私、これでも空母なんですっ!   作:テディア

25 / 32
起床

霧散していった感覚とは裏腹に、今度は視界が明瞭になる。

 

・・・夢の記憶と引き換えに。

 

「__ぅ…あぁ・・・!」

 

思い出せそうなのに思い出せない。

_大切なモノを失ってしまいそうで。

 

「ああぁぁぁあぁっぁぁあっ!」

 

胸の奥を焼き切るような、締め付けるような鋭い痛み。

けれど、それは体の痛みじゃなくて心の痛みだと私は少しして気づく。

 

 

__涙が、止まらない。

 

潤んで歪む視界を戻そうと手で拭えば拭う程。

止めようと必死に堪えれば堪える程。

 

それは私に猛烈な痛みと衝動でもって返してくる。

 

溢れかえる悲哀を抑えられずに呼吸が早まっていく。

…やがて、全身が痺れてほんの少しだけ気が遠くなる。

 

それでも、止まれない。

 

布団に零れ落ちる涙の痕は増えていき、やがて痕は点から面になる。

それ程の長い時間。

 

「・・・もう、大丈夫?」

 

_ふと、聞こえた声。

 

視界がある程度元に戻り、痛みが治まりかけた時。

 

__初めて、後ろから大鷹に抱き着かれていることに気が付いた。

 

頭を両腕で抱え込まれ、真っ白な長い髪を、小さな頭を優しく撫でられる。

 

それが、今は途轍もなく心地よかった。

 

「・・・しばらく、こうしていていい?」

 

「・・・えぇ。___本当に、よかったっ……!」

 

頭が、ほんのり湿っている。

時々上から暖かい「なにか」が落ちてくるのは・・・。

・・・そういうことなんだろうね。

 

暖かな温もりと安心感。

 

なんでだろ、さっきまで寝てたのに。 

・・・眠くなって、きた。

 

_でも。今度は、大丈夫。 そばに大鷹が…いる…から。

 

____だから…今は……こうして、いた、ぃ…………。

 

_________________________________________

 

「__うぁ・・・。」

 

ぼやける頭を無理矢理動かして体を起こす。

 

最初に視界に映ったのは白い壁・・・。

_ではなく。

 

ベッドのすぐ横にある椅子に座ったまま寝ている大鷹。

 

「・・・はぁ。」

 

自然と溜息が漏れるけど、決して呆れた物じゃない。

ほんの少しだけ困ったような溜息。

 

_だから、この溜息はきっと悪いものじゃないんだ。

 

……そんな誰に言うでもない弁明の言葉が頭をよぎる。

 

「・・・風邪ひくよ?」

 

肩に手をかけてゆする。…が。

__反応なし。

 

「・・・ふぅ。仕方ないなぁ・・・♪」

 

さっきまで寝ていたベッドから軽いかけ布団を。

それもなるべく内側のやつを引っ張り出す。

 

それを、まだ温もりが残っているうちに太鷹にかけてあげる。

 

…風邪をひかないように、ね。

 

「・・・さて、と。」

 

もう少し休みたいし、名残惜しい。

 

…それでも。

 

今度は堪えて。振り切るかのように。

未練で重い足を動かして部屋を出た。

 

 




遅くなりましたが投稿。今年もよろしくお願い致します…。

最近艦これやってないなぁ…。いつか復帰したい。
 
もちろんこの小説は続けていきます。
不定期ですが楽しんで頂けたらと。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。