霧散していった感覚とは裏腹に、今度は視界が明瞭になる。
・・・夢の記憶と引き換えに。
「__ぅ…あぁ・・・!」
思い出せそうなのに思い出せない。
_大切なモノを失ってしまいそうで。
「ああぁぁぁあぁっぁぁあっ!」
胸の奥を焼き切るような、締め付けるような鋭い痛み。
けれど、それは体の痛みじゃなくて心の痛みだと私は少しして気づく。
__涙が、止まらない。
潤んで歪む視界を戻そうと手で拭えば拭う程。
止めようと必死に堪えれば堪える程。
それは私に猛烈な痛みと衝動でもって返してくる。
溢れかえる悲哀を抑えられずに呼吸が早まっていく。
…やがて、全身が痺れてほんの少しだけ気が遠くなる。
それでも、止まれない。
布団に零れ落ちる涙の痕は増えていき、やがて痕は点から面になる。
それ程の長い時間。
「・・・もう、大丈夫?」
_ふと、聞こえた声。
視界がある程度元に戻り、痛みが治まりかけた時。
__初めて、後ろから大鷹に抱き着かれていることに気が付いた。
頭を両腕で抱え込まれ、真っ白な長い髪を、小さな頭を優しく撫でられる。
それが、今は途轍もなく心地よかった。
「・・・しばらく、こうしていていい?」
「・・・えぇ。___本当に、よかったっ……!」
頭が、ほんのり湿っている。
時々上から暖かい「なにか」が落ちてくるのは・・・。
・・・そういうことなんだろうね。
暖かな温もりと安心感。
なんでだろ、さっきまで寝てたのに。
・・・眠くなって、きた。
_でも。今度は、大丈夫。 そばに大鷹が…いる…から。
____だから…今は……こうして、いた、ぃ…………。
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「__うぁ・・・。」
ぼやける頭を無理矢理動かして体を起こす。
最初に視界に映ったのは白い壁・・・。
_ではなく。
ベッドのすぐ横にある椅子に座ったまま寝ている大鷹。
「・・・はぁ。」
自然と溜息が漏れるけど、決して呆れた物じゃない。
ほんの少しだけ困ったような溜息。
_だから、この溜息はきっと悪いものじゃないんだ。
……そんな誰に言うでもない弁明の言葉が頭をよぎる。
「・・・風邪ひくよ?」
肩に手をかけてゆする。…が。
__反応なし。
「・・・ふぅ。仕方ないなぁ・・・♪」
さっきまで寝ていたベッドから軽いかけ布団を。
それもなるべく内側のやつを引っ張り出す。
それを、まだ温もりが残っているうちに太鷹にかけてあげる。
…風邪をひかないように、ね。
「・・・さて、と。」
もう少し休みたいし、名残惜しい。
…それでも。
今度は堪えて。振り切るかのように。
未練で重い足を動かして部屋を出た。
遅くなりましたが投稿。今年もよろしくお願い致します…。
最近艦これやってないなぁ…。いつか復帰したい。
もちろんこの小説は続けていきます。
不定期ですが楽しんで頂けたらと。