私、これでも空母なんですっ!   作:テディア

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睦月型

 

空母寮を出て駆逐寮へ。

初めは正規空母や軽空母の姿が多かった。

近くに戦艦寮があるのもあって戦艦達の姿もよく見たが、段々と巡洋艦等が多くなっていき_。

次第に駆逐艦達の姿が多くなってくる。

 

吹雪型、白露型、陽炎型に夕雲型。

駆逐艦達は姉妹の数こそ多いが、それは睦月型も同じこと。

すぐに見つけることができた。

 

とは言っても、すれ違っただけだが。

見えたのは元気そうな金髪の子。

もしかしなくても『皐月』だろう。

後ろから声をかける事もできたしする事も考えたけど…。

このまま睦月型のお部屋に突撃でいいかな。

そう考えて数歩踏み出してからふと気付く。

 

…そういえば睦月型の部屋ってどこだっけ?

確か2階だったような気がするんだけど。

思い出せない・・・。

しょうがない。他の子に聞こう。

部屋を知ってそうな艦娘か。

睦月型と仲良しな駆逐艦って吹雪型なイメージがあるんだよね。

なんでかは知らないけど。

というわけで適当に吹雪型を捕まえて尋…質問をしようか。

吹雪型、つまり特型に分類される駆逐艦の数は他に分類される駆逐艦と比べても

特に多い。特型だけに。

 

まぁそれはさておき。

人数が多いだけあって見つける事自体は簡単。

そこら辺をぶらぶらしてた深雪を捕まえて教えてもらった。

あと、話しかけてから少しして私の視界に電が映ったのは内緒のお話。

多分そういう風に衝突するんだろうなぁ…。

結局、深雪に聞いたところによると2階に上がって左奥の4人2部屋らしい。

駆逐艦寮はその姉妹や人数の多さから、4人部屋が多い。

一番少なくて2人部屋。一番多くて6人部屋。

左奥と右奥の突き当りは5人部屋だから、その手前側の部屋だと見た。

 

部屋の扉を叩いて少しすると、中から足音と如月ちゃんの声が。

…今こそ好機。やられてばかりじゃないのです。

扉はこちらからは引く、あちらからは押す。

隠れて驚かせて差し上げますかね。

 

「はーい。どちらでしょうか?」

 

開かれる扉を壁のように使って身を潜ませる。

困惑したような声が漏れているのが面白いな。

時間をほどほどに置く。ただしあまり時間をかけすぎず。

そのまま音を立てないように…。

 

「やっほー。」

「ひゃっ!?」

いい反応頂きました。

可愛いなぁ。ほんと。

 

「な、なんの用事かしら?」

「暇なので。いいかな?いいよね?」

「え、えぇ。まぁ…。」

 

やや食い気味の勢いで許可をもぎ取ると、

私は扉を閉めて中へと足を踏み入れた。

_____________________________________________________________________

 

部屋に入ると2人の姿が目に入った。

ただし如月を人数に数えれば3人だが。

部屋の真ん中で艤装を整備する睦月。

左右にある2段ベッドのうち左側のベッドの下でダラダラと過ごす文月。

そんな2人の視線が部屋に入ってきた私達に注がれる。

 

「およよ?如月ちゃんの友達にゃし?」

「えぇ。まさか部屋まで直接来るとは思わなかったけどね。」

「ごめんごめん、如月ちゃんの姉妹にも会いたいなと思ってね。」

 

それにしてもやけに暖かい。

紺色のジャージを羽織っただけで下の薄水色の肌着が見える睦月の服装。

なんとなく察した私は部屋の天井付近にあるであろうエアコンを探した。

まぁすぐに見つかったけど。予想通り、そのエアコンは動いている。

それにしても…睦月さん。

いくら暖房があるからといっても流石にジャージ羽織っただけはどうなのよ。

確かに今ここには女の子しかいないけどさ。 

ま、それはどうでもいいよね。別に男の人が来るわけじゃないし。

ベッドを借りてくつろぎながら待っていると、睦月が額を拭いながら工具を片付け始めた。

 

「ふぅ…。こんなものかなぁ。」

「終わったかな?それじゃあ初めまして睦月。神鷹だよ。」

「…あれれ?睦月の名前もう知ってるにゃ?」

「私は教えてないのだけれど…。」

 

2人揃って不思議そうな顔をこちらに向けてくる。

でも知っている物は知っているとしか言えないからなぁ。

あれだよ。なんでもは知らないけど知っている事だけなら知ってるって事。

そういうわけなので。

 

「まぁまぁ。気にしない気にしない。」

「確かに説明しなくてもいいのは楽…なのかにゃ?」

「睦月ちゃん、流されてるわ…。」

 

そんな会話をしている間に睦月の艤装は既に格納され無くなっていた。

如月が持ってきた麦茶を飲み干しつつテレビを見始める2人。

立っているのも面倒になってきた私は空いているベッドを使って寝転がる。

持て余した暇をどう潰すかを考えつつ、なんとなく向けた視線。

それに気付いたのか偶然か、こちらに視線を移す文月。

交わる視線と文月の手元に見えるスマホや本。

それが私の好奇心を刺激するのは容易い事だった。

 

何故かはわからない。文月の魅力か好奇心か運命か。

誘われるようにベッドからベッドへと足を運ぶ。

察したような素振りの後に文月はもう一人分、私が入る場所をくれた。

そこに体を収めた時に少しだけいい匂いがしたのは内緒である。

 

 

あれから、しばらくして私達はLINEを交換するまでに至った。

これがまた中々可愛い趣味を持っているのだよ。

例えば枕元のぬいぐるみとか。

文月自体が可愛いのはまぁ、うん。仕方ない。

さて。まだ時間はあるし、やる事もない。

 

…もう少しだけくつろいで行きますかね。

 


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