本編で艦娘たちの七夕での願い事を一部だけ書いてます。全員分だとそれだけで終わってしまうので割愛させて頂きます。
ご了承ください。
本日は7月7日。
七夕のこの日、泊地は晴天に恵まれ、夏らしい暑さの中、鎮守府では七夕祭りが開催されている。
常日頃、戦闘に身を置く艦娘たちに少しでも普通の人たちと同じ行事を味わってもらうため、提督がイベント委員会と前から話し合い、こうして開催した次第。
ただ、祭りと言っても日中は任務等のため、中庭に七夕飾りが施された大きな竹を3本ほど斜めに立て掛け、その脇に大きなテントを張り、そこへ短冊に願い事を書くというだけ。
昼間はそれだけであるが、祭りということで夕方には宴会が予定されているのでみんなはそれを心待ちにしている。
因みに七夕飾りだけを施した竹が6日の夕方から本館の出入口脇に設置されており、艦娘たちはそれをバックに写真を撮ったりしていた。
そんな中、テントには朝だというのにもう既に多くの艦娘たちでいっぱいになっている。その多くは任務や訓練前に願い事を書こうと思ってのことなのだろう。
「お〜、結構集まってんじゃねぇか」
テントの様子を見にきた提督がそう言うと、一緒に付いてきた阿賀野と矢矧も『本当だ』というように笑顔を浮かべている。
「あ、てーとく〜、みんな〜!」
「こっちこっち〜!」
提督たちを手招きするのはイベント委員会のイヨと千代田。その横には手伝いでヒトミと瑞穂もおり、提督たちへ笑顔でお辞儀していた。
「おう、ご苦労さん」
「差し入れにシロップサイダーと麦茶持ってきたよ☆」
「水分補給はしっかりね」
阿賀野と矢矧からそれぞれが入ったクーラーボックスを受け取ると、みんなして提督たちに感謝の言葉と笑顔を送る。
「イヨちゃん的には日本酒が良かったな〜」
「イヨちゃん!!」
いつもの調子のイヨに対し、ヒトミもいつものように『めっ』と注意するが、提督は「夜になったらしこたま飲め」と言われたので、イヨは「イーヤッフー!」とその場で飛び跳ねた。
「短冊は足りそう? 足りないなら色画用紙で追加で作るけど……」
一方、矢矧が千代田にそう提案する。
願い事を書く短冊は一人1枚と思われるが、鎮守府の七夕では一人で何枚も書いてもいいのだ。
その理由は織姫が機織りの名人であることから、元々は短冊にはお裁縫等、精進している稽古事の上達を願って書くものだったから。
よって、全くの他力本願ではなく自分が努力していることへの向上を願うのなら何枚書いても良いということで、提督もそういうことなら天に届くだろうと思い、このようにしたのだ。
「みんな何枚でも書いていいってなると意外と書かないのよね〜。だから全然余ってるし、追加で作らなくても平気かな」
千代田がそう答えると、矢矧は「へぇ」と意外そうに声をあげる。
「やっぱり、何枚でもってなると皆さん遠慮してしまうんでしょうか?」
「そうかもしれませんね……私も1枚書ければそれで十分ですから」
瑞穂、ヒトミとそんな話をしていると、
「でも書いてる人はめっちゃ書いてるよ!」
イヨが短冊の記録を書き残しているノートをみんなへ見せた。
どうして記録しているのかというと、自分がどんな願い事をしたかあとで確認したい子もいるかもしれないので、それが出来るようにしているのだ。
みんなして願い事をした本人たちに一言謝りつつ、どれどれ……と1ページ目から確認する。
島風:これからももっと早くなってみんなに及ぶ危険を早く排除出来ますように!
白露:妹たちや仲間たちにその人が思う一番の幸せを手に出来ますように!
時雨:提督が僕を今よりももっと愛してくれるよう、更に僕も提督へ愛を伝えるよ♡
村雨:これからもみんなの力になれるように、村雨のちょっといいところをもっといいところにしたいです
夕立:提督さんへ夕立の愛を去年より強く誓います!♡
長良:もっともっと努力してみんなを守ります!
阿武隈:みんなに名前を覚えてもらえました! 今度は漢字で書けるようになってもらうために努力します!
みんなの願い事に提督たちは思わず微笑む。時雨と夕立は相変わらずだが……。
神通:もっともっと精進し、皆さんの平和をお守りします
古鷹:平和な海を取り戻せるように、頑張ります!
加古:世界平和!
扶桑:これからも皆さんを守るため、鋭意努力して参ります
山城:みんなの笑顔がこれからもあふれますように
筑摩:あの方が私の愛で幸せになれますように
羽黒:あの人がこれからも笑顔でいられますように
榛名:少しでも榛名の愛が伝わりますように
飛鷹:無病息災
鳳翔:国の皆さんへ幸せが訪れますように
速吸:皆さんのお力になれますように
伊168:自分に出来ることを今後も精一杯出来ますように
伊401:みんな仲良く元気でいられますように
伊400:皆さんの願いが叶いますように
翔鶴:これからも瑞鶴と一生懸命頑張れますように
瑞鶴:翔鶴姉が無理しませんように
その後もノートには平和を願う者、姉妹や仲間を気遣う者、努力すると誓う者……とみんなの優しい願い事が綴られていた。
しかし、
由良:提督さんが由良をお嫁さんにしたいって思ってもらえるように、由良はこれからも提督さんへ愛を送ります♡
由良:提督さんryーー×100
「おい、由良だけで何ページ使ってんだよ!?」
このページから提督は吠えた。しかも由良の次にはそうそうたるガチ勢たちの願い事のオンパレードだ。
「えっと、1ページ29行で由良さんは100枚分書いてあるから……3ページ半分使ってます。他の皆さんも同じですね」
律義にヒトミが数えてくれたが、提督は「あぁもう、あぁもう!」と頭を抱えていてヒトミの言葉は耳に入ってこない。
その横では矢矧が「由良……」と天を仰いでおり、阿賀野はニッコリと笑ってそのままガチ勢の記録を消しゴムで消し始めている(全部ではなく1行残しに)。
「因みにガチ勢はみんな100枚の短冊に1回1回キスしてるよ☆」
「うわぁ、提督モッテモテ〜! ヒュー♪」
イヨの要らぬ情報と千代田の煽りに提督は「うわーん」と情けない声を上げた。
すると横から「ちょっと、提督が泣いてるじゃない」と陸奥が入ってくる。当然陸奥もガチ勢であるので、
「きゃぁぁぁっ! 陸奥もお願い事する気でしょ!? あの短冊100枚みたいに!」
提督は妙な言葉を並べて阿賀野の背後へ避難した。
「ちょっと……私1枚しか書いてないのにそんなに避けることないじゃない? むっちゃん悲しいわ」
陸奥はシクシクと泣きマネして提督にその短冊を見せる。
陸奥:愛する提督にこれからもいっぱい恩返しして、私がもらった幸せを返せますように♡
それを見ると、提督はちょっとホッとした様子で「ご、ごめんな陸奥」と謝った上で陸奥の頬を優しく撫でた。
「…………じゃあ、今夜の宴会でむっちゃんの所に一番に来てくれる?」
陸奥があざとくそう訊ねると、提督は頷く前に阿賀野の顔色を覗う。提督としては即答してあげたくても、妻の了承を得てからでないとあとで妻からこってり怒られてしまうし、妻を傷つけたくないのだ。
対する阿賀野は笑顔で「いいよ」と返した。阿賀野としては自分は最初から提督の側にいれるし、宴会中に提督が誰の元へ行こうと浮気はしないと信じているから。それにガチ勢もみんな(矢矧や高雄とか)の目があるところでは本当に食べよう(性的に)とはしない。
「おう、いいぞ」
「やった♡ 約束よ?♡」
提督の了承に陸奥はまるで少女のように笑い、その場でぴょんぴょんと軽く飛び跳ねる。
しかし、
「じゃあ、約束のキス……ん〜、ちゅっ♡」
提督の頬にキスをした。これには阿賀野も眼光を鋭くさせるが、陸奥はそそくさと訓練へ向かってしまったのでその怒りの矛先は提督の脇腹に向けられるのだった。
ーーーーーー
日も沈み、夜となればみんなが待ちに待った宴会の幕開け。
宴会の会場に選ばれたのは中庭で、そこには大テーブルを並べて、そのテーブルの上に食べ物をところ狭しと並べている。勿論、短冊を結んだ竹も立て掛けられ、ライトアップされてある。
宴会の食べ物は七夕の定番であるそうめんは勿論、ゴーヤチャンプルーやキュウリの一本漬け、ナス・トマト・ピーマン・オクラを使った夏野菜サラダ、トウモロコシの醤油焼きと様々な料理が並び、デザートには瑞々しいメロンやスイカ、ブドウ、マンゴー、ビワが並んでいる。
そして
索餅とは昔、七夕に食べられていた小麦粉と米粉を練って縄の形にして油で揚げた物。
「でっち〜、ゴーヤチャンプルー食べますって?」
「もう名前ネタは飽きたでち。ゴーヤは問答無用でメロンを食べるでち!」
ろーちゃんとゴーヤのやり取りを潜水艦たちは笑って眺め、自分たちもメロンやスイカを食べていた。
「夕張〜夕張〜」
「どうせ私はメロンみたいにたわわじゃないわよ!」
「大丈夫です! 夕張さんには小ぶりでも立派な夕張メロンが二つ実ってますから!」
「にゃぁぁぁ! もうやだぁぁぁ!」
一方、夕張は明石や大淀から定番のネタでイジられ、夕張はその怒りをぶつけるようにメロンにかぶりついている。
「やはり夏は冷えたキュウリの一本漬けに限るであります」
「ちょっとピリ辛なのがまたビールや日本酒に合いますよね」
あきつ丸の言葉に祥鳳はそう返して日本酒が注がれた朱色の盃を飲み干す。するとすぐに瑞鳳がお酒を注ぎ、瑞鳳は瑞鳳で冷えたキュウリに味噌を付け、それを肴に飲んでいた。
みんなが料理を楽しむ中、
「ほらほら天龍! 右だ右!」
「違う左だ」
「木にぶつかっちまうよ!」
中庭の桐木の下では天龍たちがスイカ割りを楽しんでいる。
天龍は目隠しをして木刀を手にしており、伊勢は右で日向は左だと指示を出して、深雪は木にぶつかると注意していた。
「あぁ、もう! おめぇら指示するならちゃんと出せよ!」
当然こんがらがる天龍は木刀をブンブンと振り回しながら文句を言っている。
すると、
「天龍ちゃ〜ん、右よ〜」
妹の龍田がそう言うので、天龍は「さっすが龍田!」と妹を信じて右に向かうことにした。
しかしその方向には、
「うふふ〜、提督が約束を守ってくれて嬉しいわ〜♡」
「まぁ、これくらいはな」
提督と陸奥が仲良くお酒を飲んでいる。
陸奥は上機嫌で提督の右腕に自身の左腕を絡め、花びらが舞っているような雰囲気。
「天龍ちゃ〜ん、そのまままっすぐよ〜♪」
「お〜う!」
そして天龍は木刀を手に提督の方へまっしぐら。
みんなそれが可笑しくて笑いを堪えており、誰も止めに入ろうとしない。
天龍が提督にぶつかるまで少しとなると、龍田はとある3人へ手を振って合図を送る。
「司令、後ろ後ろ」
「司令官後ろー!」
「司令官、後ろだよ」
すると不知火、朝潮、響がクスクスと笑いながら提督にそう言うと、提督は「んぉ?」と振り返った。
ぽふっ
「ん?」
「あ?」
龍田の計算通り、天龍は提督の胸板に顔を埋める。
しかも提督は優しさから天龍が倒れないよう、空いている手を天龍の腰に回して抱き寄せている風にしていた。
「…………あぁ、提督か。悪ぃ」
「天龍、俺がスイカだと思って頭かち割りに来たのか?」
「ははは、んな訳ねぇだろ! 龍田の声に従ってたら提督の所に来ちまったんだよ!」
天龍は笑って謝り、そう言ってやっと目隠しを取る。
しかしこんな和やかムードで龍田のイタズラが終わるはずがない。
「…………」
案の定、龍田は例の3人へパチパチと指を鳴らす。
「天龍さんは凄いですね」
「は?」
「目隠ししてても司令官だって分かりましたもんね!」
「え?」
「ぶつかった時に少し司令官の匂いを嗅いでたよね」
「へぁ!?」
響からのトドメの言葉に天龍は光の国にいる宇宙警備隊員みたいな声をあげた。
「天龍ちゃんは提督のことがだぁい好きだから、匂いで分かっちゃったのよね〜」
「う、うるせぇ! お前だって提督を匂いで識別出来るだろうが!」
イタズラ大成功!ーーと書かれたプラカードを持って暴露してくる龍田に、天龍も負けじと暴露するが、
「そりゃあ、私だって提督のことは好きだもの〜♪」
龍田は全く怯まない。寧ろ楽しんでいる。
それを当然、阿賀野も近くで見ているが浮気ではないので割って入ろうとはせずにニッコリしながら見ているだけ。そもそも天龍も龍田もLikeの意味で好きだと分かっているから。
動じない龍田を前に天龍はぐぬぬと悔しそうに唸るも、
「天龍〜、今は私が提督を独占してたのにズルいわ〜。今も天龍に抱きしめられてるし〜」
陸奥にツッコミを入れられて、天龍はやっと今の状況を思い出して提督から離れた。
「と、とりあえず悪かったな……んじゃ」
天龍は耳まで真っ赤にしてそそくさと退散。しかし周りからはそうとう冷やかされたので、その行き場のない怒りをスイカに叩きつけてたそうな。勿論、そのスイカはみんなで美味しく頂いた。
それから大食い大会や有志発表もあり、最後は短冊を飾った竹を燃やし、満点の星空へみんなして祈りを捧げるのだったーー。
ーちょっとしたおまけー
わんこそうめん大会の結果(1杯15g)
1位:雲龍 ・量:800杯
2位:海風 ・量:685杯
2位:山風 ・量:685杯
4位:赤城 ・量:260杯
5位:加賀 ・量:238杯
優勝賞品
三ツ星ホテルバイキングへ四名様ご招待券
※雲龍は海風たちがギブアップしたあとも食べ続けたが、そうめんが先に底をついたため記録は800で止められた。しかし本人はまだまだ入るとのこと。その証拠に大会後も別の料理をモキュモキュしていた。
1キロ索餅早食い勝負の結果
1位:弥生 ・タイム:5分34秒
2位:大和 ・タイム:7分06秒
3位:アイオワ・タイム:10分53秒
4位:金剛 ・タイム:17分26秒
5位:福江 ・タイム:55分09秒
優勝賞品
ケーキバイキングへ四名様ご招待券
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七夕は過ぎちゃいましたが、今回は七夕回ということで書きました!
読んで頂き本当にありがとうございました!