Fate/ Army of Darkness   作:K氏

5 / 10
 ようやく、死霊のはらわたリターンズシーズン1を借りてきました。現在は4話まで視聴。しっかし、ブルースキャンベルが画面にいるだけで凄く安心できるなぁ……。

 そういえば、主人公が一番輝くハズの対雑魚戦を、冬木では全く描写してませんでした……というわけで多分次の特異点からそうなると思います。多分。

 あ、あと今回からスプラッタ描写を盛り込んでいきます。


アーサー王とスーパーの店員・後編

「……あり?」

 

 いつまでたっても、くるはずの痛みがこない。

 

 ビビッて両目を閉じていた俺は、片目だけ開けて、アーサーの方を見る。

 

「――やってくれる」

 

 アーサーは、剣を振りかざしたままの態勢で微動だにしない。

 

「なるほど、ただの足手纏いだと思っていたが……」

 

 何? 足手纏い?

 

 アーサーが目だけで指し示す、その背後を見てみれば――

 

「――わ、私を、無視してんじゃないわよ!」

 

 所長がアーサーに威勢よく啖呵を切っていた。その指を、まるで銃を撃つ仕草のように、人差し指をアーサーに向けながら。めっちゃ震えてるけど。足もガックガクだけど。

 

「ガンドか。我が対魔力を上回った……と、いうわけでもないようだが。……そうか、これも。フ、私も油断しきっていたらしい」

 

 アーサーはアーサーで、なんか一人で勝手に納得してる。俺にも分かるように説明しろっての。

 

「運が良かったのか分からないけど、今このサーヴァントは、私の、この私の! 魔術で動けなくなってるの! アーサー王クラスの英霊相手だと、普通なら対魔力に弾かれて効かないだろうけど! でも長くは持たなそう!」

 

 ご丁寧に解説どーも。

 

「だから――藤丸立香!」

 

 そういうと、所長は預けていたブツ――伝家の宝刀ことチェーンソーを抱えると、何かを呟く。その瞬間、腕に何か、光のラインのようなものが浮かび上がった。

 

「貴方が! ケリを着けなさい! 知り合いなんでしょ!?」

 

 知り合いだからって、そんな無茶苦茶な理屈があってたまるか――と、言いたいところだが、ナイスだと褒めてやろう。

 

「受け取り……なさァーーーーい!!!」

 

 そして、所長の華奢な腕からチェーンソーが飛ぶ――割と凄い勢いで。

 

「オイオイマジか……!」

 

 こうなりゃヤケだ。幸い、義手は吹っ飛んじまったから、一々付け替える手間が無くて済む。

 俺は抜けた腰を元に戻し、飛んでくる相棒をキャッチする為に駆け出し――

 

「ち、ィ!」

 

――それを邪魔するように、アーサーも魔術の拘束を解き、また剣を振りかざす。今度は……駄目か。

 

「はぁぁぁ!!!」

 

 だが、アーサー目掛けて、マシュが盾を構えながら突っ込んでいく! その姿、さながらアメフト選手、いや、人間戦車だ! 普段なら口笛でも吹いて持て囃したいところだが、今は仕事中だ、抑えろ立香。

 

「せ、んぱい! 今のうちに!」

「未熟なりに、根性はあるらしい――な!」

「グッ!?」

「マシュ!」

 

 あっ、アーサーテメェ! 俺の可愛い後輩の腹蹴るなんざ、男の風上……いやまて、女? 男? どっちでもいい! 俺のダチだったアーサーは、偉そうだが誇りだけはいっちょ前の騎士様だった!

 だが、今は逆に考えるんだ。マシュの勇気ある行動で、時間が稼げたと!

 

「今度こそ……!?」

 

 またまた襲い掛かろうとするアーサーを、今度は炎の縄みたいなのが縛り上げる。

 お次は誰だ……?

 

「こういう時、現代じゃこう言うんだろ? 騎兵隊参上、ってな!」

「兄貴ィ!」

 

 俺達がやってきた方から現れたのは、キャスターの兄貴だった。何故上半身が裸なのかは知らんが、アーチャーに勝ったと見て間違いない。

 

「行け! 俺の拘束も長くは持たねぇ!」

「ぐ! 離せ!」

「やなこった! 駄目押しにコイツも喰らっとけ! 灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)!」

 

 キャスターが叫ぶと、拘束されたアーサーの真下から、炎の塊がせり上がってくる。うわぁ、熱そー。

 

 炎の塊はそのまま数十メートルまで大きくなり、人の形を取る。そして現れたのは、細い木の枝の身体を持つ巨人。

 胸のところに鉄格子が付いていて、そこにアーサーが閉じ込められている。

 

「サンキュー、兄貴! 今度美味い酒奢ってやるぜ! 勿論Sマートでな!」

「ヘッ、楽しみにしないでおくぜ!」

 

 しねぇのかよ。

 

 炎の檻を維持するキャスターにサムズアップし、俺は未だに空中を舞うチェーンソー目掛けて、跳ぶ!

 なんでこんなに宙に浮いてられるとか、ンな事は考える必要はねぇ!

 

「たァァァーーーッ!!!」

 

 丁度、円を描くチェーンソーの、刃とは真逆の方がこっちに向く。そこには、俺の腕の太さに合わせてある装着口が。

 そこに俺の右腕を、イン!

 

――ああ、馴染み深い感覚だ。

 

 思えば、コイツを嵌めたのはいつ振りだろうか。なんやかんやでチェーンソーを使ったのは、あの時代じゃクソムカつく『()()()』を一度バラバラにしたのが最後だったが、腕に嵌めたって意味じゃ、穴に落とされたのが最後だろう。

 

 最初に俺の右手を。そして、並みいる悪霊死霊どもを、このチェーンソーでぶった切ってきた。

 本来なら木を切る用途であの山荘に置かれていたであろうコイツは、俺の手に渡った瞬間、その本来の用途では使われなくなった。いや、違うな。俺が用途を変えたんだ。

 

『クソッタレの死霊どもをバラバラにする』

 

 それこそが、コイツの真の用途、ってな。

 

 俺は腕の嵌め心地を確かめながら、チェーンソーのエンジンスターターを何度か引っ張る。

 スターターを引っ張る度に、チェーンソーが唸りを上げ、三度目で唸りが最高潮に達した。

 

……心なしか、チェーンソーの刃が光ってるように見えるのは気のせいだろうか。ま、いいや。

 

「舐め――るなァ!」

「チィ! ンの馬鹿力が!」

 

 ほとんど同時に、アーサーが炎の巨人を吹き飛ばして脱出する。

 そこが俺の狙い目だ。

 

「うぉォォォォ!!!」

「――ッ!」

 

 格闘ゲームにもあるだろ? 着地狩りって。それと同じだ。奴が地面に降りてきたところを――チェーンソーでぶった切る!

 

 俺は雄叫びを上げ、左手でチェーンソーのグリップを握り、腰の捻りを使い、振り上げるようにチェーンソーを振り抜く!

 当たったのは――アーサーの右腕。つまり、エクスカリバーを握っている方。その手甲に覆われていないところに、回転するチェーンソーの凶悪な刃が食い込む。

 

「ぐ――グアァァ!!」

 

 チェーンソーが唸り、アーサーは苦悶の声を上げ、俺は力の限り叫ぶ。

 アーサーの腕に喰らいついた刃は、一瞬だけその動きを止めたが、チェーンソーの唸りに呼応するようにすぐさま回転を再開する。

 チェーンソーで肉を切るとどうなるか? これがその答えだ。

 

 刃がめり込んだ箇所から、赤黒い血が噴き出し、肉片が飛び、俺の顔にぶちまけられる。

 何、死霊と戦ってる時じゃ、いつもの事だ。

 同時に、摩擦熱か何かのせいなのか、人肉の焼き焦げる気色悪い臭いがする。

 

 普通なら吐き気を催して当たり前のそれらに耐え抜き、俺はチェーンソーを振り抜いた!

 

「ガァ……ッ!」

 

 悲鳴をなんとか押し殺すアーサー。流石だ。そこは流石としか言いようがねぇ。俺も経験したけど、痛すぎてヤバかった。具体的にどうやばいかっていうのはちょっと口にしたくないんだが、とにかくヤバかった。漏らさなかったのが奇跡だ。

 

 そんなアーサーの近くに、さっきまでアーサーのものだった腕――ご丁寧にエクスカリバーを握ったまま――が、少し離れた所にボトリと落ちた。

 

「勝負あったな、アーサー。正義は必ず勝つのだ」

「……フッ、よりにもよって貴様が――いいや、貴方が、正義を語りますか」

 

 うるせぇやい。勝ったやつが正義だって、昔の偉い人も言ってただろうが。

 

 




 話を区切る形だと、どの辺りで、どんな形でそのシーンを締めればいいのかが時々分からなくなる。あると思います。

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