Fate/ Army of Darkness   作:K氏

8 / 10
 Ash vs Army of darkness、ダイナマイトコミックスから絶賛発売中!(突然の販促)

 それにしても2013年版死霊のはらわた怖すぎィ! 過去作のオマージュやりながらも、過去作と同じようにはいかない辺り、ブルースキャンベルの主役補正が神がかってたんやなって...(褒め言葉)


Once upon a time:Evil Dead

「あ、先輩。ダ・ヴィンチちゃんの用事は終わったのですか?」

「ああ。まぁな。有意義な時間だったよ」

 

 主に、次の義手にどんな機能を搭載するかについてでな。

 

――――――

 

『まずはヒアリングからだ。つまり、君がこの次世代型万能義手『オムニア・ウィンキト・ブラスアルミュール』、略してO.V.Aに望む事を言えばいい。ああ、ちなみに名前は我が友の作品その他諸々からありがたく借り受けさせてもらった!』

『ブラスの部分がどこ行ったのかはあえて聞かないとして……そうだな、じゃあ孫の手なんかあると――』

『ふむふむ。孫の手ね』

『――待った、今のジョークだ。いや確かに魅力的だが』

『ま、何かに役立つ事もあるだろうし、一応それっぽいのを搭載しておこう』

『アンタ最高だな! ドリンク奢るぜ』

『9本で良い』

『謙虚だなー憧れちゃうなー』

『よーし、ついでに君の得物も英霊と戦えるようにしちゃうぞー! Foo! 漲ってきた! この天才の力の見せどころだね!』

『天才だなー憧れちゃうなー、でも別に英霊とやり合いたいなんて思ってないんだけどってか嫌なんだけどなー!!! ヤメロー! シニタクナーイ!』

 

 

――――――

 

「……えーと」

「何も言ってくれるな、ベイビー」

 

 情けなくなんかない。あんな化け物連中と戦わないのが普通だって、所長とかロマンも言ってただろ。あん時はノリと勢いでどうにかなったが、今後もそう上手くいくとは思えんしな。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「……それで、話して下さるんですよね?」

 

 今、俺達がいるのはカルデアの医務室。いざって時に……そう、例えばマシュが俺の話を聞いてて気分が悪くなった時の為に、薬が色々揃ってるここは都合がいい。俺としてはマイルームでマシュと二人、ゆったりとしたトークでも……なんでもない。

 

「そうだな。どこから話せばいいものか……そう、アレは一年程前。俺がまだ高校生で、最後の夏休みを楽しもうと、知り合いのいるイギリスに行った時の事だ――」

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 そこから、藤丸立香という一人の少年の口から語られたのは、二十歳にも満たない少年が経験するには、あまりにも過酷すぎる地獄。

 

 かつて、彼は家族ぐるみで付き合いのある、イギリス人の少女の友達がいた。可愛らしくも明るく活発な彼女に誘われ、謙虚な日本人の立香は様々な経験をした。バーベキュー。キャンプ。Sマートでのバイト。フィッシュアンドチップスの早食い対決。その他諸々エトセトラ。

 

 そしてこの夏も、今までのように少女の家族と一緒に、何処かの避暑地で夏を満喫する予定だった。

 

 しかし、その年ばかりは違った。立香の家族は仕事等で家を空けられず、少女の家族も、急な用事で一緒に出掛けられなくなったのだ。

 それだけならまだ良かった。家の中でまったり過ごしたり、近所に出かけたりできるのだから。

 

 だが、少女の兄とその知り合いが、彼と少女を運命の地へと誘った。そこで、何が起こるかも、何がいるのかも知らず。

 

『リツカ……あのね。貴方に話したい事があるの』

 

 マシュらに話してはいないが、出掛ける直前に少女が彼に告げた言葉が、今もなお立香の頭の中でリフレインしている。

 彼女の頬が赤く染まっていたのは、別に夕焼けに染められていたわけではない。というか、あの時は太陽が上に来ていたし、立香自身そんなに鈍感ではない。彼女が一体何を言おうとしたのか、憶測でしかないがなんとなくわかる。ただ、それにどう応えるべきか、それに悩んでいた。

 

――そして、終ぞその悩みは解決される事は無かった。

 

 少女は最初に死んだ。呼び出された何かに取り憑かれて。少女ではない『何か』となり果てたモノを、彼がバラバラにして埋めた。そうしなければ、彼女はずっと穢されたままなのだから。

 少女の兄と、その友人達、その後やってきた『死の本』の研究者の親族達も、皆死んだ。少女を襲った何か……『死霊』によって。

 

 彼自身も、右手を無くした。しかし、彼は諦めなかった。僅かな正気と、微かな理性、更にありったけの知恵と怒りを振り絞って、戦った。

 

 そして――

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「――そんな」

 

 絶句するマシュ。だが、驚く事に嘔吐を催したりなんかはしなかった。……全く。強い子だな。

 

「……っと、今スタッフから連絡があった。最初の特異点が確認されたそうだ」

 

 行こう、とロマンが促す。マシュの気持ちを汲んでの事だろう。が、マシュはその言葉に異を唱えた。

 

「……すみません。少し、気持ちの整理を」

 

 しかしまぁ、やはり精神的にクルものがあるらしい。俺はロマンを先に行かせ、マシュの傍に、ただ黙って寄り添う。

 

「マシュ。無理して聞くこたなかったんだぜ?」

「……いえ。今の私は、マスターのサーヴァントなんです。ですが、その、貴方の事を何も知らなすぎる。だから、知らなきゃならないんです」

 

 そんな気がするだけなんですけどね、と、マシュは力なく笑う。

 そんなマシュの肩を、俺は出来る限り優しく抱こうとして――それが手の無い右手なのに気づき、思いとどまる。

 

「……気にすんな、なんて、そもそも話をした俺が言えた事じゃないが」

「い、いえ、そんな! 話を聞きたがったのは私の方で――」

「いいんだ、マシュ。とりあえず、今はゆっくりしろ。な? そうだ、ホットミルクか何かいるか?」

 

 マシュはただ無言で、頷いた。

 

……参ったな。勢いでそんな事言っちまったけど、どこにカップとか諸々あるのか知らねぇや。でもマシュに訊くのも気まずいし。ジーザス。

 

 ロマンを待たせるのは良くないが、カワイコちゃんが笑顔を曇らせてるんだ。優先順位なんてくっきりはっきりしてんだろ?


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