出来るだけ多くの人が生存できる様なルートを辿りたいと思います。(目標)
第一話 ユグドラシルの終わり
DMMORPG 『YGGDRASIL』
西暦2126年、日本のあるメーカーによって開発されてサービスを開始したユグドラシルは、体感型ゲームとしての完成度も高く人々を魅了し、世界中で人気を博していた。
僕もユグドラシルに魅了された者の一人である。
いや、『一人である』ではなく、
そう、このゲームは今日の24時をもってサービスを終了してしまうのだ。
僕はゲームの最後がこれほど、虚しいものだとは思っていなかった。
現実世界の人間を信じられない僕にとって、ここは『掛け替えのない場所』であったからなのかもしれない。
ただ、僕は貧困層ではない。人が聞けば嫌味としか思えない話ではあるが、貧困層では無いのは確かだ。
いや、その逆と言えるだろう。僕は巨大複合企業の幹部の御曹司であり、完全環境都市「アーコロジー」の中で温々と生きている。
貧困層の人々から見れば金持ちのボンボンであり、何不自由なく暮らしている様に見えるだろう。
いや、実際にそうである。
ブラック企業で働かなくても生きていける。
人工肺を使わなくても、アーコロジーの中なら呼吸が出来る。
ゲームの世界でなくても楽して生きていける環境が揃っていた。望んだ物は金で買える。権力で手に入る。
そう、物は手に入る。
しかし、者。つまりは人、信頼できる人間は中々いないものだ。
親友や友と言われる者を僕は持っていない。
周りの人間は権力目当ての者ばかり…。
全員が権力目当てではないだろう…どこかに僕みたいに騙し合いの
たが僕の前にはそんな人間は現れなかった。
友もいなかった。
同年代の友は僕にはいない。
幼少期は殆ど、同年代の子が周りにいなかったのも、理由の一つかも知れない。
今さら、同年代の人と会ったとしても、知恵がついて選民意識を持って、権力を振るうだけの者が殆どだろう。
「紫さん、もうすぐ終わってしまいますね…」
魔王の様な雰囲気を出す骸骨は、悲しい顔の感情アイコンを出す。
「そうですね…」
そう、彼は現実世界では出会えなかった掛け替えのない友である。
いや、彼だけではない…。
今は僕と彼しかここにはいないが、ここには彼と彼のギルドメンバー達がいた。
彼ら、41人は殆どが純粋な人達だった。
純粋に自然に焦がれ、ナザリック地下大墳墓の中に森と空を作った者。
子供の様に純粋にいたずらをする、腐れゴーレムクラフター
悪に憧れ、悪を探求し世界征服をしようと模索していた者
誰かが困っていたら当たり前のように助ける正義の味方
メイド服は決戦兵器と豪語するメイド服好き
エロイズマイライフを豪語する究極のエロを求めた
他にも色んなメンバーがいた。
今でも、『おい、最後の二人は可笑しいだろ』なんて思わず突っ込んでしまう。それ程、楽しかったのだ。
周りは利用しようとする者ばかりだったからこそ、目に付く彼らの純粋さ。そりゃ人によっては汚い部分もあるけど、彼らは権力の事を明かさなくても友になってくれた。
だからこそ、自分はギルド︰アインズ・ウール・ゴウンが好きだ。
だが、自分はギルド︰アインズ・ウール・ゴウンに入っていない。それはギルドの加入条件に起因する。
ギルド:アインズ・ウール・ゴウンの加入条件は、異形種かつ社会人である事。
妖怪は異形種であるが、当時学生だったため入れなかったのである。
現在は親の仕事を少しずつ継ぎ、社会人となっているのだが、訳あって入っていない。
そんな僕は、利用しようとする者ばかりを見てばっかりだった環境のせいか、相手がどんな人間かが分かってしまう。
だからこそ、ナザリックにいる人達が純粋だと思ってしまうのかもしれない。
汚い人間の駆け引きの中にいたお陰で、利用しようとする人間の思考なら心を読めると言っても過言ではないレベルで腹の中が分かる。
だが、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーは読めなかった。今なら、彼らが僕を利用しようとしていなかったからだと分かるが、当時は不思議な感覚だった。
因みに、ナザリックとの共同作戦を行った時はこの腹の中を探る力を生かし、ぷにっと萌えさんと参謀として共に戦った。今まで、嫌気がさす様な能力が人の役に立つとは思わなかった僕はこの時、喜びを感じた。
そんなこんなで、社会人となった今もゲームを続けて、アインズ・ウール・ゴウンには入っていないものの同盟ギルド員として出入りしている。
「モモンガさん、僕はそろそろ幻想郷に戻ります。最後は幻想郷で過ごしたいですから…。
「いいですね!やりましょう!」
モモンガさんも乗る気のようだ。
「それじゃあ、行ってきます」
ー ギルド:幻想郷 ー
鮮やかな緑と青の世界が目の前に広がる。
幻想郷…それは100年以上前に発売されたゲームに登場する場所の名前。
なぜ、そんな昔のゲームを知っているのか?
それは、ただの偶然である。
厳密に言うと『東方Project』と検索して、たまたまレトロゲームのサイトに繋がったからである。
何故、『東方Project』と検索したかと言うと『東京方面再開発Project』と検索窓に入力したのだが、キーボードに手が当たり『東方Project』という単語になってしまったのだ。
その事からレトロゲームの東方Projectを知った。
だが、レトロゲームな上に某ドラゴンでクエスト的なスライムが人気のRPGゲームとは違って、今の時代、東方を知っている人も少なく、ネットのログに残される創作物のみでしか知ることはできかった。
だが、そんな少ない情報でも僕は魅了されていった。それが出会いのきっかけだった。
そんなある日、ネットを見ているとページ内の広告から自由度の高いDMMORPG『ユグドラシル』を知った。
なんと、そのゲームは別売のツールを使えば、好きなキャラを作り、プレイできるというものであった。
更に、NPCも自分で好きな見た目で作ることが出来ると言う事も知り、僕は歓喜した。
100年前に流行ったMMDという物のモデルデータも入手している。
もう、お分かりだろう。
そう、幻想郷がDMMORPGで再現出来るのだ。
最初は幻想郷が再現出来ると意気込んで始めたのだが…。
問題があった。全く東方を知っている人がいないと言う問題が。
ゲーム設定時のプレイヤーキャラの作成については、幻想郷を創成に関係しているであろう『八雲 紫』にした。
最初はお金をため、レベリングをして、『ギルド:幻想郷』を立てた。
ゲーム始めて少し経つと『異形種狩り』という物が流行った。
その時にたっち・みーさんとモモンガさんにあったのだが、今回はその話は割愛させて頂く。
ギルドを立てたのは良いが、ギルドメンバーは自分一人だけという寂しい状況だった。
先程も言ったように、全くと言っていいほどに東方を知っているものがおらず、参加者がいないのだ。
参加条件は東方Projectを知っていることだけである。
なのに、一人もギルドメンバーは入らなかった。
たが、諦めずに一人でイベント攻略やレベリングや課金等によって、少しずつギルドを大きくしていった。
遂に、レベリングの甲斐あってかレベル 100に到達する事ができた。
そんなある日、あるイベントをクリアしたのだが…。
ドロップしてしまったアイテムが意外だった。
持っていることがバレたら、やばく無いか…。
狙われまくるのではないか…。
早く使ってしまうのがいいのか…使わずにワールドアイテム対策として持っているのがいいのか…。
あの時は 迷いに迷った。
結局、モモンガさん達に話して、2つ目のワールドアイテムを手に入れない限りは、余程のことが無いと使わないことに決した。
レアアイテム収集家のモモンガさんは羨ましがっていたが…。
しかし、この話はそれで終わらなかった。
また別のイベントであるアイテムが手に入ってしまった。
これ、また世界級アイテム。
世界級『支配者の扇子』
コレの性能が運営が狂ってると言われる時の一例に挙げられる。
扇子は昔、支配階級がメモ代わりに使っていたりするものでもある。
この扇子はNPCの作成を、半無限にできるというものだ。
扇子にまるで書き込むようにデータを入れることで、NPCが作成される。
この時、僕はある事に気付く。
これ、幻想郷作れんじゃね?
さらに、
となれば、早速
それは10個目の世界の生成
ユグドラシルには世界が9つあり、一つあたりの大きさは東京2つ~3つ分程度もある。
更に、願いには新たに生成された世界はすべてをギルド:幻想郷の拠点とすると言う条件を込めて。
運営は最初は渋ったが、新サーバ代になる謎の寄付と「世界級アイテムは世界と同格の力があるんじゃないか?」というリアル交渉術を使い了承させた。
東京1つ分より少し小さい程度の世界(約2000平方キロメートル)を手に入れることに成功した。
それに加えて、支配者の扇子を使い
支配者の扇子によるNPC作成には、幾つかの条件があるが、それをなんとかクリアし、手に入れた世界に建築物を立てたりするなど、弛まぬ努力と課金などする事により複数体のLv 100のNPCの作成に成功した。
そして、その姿から『
この時にはもう社会人になっていて、ギルド︰アインズ・ウール・ゴウンに入れるのだが、10個目の世界は幻想郷のギルド拠点であるため、ギルドの移動は難しかった…。
ちなみに、この時から支配者の扇子の使用条件の一つに
しかし、独自AIのNPCとぷにっと萌えさんと共に考えたNPCを戦術的に配置するプレイヤースキルにより補っていた為、一人でも十分戦えた。
更に、幻想郷に転移するには既定のルートを辿るか、ワールドアイテムを持って転移するしかないため、一人でもギルドを守ることが可能だった事もアインズ・ウール・ゴウンに入らなかった理由の一つだ。
うちのギルドでは、ギルド:アインズ・ウール・ゴウンの様に1500人を撃退する事は不可能に近い。
たが、さっきの条件によりワールドアイテムを持って侵入か、正規ルートでの侵入でしか入れない。
正規ルートは一度に多くても数百人程度しか同時に入れず、一般的なプレイヤーの思考としてはワールドアイテムを使っての侵入は論外である。
100人程度のギルド単位での侵入はあったが正規ルートでの侵入のため、大量の罠とNPCにより撃退した。
それからNPC作成を幾度となく繰り返し
そして、
過去について回想をしている内に、ユグドラシルが終わる数分前になっていた。
ユグドラシルがサービスを終了する前に、急いでモモンガさんに
「モモンガさん、聞こえますか?」
「大丈夫ですよ。聞こえます、紫さん」
「それじゃ、始めましょうか」
モモンガさんが言うと、少し間が空いた。
「ついに、この世界も終わって仕舞うのね…」
僕は最後ということもあり、女口調が苦手なので普段あまり行わない八雲紫RPをノリノリで言ってみた。
「世界の終焉か…」
モモンガさんもノリノリである。
「モモンガさん、また逢える日を楽しみにしてますわ」
「ああ…」
実際のユグドラシル終了する喪失感とRPの反応が混ざり、力のない声で返事を返すモモンガさん。
「幻想郷と」「アインズ・ウール・ゴウンに」「「永遠の栄光を!!」」
そう言い終わるとコンソールの時計は00時00分00秒を指す。
それによって世界は
いや、迎える筈だった…。時計は00時00分02秒を指す
一部のコンソールが消えていた。
ゲームの終わりの表示等もない。終了に伴いラグが掛かっているのだろうか。
コンソールによるログアウトをする。
ログアウトが出来なかった…。
GMコールも出来ない。
電脳誘拐だろうか…。確かに御曹司の自分なら人質にすればある程度の要求はできるだろう。
たが、様子が違う。
それはNPCである八雲 藍の式である橙が心配そうにこちらを見つめているからである。因みに、藍は橙を見ていた。あれ?なぜ、橙を?
藍のその行動は不思議に思うが、そこは置いておこう。まず、考えるべきはNPCであれプレイヤーであれ、表情を作る事はできない。
まぁ、スライムなどのキャラを使い疑似表情AIなどを作る奇才を持つ人はいたが…。
「
こう呼ぶと
「なんでしょうか?紫様」
吃驚した。藍が喋るなんて…。
他のNPCも話せるのだろうか。
コレはユグドラシル2か何かなのだろうか…。
意味がわからなかった…。
ただ、NPCがユグドラシル2のヘルプとしての役割がある可能性を考えて聞いてみる。
「GMコールが使えない…」
「申し訳ございませんが紫様、じーえむこーるなる物はどのような物なのでしょうか?」
「いや、気にしなくていいわ。そうわね、藍。
取り乱したロールプレイを整えて、指示を出す。
こんな状況でも攻め込んでくるプレイヤーが居るかも知れないので、大人数が近くにいるかいないかだけでも確認したい。
「はい、紫様」
実際に命令を理解していることには驚くが、それどころではない。
藍は、直ぐに幻想郷と外が繋がる既定ルート1を目指して動き出す。
「それじゃあ、博麗神社に行こうかしら。橙、留守は任せたわ」
取り敢えず、幻想郷で異変と言えば博麗神社である。藍が言葉を理解し、自律的に動けること考えると、博麗神社に行けば、何かしらの情報収集が出来るかもしれない。
「はいです。紫しゃま」
幻想郷のNPCは、自分を八雲 紫と認識しているのならRPは続けるべきだろう。
直ぐにスキマによって転移する。
どうやら魔法は使えるようだ。
ー幻想郷 博麗神社ー
スキマを出てみると、掃除をしている巫女がいた。
「霊夢ー!!」
ダイレクトに飛び込み抱きつく。八雲 紫のフリだからね?(動いてるのが嬉しくて、喚起余ったわけじゃない)
「何するのよ!?、紫じゃない。アンタが来たてことは面倒ごとね…」
胸を触ってみる。(お巡りさん、こいつです)
柔らかい…。そして、いい匂いがする。
たが、ハラスメント警告は出ない。
「何時まで触ってるのよ!!」
お祓い棒で殴られた。ダメージが入り痛い。
どうやら結構、触っていたらしい…。
それより、臭いがあることとR18行為が行える点からユグドラシル2である可能性が潰えた。
そしてもう一つ分かった事がある。
それは…フレンドリーファイヤの解禁だ。
お祓い棒で微かだがダメージを受けている。
これは幻想郷を脅かしかねない。
拠点にはレベル 30以下のNPCが自動でPOPする。
ウチのギルドの場合、POPするNPCの殆どは妖怪・妖精という種族を持ち、異形種であるため人を襲う。つまり、ギルド内での殺し合いが発生する危険性がある。
幻想郷には世界級アイテムで作成した
幻想郷自体の設定に、スペルカードルールを書いているので適応されるだろうか…
人里や農地の村々には、東方Projectには登場していない30レベル程度の戦闘ができるNPCを村の強者や自警団として配置している。
自動スポーン式の妖怪に対する対抗手段を設定上、作って置いたのだが役に立つだろうか…。
ちなみに、支配者の扇子では30レベル以下のNPC作成は使用条件クリアと金貨と一定の素材を用意すれば作れる。その為、安価で作れる弾幕ごっこが出来ないキャラを量産している。
東方Projectに出てくるメインキャラ以外の、人里の住人はこれで作られている。
まずはレベル 100のNPCや各勢力を集めて、戦力を集める必要がある。
「霊夢、今から異変解決の為に参加者を募るわ」
「どうしたのよ紫。アンタがそれ程するって」
霊夢が不思議そうに聞いてくるが…。
今は話せることがない。支配者の扇子で作られたNPCと言えど敵対しないとは限らないからだ。
そう言えばモモンガさんとの
「
繋がらない…何故だ…!?
NPCには繋がるのだろうか。
「
………
「なんでしょうか?紫様」
繋がった。何故、モモンガさんには繋がらないのか…。魔法の効果や範囲が変わったのか?
「藍、状況はどうかしら?」
「紫様、それが少々困った状況でして」
「どうしたの、藍?」
「はい、紫様。見渡す限り草原でして、生物は小動物のみで、プレイヤー・モンスターを含め知的生命体は居ません」
これは外でも重大な異変が起こっているとみていいだろう。
「そう、とりあえず戻ってきて。一時間後に異変解決のために集まる者達と一緒に詳細を話して頂戴」
「了解しました。紫様」
これは大変な事だ。既定ルート1の出入り口は幻想的な雰囲気の樹海に面していた筈だ。
それが草原では、直ぐに出入り口が発見されてしまう。
飛行能力を持つ式を召喚し伝言をもたせ、各100レベルのNPCに届けさせた。
後は何をすべきか…。
ナザリックと幻想郷が共同作戦したら勝てない(小並感)
間々にユグドラシル時のエピソードや番外編で、たっち・みーさんとアインズさんとの秘話を入れたいと思っていたりします。
ワールドアイテムとか表情を作れるAIは捏造設定です。(今後の話に使うかも)
7/20 微妙に加筆
2018/03/17 微妙に加筆・修正