今日も真夏日で太陽は地面をジリジリと焼いている。セミが鳴き、そこかしこで営業をしているサラリーマンは汗を拭いながら仕事のために歩くのだ。やはり俺は将来働かないと心に誓った。
「比企谷くん。変な妄想をしていないで由比ヶ浜さんの勉強を手伝ってくれないかしら。」
「いや変な妄想じゃねえよ、この暑さと将来についてだよ。」
「あら、あなたが随分高尚な事を考えているのね。それで何かわかったの?」
「ああ、やっぱり働いたら負けだ。」
「…やはりあなたはあなたなのね…。」
雪ノ下は溜め息をつくと、こめかみに手をあてて明らかに呆れている。失礼だな、充分高尚な考えだと思うが。
「うーん、ここの作者の考え…。」
どうやら由比ヶ浜は現代文で悩んでいるようだ。
「なるほどな。これはまずこうして必要ない部分を削るだろ。それから…。」
「あ、そーなんだ!ヒッキーありがとー!」
由比ヶ浜の悩んでいる部分を要点だけ伝えて、解き方を教える。よく作者の考えや心情を書けと言う問題があるが、実際作者の考えなんざわかる訳がないのだ。締め切りめんどいとか、腹へったーとか、っべーわーとか何を考えてたかなんて本人にしかわからない。あくまで文章から考えて解くのだから、要らんものは削り、必要な部分から読み解けば良いのだ。
「比企谷くんもたまには役に立つのね。」
「失礼だな、たまにでも役に立ったことなんて無いぞ。」
「何故自慢気なのかしら…。」
再び溜め息をつく雪ノ下。そんなに溜め息ついてると幸せが逃げますよ?実際は知らんけど。
「ところで由比ヶ浜ってどうやって総武に受かったんだ?」
「ヒッキーうるさいし!」
「私も少し疑問に思っていたわ。」
「ゆきのんが裏切った⁉」
由比ヶ浜は騒々しいなー。元気な事は良いことだが。
「推薦か。」
「推薦ね。」
「何で息ピッタリだし⁉違うし!ちゃんと受験して受かったの!あたし中学校の頃はこんな派手な格好してなかったから、結構勉強もしてたし。」
由比ヶ浜が地味な格好…予想できんなー。多分どうやっても雪ノ下と違う部分は派手だっただろうし…。
ゲシッ!
「いてっ!何すんだ雪ノ下!」
「あなたが何か失礼な事を考えていた気がしたのだけれど。」
いや確かにそうだけども。エスパーか。
「いやぁヒッキーとゆきのんのおかげで今日はいっぱい出来たよ!二人の教え方分かりやすいし頭に入ってくるし。」
「まぁ元々空っぽなら入るだけだしな。」
ゲシッ!
「いてっ!」
「空っぽ言うなし!」
「悪かった悪かった。空っぽじゃなくて、違う所に栄養が行っただけだったな。」
ゲシッ!ゲシッ!
「いてっ!いてっ!」
何でか両方から蹴られる。いやまぁ胸とかに行ったって事だけどさ。何故由比ヶ浜だけじゃなく雪ノ下まで蹴ってくるのん?
「比企谷くん、死にたいのかしら?」
「い、いや…。」
「ヒッキーさいてー。」
う~む。ハッキリと言ってないのにこの察し力は何なんでしょうか。怖いんだが。
「やっはろーでーす!」
小町が突然入ってくる。当然ノックなしだが、雪ノ下は何も言わない。雪ノ下さん俺以外に甘すぎぃ!
「こんにちは小町さん。」
「やっはろー小町ちゃん!」
「今日は一色はどうしたんだ?」
いつもならせんぱーいとか言いながら騒がしく来るんだが…。
「平塚先生に捕まって、色々やらされてるよ~。いろはさん一応生徒会長だからね~。」
「あはは…。」
由比ヶ浜も呆れてるな。確かにあいつ、職権乱用しまくるし、仕事全然しねえもんな~。
「今日は何してたんですか?」
小町が由比ヶ浜の方を覗く。
「これなんだけどね。1年の時の復習だったんだけどわからなくてゆきのんとヒッキーに聞いてたの。」
「おー、小町が今やってるとこですね~。」
「小町ちゃんは出来た?」
「バッチリですよ!」
ビシッと指を立て、片目をきゅぴーんと閉じてウィンクする小町。あざといがやはり可愛いな小町は。
「うう…。あたしだけだったかぁ…。」
「だ、大丈夫よ由比ヶ浜さん。私が教えるから…。」
雪ノ下はとことん由比ヶ浜に優しいな。親友だからかな。それともゆるゆりだからでしょうか。いいぞもっとやれ。
結局最終下校時間ギリギリまで由比ヶ浜の勉強を手伝っていた。
「小町今日は食って帰るか。」
「せんぱーい、仕事頑張ったのでおごって下さい♪」
「うおっ!」
一色がいきなり現れたからビビった。
「どっから現れたんだ…。」
「先輩待ってたんですよ~。」
きゃぴっとウィンクする一色。可愛いけど…
「はいはいあざといあざとい。」
「あー、酷いですよ先輩!こんな可愛い後輩が待ってたんですよ?もっと喜んで下さい!」
頬を膨らませてふて腐れる一色。
「はいはい嬉しい嬉しい、嬉しいし可愛い可愛い。小町と戸塚の次くらいだけどな。」
「え⁉」
いきなり頬を赤くしてテレる。
「ヒッキー、あたしは⁉」
「きょ、興味は無いけれど負けるのも癪だから私も比企谷くんの意見を聞いてあげるわ。」
「いや何でだよ。…ま、同じ位じゃねえの…。」
そう言ったら二人とも真っ赤になって俯く。お、怒った?
「そっか…そーなんだ…。」
「…。」
何か二人ともニヤニヤしてるんだけど。怖い。あと怖い。
「お兄ちゃんもすみにおけませんなー。」
小町が茶化してくる。可愛いけどムカついたので頭を目茶苦茶ワシャワシャした。
いつもの奉仕部+1の日常風景でした。次回はさがみんデート篇です。