銀時これくしょんその6
「全く、めんどくさせーったらありゃしねぇ」
「まあまぁ、あれでも死ぬか生きるかの場所に行ってるんですから、今度から真面目にやってくださいね?次やったら、アレが飛びますよ?」
ニコッと声と口だけを笑わせて目だけが死んだ大淀が言った。
「(ヤベーよ超怖いよ、何?どういうこと?アレが飛ぶって何?!)」
「アレが飛ぶって言うのはですねぇ、提督の主砲が 、いえ?機銃ですか?まぁ、その粗末なものとオサラバするってことですよ?」
「誰のジョイスティックが機銃だ!俺のはなぁ!てか、平然と人の心を覗くな!」
「あら、ごめんなさいこの位練度が上がると感情が読めるようになってくるので」
「ち!それより、艦隊から連絡は?」
「いきなり話変えますね、まぁいいでしょう、では報告です・・・!?
第1艦隊が先程、敵戦艦と遭遇、第1艦隊はほぼ壊滅状態、旗艦神通が大破したため、艦隊は撤退、駆逐艦雪風以外、全艦大破、特に損害が酷いのは、駆逐艦曙敵重巡の魚雷計5発全て命中、もうすぐ鎮守府に着くそうです!」
「マジかよ大丈夫なのか?!」
「・・・・」
「おい!答えろよ!」
「分かりません、見て見なければ」
「チッ!とりあえず埠頭に行くぞ!」
「先に行っといてください、私は救護班の要請と入渠の準備をします!」
「分かった!」
━━━━━━━━━━━━━━
「あれだな、大丈夫なのか?」
水平線の彼方に僅かに見える艦影を見つけ、持ってきていた双眼鏡で確認し、辛うじて6人の姿が見え、安心した銀時だが、1人だけ影がおかしい艦娘がいた。
「なんだありゃ?どうなってるんだ?何で宙に浮いてるんだ?」
目の錯覚かと疑ったが、すぐに違うと分かった、明らかに1人だけ宙に浮き、両脇にいる2人が支えてるような見た目であった。
だんだん近づいてくる第1艦隊、と疑惑が予想に、予想が現実にと、思考が変わっていく銀時、その予想は、宙に浮いている艦娘は曙で、
宙に浮いている理由は────
「下半身が、ないじゃねぇか!」
冗談を言っているわけではない、考えなくても分かる事だ、魚雷が5本も当たればそういうことにもなる。
「あれで、大破だぁ?ふざけんな、あんなの生きてるのがおかしいぞ」
そう、普通は下半身を失えば出血が多すぎてショック死してしまうのだが、それはあくまで、人間の普通であって、彼女達、兵器の艦娘では治るし死なない、でも軽傷でもない。
「おい!救護班は、まだか!?もう着いちまうぞ!」
いつの間にか来ていた大淀に怒鳴りつける銀時
「もう着きますから落ち着いてください」
これじゃあ────
「これが落ち着いていられるか!」
あいつの遺志は守れてねえじゃねえか────
俺はあいつらを、いやこいつらをどうやったら守れるんだ?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
救護班が到着し、担架で運ばれていく曙を見ると、体は丁度へその下あたりで下半身が無くなっており、傷口・・いや、断面から内臓が出てきている状態で、血は止まっているが、見る見るうちに白い担架は、紅い担架にかわり、血が滴り落ちていた。
時折、曙の口から「痛いよぉ」
と、いつもの悪態をつく時の声、態度と違い、
虫の鳴くような声、子供が転んだ時の様な顔で泣いていた、その光景はまさに地獄の縮図の様なものだった。
「提督大丈夫ですか?こういうの初めてだったでしょうから、今日は休んでください」
大淀は1時間ほど前の恐ろしい事を言っていた時と違い、ただただ、心配する声で言った。
「・・・・」
「提督?聞いてますか?────!?」
曙が運ばれてからずっとを俯いている銀時の顔を下から覗き込むように見た大淀は後悔する、そこにいたのは、いつものやる気のない顔、男ではなく────
正しく鬼の形相をした、夜叉であった。
さてさて、1番練度の高い曙が何故5発も魚雷が命中したのは次回明らかになります、が!曙が担架で運ばれるのを想像したらちょっと泣きそうになりました、自分で書いているのにおかしいね!