今年も頑張って更新するので、よろしくお願い致します!
『明けましておめでとう。今年も緩みも力みもせずに鋭意努力して、みんなで頑張っていこう』
国歌斉唱で始まった新年最初の朝礼会は、今提督の挨拶で大広間に集まった艦娘たちが気持ちを引き締めてしっかりと聞いている。中には二日酔いで青ざめている者もいるが、姿勢は崩さずに提督の言葉を聞いていた。
何故なら、
『それでは、みんなお待ちかね……お年玉授与式だぜ、こらぁぁぁぁぁっ!』
このためである。
不謹慎かもしれないが、これはこれで元旦からも任務に就く艦娘たちのモチベーションを上げるために必要なことだ。
全艦娘へ三千円……その額を湿気た額と思う者はいない。全ては提督のポケットマネーであり、家族として平等に自分たちへお正月らしいイベントをしてくれるのが嬉しいという気持ちが強いからだ。
駆逐艦から順番にお年玉を受け取り、この時にそれぞれが提督へ新年の挨拶と抱負を伝える。面々の中には嬉しさのあまり涙を流しながら受け取る感動屋さんがいたり、このお年玉で提督に美味しいものを作ってあげようとする者や一緒に遊べる物を買おうとする天使たちもいた。
提督はそんな者たちから新年早々温かい気持ちを受け取り、今年もみんなが笑顔で過ごせるように頑張ろうと誓うのだった。
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お年玉授与式も無事に終わると朝礼会も終わり、艦娘たちは解散後、訓練や遠征、演習……そして出撃の準備に入る。
たまたま本日休みの者たちは、外で元気に羽根つきや凧揚げをしたり、部屋で福笑いやカルタをして正月を満喫。
「さて、んじゃ早速仕事をしますか!」
そして執務室でも、提督と阿賀野たちが執務を開始する。
「…………にしても、今年も正月休みをみんなに与えてやれなくて、申し訳ない気持ちでいっぱいだなぁ」
書類にサインをしながら提督が申し訳なさそうにつぶやくと、阿賀野たちが揃ってそんなことないと首を横に振った。
「相手が相手だし、国民の人たちが楽しいお正月を過ごせるように国を守るのが、阿賀野たちのお仕事だよ」
「阿賀野姉ぇの言う通りです。それに夜には新年会も予定してくださってますし、誰も不満を抱きませんよ」
阿賀野と能代の言葉に矢矧と酒匂もそうそうと笑顔で頷いてみせる。そんな阿賀野たちの心遣いに提督は小さくお礼を言って、また書類へサインしていった。
「ま、正月休みでだらけ過ぎて太っちゃった〜……みたいなことにならないから、私はいつも通りに過ごしてる方がいいと思うわよ?」
矢矧はそう言うと、阿賀野の方をチラリと見る。
「大丈夫! もしお正月休みでも、阿賀野は提督さんとお布団の中で二人で有酸素運動して過ごすから!」
ドヤァっとした顔で阿賀野が返すと、矢矧は「変態!」と何故か提督の頭をハリセンでしばく。それは実の姉をハリセンでは叩けないが故の行動だった。
「
唐突のことに何故か提督は武家言葉で返してしまった。矢矧は提督の混乱ぶりを見て「あ、ごめんなさい。つい……」と謝罪するが、
「うわぁぁぁん、阿賀野〜! やはぎんが正月早々しばいたぁぁぁ! 何もしてないのにぃぃぃ!」
提督は阿賀野が座るソファーへ嘘泣きしながら行ってしまう。
阿賀野はそんな提督を優しく受け入れ、ヨシヨシと叩かれたところを優しく擦る。
「よ〜しよし、今日はずっと阿賀野の隣にいるといいよ、提督さん♡」
妻の優しさに触れ、提督は「マイ ワイフ 最☆高」と新年早々イチャイチャした。いつもならば矢矧のハリセンが飛ぶのだが、今回ばかりは矢矧も自分に落ち度があると思って手が出せず、グッと堪えるのだった。
「矢矧ちゃん、お茶飲む?」
「えぇ、お願い。酒匂……」
「苦いの淹れるね〜」
酒匂の絶妙な気遣いスキルもあり、執務室の風景も正月から変わりなく穏やかに(?)過ぎていくのであった。
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そんなこんなで元旦の任務が滞りなく終わり、時間が一八〇〇となると、全員が食堂へ集合する。
新年会を報せる提督が開会宣言を済ませると、今度はみんなして一旦外へ出る。
食堂の前では妖精たちが餅つきの用意を整えており、これから冬空の下で餅つきをし、ついたお餅を間宮特製のおしるこや伊良湖特製のきなこやみたらし、そして鳳翔・瑞穂・速吸・神威、更に提督のお雑煮で味わうのだ。
因みに各お雑煮は以下の通り。
鳳翔:湯を張った鍋に牡蠣を入れ、牡蠣の出汁と醤油で味を調えたすまし汁仕立て。具は牡蠣、白菜、人参、春菊。
瑞穂:鰹節と昆布の出汁に醤油を入れるすまし汁仕立て。具は椎茸、鶏肉、長ネギ。
速吸:鰹出汁と昆布出汁ベースのすまし汁仕立て。具は白菜、ごぼう、かまぼこ、ちくわ、ブリの切身。
神威:鰹節と昆布で出汁を取り、白味噌で味を調えた味噌仕立て。具は人参、大根、結んだ三つ葉、鶏肉。
提督:鰹出汁に麺つゆで味を調えたすまし汁仕立て。具は長ネギ、鶏肉のみ。
みんなしてお雑煮の食べ比べは勿論だが、シンプルに焼き餅に醤油で堪能している者いた。
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餅で腹ごしらえを終えると、お次は伊勢や日向、扶桑や山城たちが指揮する瑞雲隊が夜空を華麗に舞う。
「あれはなんだ!?」
そして当然の如く、瑞雲を見るなり若葉が叫ぶ。
勿論、若葉に続き、普段は真面目な初霜も「瑞雲です!」と叫んだ。
すると瑞雲は徐々に高度を下げ、艦娘たちの頭上にお菓子をばら撒いていく。
みんなは降ってくるお菓子をワイワイと拾い集めているが、
「大変だ! 降ってきたお菓子の中にコーラのペットボトルがあったよ! あの角度なら中枢部をやられたはず! きっと爆発してしまうよ!」
漣がそんなことを叫ぶと、
「みんな下がれ! 早く! 爆発する!」
漣につられるように朧もお約束のセリフを叫んだ。
ここまでくればあとはネタを知っている者たちが、声を揃えて「ほあああああっ!!」と叫び、正月早々の茶番劇が幕を閉じる。
この茶番にはもうみんな慣れてしまったので、また始まったとばかりに笑って一連の連携を見ているが、各姉妹たちは少し複雑そうな表情をしていた。
「提督、今年もお菓子撒き成功ね!」
みんなが楽しげにお菓子を拾う中、伊勢は提督のそばへ駆け寄り、声をかける。しかも自然な流れで提督の左腕に抱きついて……。
あとから日向や扶桑姉妹もにこやかにやってきたので、提督は「おう、そうだな! みんなありがとよ!」とお礼を言ってみんなにもお菓子の入った袋を渡す。
「ありがと、提督♡」
「ありがとうございます、提督」
「扶桑姉様や妖精さんたちと仲良く頂きますね」
「私も瑞雲妖精たちと食べるか」
「おう、そうしてくれ」
笑い合った提督と伊勢たちだったが、阿賀野のヤキモチで脇腹をつねられたのは秘密である。
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餅つき、菓子撒きと終えると、今度はみんなして食堂へと入り、暖を取りながら有志発表会に移った。
お馴染みの司会者・大淀によって紹介されてみんなの前に立ったのは、
『明けましておめでとうございま〜す』
ガチ勢の由良、
『ども〜、恐縮です』
『頑張るわ』
『一航戦、加賀歌います』
『みんなでこの日のためにレッスンしたネ!』
『こういう余興もたまにはいいだろう』
青葉と陸奥、加賀、金剛、武蔵の名だたるガチ勢たち。
みんなそれぞれ和ゴスのお揃い衣装。由良はピンク、青葉はエメラルドグリーン、陸奥はパープル、加賀はブルー、金剛はイエロー、武蔵はレッドを基調とした衣装であり、両方の袖縁には黒のフリルがあしらわれている。ミニスカートは全員統一されたブラックで二段の各メインの色と同じカラーのフリルがあしらわれており、ウエスト部分にフリルと同じくメインカラーの大きなリボンがある。そしてみんなセクシーな黒タイツが眩しく光る。
6人が配置に着くと、妖精音楽隊が「神のまにまに」を奏で、音楽に合わせて由良たちは息の合ったダンスを披露する。
『思い通りにいかないことだらけーー♪』
まずは由良が綺麗な歌声を披露し、
『いっそ 岩の隙間に引きこもってーー♪』
続くフレーズは青葉が歌い上げる。『眠ろう』という歌詞の時に青葉は提督へウィンクすると、提督は軽く手をあげて返した。
全員で『でも』と合わせ、続く歌詞を陸奥と加賀が綺麗なハモリで歌い上げ、『そうさ』と全員で声を揃えてサビに入る。
『神のまにまに〜♪ 仰せのままに〜♪ 誰だってーー♪』
本当ならば続きの歌詞は『地球を愛してる』なのだが、そこはガチ勢。全員で『提督 愛してる』と歌詞を変えて歌った。
これにはみんな黄色い声や冷やかすような声をあげたが、提督は隣に佇む阿賀野から脇腹をつねられ、困ったような笑顔しか返せなかったのが現実である。
その後も完璧に歌い上げ、
『愛を送ろう〜♪ 大きな愛を〜♪ 天まで届くくらいの〜♪』
と替歌で盛大な告白をしながら最後は全員で提督へ『受け止めて!♡』と叫び、投げキッスで締めくくった。
黄色い歓声と共にガチ勢は退くが、その歓声の中には脇腹をつねられて悲痛な提督の叫びも混じっていた。
大淀が次の有志たちを呼ぶと、球磨型姉妹が前に立つ。
球磨型姉妹はみんなお揃いのシルク素材で出来たブラックのミモレ丈肩出しAラインドレスに、二の腕まで覆えるオペラ・グローブとショートソックスを着用(どれも黒で統一)。しかしスカートの縁にはラメ入りのフリルがあしらわれており、球磨がホワイト、多摩がイエロー、北上がピンク、大井がレッド、木曾がライトブルーで、腰の背中部分にあるフリルリボンと履いているヒールもその各色と同じ色である。
始まった曲は「気まぐれメルシィ」で、前列は左から球磨・木曾・大井、後列は3人の間から見えるように多摩・北上と並び、一寸違わないステップを見せる。センターで踊る木曾は少々照れているようだが、精一杯の笑顔をみんなへ送っていた。
『ーー「でもね」「だって」♪』
木曾がそこまで歌うと今度は大井がセンターへと移り、
『ーーパターンって感じ?♪ 安易♪』
まで歌う。するとまたセンターが移り、
『ーーもううんざりだわ!♪』
と北上が歌い終えると、自然な流れで北上が後ろに下がり、前列に大井と多摩が出て来る。
サビを姉妹で歌い、『そもそも』のところから配置を変え、今度は木曾と球磨が前列に出る。
そして『抱きしめてよね』の部分に来ると、北上が最前列まで出てきて逆ピラミッド型の配列に変わり、またダンスによって配置が変わっていく。
続く『ホントキミはーー♪』からはセンターになった多摩が綺麗に歌い上げ、『どんなアピールもーー♪』の部分は球磨がセンターで元気に歌い上げた。
その後も可愛らしいダンスと素晴らしいステップを披露した球磨型姉妹。発表が終わると大きな拍手喝采が巻き起こり、その中で球磨と多摩は提督へウィンクを飛ばした。
当然、この時も阿賀野に脇腹をつねられていた提督は複雑な顔で手を振ることだけに留まるのだった。
そのあとも次々と有志発表と大食い大会、早食い大会が行われ、元旦の夜は賑やかに更けていき、鎮守府の新年会は大成功して終えた。
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解散後、風呂も済ませた夫婦は布団に転がって他愛もない会話をしていた。
「お風呂に入った時に見たけど、慎太郎さんの脇の腹……真っ赤だったね〜」
「ほぼほぼ阿賀野のせいだろうが……」
「うぅ〜……だって〜」
「浮気はしねぇっていつも言ってるだろ? 嫉妬させちまうのは、本当に申し訳ねぇと思ってるがよ……」
苦笑いを浮かべながら提督がそう言うと、阿賀野は「それは信じてるけどぉ」と返しながら提督の胸板へ顔を埋める。
提督はそんな阿賀野の頭を優しく撫でると、阿賀野も自分が新年会中ずっとつねっていた所を優しく擦った。
「まだ痛い、よね?」
「まぁジンジンしてるわな」
「由良ちゃんたちに投げキッスされて、頬緩んでた〜。うわ〜ん」
「すまぬ……」
「はぁ……慎太郎さんも男だもんね〜。みんな可愛いしキレイだから、デレデレしちゃうよね〜」
阿賀野の愚痴に提督は謝りながら、阿賀野のことを優しく抱きしめた。こんな時に下手な言葉をかけるより、行動で示した方が阿賀野は喜ぶからだ。
その証拠に阿賀野は嬉しそうに笑い声をもらしている。すると阿賀野がふと顔を上げ、提督のことを見ると、そのまま唇を重ねた。
提督は拒むことなくそれを受け入れると、阿賀野の舌がチョイチョイと提督の舌先を撫で、自分の方へと誘ってくる。
素直に誘われ、舌を入れていくと、小刻みに甘噛みされ、舌全体を優しく愛撫された。
長く甘い口づけが終わると提督は肩で息をしていたが、対する阿賀野は妖艶な笑みを浮かべて余裕の表情だった。
そんな阿賀野の笑みから目が離せないでいると、先程まで脇腹を擦ってくれていた手が自分の下半身へと移動してくる。
「……今年"初"、シよ?♡ 阿賀野だけがもらえる、慎太郎さんの愛情たっぷりの"お年玉"ちょうだい♡」
「…………ちょうだいとか言ってて、もう既に手で遊ばれてるんだが?」
「知らな〜い♡」
知らんぷりを決める阿賀野に提督はこいつ……と思ったが、惚れた弱味で何も言い返せなかった。
なので提督はゆっくりと阿賀野に覆い被さり、
「"お釣り"が出るくらい、お年玉をやるよ」
と耳元で優しくつぶやいた。
阿賀野はその瞬間、体中に電気が走る。しかしそれは嫌な感覚ではなく、とても甘美な刺激だった。
「今年もいっぱい嫉妬しちゃうと思うけど、その分いっぱい愛してね♡ 阿賀野もい〜っぱい愛すから♡」
「おう、今年もよろしくな」
こうして夫婦の元旦の夜は長く甘く朝まで続くのだったーー。
ーちょっとしたおまけー
おせち料理(重箱の)大食い大会の結果
1位:雲龍 ・量:?段
2位:海風 ・量:18段
3位:武蔵 ・量:8段
4位:アイオワ・量:5段
5位:飛龍 ・量:4段
雲龍は2位が決まった時点で(ryーー。
優勝賞品
ハムの詰め合わせ(18キロ相当)
寿司(サビ入り)100貫早食い勝負の結果
1位:海風・タイム:3.26秒
2位:山風・タイム:35.52秒←ワサビ苦手
3位:赤城・タイム:5分45秒
4位:加賀・タイム:7分32秒
5位:瑞鶴・タイム:30分8秒
優勝賞品
回転寿司食べ放題チケット(5名一組)
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はい、ということで新年一発目の更新はこのような回になりました!
次はいつ更新出来るか言えませんが、気長にお待ち頂けると幸いです!
では良いお正月をお過ごしください☆
因みに『気まぐれメルシィ』はYouTubeにあります、【MMD】ピカピカ衣装で「気まぐれメルシィ Kimagure Mercy」という動画をモデルに書きました。
読んで頂き本当にありがとうございました!