いくらでも待ってるからね」

 じっくり愛莉の言葉の続きを待つ。決して焦らせてはいけない。愛莉だって悩んで末に俺に相談すると決意してきてくれたんだ。

 やがて愛莉も決意が固まったのだろう。俯いていた顔を上げて俺の目をしっかりと見つめる。

 そして、はっきりとした口調で俺に想いを告げてくれた。

 

「お願いします。私の胸を揉んでください!!」

「ああ! 任せてお……………………………え?」

 

――今なんて言いましたか?

 

「……えっと、ごめん愛莉。ちょっと聞き間違いじゃないかと思うんだけど、もう一回聞いてもいいかな?」

「え!?」

 顔を真っ赤にしているのは変わっていないが、さらに驚いた顔で止まってしまっている――が、

 

「お、お願いします! 私の胸を揉んでください!!」

 俺の言葉攻めに従い、本当にもう一回はっきりと同じことを言ってくれた。

 どうやら俺の聞き間違えではなかったようだ――というか、愛莉にこんなこと二回も言わせるなんて羞恥プレイ以外の何物でもないだろ。本当にごめん!!

 

――と、愛莉に心の中で謝罪したところで、さてどうしたものか……

 

「一応理由を聞かせてもらってもいいかな? 愛莉にとっても間違いなく一大事なことになっちゃうわけだし」

「そ、その……豊胸マッサージって……知ってますか?」

 およそ愛莉の口からは出てくることがないと思った単語がでてきた。

 

「知らないわけではないけど……それって、その……大きくするためのものなんじゃ……」

 どちらかというと愛莉は反対に小さくしたいと思いそうなんだが。と思わず視線が無意識に愛莉の胸元へと向かってしまった。

 愛莉も俺の視線が自分のある一点に向けられたことに気づき、ビクっと震え両手で胸を庇うように抑えてしまったので、慌ててそこから視線を外す。

 顔も茹だこのように真っ赤になっているが、必死に羞恥心に耐え、健気に俺との会話を続けてくれる。

 

「は、はい。そうなんですが、本の記事にはマッサージを決められている時間以上してしまうと、その分胸の脂肪を余計に消費してしまって小さくなってしまうことがある。って注意があったんです」

――誰がこんな記事書いた奴は! この記事のせいで引っ込み思案で健気な女の子が無意味に男の前で感じなくてもいい羞恥心に晒されてしまってるんだぞ!!

 

 本の記事に内心で怒りを湧き上がらせつつも、愛莉がどこまでも純粋に大きさに対してのコンプレックスをどうにかしたいと真剣に悩んでいることも知ってしまっている。

 身長の方はバスケを通じることで克服できたと思っていたが、思わぬところに意外な伏兵がいたものだ……いや全然潜伏してないどころか、常にその存在感を強く放ちまくっているが。

 まぁそこら辺の事情はいったん置いておくとしよう。いつまでも意識し続けるのも愛莉に失礼だし。

 

「でもどうして俺にそんなこと頼もうって思ったんだい? 自分でやったり真帆とかひなたちゃん達だったら、喜んで協力してくれそうだけど」

 どうしてもここがわからない。なんでわざわざ男である俺に頼もうと思ったのか。間違っても絶対に男なんかに触らせちゃダメってことくらい愛莉だって分かってるだろうに。

 少なくとも良からぬ男が愛莉の胸に触れようなんて考えでもしたら、愛莉を守るために不埒な輩など、ぶん殴ってでも止めてやる自信がある……万里が。

 

「……マッサージは男の人にしてもらわないとダメみたいでして……だから…その……長谷川さんにしかお願いできないんです!!」

 

――ホント誰だよこの記事書いた奴!! 今すぐ撤回して謝罪しろ!! 俺と愛莉をこんな窮地に立たせやがって、絶対に許さねぇぞ!!

 

「万里は? いつでも愛莉を大切に想っている、とても頼りになるお兄さんにお願いはしてみたの?」

 この状況の打開策を必死に探す。この際使えるものはなんだって使う。たとえ万里に迷惑がかかったとしても、溺愛してる妹が他の男に穢されるような事態に瀕していると知れば絶対になんとかしてくれるに違いない。

 

「不甲斐ない兄を許してくれ。俺には大切な愛莉にそんな真似は絶対にできない。と泣きながら土下座をして断られてしまいました」

 愛莉の足元で何度も額を打ちつけながら泣きながら断っている万里を想像するのは容易だった。

 多分、実際想像した通りの光景だったんだろうなぁ。という変な確信があった。

 

「でも、万里がダメだったんなら、俺も愛莉にそんなことをするわけには――」

――いかない。と言おうとして気づく。そうか、だから愛莉は俺にしか頼れない。って言っていたのか。

 

「お願いします! 私にはもう長谷川さんしかいないんです!! わがままですけど他の人にやられるのなんて絶対にイヤなんです!!」

 万里が心から大切に想っている君を穢すことはできない。そう言って突き放すことは簡単だ。

 でも、本気で悩み苦しんだ末に、縋り付くような思いで俺を求めてきてくれた愛莉を突き放して本当にいいのか?

 それが愛莉にしてやれる正しいことなのか?

 

「愛莉。覚悟は決めてきたと思うけど、覚悟だけじゃなくて、本当に後悔しない。って言い切れる?」

「――!! はい! もう私は迷いません! きっと長谷川さんにいっぱい辛い思いをさせてしまうことになると思います。それでも長谷川さんが前に私に言ってくれました。私の事を大切に想ってくれていると。そんな長谷川さんだから、頼らせてほしいと、わがままを言わせて欲しいと思ったんです!」

 愛莉のまっすぐな気持ちに俺も覚悟を決めた。たとえこの後、万里にボコボコに殴られようと構わない。俺は愛莉の気持ちを尊重し、あいつにできなかったことを代わりにやってやる。

 なにより、これ以上無意味に愛莉を辱めてしまうことなんかできない。

 

「それなら、愛莉はお願いなんてしなくていいよ。愛莉、俺を信じて君の胸を揉ませてくれ」

 愛莉の覚悟の全てを俺が代わりに背負ってあげることはできないけど、それならせめて少しでもいいから、俺にも愛莉と一緒に同じ覚悟を背負わせてほしい。

 

 そっと愛莉の両肩を抱きながら、約束事を告げる。

 

「嫌だと思ったり、怖いと思ったら暴れてもいいから、ちゃんと抵抗するんだよ。俺は愛莉を傷つけたいわけじゃないんだ。頼むから俺に愛莉を傷つけてしまうような行為をさせないで欲しい」

「はい! わかりました。よろしくお願いします!!」

 愛莉も背をピンとはり、気をつけの姿勢で俺を待つ。

 

 心の中で強くごめんと謝罪の言葉を告げながら愛莉の胸に手を伸ばした。

 最初はそっと体操服の上から触れるだけ。それだけでも心臓が破裂しそう気分なのは愛莉も同じだろう。

 ただ愛莉の胸に手を置いているだけなのに、その大きさと柔らかさが伝わってくるような気がする。

 今すぐにでも――というか、無意識に指を動かして胸を揉んでしまいたい衝動に駆られるが、理性を総動員して必死に本能を抑える。

 

「愛莉。大丈夫? 嫌ならできるだけ早く答えてくれないと、申し訳ないんだけど、俺の方がちょっとヤバいかもしれない」

「は、はい! すごく恥ずかしいけど大丈夫です! その…tね長谷川さんに触られるの……い、嫌な感じが全然しなくて……自分でもちょっとびっくりしてます」

 とりあえず最悪な事態を避けることができたことに安堵し、もう一つ確認。

 

「それで……そのすっごく情けないこと聞いちゃうんだけど、このまま揉ませてもらってもいいんだよね?」

「ご、ご迷惑でなければ……でも、できればあんまり強くはしないで頂けると助かります……」

 ほんの少しだけ指先に力を込め愛莉の胸に指を沈めては戻してを繰り返していく。

 それだけでなんとも幸せな感触が手に伝わってくる。

 揉んでいて気づいたが、体操服以外にも、もう一枚何か少し硬めの生地があるようだが、何なのかは知らない……うん、これっぽっちも、男の俺にはわからない。

 何よりその謎の物体越しからでも、愛莉の胸は心地よい手触りと柔らかさを俺に与えてくれた。

 本当はもっと激しく揉み抱きたい欲望がどんどんと膨れ上がってくるのを感じているが、俺を信じてくれた愛莉を裏切るようなことは絶対にできない。

 

「これくらいなら大丈夫かな? もしかしたら、ちょっと強くなっちゃうかもしれないけど、その時は正直に教えてね」

「は、はい。本当は……ちょ、直接……さ、触らないといけないんですが……私の場合はきっと服の上からでも大丈夫だと思います」

 愛莉の言葉に一安心。どうやらこれ以上、愛莉を辱めずに済むようだ。いや残念だなんか思ってないぞ。一切、これっぽっちも、少しも、幽かにも……

 

 側からみたら愛莉の胸を鷲掴みにして揉みまくって、愛莉を泣かせてるようにしか見えないんだろうか。

 そう考えるとひどくこの状況が危険な気がするが、だからと言って俺を信じてくれた愛莉を裏切ることはできない――たとえ偶然この場に現れた何者かに誤解されたって構うものか。

 俺はこのまま最後の一瞬までしっかりと愛莉の胸を揉み続けるんだ。

 愛莉が恥ずかしさを堪えてまで俺に託してくれた使命なら、俺もその使命を果たすことに全てをかける。

 

「愛莉。他に何かして欲しいこととかない? ……いや、もっと色んな場所を触りたいとかじゃなくてね」

「え、えっと……は、はい。も、もう少し他の場所も揉ん……マ、マッサージして頂けると……力加減は、もう少し強くして頂いても大丈夫ですので……ぅぅ」

 ダメだ。なんか普通に聞いてるはずなのに、愛莉を言葉責めして変に辱めてしまってる気がする。

 でも変なことをして正しいマッサージができないと、愛莉はただ俺に胸を揉み抱かれただけで終わるという、最悪な結果しか残らないわけで……

 顔を赤くしながら必死に俺のマッサージに耐えている愛莉に、細かく揉み方を尋ねながら実際に愛莉の胸で実践させてもらった。

 

――両手で左右の胸を下から支えゆっくり上下に揺らす。

 

「こんな感じかな?」

「は、はい。多分大丈夫かと。あんまり強くやったり、回数を多くし過ぎてしまうと、大きくなったり、形が悪くなってしまうそうなので、今くらいの強さでもう少しだけお願いします。」

 なんだかんだで、愛莉も触られ慣れてきた感じがする。

 俺の方は相変わらず、目のやり場に困る状況だが。

 愛莉の大きな胸が上下にプルプルと揺れているし、しかも揺らしているのは俺で、実際に下から抱えてみると意外と重量感があって……

 色んな思いが溢れだしてきて今にも土下座して逃げ出したい衝動に駆られるが、今更そんなことができるわけもない。

 愛莉も恥ずかしいはずなのに、真剣な表情で俺を見つめて、的確に俺に指示を出してくれる。

 ならば俺もこれ以上恥ずかしがってなんかいられない。と気持ちを切り替える。

 きっとこの試練を一緒に乗り越えることができたら、俺と愛莉はもっとお互いを信頼し合える関係になれるに違いない。

 

 より強く愛莉の胸を揉む決意を固めたところで、次の指示が下される。

 

「次は……え~と……た、たしか……両手で左右から挟んで、今度は左右に揺らしてください……っ」

 愛莉さん、言い終わった直後に自分の過激な発言に気づいて頬を染めるのは反則です。

 不意打ちに一瞬こちらもドキリとしてしまったが、互いに向き合い再び真剣な表情で愛莉の指示通りの揉み方をする。

 

 

 どれくらいの時間が経ったのだろうか?

 お互いに緊張しっぱなしで、内容をほとんど覚えていないけど、愛莉から出された最後の指示をクリアしたところで、ついにマッサージは終了した。

 永遠にも長く感じた時間は、終わってみるとあっという間で、今まで自分の中にあったのものが、するりと抜け落ちてしまったかのような、どこか寂しさに近い物が感じられた。

 もしかしたら、愛莉も同じ気持ちを抱いてくれていたのだろうか? 心なしか瞳がうるんでいるように見える。

 

「長谷川さん、すごく心苦しい想いをさせてしまっていたのに、最後まで付き合って頂いて、本当にありがとうございました。私のためにすごく真剣な顔で胸を揉んでくれてる長谷川さん、すごくかっこいいなって思っちゃっいました」

「そんなに畏まらなくてもいいよ。俺はただ愛莉の胸を揉んでただけなんだから」

 実際そうだし、真剣な顔で胸を揉んでる俺がかっこいいと言われても正直反応に困ったりもするのだが……

 

「これからも、たまにお願いしてもいいですか?」

「もちろんだよ。これからもよろしくね愛莉」

 

 この恥ずかしさすら糧にして愛莉はもっと成長してくれることだろう。

 願わくは彼女の胸が小さくならんことを。

 

                      *

 

「~~~以上、ですっ」

 愛莉が自分の話が終わったことを、やっとの思いで告げるとすぐに真っ赤な顔を俯かせて黙ってしまった。

 本当に全部言い切ってしまって、聞いてた私でさえ恥ずかしかったんだから、愛莉はもっと恥ずかしい思いに耐えながら、話してくれていたんだろう。

 

「なぁ、アイリーン……絶対にすばるんにお願いしちゃダメだぞ。多分バンリーンが怒ってすばるんがタイヘンなことになりそうな気がするからさ……」

「まぁそうなるわね――間違いなくね」

「あ、あはは……」

 真帆がものすごく真面目なトーンでしゃべってる。

 でもこればっかりは紗季も私も同意見だった。

 

 そんな中、いつもにこにこしてるひなたが珍しく不満そうに口を尖らせている。

 

「ぶーあいりーおっぱい揉んでる時はこわいかおしちゃダメー」

「べ、別に怖い顔してたわけじゃないよ」

「でも、おっぱいはキモチイイし楽しいから笑顔じゃなきゃダメー」

「きゃっ!? ひなたちゃん……ダメっ……お願いだからそんなに揉まないでー!」

 あいりが自分のおっぱい好きになるまでやめないーと、ひなたが愛莉の胸を揉み始めている。

 微笑ましさ半分、羨ましさ半分でその様子を眺めていると左右の肩に真帆と紗季にポンッと手を置かれた。

 

「もっかんー。そろそろセッキョクテキにすばるんにアプローチしないと、アイリーンにすばるんとられちゃうぞー?」

「まぁ今のところは愛莉もそこまでの勇気はないだろうから、まだまだ大丈夫だろうけど、勝負するなら早く決めた方がいいわよトモ。愛莉が動き出したら一気に劣勢に追いやられちゃうかもしれないんだからねっ」

「ふぇぇぇぇ!? わ、私は、まだ……昴さんにそんな大それたこと……はぅぅぅぅ」

 

 愛莉はきっと誰よりも勇気があると思う。

 私たちのバスケを守るために自分の身長ともしっかり向き合って、乗り越えてくれたんだし。

 少し引っ込み思案だけど、とても頼りになる優しい友達だってみんな知ってるんだから。

 私も愛莉を見習って、もうちょっとだけ勇気を持てるようになりたいな。


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