学戦都市アスタリスク 本物を求めて   作:ライライ3

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処女作、初投稿です。よろしくお願いします。


第一話 星脈世代の少年

 旧世紀、無数の隕石が降り注ぐ未曾有の大災害「落星雨《インベルティア》」によって世界が一変した。

 既存の国家は衰退し、代わりに無数の企業が融合して形成された統合企業財体が台頭していく。

 また落星雨は万応素《マナ》が結晶化したマナダイトという鉱石と

 生まれながらに驚異的な身体能力を持つ新人類《星脈世代》の誕生という、新たな可能性ももたらした。

 

 このお話は、星脈世代の少年の物語である。

 

 

 

 

 時はまだ早朝、部屋の中で突如目覚まし時計の音が響いた。

 その音に呼応するかのように、少年は目覚めた。

 

「…………朝か」

 

 少年は起き上がりベッドから降りる。

 事前に準備をしていた、Tシャツとハーフパンツに手に取りパジャマから着替える。

 着替えが終われば、部屋を出て洗面所に向かい顔を洗う。そして外に向かった。

 

 

 玄関から家の外に出て空を見上げる。晩秋の朝だけあって冷え込みが酷く、風も冷たい。

 冷たい風をその身に受けながら軽いストレッチを行う。

 日が上っていないため辺りは暗闇に包まれているが、街灯のおかげで視界は確保できている。

 

「…さて、行くか」

 

 両頬を手で叩き気合を入れ、少年は走り出した。

 少年の名前は比企谷八幡。総武中学に通う中学二年生である。

 

 

 

 

 

 

 日課のランニングを終え、自宅の玄関前まで戻ってきた所で少女の姿が目に入る。

 少女の名前は比企谷小町。八幡の妹である。

 

 小町も八幡の存在に気が付いたのだろう。

 軽く目を見張るが、すぐ無表情に戻りそのまま横を通り過ぎようとする。

 

「………おはよう、小町」

「…………」

 

 話しかけるも返事はない。

 小町は八幡の横を抜け去り立ち去ろうとする。その後ろ姿を見送りながら八幡は話し続ける。

 

「……今日から合宿だったか?………頑張れよ」

「……………」

 

 最後まで返事はなかった。

 

 

 軽くシャワーを浴び、制服に着替える。

 朝食に焼いたパンを食べながら、携帯端末により空間ウインドウを開きニュースを確認する。

 

『先月、アスタリスクで行われた星武祭。獅鷲星武祭で優勝を収めた、チーム ランスロットの特集』

『アスタリスクで来年行われる、王竜星武祭。優勝候補は誰か?』

『アスタリスク新入生願書受付開始。世界中から応募殺到』

『アスタリスク スカウト団による強引な引き抜きとその実態について』

『全国で星脈世代の強盗団による被害多発』

 

 ニュースの大半は、アスタリスクと星武祭に関することが大きく取り上げられていた。

 

 

 

 水上学園都市六花 通称 アスタリスク。

 

 北関東のクレーター湖に浮かぶ正六角形型のメガフロートに築かれた学園都市である。

 正六角形の六つの角には一つずつ学園が存在し、その形が六枚の花に見えることから六花と呼ばれる。

 

 星武祭とは、アスタリスクで年に一度行われる学生同士の大規模な武闘大会の事である。

 

 3年を一区切りとし、初年の夏に行われるタッグ戦は《鳳凰星武祭(フェニクス)

 2年目の秋に行われるチーム戦は《獅鷲星武祭(グリプス)

 3年目の冬に行われる個人戦は《王竜星武祭(リンドブルス)

 

 今年は2年目の獅鷲星武祭が先月に行われたばかりだ。

 獅鷲星武祭は八幡もライブ放送で観戦したが、大変な盛り上がりを見せていた。

 

「……アスタリスクか」

 

 八幡はそんな事を思い出しながら、朝食を終え学校に向かった。

 

 

 

 

 

 

 総武中学に到着し駐輪場に自転車を止める。

 その足でそのまま教室に向かおうとして――

 

「おい。あいつだぜ。例の文化祭の奴って」

 

 悪意ある言葉が耳に届く。

 

 

 比企谷八幡は、本来は注目される存在ではない。

 彼自身はボッチを自称していたし、中学に入ってからは他人と関わる事は殆どなかった。

 だが、2年生に進級後、奉仕部に強制入部される事で風向きが変わった。

 

 文化祭の実行委員長に対する職務のサポートと、修学旅行先で葉山グループの恋愛問題の解決

 様々なトラブルが発生し破綻に見舞われた依頼は、一応の解決を見せた。

 

 ……八幡の自己犠牲によって

 

 

 その結果、彼は今この学校で最も注目される存在である。悪い意味で。

 

 

 周囲の呟きを無視して教室に向かう八幡。

 教室に向かう最中にも、様々な視線と呟きは止まらない。

 

「文化祭って実行委員長を泣かしたっていう人?」

「そうそう。一方的に暴言を言って泣かしたって聞いたよ」

「俺聞いたんだけどさ、修学旅行で告白の邪魔したのもあいつらしいぜ」

「まじで!どんだけだよ、あいつ」

 

( ……聞こえてるっつうの )

 

 八幡には聞こえない様に、囁きあう人達。

 だが、通常なら聞こえないそれも、星脈世代である八幡には全て丸聞こえである。

 

「そういやさ、あいつって星脈世代なんだってよ」

「へ~~星脈世代様は、好き放題やってるんだな」

「最近、ニュースで星脈世代の強盗団の事やってたけどさ、あいつも強盗団の一味かもよ?」

「そうじゃねぇの?あいつの目っていかにも犯罪者って感じだぜ」

「え~~~やだ~~こわ~~い」

 

( ……関係ねぇよ )

 

 そんな声を無視して教室に向かった。

 

 

 

 教室に到着し自分の席に着く。

 始業時間ぎりぎりに来たので、クラスの席は殆ど埋まっている。

 

「ねぇ、今朝の特集見た~~~」

「あぁ、見た見た。やっぱアスタリスクってすげぇな!」

「俺も星脈世代だったらなぁ~~~」

「え~~~あんたじゃ無理だって!」

「ねぇねぇ、チームランスロットの中で誰が好き?」

「私はやっぱり聖騎士様かな~~」

 

 クラス全体で、今朝取り上げられてたニュースで盛り上がっていた。

 その盛り上がりのおかげか、幸いにも八幡が教室に入った事に気付いた人は少数だった。

 気付いた者も、八幡の事よりもアスタリスクの話で夢中だ。

 

 自分の話題がない事に少し安堵しながら、授業開始のチャイムまでぼうっとして過ごした。

 

 

 

 

 

 

 授業が終わると早々に教室を出る。教室を出る際に幾つかの視線を感じたが無視した。

 悪意ある視線が大半だが、ごく少数の別の視線も交じっている事にも気づいていた。

 

 八幡に何かを問いかけたい様な視線。

 八幡を心配する視線。

 

 だが、今の八幡は学校の人間と関わる気はない。

 唯一の友人である戸塚彩加や、川崎沙希の気遣う視線は何回も感じたが、彼らと話す事もない。

 八幡は今の自分の立場をよく理解している。だから意図的に無視している。

 

 彼にとって、大切な友人やクラスメイトを巻き込む事は許せないことだから。

 

 

 教室を出て後は早足で下駄箱に向かう。授業が終わったばかりなので、人も今朝よりはまだ少ない。

 玄関が見えた所で一瞬だけ立ち止まる。そして、これからどうするか考える。

 

 

 ____貴方のそのやり方、嫌いだわ。

 ____人の気持ちをもっと考えてよ。

 

 

 修学旅行の後、奉仕部に顔は出していない。

 八幡の自己犠牲により解決は見せたが、そのやり方に同じ部員の二人は拒絶をした。

 

 自分のやり方が間違っている事は分かっていたが、それしか方法が思いつかなった。

 

(…………帰るか)

 

 今日もまた奉仕部に行くことはなかった。

 

 

 

 冷蔵庫の中身が殆ど空だった事を思い出し、街に立ち寄る。

 食料の確保、ついでに新刊の本のチェック等を素早く済ませた。

 

「……大体仕入れたから帰るか。これ以上はまずい気がする」

 

 適当にぶらついて気分転換をする事も考えたが、その考えを打ち切る。

 嫌な予感がしてきたので、今すぐ帰ろうとして―――

 

 

 後ろから気配に気付き、素早く躱した。

 

(……間に合わなかったか)

 

 誰だと問いかけるまでもない。ここ最近毎日の様に出くわしている人だ。

 八幡に後ろから抱き着こうとしてくる奇特な人物など、一人しかいない。

 

 

「うっふっふ~こんにちは、比企谷くん!」

 

 

 魔王 雪ノ下陽乃が現れた。

 

 

 




俺ガイルxアスタリスク小説が好きすぎて書いてしまいました。

更新は遅いかもしれませんが、頑張ります。

誤字、脱字、感想等あればご報告頂ければ嬉しいです。

よろしくお願いします。





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