程よい日差しと潮風、鳥のさえずりが心地のよい朝を誘う中。
鎮守府の一角は立ち入る事も気後れするような空気が漂っていた。
それもそのはず。
「…11日前、大本営から全鎮守府に指令が届いた。
『対潜哨戒後に船団護衛を行い、近海の安全性を確固たる物にせよ。』
海域名称1-5、1-6。この2つは近海の中でもまだ危険性が高い。
今回はこれらの海域を攻略し、基地航空隊の設立まで防衛を行うことで制空権を確保。
そこから哨戒機を飛ばすことで近海に多い潜水艦を対策する事になっている。
_本日より小規模作戦、【確保!近海防衛海空戦!】を発令する! 総員、解散!」
…大本営から発令された作戦の伝令なのだから。
気を引き締める艦娘、お喋りしながら離れる艦娘。
何をしようか悩む艦娘から部屋に戻る艦娘まで。
多くの者達がそれぞれ動く中、私は少し嫌な考えが思い浮かぶ。
なぜならば。
___作戦の舞台があまりにも近すぎる。
私達がいる時点でおそらく開戦から相当時間が経っている。
普通なら今更こんな近海の作戦などあり得ない。
万が一、百歩譲って『イベント』が発令されたとしてもだ。
1-5、1-6などイベントにすらならないだろう。
多少付け加えても同じ事でしかない。
だからこそ私は不安だった。
拮抗しているのではと。劣勢なのではと。
制海権を完全に取れないのか取れていないのか。
私は知らない。わからない。
私は不自然に思われない程度の時間で考えて・・・。
…結局は考える事を放棄して、大鷹の元へ駆け寄るのだった。
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作戦発令から鎮守府が騒然としていく。
予測というか、多分だけと私達は重点的に運用される。
というのも私達は『特設航空母艦』、つまり護衛空母であり対潜能力が高いから。
2回も
「_そういえば神鷹は装備対潜用に変えた?」
「んー?…まだだね。今から工廠行こうかな?」
対潜用に変えたい。 そもそもの前提として、
『潜水艦に対して有効打を与えられる装備は限られている』
つまり、対潜水艦となると専用の装備が必要なんだよね。
というか爆戦とか水面下の敵にどうやってダメージ出すのさ。
そもそも対潜できるか。対艦用だし。
艦攻なら沢山爆弾とか搭載できるから爆雷も問題ないだろうけど。
となると優先度高いのはソナーとかかな…。
確か私の格納庫詳細は_
第一:9機搭載可能
第二:18機搭載可能
第三:6機搭載可能
合計:全機格納33機
このようになっているはず。
そこで私が考えた戦法。
『第二の搭載数の多さと第三の少なさを活かしつつ潜水艦を「索敵・撃滅」する事。』
これを念頭に置いた上でこう割り振ってみようか。
第一:艦戦or艦攻
第二:艦攻一択
第三:ソナー確定
となるとあとは第一をどう活かすか…。とは言ってもまずは工廠に着かないと。
さて、大鷹と一緒にまた向かいますかね。
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工廠に辿り着いた訳だけども。
作戦発令のせいだろう。いつも以上に工廠が賑やかに…。
いや。賑やかという言葉が相応しい雰囲気ではない。
皆それぞれにどうするかを考えながら妖精さんに装備を求めている。
勿論、在庫を確認してもらって、あるものでなんとかする必要があるわけだけども。
中には艦娘同士で交換したり相談していたり…。
要するに人気はあるけどいつもみたいに明るい感じはないかな。
そこまで暗くないけど。
棚とそこに並べられた小さな模型のような可愛い装備、そして艦娘と妖精さん。
工廠の中でも純粋な作業用の区域ではなく廊下で本館と繋がっている区域。
_艤装区。
艦娘達の装備発行や注文などを受けるお店のような場所。
棚なんかは規則的に並んでいて民間のお店より見やすく出来ている。
そんな幾何学的に並んだ棚の奥には明石さんと数人の妖精さんが艦娘達の対応に追われている。
…さて、私も装備を選ぼうかな。