流れていく時間のなかで   作:なゆたとふかしぎ

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第十一歩

彼(彼女)は、世界を歩いている。

とても、鮮やかな世界を歩いている。

だがしかし、彼(彼女)には、その世界が見えていない。

悲しいことに、その世界の美しさに気づいていない。

悲しいことに、その世界の残酷さに気づいていない。

良くも悪くも彼(彼女)は、視界が狭かった。

見ようとするものが少なかった。

だから、彼(彼女)は、世界の良さに気づかなかった。

だから、彼(彼女)は、世界の悪さに気づかなくてよかった。

 

いや、もしかしたら、すべて、気づいているのかもしれない。

 

世界が広がっていることにー

 

 

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盲目の少女は、最初から世界が見えていなかった。

だから、視界に写るはずのものが変化しても、気づけなかった。

これが、彼女が最初から持てなかったもの。

少女は、光が見えない。

だけど、人よりもずっと耳がよかった。

少女は、頭がよかった。

だから、少女は耳で聞いた世界《おと》を、しっかり理解できた。

良くも悪くも、理解できてしまった。

 

「大丈夫?チアキちゃん?」

ナオは、チアキと呼ばれた少女にもう一度問いかける。

チアキは、相変わらず目を閉じたままだ。

「はい。大丈夫ですよ?」

自分がなぜ心配されているか、よく解っていない?様子で返事を返す。

「それよりも、お腹が空いちゃいました。一緒に食べてもよろしいですか?リュウジさん。」

チアキの問いかけに、リュウジの存在に気づいたユウヒは、嫌そうな顔をしたが、空腹には耐えられないのか、はたまた、可愛い妹分たちの頼みからか、すぐさまその提案を蹴ろうとはしない。

お前もか!と感じながら、他の友達全員が良いって言わないと無理だ。と説明しようとして、リュウジは気づく。

(えっ?何でこの子は、俺の名前を知ってるの?)

名前を教えた覚えはない。

その事実と、教えてもいない自分の名前を知られていた恐怖に、リュウジは取り乱す。

「ちょ、ちょっと待って!何で君が、俺の名前を知ってるの?!」

少女に問いかける。

問われた少女は、さも当然のごとく、答えた。

「先程、ナオがあなたの名前を呼んでいましたから。」

先程。とは、リュウジがナオに食事をさせろと言われたときだ。

しかし、その時にチアキはおろか、ユウヒさえ見えないところにいた。

チアキが盲目のためどれだけ耳が良かろうと、ナオの声ならばともかく、全く聞いたこともない、会ったこともない男の声などを拾えるかと言われたら、まずあり得ないだろう。

しかし、チアキはそれをやってのけた。

リュウジは、驚きを隠せないでいると、後ろから肉が焦げる臭いがした。

慌てて振り替えると、リョウタが、大きく目を見開いて、固まっていた。

口は何かを言おうとして、開いたり、閉じたりを繰り返し、こちらに指先を向けている。

かすかに聞き取れた、リョウタの声に更にリュウジは、驚くことになる。

「ユ、ユウ、ヒ?」




やっと書けた。
疲れた。

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