仮面ライダーAP   作:オリーブドラブ

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◆今話の登場ライダー

◆ヨハンナ・ヴィルタネン/仮面ライダーSPR-08クラッシャースパルタン
 「地獄の第4基地」から選抜された北欧某国の陸軍少尉であり、精鋭陸戦部隊「マルコシアン隊」の隊員。士官学校を出てから1年も経っていない新任少尉だが非常に自信家であり、それに見合う実力も兼ね備えている。彼女が装着するクラッシャースパルタンは、他のスパルタンシリーズよりも大型に見えるほどの重装甲を有している機体であり、左腕のパワーアームや右腕のパイルバンカー、両脚のキャタピラレッグなどが特徴となっている。当時の年齢は24歳。
 ※原案はMegapon先生。



黎明編 仮面ライダースパルタンズ 第12話

 

 アサシネイトスパルタンことリーナが、美術館内の戦いでグールベレー隊員を仕留めていた頃。その施設の外側でも、マルコシアン隊とグールベレーの激闘が繰り広げられていた。

 強力な武装を持つパワーファイター同士のぶつかり合いは周囲に轟音を響かせ、戦闘に巻き込まれた美術館の外壁を破壊し続けている。辺りには巨大な瓦礫が散乱しており、この一騎打ちの激しさを物語っていた。

 

 ――だが、やはり。あらゆる面においてスパルタンシリーズの基本性能を凌駕しているグールベレー隊員は、全員かなりの強敵であるようだ。

 無骨で巨大な接近戦用装備を持つ、ベレー帽の戦士。その仇敵を前に、同系統の装備で身を固めている外骨格姿の戦乙女は、度重なる激突を経て満身創痍となっていた。スパルタンシリーズ第8号機――「SPR-08クラッシャースパルタン」は、すでに大破寸前だ。

 

 全身を黒基調の装甲で固めているその勇姿は、接近戦に特化した重武装で固められている。頭部は「仮面ライダーシーカー」のものとなっており、上半身部分は「仮面ライダーグリス・パーフェクトキングダム」を想起させる形状となっていた。さらに下半身はキャタピラレッグを装備した「仮面ライダーバース」を彷彿させる形状であり、それ以上に重厚な装甲で保護されている。

 

 他のスパルタンシリーズと比べても比較的大型であり、その背中には2本1対のサブアームが搭載されている。だが、重装甲だからといって鈍重というわけではない。両脚のキャタピラレッグによる走破性ならば、瓦礫が散乱しているこの場でも問題なく高速移動出来るのだ。

 

 そして、何より特筆するべきは両腕に装備された重武装。「仮面ライダーグリスブリザード」のものを想起させる左腕のロボットアームは、戦車の装甲さえ一撃で破砕するほどの威力を持っている。さらに右腕には、「ツインブレイカー」を大型化したような形状のパイルバンカーまで装備されているのだ。どちらの武装も、シェードの改造人間に通用し得るほどの破壊力を秘めている。

 

「……やっぱ、頭まで弄られてる改造人間じゃあ……人間様の芸術は理解出来ない、ってこと? ここまで来ると哀れなものね」

 

 そんなクラッシャースパルタンの装着者であるヨハンナ・ヴィルタネン少尉は、劣勢に立たされてもなお仮面の下で薄ら笑いを浮かべていた。圧倒的なパワーを誇るクラッシャースパルタンさえ凌ぐグールベレー隊員の力を前にしても、彼女の心は全く折れていない。

 

 歴史ある美術館だろうと無遠慮に破壊し、瓦礫の山に変えようとしている無粋な輩。そんな仇敵を嘲笑するヨハンナの笑みは、仮面で表情が見えずとも伝わっていたのだろう。彼女と対峙しているグールベレー隊員は、忌々しげに眉を顰めている。

 

「ふん……今まさにくたばりかけている鉄屑風情が、減らず口を叩くな。パワーアームもパイルバンカーも俺のモノの方が威力は上。貴様に何の勝ち目があるというのだ?」

 

 そう語るグールベレー隊員の屈強な両腕にも、大型の重武装が取り付けられていた。左腕のパイルバンカーと右腕のロボットアームは、クラッシャースパルタンのものと比べて非常に鋭角的で禍々しいシルエットとなっている。

 

 その上、彼女の装備と比べて僅かにサイズも大きい。この装備には、クラッシャースパルタンの武装をさらに上回るパワーが秘められているのだ。最大の持ち味を「力」でねじ伏せられてしまっては、勝ち目などないと考えるのが普通だろう。

 

「勝ち目、勝ち目勝ち目……いい加減、聞き飽きたわ」

「なに?」

 

 だが、その上でもクラッシャースパルタンは――ヨハンナ・ヴィルタネンは諦めない。彼女は散々叩きのめされた直後だというのに、それでも威風堂々とした佇まいでグールベレー隊員と対峙している。右腕のパイルバンカーを相手に突き付けながら、彼女はその勇姿で徹底抗戦の構えを示していた。

 

「生身の人間では、改造人間に決して勝てない。そんなこと……何度も言われて来た。その下馬評を覆すために来た私達に対して、随分とナンセンスなことを言うのね」

「……ふふっ、なるほど。まだその任務を果たせると、心のどこかで信じているということか。良かろう、ならば今度こそ……その『芯』を叩き折ってくれる」

 

 何度叩き伏せても、外骨格が中破するまで追い詰めても、なおも食い下がって来るクラッシャースパルタン。そんな彼女の「意地」を目の当たりにしたグールベレー隊員は、命を絶たぬ限り永久に止まらない相手であることを認識し、不遜に鼻を鳴らす。なんと愚かで面倒な相手なのか、と。

 

(ちッ……イプシロンマンめ、くたばりおったか。あんな華奢な女1人に倒されるとは、グールベレーの風上にも置けぬ弱卒よ。どうやら、あの乳牛女も俺が始末せねばならないようだな)

 

 このグールベレー隊員はすでに、美術館内でアサシネイトスパルタンと交戦していた同胞――「イプシロンマン」の戦死を察知していた。彼はちらりと美術館の入り口を一瞥し、忌々しげに舌打ちしている。

 

(……そういえばあの乳牛女、館内に飛び込む前にこの鉄屑に何か手渡していたな。ふん、まぁそんな些末なことはどうでも良い。全員殺せば、それで済む話よ。「死に恥」を晒した弱卒の分までな)

 

 自分の対戦相手(クラッシャースパルタン)と比べてかなり華奢な印象だった、黒仮面の乳牛女(アサシネイトスパルタン)。そんな彼女に不覚を取った同胞の不甲斐なさに、この上なく呆れ果てているようだ。こうなった以上、「死に恥」を晒したイプシロンマンの尻拭いも済まさねばならない。

 

 そのためにもまずは、クラッシャースパルタンを今度こそ確実に黙らせる必要がある。グールベレー隊員は勢いよく地を蹴って彼女に迫り、己の得物を構えていた。キャタピラレッグが無くとも機動性を維持できるほどの膂力を持つ彼は、凄まじい轟音と共に左腕のパイルバンカーを突き出して来た。

 

「ぬあぁあぁあッ!」

「はぁあぁあーッ!」

 

 2人の絶叫が天を衝く瞬間、クラッシャースパルタンも右腕のパイルバンカーで迎え撃つ。スパルタンシリーズの外骨格さえ容易く貫通する、グールベレー隊員の刺突。その一閃が、クラッシャースパルタンの右腕から繰り出された一撃によって辛うじて受け流された。

 

「それがどうしたァッ!」

「……!」

 

 だが、キャタピラレッグを持たないグールベレー隊員には、クラッシャースパルタンには無い身軽さがある。彼はパイルバンカーでの攻撃を受け流(パリィ)された瞬間、地を蹴ってクラッシャースパルタンにドロップキックを叩き込む。

 

「うがぁあッ……!?」

 

 その衝撃によってクラッシャースパルタンの胸部装甲がついに崩壊し、そこに隠されていたヨハンナの豊満な乳房が露わにされてしまう。扇情的な黒のブラジャーに包まれた白い果実が、ぶるんっと淫らに躍動していた。リーナよりもさらに大きい98cmの爆乳が豪快に弾み、その存在感と甘い匂いをこれでもかと主張している。

 

「こんっ、の、くらいでぇええッ!」

 

 それでもヨハンナことクラッシャースパルタンは構うことなく、キャタピラレッグの履帯を前方に向けて急速回転させる。その猛烈な稼働によって地面が削られ、後ろに吹っ飛ばされかけた彼女の機体を減速させていた。

 

「ぉおおぉおおッ……!」

 

 その猛回転によって噴き上がる土埃が、はだけられた白い胸元から滲み出る濃厚な女のフェロモンを掻き消して行く。しかし次の瞬間、土埃を突き破るようにグールベレー隊員が飛び込んで来た。

 

「……ッ!」

「今度こそ……くたばるがいいッ!」

 

 グールベレー隊員の右腕に装備されたロボットアームが、クラッシャースパルタンの頭を握り潰そうと迫って来る。クラッシャースパルタンは、自身の左腕にあるアームでその鉄腕を掴み、間一髪のところで攻撃を阻止していた。

 

「んぐぅ、うぅうッ……!」

 

 だが、単純なパワーにおいてクラッシャースパルタンのものを大きく上回っているグールベレー隊員のアームは、そのまま彼女の頭にジリジリと迫りつつあった。

 まともな力比べでは、クラッシャースパルタンことヨハンナに勝ち目はない。恐怖を煽るように少しずつ迫って来る敵方のアームを前に、ヨハンナは仮面の下で冷や汗をかく。

 

「うっ、ぐぅうッ……! こんの、化け物がぁあッ……!」

「ふっ……この期に及んで負け惜しみか? やはり惰弱な人間の『芯』などその程度が席の山。これで終わりだッ!」

 

 このままでは力技で押し切られ、頭を握り潰されてしまう。そんな窮地に立たされてしまった彼女を嘲笑いながら、グールベレー隊員はさらにロボットアームを強く押し込み、彼女の頭を掴もうとする。

 

「……ッ!」

 

 だが、ここで諦めるヨハンナ・ヴィルタネンではない。彼女は絶体絶命のピンチに陥りながらも、仮面の下で鋭く目を細めると――グールベレー隊員との力比べを続けながら、密かに背面のサブアームを稼働させていた。

 

(……私の「芯」は、こんなものじゃない。本当の勝負はここからよ……!)

 

 クラッシャースパルタンの背部には、サブアーム用の機関銃も搭載されているのだ。背中に隠している「隠し武器」を使えば、グールベレー隊員の意表を突いて体勢を立て直すことが出来る。そこに勝機を見出したヨハンナは、仮面の下で不敵な微笑を溢していた。

 

 だが――そんな彼女のサブアームを一瞥するグールベレー隊員も、ニヤリと薄ら笑いを浮かべている。彼はすでに、ヨハンナの目論見を看破していたのだ。

 

(甘いな……背部のサブアームに装備した機関銃でのゼロ距離射撃を狙っているのだろう? だが、それに類する装備も俺の方が上回っている! よく粘ったが……貴様の「芯」とやらもこれまでよッ!)

 

 クラッシャースパルタンの「上位互換」である彼の背部にも、2本のサブアームを搭載したバックパックが装備されている。その「隠し腕」に備え付けられている機関砲も、クラッシャースパルタンの武装を上回る火力を持っているのだ。

 

 全てにおいて「凌駕」している自分には、どんな小細工も通用しない。その無慈悲な現実を思い知り、己の無力さを噛み締めながら死んで行け。

 そんな意図を含んだ冷笑と共に、グールベレー隊員のサブアームが動き出す。それと同時に、クラッシャースパルタンのサブアームも「不意打ち」を狙って蠢いていた。

 

「死ねぇえいッ……!?」

 

 自身の勝利を確信したグールベレー隊員が吼える。だがその直後、彼の表情は驚愕と戦慄に染まった。彼のサブアームに搭載された機関砲は、火を噴くこともなく静止する。

 次の瞬間。彼の口から鮮血が飛び散り、その足元に赤い血溜まりが出来上がる。素早く広がって行く血の池が、出血の量を物語っていた。

 

「……知ってる? 接近戦なら、銃よりナイフの方が速いのよ」

 

 サブアームを突き出したクラッシャースパルタンことヨハンナが、仮面の下でほくそ笑む。

 彼女の「隠し腕」が握っていたのは、背部に備え付けられていた機関銃ではなく――アサシネイトスパルタンの武器である、高周波ナイフだった。彼女にとっての「隠し武器」とは、そのナイフのことだったのだ。

 

 美術館での戦いに入る直前。アサシネイトスパルタンことリーナは、クラッシャースパルタンに自身の武器を1本手渡していたのである。だから彼女は美術館内での戦いで、4本ある鞘の中から3本のナイフしか使っていなかったのだ。

 もちろん高周波ナイフは本来、クラッシャースパルタンの武器ではない。それ故、事前にランバルツァーから彼女の能力を知らされていたグールベレー隊員でも、この「奥の手」に気付くことは出来なかったのである。

 

「な、ん、だとッ……!? バカな、貴様の外骨格にそんな武装は無かったはず、だッ……!」

 

 近しい戦場で命を預け合う仲間同士だからこそ出来る連携。同胞を「弱卒」と切り捨てる非常さ故、その秘策に敗れたグールベレー隊員は、血を吐きながらもクラッシャースパルタンに迫ろうとする。

 

「……生憎だけど、私の『芯』は簡単には折れないわ。私は……私達は、離れていたって独りではないものッ!」

 

 無論、クラッシャースパルタンに容赦はない。彼女はグールベレー隊員にとどめを刺すべく、その胸をパイルバンカーの一閃で貫くのだった。強烈な一撃はグールベレー隊員の胴体に風穴を開け、その反動ではだけられたヨハンナの爆乳がばるんっと弾む。

 

「ぐぉおぉおぉおッ……! バカなッ……この、我々がッ、グールベレーがぁあッ……!」

「……ふん」

 

 彼女の「介錯」に斃れたグールベレー隊員は、地に伏せながらも震える手を伸ばし、クラッシャースパルタンの足首を掴もうとするが……その手が届くことはなかった。その末路を、クラッシャースパルタンは冷酷に見下ろしている。

 

「……助太刀は要らなかったようね。流石だわ」

 

 そして、事切れた彼の手が血溜まりに沈んだ後。満身創痍のアサシネイトスパルタンが、ようやくこの場に駆け付けて来る。強化繊維の節々が破かれ、白い肌が露出している彼女の姿は実に蠱惑的であった。仮面を脱ぎ、見目麗しい素顔を露わにしたリーナは、茶色のサイドテールを優雅に靡かせている。

 

 そんな彼女の方を見遣るクラッシャースパルタンも、サブアームで仮面を取り外してヨハンナとしての素顔を露わにする。艶やかなブロンドの髪をポニーテールに纏めた碧眼の美女は、預かっていた高周波ナイフを持ち主に見せながら、不敵に口元を緩めていた。

 

「助かったわ、リーナ。そっちも上手く行ったようね」

「当然。人間の底力を舐めているような連中に、私達が遅れを取るはずがないもの」

「えぇ、言えてるわ。……こいつらの上官はどうやら、1番肝心なことを部下達に伝えていなかったようね」

 

 隣に立つ戦友と微笑を向け合い、互いの裏拳をコツンとぶつけ合った後。ヨハンナとリーナは冷たい眼光で、グールベレー隊員の骸を見下ろしている。仇敵の手で露出させられたヨハンナの爆乳からは、熟れた女の甘い匂いが滲み出ていた。

 

表面上の性能差(カタログスペック)だけで相手の力量を決め付けるものじゃないわ。特に……『絶対に諦めるな』と教えられて来た私達を相手にするのなら、ね」

 

 そして、ヨハンナが呟いたその言葉を最後に。踵を返した2人は豊満な乳房を揺らして、自身の愛車(スパルタンハリケーン)の元へと歩み出して行く。まだ戦いが続いている以上、彼女達も足を止めるわけには行かないのだ。

 

 ◆

 

「……ところでリーナ、その格好なんとかならない? 見てるこっちが恥ずかしいんだけど」

「今のあんたにだけは言われたくない。人一倍ガサツなくせに一丁前な下着(ブラ)付けてんじゃないわよ」

「何よ、そんなに羨ましいの? あんたの外骨格って、装甲が薄過ぎて下着もまともに付けられないんだもんねぇ」

「それ以上何か言ったら、その無駄に色っぽい下着(ブラ)剥ぎ取るわよ」

「あははっ、別にいいわよ? その時はあんたもひん剥いてやるから」

 





 今回はクラッシャースパルタン回。次回以降も読者応募キャラ達がどんどこ出て来ますので、どうぞ最後までお楽しみに!٩( 'ω' )و

 さてさて、それではここで大事なお知らせ。現在、X2愛好家先生が本作の3次創作作品「仮面ライダーAP外伝 Imitated Devil(https://syosetu.org/novel/316771/)」を連載されております。本章から約10年後の物語である外伝(https://syosetu.org/novel/128200/44.html)から登場した「仮面ライダーオルバス」こと忠義・ウェルフリットが主人公を務めております!
 こちらの作品の舞台は、本章から約12年後に当たる2021年7月頃のアメリカ。悪魔の力を秘めたベルトを使う、ジャスティアライダー達の活躍に焦点を当てた物語となっております。気になる方々は是非ともご一読くださいませ〜!(*≧∀≦*)

 さらに現在は、ダス・ライヒ先生の3次創作作品「仮面ライダーAP アナザーメモリ(https://syosetu.org/novel/313018/)」も公開されております! 本章から約11年後に当たる2020年8月頃を舞台としており、こちらの作品では数多くの読者応募キャラ達が所狭しと大活躍しております。
 多種多様なオリジナルライダーやオリジナル怪人達が大暴れしている大変賑やかな作品となっており、さらには本章の主役であるジークフリート・マルコシアン大佐も登場しております。皆様も機会がありましたら是非ご一読ください〜(*^▽^*)

Ps
 接近戦ならナイフの方が速い。バイオ4とMGS3に教わりました( ^ω^ )

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