オーバーロード 〜幻想郷を愛する妖怪の賢者〜   作:村ショウ

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遅くなってすみません。リアルで資格試験の勉強していたら書けませんでした。


帝国編
第五話 闘技場①


 ー幻想郷ー

 

 転移して初の朝である。

 

 陽光聖典のニグン隊長の話では、この世界には冒険者という職業がある様なので、冒険者として情報を手に入れる事にした。

 

 あくまで情報収集で遊びに行く訳では無い。

 情報収集ならニグン隊長をそのまま法国に潜伏させればいいのではと藍に言われたが、冒険者と法国から手に入る情報は違うだろうと反論しておいた。

 何度も言うが暇だから遊びに行く理由を作りたい訳では無い。

 

 藍には反対されたが交渉の末、藍と橙も同行するということで許可を得た。

 

 本当は藍に事務や雑務(幻想郷の各勢力の監視と考察など)を行って欲しかったが、それに関しては原作には登場しない(NPC)を使えばいいだけだ。NPCの尻尾や耳などは収納することができるように設定していた為、藍達の同行自体は問題ないが魔法職3名だけだとパーティバランスが悪い気がする。

 

 前衛職の誰か連れていくべきだろう。誰を連れていくべきか迷うが、八雲 紫に好意的または協力的な者は限られてくる。

 以上の条件を加味した上で、強さ的に伊吹 萃香が一番に浮かんだ。だが、もう1人位は前衛職が欲しいものだ。

 

 ここで思い浮かんだのが、白玉楼の魂魄 妖夢だ。まず、自機キャラは総じて高レベルにしている。自機キャラなのでレベルも高く、妖夢は自機キャラにしては珍しく前衛職だ。

 妖夢はLv 86、一般的なユグドラシルプレイヤーであれば経験値消費などの代償なしで召喚できるNPCの最大レベルはLv 80代前半までであるが、それよりも高レベルの妖夢はユグドラシルでは、経験値消費無しで召喚できるNPCを相手する用にステータスも設定している。

 ニグンから聞いた漆黒聖典の隊長クラスが相手でも前衛職として戦えるだろう。

 

 因みに、萃香はLv 100で結構なガチビルドだったりする。戦闘AIの時ではあるがアインズ・ウール・ゴウンのNPCであるシャルティアと互角以上に戦える。(ステータス上は互角程度だが、独自戦闘AIで互角以上に戦うことができた。)

 

 外の世界に連れて行くのは、萃香は月侵略にも同行している(という設定の)為、問題ないだろう。元々、外の世界にいた筈だし。

 妖夢は幽々子に確認しなければならない。許可してくれるかどうか分からないが。駄目なら他を当たるしかない。

 

 

 まず、萃香に伝言(メッセージ)で確認をとる。

 

 

伝言(メッセージ) 伊吹 萃香』

 

 ………

 

「なんだ、ゆかり〜。」

 

 酒を飲んでいる様な陽気な声が聞こえた。多分、飲んでいるのだろうが、鬼とは元々種族的にこんな感じなのかも知れない。

 

「萃香、私と一緒に外の世界に行ってくれないかしら?」

 

 鬼は嘘を嫌うという設定からして、遠回しに言うより率直に言う方がいいだろう。

 

「紫、今度は外の世界に侵攻する気なのか?」

 

 シリアスな声に変わった。少し誤解を与えた様だが、外に出る事については問題なさそうな感じだ。

 

「違うわよ萃香。今回は冒険者としてこの異変の正体を探るのよ。」

 

 情報収集と言うと鬼は面倒くさがりそうなので、此処は敢えてぼかす。

 

「冒険者? なんだそれ。」

 

 

「外の世界の言葉でモンスターと戦う職業の事ですわ。」

 

 

「良いよ、紫。最近、暇してたし、今回の異変解決に付き合って上げるよ。」

 

  これで1人は決定した。次は妖夢だが伝言(メッセージ)では一対一でしか話せないので、白玉楼に出向いて話した方がいいだろう。

 

 隙間を使い転移する。

 

 

 

 

 ー白玉楼ー

 

 冥界についた。冥界は幻想郷と繋がってはいるが別世界である。『永劫の蛇の腕輪(ウロボロス)』で作った世界は一つだけ(・・・・)なのに冥界という別世界が存在するのはなぜか。

 それは、『永劫の蛇の腕輪(ウロボロス)』で願った内容に起因する。内容としては『新たに生成された世界はすべて(・・・)をギルド:幻想郷の拠点とする』という願いの訳だが、問題は『すべてを』である。

 

 他のプレイヤーが幻想郷を真似をして、新しい世界の想像を願ったのだ。

 だが、願ったその時は、真似したプレイヤーは所有者を明記していなかった。

 本来なら後の運営との打ち合わせで決めるのだろうが、願った願いにより世界が生成され、全プレイヤーに対し発表が行われた時、リアル交渉スキルを使い、最初に願った内容の『すべてを』の部分を伝え、所有権をギルド:幻想郷にしたのである。運営もノリノリで許可してくれた。

 因みに新しい世界を作る者は、所有権を明記すれば新しい世界を所有出来るわけだが、ネットの噂で全てが幻想郷に組み込まれると思われ、それ以降に新たな世界が作られる事は無かった。運営としてもそちらの方が助かるため、敢えて何も言わなかったのかもしれない。世界を増やせばサーバーの負荷が増えるので仕方がないが。

 

 手に入れた世界は東京都一つ分の大きさで、冥界だけの空間だと大きいので多数の異界として区切っている。

 

「紫、何しに来たのかしら。」

 

 着いた途端バレてしまった。

  今回、バレたのは冥界の効果に起因するが説明はまたの機会としよう。

 

 

 因みに白玉楼の主である西行寺 幽々子のステータスはモモンガさんに近い。モモンガさんがスケルトンからレイスに変わっただけと言ってもいい。

 アインズ・ウール・ゴウンのギルメンからは『超位魔法が使えない劣化モモンガさん』や『美少女と化したモモンガさん』なんて言われていた。

 

 

 

「あなたの所の庭師借りてもいいかしら。」

 

旧友に話しかけるように会話を切り出す。

 

「紫、貴方にしては珍しいけど、どういう事か訊いてもいいかしら?」

 

 幽々子に今までの経緯とニグンから得た情報を抜粋して話した。もちろん、ユグドラシル関係については少し内容を変えて。

 

「なるぼとねぇ、分かったわ。今回の異変を調べる為には仕方がないわね。それじゃ、その間代わりに料理と庭の管理ができる貴方の式を貸してくれるかしら。」

 

「もちろん構わないわ。」

 

  良し、交渉成立だ。後は…

 

「明日から行動するわ。今回の異変は早めに行動を移すべきだしね。私は準備を進めるけど、妖夢には貴方が話を通してくれるかしら?」

 

 ボロが出ないためにも、早く帰った方がいいだろう。式を手配して、アイテムや偽装用にLv 30程度が使う装備を準備して、帰って寝るか。何だか眠いし、そう言えば飲食睡眠不要の指輪があったけ。博麗神社での話し合いは用事があることにして藍に行かせよう。

 初日だし、精神的な疲労もあるから寝た方が良いかな。

 眠気が結構あるので隙間を使い家のベッドへ、移動する。

 

 

 

 ー翌日ー

 

 

 目が覚めると明治時代に良くある木造の家だった。ここは八雲邸と設定していた場所だ。どうやら、そのまま寝てしまったようだ。

 そんな事より家具として置いておいた柱時計を見ると10時を指していた…。

 冬眠かなにかの設定でも生きているのかと考えてしまう程の爆睡だ。

 

 不味い。時間は指定していなかったが一切、準備していない。家事が出切る(NPC)(Lv 50相当)を召喚し、連れていくNPC(藍や妖夢)が現在装備している物と同じ外装の物を鍛冶系専門の(NPC)にLv 30~40相当の装備として作らせる。

 伝言(メッセージ)で萃香に1時に迎えに行くと伝え、幽々子にも同様のメッセージを飛ばす。

 

 結果、1時ギリギリまで掛かったが何とか問題なく事が進んだ。

 

 転移させて自分を含め5人が集まった。

 

「紫様、今回の作戦内容を。」

 

 藍が聞いて来たが、作戦内容については考えてあるので安心だ。

 

「今回の目的は人に扮して冒険者として情報収集をする事と私達と同じ様に転移してきた者が居ないか調べる事ですわ。そして、今回は周辺国家で一番まともな帝国に行くわ。」

 

 作戦はこれなら問題ないだろう。ニグンから聞くに王国は腐敗仕切っていて、八本指という組織が台頭し治安も悪いらしい。

 現実世界の腐り切った世界を見ている自分としてはこちらに来てまで見たくないし、こちらの世界で力を見せたら権力者の目に止まるのは必須。王国ではトラブルの種にしかならないが、一方、帝国は有能な者は引き入れる様なシステムになっている為、逆に有利になる。

 それに、人間至上主義の法国などは論外である。

 

「この装備に着替えて頂戴。人が居ないところでは、元の装備を使ってもらっても構わないけど、向こうじゃこれでも最上級の装備として扱われてるらしいわ。」

 

 装備は着替えてもらわないと、プレイヤーだってバレる可能性が高い。

 

「了解しました。紫様。」

 

 他のメンバーも了承したらしく、着替えてくれた。特別に一番レベルの低い橙にはLv 50相当の指輪と腕輪、唯一、武器らしい武器を使う妖夢にはLv 30相当ではなく、Lv 50相当の剣を使わせる。

 どこかの奥地の秘境から発見された宝といえば問題ないだろう。

 

「それでは出発するとしましょう。」

 

 隙間を使い全員を帝国首都の城門の2km手前に転移させる。

 

「ゆかりしゃま、ここが帝国なんですか?」

 

 橙が可愛い。これは破壊力あるな。藍の設定に橙を溺愛しているという設定があるが、自分まで溺愛しそうになる。藍の設定の溺愛てどのくらいなのだろうか。二次創作のように変態系とか、娘を可愛がるお母さんとかなのだろうか・・・。個人的にはかなり気になる。

 

 今はこの話は置いておこう。橙の質問に答えなくては。

 

「ここは2km手前だけど、帝国領内ではあるわね。」

 

「では、紫様。行きましょうか。」

 

 さっきまで、藍が少し(橙の可愛さに)悶えていた気がするが、元に戻っていた。

 藍達を連れて帝国の城門まで歩いて行く。30分もあれば余裕でつくのだが、問題は関所である。

 その関所についても多少は考えてある。簡単に言えば山篭りしていた魔法詠唱者(マジックキャスター)と弟子と旅の途中で出会った者の一行で帝国の闘技場で腕試しをしたいという設定で通してもらおうと言うもの。

 

 そんなことを考えているうちに関所まで着いてしまった。

 

「へぇ、嬢ちゃん達が闘技場にねぇ。嬢ちゃん達、魔法詠唱者(マジックキャスター)なんだろう? まぁ少し待ってろ。決まりで持ち物検査が必要なんだ。魔術師組合の奴が来るから。」

 

 顔立ちがアジア系では無いので自信は持てないが、歳は50は過ぎているだろう係員が話しかけてきた。

 

 

「えぇ、構いませんわ。」

 

 適当に返事をして、15分ほど待つとユグドラシルプレイヤーから見たら低レベルとしか言えない魔法詠唱者(マジックキャスター)が出てきた。

 

ㅤ魔法で調べられても良いように、カウンターや探知阻害系の魔法を切る。

 

「山篭りしていたと言うには若く見えるが調べる魔法詠唱者(マジックキャスター)はおぬしらでいいのか?」

 

 これまた50歳は過ぎているだろう男は椅子に座り、訊いていきた。

 

「えぇ、私達に間違いありません。」

 

 藍が返答してくれた。目の前の魔法詠唱者(マジックキャスター)が気に入らないのかイラついているようにも見える。まぁ、ニュアンスが疑っている感じなので、不快に思ってもしょうが無い。

 

「おぬしらは何位階までつかえるのだ?」

 

 この質問は想定内で、最初から答えを用意していた。

 

「私は第6位階の魔法詠唱者(マジックキャスター)ですわ。私の弟子の藍は第5位階まで、藍の弟子の橙ですら第4位階まで使えますわ。」

 

 相手の魔法詠唱者(マジックキャスター)は顔色を変える。

 

「世迷い言を言うではない。かの帝国最強の魔法詠唱者(マジックキャスター)のフールーダ氏と同じ位階の魔法が使えるなどと。」

 

 どうやら疑っているようだ。まぁ無理もないだろうニグンの話では人が個人で辿り着ける最高の魔法だって言ってたし。

 結局、言い返しはするんだけどね。

 

「あら、貴方この装備を見ても信じられないなんて貴方の目は節穴かしら。」

 

 実力を見せるには煽ったほうが早い。

 

「な、何!?、道具鑑定(アプレーザル・マジックアイテム)

 

 慌てて、魔法詠唱者(マジックキャスター)は、鑑定系の魔法を使ったようだ

 

「なんという膨大な魔力を持つマジックアイテムだ…。アダマンタイト級冒険者の装備でもここまで揃えて居るものは中々いないだろう。」

 

「まだ、信じて頂けないならここで第6位階の魔法を使ってもいいのですが。」

 

 さらに追い打ちをかけて、確実に信じさせる。

 

「分かった。上に報告してこの者達を通させよう。」

 

 元々いた受付の男は少し慌てて答えてきた。なんだか、脅したようになってしまった。

 

「あぁ、それがいいだろう。ここにいるもの全員でかかっても勝てないどころか足止めにすらならんだろうしな。」

 

 魔法詠唱者(マジックキャスター)は、帝国最強の魔法詠唱者(マジックキャスター)と同等クラスと理解した様だ。信じてもらえるなら問題ないだろう。

 

 そのまま、通行税を払いすんなりと流れで帝国首都に入ることが出来た。因みに、帝国のお金はニグンから貰った。(カツアゲ)

 

「紫様。これからどう致しましょうか?」

 

「冒険者組合に行って、冒険者として登録かしらね。」

 

 会話をしながら帝国の大通りの曲がり角に差し掛かる。

 

「痛たた。」ドン

 

 その曲がり角から出てきた少女はプレートはしていないが冒険者と思われる装備をしていて、急いでいたようでそのままぶつかってしまった。

  

 

 

 ーアルシェ(第三者) 視点ー

 

 アルシェ・イーブ・リイル・フルトは、ワーカーチーム『フォーサイト』のメンバーである。

 普段通り、仕事の打ち合わせをする為に馴染みの酒場へと向かっていた。

 

「痛たた。」ドン

 

 アルシェは誰かとぶつかってしまった。ぶつかった相手が貴族だった場合のことが思い浮かぶ。その場合、大変である。

 鮮血帝によって貴族の位を取り上げられ、親は借金だらけである今、相手に怪我をさせた場合、法的に罰せられずとも貴族への賠償金や治療費などを請求されたら、払えるわけがないのだから。

 そうなれば、どうしようもない。

 

「大丈夫かしら? 怪我はない?」

 

 アルシェは、冒険者とわかる服装をしているのに、心配をしてくれることから貴族でなさそうだと感じた。もし貴族でも無理を吹っ掛けるタイプではないように思えた。

 

 アルシェは大丈夫なことを伝えて謝ろうと思い、立ち上がり顔を上げる。

 だが相手の顔を長く見れなかった。理由はタレントによって魔力をみてしまったためだ。

 

「ば、化け物」

 

 アルシェは謝ることも忘れて、つい口に出してしまった。同時にあまりにも強大な魔力によって吐き気がアルシェを襲う。

 

「大丈夫? 体調が優れないようだけど。」

 

 アルシェの師匠であったフールーダより膨大な魔力を持つ、『化け物』はアルシェに近寄る。

 

「ま、魔力が…」

 

 

 

 ー紫 視点ー

 

 

 え、何この状況。化け物と言われた上に、相手体調が悪くなってんるんですが。

 

 察するに、魔力はMPの事だとすると、常人とは離れたMPみてヤバい奴だと思われてしまったみたいな感じだろうか。魔王に対面したみたいな。

 

「そうね。そこで少し話しましょうか。」

 

 あれ、これって体育館の裏に呼び出し(怖い方)みたいなものではないのだろうか。

 

「は、はい。分かりました。命だけは・・・」

 

 うわぁ…完璧に誤解された。まぁ、気にせず路地裏に連れ込んだけど。

 これで姿が男ならアウトだな。

 

「貴方、どうやって私の魔力を知ったのかしら? 魔法は発動していないみたいだけど。」

 

生まれながらの異能(タレント)によるものです。」

 

「タレント?」

 

 タレントて何なんだ。テレビ等に出る人というイメージしかないのだが。

 

「私のタレントは相手の魔力をオーラの様に見ることが出来るんです。」

 

 タレントについては説明してくれないのか…。ニグンも教えてくれなかったぞ。いや、常識なのか。聞くと怪しまれるかな…。

 

 ニュアンスからするとスキルに近い感じかな。この世界の住人全員がこんな能力を持つ訳ではないにしろMPを知られ、化け物扱いされるのは良くないだろう。

  

「そう。これならどうかしら。」

 

 指輪をつける。この指輪はあるダンジョンの周回用の指輪である。

 そのダンジョンは、総MPの多い者を順に狙ってくるAIを持った敵NPCが大量に出てくる魔法詠唱者(マジックキャスター)殺しのダンジョンである。

 自分にとってこのトラップは致命的だった。もちろん、魔法職のNPCも連れてダンジョンに挑むが、元々耐久がない魔法職を狙われれば火力が落ち、次は中途半端に魔法職を取っている自分が狙われる訳で、火力が落ちたパーティはズルズルと負けていくという事になる。

 最初は魔法職のレベルの高さで狙われているかとも思ったが、虚偽情報魔力(フォールスデータマナ)を使用した時は襲われなかった為、総MPの量によるものだと判断し、虚偽情報魔力(フォールスデータマナ)とそのダンジョンに役に立つデータクリスタルを込めて作ったのがこの指輪だ。

 

 この指輪ならMPを欺く事ができるだろう。因みにこの総MPで判断するシステムは幻想郷の罠の一部に使われている。

 

「魔力が減った?」

 

 目の前の少女はかなり驚いている様子だ。

 

「この指輪は魔力を欺く事が出来るわ。この事は秘密にしていただけると嬉しいのだけど…。それより貴方の名前を聞いていなかったわ。 名前はなんというのかしら?」

 

 魔力の事は秘密にしてもらおう。記憶改変や殺してしまうのはどうかと思うしな。

 

「アルシェ…アルシェ・イーブ・リイル・フルトです。」

 

 何だが辿々しいが名前も聞けたし格好が冒険者ぽいし、冒険者ならツテもあるだろうし、モモンガさんやギルド︰アインズ・ウール・ゴウンやナザリック地下大墳墓の情報が無いか調べてもらうか。

 ついでに冒険者になる時になにか役に立つかもしれない。

 

 

「冒険者の様な姿をしているけどプレートをしていないわね。」

 

「はい、私は冒険者ではなくワーカーです。」

 

 確か、ニグンの話では汚れ仕事もする冒険者組合を通さない冒険者みたいなものだったよな。

 

「ではアルシェ。貴方には幾つかの選択肢があります。ここで死ぬか、今あった記憶を消して何事も無かったように元の生活に戻るか、私の依頼を聞いてくれるかよ。もちろん今回ぶつかったのは話ながら歩いていた私にも非があるし、ここで死ぬというのは今抵抗した場合と言うことになるかしら。依頼を聞いてくれるなら報酬もあるわ。」

 

 まぁ、依頼の方に誘導するための選択肢だが。選択肢から選ばせる事で相手の思考を誘導する。もし相手が裏をかく場合も視野が狭くなり予想が付けやすくなる。

 

「報酬てなんですか?」

 

 報酬の話から入るって、意外と金にがめついのか…?

 

 まぁ、金を払えば裏切らないのなら別にいいが、他の奴にもっと多い金で情報を売られたら困るしな。金ではないものを報酬にして様子見だな。

 

「困った時に私が力を貸すなんてどうかしら? 報酬を訊くということは今の記憶を消すのではなく、報酬が欲しいということになるけど理由を聞いてもいいかしら?」

 

 理由は嘘か本当か置いといても聞くべきだ。その時の仕草や様子で相手が何を考えているか、騙し合いの世界で生きてきた自分にとっては判断材料にもなる。

 雰囲気では多少の気品はあるが政戦や騙し合いは上手くないだろう。もしこれで上手かったなら相当な詐欺(ペテン)師だ。

 

 ・・・

 

 ・・・

 

 

 ふむ、話を聞くに未だに貴族の生活をする借金まみれの両親のとばっちりを受ける可哀想な子という感じかな。

 元々、帝国の学院に通っていて、第3位階まで使えるようだし…。ワーカーには収入が高くてなった感じか。

 この世界の住人ではない自分から言わせてもらえば胡散臭いが、誰しもある程度の複雑な事情はあるものだ。

 この世界ではこういう事もあると言うだけの話である。

 

 アインズ・ウール・ゴウンのメンバーだって結構、ブラックな自虐ネタを使ってたし…。

 モモンガさんは天涯孤独だって言ってたし。

 とは言え、モモンガさんとはそこに親近感を感じた。周りは権力や金目当てで友と言える者はアインズ・ウール・ゴウンにしか居ない自分と、ユグドラシルの中にしか居場所がないモモンガさん。

 今、思えば自分も居場所がユグドラシルにしか無いから、ほぼ毎日ログインしてギルドを維持出来ていたのかも知れないな。

 

 つい、感傷に浸ってしまった。ホームシックというやつだろうか。そう考えると無駄に広い現実の家よりユグドラシルの方が家に近かったのかもしれないな…。

 

「あなたの事情は分かったわ。報酬については満足かしら…別途、かかる費用や成果しだいではお金も出すけど。」

 

「それでよろしくお願いします。」

 

 どうやら納得してくれたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ーアルシェ視点ー

 

 

「それでよろしくお願いします。」

 

 私は悪魔の様な契約に同意した。

 

 

 私は膨大な魔力を持つ魔法詠唱者(マジックキャスター)に出会ってしまいました。

 その魔法詠唱者に迫られた選択肢は3つでした。死か記憶消去か依頼を受けるか。何故か報酬も出すという。しかも、あれだけの魔力を持つ者が力を貸してくれるという報酬なのだ。

 このままでは親の借金は増えていくばかりでどうせ家を出なければならない。ならば、ここで力を借りれるというパイプを作ることは悪いことではないと思う。そう思いつい返事をしてしまった。

 

「依頼の内容は私の友人を探してほしいの。アインズ・ウール・ゴウンというチームに所属しているモモンガという人物よ。見た目はアンデッドだけど悪い人ではないわよ。」

  

 アンデッドの知り合いを探すとは難し過ぎるのではないかと思うが受けた以上、やらなければならない。

 

「居場所の推測とかありますか?」

 

「そうね。ナザリック地下大墳墓という場所なのだけど聞いたことあるかしら?そこでは一番偉いはずよ。」

 

「いえ、聞いた事ありません。」

 

 全くもって聞いたことのない場所だった。

 

 

 

 

 

 ー紫 視点ー

 

 モモンガさんについて説明したが、ギルマスなんて言っても分からないだろうから、一番偉い人と言ったが実質的には事務作業みたいな事しかしてないイメージがある。

 何か分かった時に連絡が取れるように、ギルド︰幻想郷の紋章を付けた短杖(ワンド)状のアイテムを渡す。

 索敵NPC用のアイテムで、これには複数の魔法が込められている。まず、伝言(メッセージ)で位置情報が送信されるという効果。NPCの伝言(メッセージ)は、チャットのようになるのだが、プログラムが取得した座標データを送信させるようになっている。これに加えて状況に合わせてテンプレートメッセージが送れるようになっている。

 値を0にすればそのまま伝言(メッセージ)が繋がる。これで人間も使えるだろうし、ボタンの操作により値を変えて送信できるので声が出せない時テンプレートメッセージも役に立つ。使い方を教えれば誰でも出来るだろう。

 他にも効果があり、72時間に1度だけ物理攻撃・魔法効果を無効化する効果という効果付きだ。

 他にも多数のバフ効果があるが主な効果はこれだけだ。

 

「このアイテムを貸すわ。何か手掛かりを見つけたらそれで教えでちょうだい。」

 

「こんなに高価なアイテムをお借りして良いんでしょうか」

 

「問題ないわ。使い方を教えておくわね」

 

 使い方を教えて一度、解放する。手掛かりを見つけられなくても『タレント』について分かっただけでも万々歳だ。

 

 アルシェを見送った後、冒険者組合へと移動する。問題なく冒険者組合につき、登録をすませる。

 

「紫様、これからどうしますか?」

 

「そうねぇ、まずは闘技場かしら。」

 

 

 

 

 

 

 

 




虚偽情報魔力(フォールスデータマナ)…オリジナルで原作の虚偽情報生命(フォールスデータライフ)の改変です。
東方要素が少ない気がしますが、まだ転移直後のプロローグ的な感じなのでキャラを出せないんです。
アインズさんがアダマンタイト級になるまでには東方キャラが活躍できる場面がある予定です。


追記 誤字報告ありがとうございます。

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