仮面ライダーAP   作:オリーブドラブ

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◆今話の登場ライダー

◆エドゥアルド・オリクルカム/仮面ライダーSPR-07リペアスパルタン
 北欧某国の陸軍技術中佐であり、精鋭陸戦部隊「マルコシアン隊」の隊員。スパルタンシリーズの製造を担当していた開発主任であり、自身も外骨格を纏い前線に加わっている武闘派。彼が装着するリペアスパルタンは、古代遺跡から発掘されたオーパーツを基盤に「修復」された機体であり、極めて強度の高いブレストプレート状の胸部装甲が特徴となっている。また、両肩部には煙幕射出装置(スモークディスチャージャー)を搭載している。当時の年齢は44歳。
 ※原案はリオンテイル先生。

◆ガーベッジ・オャスン/仮面ライダーラビッシュスパルタン
 北欧某国の陸軍曹長であり、精鋭陸戦部隊「マルコシアン隊」の隊員。エドゥアルドと共にスパルタンシリーズの開発に携わっていた整備兵であり、戦友達を1人でも生き残らせるために即興の外骨格を組み上げて戦線に加わっていた。彼が装着するラビッシュスパルタンは余剰部品を使って即興で開発された急造機であり、胸部に仕込まれた2基目のスパルタンドライバーが特徴となっている。当時の年齢は59歳。
 ※原案は秋赤音の空先生。



黎明編 仮面ライダースパルタンズ 第13話

 

 激化の一途を辿るエンデバーランドの市街地戦。その戦場から脱出するべく、生き残った市民達は市外に繋がる列車に乗り込み、駅のターミナルを後にしていた。だが、大勢の避難民を乗せたその車両は、グールベレーの隊員に捕捉されていた。

 

 指揮官から「殲滅」を命じられている彼らには「人道」の2文字など通用しない。グールベレー隊員にとっては避難民達を乗せた列車など、獲物を乗せて動く棺桶に過ぎないのだ。

 しかし、列車の襲撃を目論んだグールベレー隊員は、未だに1人も殺せていない。自身の狙いを察知し、スパルタンハリケーンを走らせて来たマルコシアン隊の妨害を受け、一騎打ちに持ち込まれたのである。

 

 市外を目指して線路を走る列車。その車両の上で対峙するグールベレー隊員と、マルコシアン隊のスパルタン。両者の決闘は熾烈を極めたが――やはりここでも、「上位互換」であるグールベレー隊員が優勢となっていた。

 

「ふふっ……威勢よくこの車両に飛び乗って来た割には、大した腕ではなかったようだ。さては貴様、本職の兵士ではないな?」

 

 緑色のブレストプレート型胸部装甲を装着している、グールベレー隊員。彼は同色の鋼鉄手甲(ガントレット)を眼前に突き出し、勝ち誇ったような笑みを浮かべている。暗赤色のベレー帽を被った屈強な軍人。その双眸は、目の前で片膝を着いているスパルタンの戦士を冷たく見下ろしていた。

 

「……」

 

 彼と対峙しているのは、スパルタンシリーズ第7号機――「SPR-07リペアスパルタン」。スパルタン計画の基礎技術にも活かされた、古代遺跡からの発掘品(オーパーツ)を再利用した試作機だ。当時発掘された、胸部のみのパワードスーツらしき残骸をベースに、スパルタン計画の試作機として可能な限り修復(リペア)されたものであるため、その名を冠している。

 

 その外観はシンプルに形容するなら、「仮面ライダーストロンガー」の頭部のみを「仮面ライダー1号」のものに差し替えたような姿だ。SPARTAN(スパルタン)を意味する「S」の一文字が刻まれている、真紅のブレストプレート。その胸部装甲はかなりの硬度であるらしく、激しく傷付いていながらも未だに原型を保っている。苛烈な肉弾戦の中で何度激しく殴打されても、この鎧だけは砕かれずにいるのだ。

 

「……ふん。たかが技術屋風情(・・・・・)を相手に、随分と手こずっているようだな? グールベレーとやらの程度も底が知れるというものだ」

 

 この外骨格を纏うのは――マルコシアン隊の技術顧問でもあり、全スーツの開発・整備を担当していた、開発主任のエドゥアルド・オリクルカム技術中佐だ。彼は自ら発掘した古代技術を投入したこの機体で、今回の作戦に参加していたのである。

 

 「上位互換」であるグールベレー隊員に何度叩きのめされ、片膝を着いても、仮面に隠された彼の双眸から闘志の火が消えることはない。不敵な笑みすら浮かべて立ち上がる彼と向かい合い、グールベレー隊員は鋭く眼を細めている。

 

「貴様の装甲……やはり、事前に仕入れた情報通り。いや、それ以上の硬度だな。その装甲に秘められた古代技術を入手すれば、我らシェードの改造人間はさらに飛躍的な進化を遂げられる。渡して貰うぞ、在るべきところへな」

 

 グールベレーをはじめとするシェード北欧支部が今回の侵攻を企てたのは、改造人間の優位性を証明するためだけではない。以前から確保目標としていた、エドゥアルドの古代の胸部装甲(オーパーツ)を奪取することも目的に含まれていたのだ。その使者であるグールベレー隊員はリペアスパルタンの胸部装甲に視線を移し、手甲を装着した拳をギリッと強く握り締める。

 

「在るべきところなら間に合っている。この力は、この国を……この街を。ここに生きる人々を護るために在るものだ。貴様らの道楽に付き合わせるためのものではない」

 

 一方、グールベレー隊員に対して拳を構えているリペアスパルタンも、そのファイティングポーズで徹底抗戦の意志を示していた。どれほど傷付いても屈することのない、鋼の意志。その姿勢を目の当たりにしたグールベレー隊員は、非力な人間の悪足掻きを嗤い――拳を構え直していた。

 

「ふん、良かろう。ならばこの列車に居る人間共を殺し尽くし、その存在意義を根底から否定してやる。……目障りな貴様を黙らせた後でなッ!」

「……言ったはずだぞ。貴様らの底など知れているとなッ!」

 

 刹那。リペアスパルタンは足元を蹴り、一気にグールベレー隊員の懐に飛び込んで行く。その挙動を見切っていたグールベレー隊員も、迎え撃つように鉄拳を振るっていた。エンデバーランドからの脱出を目指す列車の上を舞台に、男達の拳闘が始まる。

 

「ぬぅッ! とぉあぁあッ!」

「ぬぁああィッ!」

 

 互いに次の一手を読み合い、渾身の鉄拳を交錯させる。迫り来る拳撃をスウェーでかわし、反撃の1発を繰り出す。その応酬は長く続いたが――先に一撃を叩き込んだのは、「本職」の戦闘員であるグールベレー隊員だった。

 

「ぬぅおぁあッ!」

 

 弧を描くように繰り出されたフックが、リペアスパルタンの胸部に炸裂したのである。グールベレー隊員の体重を乗せた渾身の一撃。その苛烈な衝撃を浴びた瞬間、これまで如何なる攻撃にも耐え抜いて来た胸部装甲が、ついに破損する。

 

「ぐッ、ぉあッ……!」

 

 鋭利な破片が散らばった程度の「小破」とはいえ、古代の超技術から生み出されたリペアスパルタンの胸部装甲が、ついに破られてしまったのだ。その衝撃は装着者であるエドゥアルド自身にも及び、彼は仮面の下で血を吐きながら後退してしまう。

 

「ぐお、ぉッ……! まさか、この装甲がッ……!?」

「……並の幹部怪人では破壊出来なかっただろうな。だが俺達は、そんな領域などすでに超越しているグールベレーの戦闘員だッ!」

 

 シェード北欧支部最強の精鋭であるグールベレー隊員が、その隙を見逃すことはない。彼はリペアスパルタンが数歩引き下がった瞬間、一気に間合いを詰めて全力のストレートパンチを叩き込む。

 

「ぐはぁあぁあッ!」

 

 さらに激しく殴り飛ばされたリペアスパルタンは、車上を何度も転がり倒れ伏してしまう。その衝撃に車内の避難民達は悲鳴を上げ、身を寄せ合っていた。彼らの声を耳にしながらも、グールベレー隊員は悠然とした足取りでリペアスパルタンに近付こうとする。

 

「……貴様が発見したその装甲は確かに脅威だ。我々が確保目標の一つと定めるほどにな。だが、脅威となるのはその胸部装甲のみ。『最強の盾』がある、というだけだ」

「ぬ、うぅッ……!」

「だが俺には、貴様の装甲をも穿てる『最強の矛』があり……その鎧に限りなく近しい装甲も身に付けている。まさしく、『矛』と『盾』を兼ね備えた完全上位互換ということだ」

 

 防御力の面で僅かに優位に立っているというだけ。それ以外の要素で劣っている以上、貴様に勝ち目はない。そう告げるグールベレー隊員は、リペアスパルタンの頭を掴んで無理やり立ち上がらせる。ダウンなど許さない、と言わんばかりだ。

 

「冥土の土産に覚えておくのだな。真に最強たる『盾』は……最強の『矛』をも兼ねるのだということをッ!」

「……ッ!」

 

 そして、今度は頭部を破壊しようと鉄拳を振るう。だが、このままとどめを刺されるリペアスパルタンではない。彼は渾身の力でフックを繰り出し、グールベレー隊員の鉄拳をいなしてしまう。

 その隙に相手の胸板を蹴り付けた彼は、反動を活かして拘束から逃れ、華麗に宙返りしていた。空中で一回転しながら着地したリペアスパルタンは、その衝撃をバネに足元を蹴り、全身全霊を込めたストレートパンチを突き入れる。

 

「ぬぅッ……ぉおおッ!」

「……こッ、のッ……人間如きがァッ!」

 

 しかし、グールベレー隊員の胸部装甲はこの攻撃にさえ耐えてしまう。「最強の矛」ではない拳では、この緑色の鎧を貫通することは叶わないのだ。リペアスパルタンの鉄拳を胸板で受け止めた彼は、間髪入れず相手の胸部にカウンターパンチを叩き込む。

 

「ぐ、ぉあッ……!」

 

 その一撃をまともに喰らったリペアスパルタンは、再び片膝を着いてしまうのだった。仮面の顎部装甲(クラッシャー)から、エドゥアルドの吐血が溢れ出す。しかし彼はそれでもなお、立ち上がろうとしていた。そんなリペアスパルタンの姿を、グールベレー隊員は冷酷に見下ろしている。

 

「……確かに貴様は大した奴だ。その古代の超装甲(オーパーツ)ありきとはいえ、この俺の攻撃をここまで耐え凌ぐとは。だが……どこまで行っても、やはり貴様自身はただの人間。苦しむ時間が僅かに延びただけだったようだな」

 

 例え胸部装甲の硬度がどれほど優れていても、装着者自身の耐久力が貧弱では意味が無い。その面においても、エドゥアルドという男が脅威であるということは、このグールベレー隊員も理解していた。

 

 だからこそ、この男はここで始末しておかねばならない。その判断に至ったグールベレー隊員は緑色の手甲を振り上げ、今度こそリペアスパルタンの頭部を殴り潰そうとする。

 

「……!?」

 

 ――しかし、次の瞬間。彼の視界の端に、「新手」の影が映り込んで来た。リペアスパルタンがこの列車に乗り込んで来た時のように、1台のスパルタンハリケーンがここまで追い掛けて来たのである。

 

「いいや……違うッ! 主任が延ばした時間の値打ちは、そんなもんじゃねえッ!」

「なにィ……!?」

 

 スパルタンハリケーンに跨り、咆哮を上げて迫り来る壮年の男。そんな思わぬ「増援」の出現に、グールベレー隊員は瞠目する。しかし彼が特に驚いたのは、そこではなかった。

 

 増援の男――ガーベッジ・オャスン曹長が装着していたのは、スパルタンシリーズの外骨格と呼ぶにはあまりにも「粗末」な鎧だったのだ。「大量発生型相変異バッタオーグ」を想起させる外観でありつつも、その装甲は前面にしか装着されていないものだったのである。

 

「余剰部品で組み上げた即興のガラクタでも……使い道はある。そいつを証明してやるよ! 主任が作ってくれた、この時間でなァッ!」

 

 シェードによる襲撃が始まった直後、基地に残されていた余剰部品を組み上げて急造された即興品――「ラビッシュスパルタン」。

 正式名称も型式番号も持たず、案山子(ダミー)用の装甲板で造られたこの機体を纏うガーベッジは、リペアスパルタンをはじめとする仲間達を1人でも生き残らせるために駆け付けて来たのだ。

 





 今回はリペアスパルタン&ラビッシュスパルタン回の前編。このバトルは次回にも続きますので、どうぞ最後までお楽しみに!٩( 'ω' )و

 さてさて、それではここで大事なお知らせ。現在、X2愛好家先生が本作の3次創作作品「仮面ライダーAP外伝 Imitated Devil(https://syosetu.org/novel/316771/)」を連載されております。本章から約10年後の物語である外伝(https://syosetu.org/novel/128200/44.html)から登場した「仮面ライダーオルバス」こと忠義・ウェルフリットが主人公を務めております!
 こちらの作品の舞台は、本章から約12年後に当たる2021年7月頃のアメリカ。悪魔の力を秘めたベルトを使う、ジャスティアライダー達の活躍に焦点を当てた物語となっております。気になる方々は是非ともご一読くださいませ〜!(*≧∀≦*)

 さらに現在は、ダス・ライヒ先生の3次創作作品「仮面ライダーAP アナザーメモリ(https://syosetu.org/novel/313018/)」も公開されております! 本章から約11年後に当たる2020年8月頃を舞台としており、こちらの作品では数多くの読者応募キャラ達が所狭しと大活躍しております。
 多種多様なオリジナルライダーやオリジナル怪人達が大暴れしている大変賑やかな作品となっており、さらには本章の主役であるジークフリート・マルコシアン大佐も登場しております。皆様も機会がありましたら是非ご一読ください〜(*^▽^*)

Ps
 第6話や第11話で、ジュリウスとリーナが言及していた開発主任とは、もちろんエドゥアルドのこと。第4基地組は特に問題児ばかりですし、彼も色々苦労していたのでしょう……(´・ω・`)

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