思いついたら書く短編集   作:荒潮提督

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空の境界とISのクロスオーバーです。



式さんカッコいいよね「」さんも妖艶な良さがあって良いよね。








この作品の一夏→式ポジ。


この作品の箒さん→コクトーポジ。姉に鮮花。鮮花と同じく橙子にルーン魔術を習っている。


無限の境界〜死を見る者〜

20○○年8月になったばかりのある日の夜、篠ノ之箒が訪ねて来た。

 

 

 

 

「こんばんは、相変わらず気怠そうだな一夏。たくっ・・・いい加減鍵くらいかけろ。あとこれは冷蔵庫に入れておくぞ、今日は暑いからな」

「冷たい食べ物は好きじゃないんだが」

「我が儘を言うな。それと、千冬さんから聞いたぞ。お前、また学校サボっただろう。出席日数は確保しておかないと卒業出来なくなっても私は知らんぞ」

「箒には関係ないだろ」

「関係ある。千冬さんからお前の世話を頼まれているんだ。聞いたぞ、退院してからふた月、連絡も入れてないんだろう?」

「ああ、とりわけ用も無かったしな」

「用って・・・お前なぁ・・・」

「しょうがねぇだろ、たとえ姉だろうが今のオレには他人同然なんだよ。そんな奴と会話出来るか」

「あのなぁ・・・用が無くても家族というのは団欒するものなんだ。私が言えた義理では無いがな・・・。それに一夏、お前の方から心を開かないとずっとこのままだぞ?実の家族が近くに住んでいるのに顔も合わせないなんてそんなのは駄目だ。円香と冬樹が会いたがってたぞ」

 

 

幼少からの親友だというこの女はこうしていつも人の心の在り方を心配する。

そんなのどうでもいい事だというのに。

 

 

「飛び降り」

「ん?」

「飛び降り自殺」

「ああ、最近多いな。もう4人目だったか?・・・気になるのか?」

「まあな・・・あれは事故になるのか?」

「うーむ・・・どうだろうか。自殺である以上自分の意思である事は明確だが高い所から「落ちる」ことは事故とも言えるな」

「自殺でも事故死でもない、曖昧だなそういうの。自殺なら誰にも迷惑かけない方法を選べばいいのに」

「一夏、死んだ人を悪く言うのは良くないぞ」

「箒、オレ、お前の一般論は嫌いだ」

「ふっ・・・そういえば最近噂になっている例のアレ、うちの鮮花(あね)が見たらしい」

「噂?」

「巫条ビルの女の子。空、飛んでいるというやつだ。何週間か前からオフィス街の近くの巫条ビルの屋上に女の子らしき人の姿が・・・という怪談話だが知らないか?」

「ああ、それなら一度と言わず数回見た」

「そうなのか。あの辺はよく通るが私は見たことがないな」

「お前は伊達とはいえ眼鏡かけているから駄目だ」

「・・・眼鏡は関係ないと思うが」

 

 

邪気のないこいつの事だ、()()()()()()()は見にくいのだろう。

それにしても・・・。

飛ぶだの落ちるだのつまらないコトが続く。

わからないな。

そんな事に何の意味があるんだ。

 

 

 

「なあ箒」

「ん?」

「人が空を飛ぶ理由ってわかるか?」

「飛ぶワケも落ちるワケも分からないよ。だってまだ一度も私はやった事がないからな」

 

 

 

一夏は普段着の着物を着込み、赤い革ジャンを羽織り外に出る。

 

 

夜中に散歩することにした。

()()()()()が嗜好していた行為だ。

ーーーー二年前中学二年生への進級が間近だった織斑一夏という俺は交通事故にあって昏睡状態となった。

雨の日の夜車に撥ねられたらしい。

幸い身体には大きな傷はなかったがつい二ヶ月前、奇跡的に回復するまで目を覚ますことはなかったのだという。

その出来事は俺自身に変化を与えていた。

自分の記憶がどうもおかしいのだ。

自分に確証が持てないというか、自分の記憶に実感が持てない。

二年という空白が、過去の私で今の私を断絶してしまっていた。

今までの記憶を思い出しても、それはまるで、他人事のようでしかない。

ーーーーまるで擬態だ、俺はちっとも生きていない。

そうして俺は生きている実感も持てないままかつての私らしい行動を繰り返す。

理由は単純だ。

そうすれば俺は昔の自分に戻れるかもしれないから、こうすればこの夜歩きの意味も解るかもしれないから。

 

 

ーーーーああ、そうかーーーー

 

 

だとすれば俺は・・・かつての俺に恋しているといえなくもないわけだ。

 

 

 

「ーーーーなんだ、今日もいるじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〜〜…〜〜…」

「……〜〜〜〜」

『あれ・・・何か夢を見ていた気がする・・・」

「ん?おはよう箒」

「蒼崎所長・・・」

「目は覚めたか」

「はい・・・すみません・・・事務所で寝てしまっていたみたいです・・・」

「つまらんことを説明するな、見ればわかる。起きたなら茶を淹れてくれ、いいリハビリになる」

「はあ・・・『社会復帰(リハビリ)?』」

 

 

箒がコーヒーをいれ橙子に持ってくる。

 

 

「飛び降りも昨日で八人目か・・・」

「・・・八人目?」

「君が惚けてる間に増えたんだ。六月に始まって月に三人ずつ、八月もあと三日だ。あと一人出てもおかしくない」

「・・・『?・・・8月も・・・終わり・・・?』」

「トウコ、飛び降りは八人で終わりだ。それ以上は続かない」

「わかるのか一夏」

「見てきたから、飛んでるのは八人だった」

「・・・なまじっか飛べちまうと人間ってのはあんな末路迎えちまうモノなのかな」

「どうだろうな、個人差があるから何とも言えないが ーーーー そもそも人間の力だけで飛行を試み成功したやつはいない。飛行という言葉と墜落という言葉は連結なんだ。しかし、空に憑かれた者ほどその事実が欠落していてね、結果死んだ後も飛行しようとするわけだ。まるで空に墜ちていくように」

 

 

 

 

「あの・・・すみません全く話が見えないんですけど・・・」

「ああ、いや、例の巫条ビルの話さ。巫条ビルの屋上に出るという浮いてる女性の噂は聞いたことがあるだろう。一夏が言うには少女のまわりには人型らしきものが飛行していたそうでね。人型が巫条ビルから離れない、ということからあそこが網になっていたんじゃないかという話を ーーーー・・・・・・あー・・・つまり だ、巫条ビルの屋上には一人の浮いてる人間がいて、そのまわりには飛び降り自殺をした少女たちの幽霊がいた、話としてはそれだけ単純な構造だよ」

 

 

私は話についていけなかったが一つだけ分かったことがある。

またオカルト絡みの事件が起きたのだと。

 

 

雨が降り出した。

一夏はレインコートを着て巫条ビル近くの別のビルの屋上にいた。

そして彼は何のためらいもなくビルから飛んだ。

そのままビルからビルへと飛び移り、彼は巫条ビルへと辿り着いた。

そのまま中へと入る、エレベーターが待っていたかのようにドアが開き一夏を招き入れる。

 

 

 

外部と関わりのない小さな筺。

今はこの中だけが自分を取り巻く世界。

だから、少しだけ、安心する。

かつての俺は、この筺の中では関係がない。

 

 

 

屋上へと辿り着く。

空には少女たちの霊が浮かんでいる。

首元に感じるチリチリとした感覚。

一夏は思った。

 

 

 

「なるほど ーーーー確かに、こいつは魔的だ。なら・・・殺さなくっちゃなぁ!」

 

 

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一夏の目が魔眼としての機能を発揮する。

一夏はレインコートを脱ぎ去り、腰に差していた短剣を抜く。

そのままコンクリートの地面を蹴り、一人殺す。

短剣を逆手に構えなおす。

その眼には死が見えている。

一人、また一人と殺す。

短剣を投げる、また一人殺す。

コンクリートの壁に突き刺さった短剣を引き抜き一夏は駆け出す。

すれ違いざまに一人、一人と斬り、突き刺す。

彼女達は空へと逃げるが一夏は跳躍し手前にいた少女の脳天に短剣を突き刺し殺す。

残った少女は隣のビルへと逃げる。

一夏は何のためらいもなく巫条ビルから跳んだ。

屋上に左手をつき一旦身体を跳ねさせる。

屋上に溜まった雨水を切りながら滑走し止まる。

少女は一夏に指を向け何かをした。

一夏は少しふらついたが踏みとどまった。

 

 

 

 

「・・・!?」

「地に足が着いてない・・・飛んでいるのか?」

「・・・」

「浮いているのか?・・・っ」

 

 

 

 

ーーーー る

 

 

ーーーー べる

 

 

飛べる、あなたは飛べる

 

 

昔から空が好きだった

 

 

 

昨日も飛んだ

 

 

 

今日はもっと ーーーー 高く飛べる

 

 

 

一夏は踏みとどまる。

 

 

 

ーーーー 飛べる

 

 

 

自由に

 

 

 

安らかに

 

 

 

笑うように

 

 

 

行かなくては

 

 

 

何処に?

 

 

 

空に ーーーー 自由に

 

 

 

 

ーーーー それは現実からの逃避。

 

大空への憧れ。

 

 

重量の反作用

 

 

地に足が着いていない。

 

 

無意識化の飛行、

 

 

ーーーー 行こう

 

 

行こう、

 

行こう、

 

行こう、

 

行こう、

 

行こう、

 

行こう、

 

行こう、

 

行こう、

 

行こう、

 

行こう ーーーー

 

 

 

行け!!

 

 

 

 

一夏は少し立ち眩む。

 

 

 

 

「ーーーー 冗談、暗示か?洗脳か?まあいい、お前がどんな手を使ったかは知らないが俺には生きている実感がないから、いくら「衝動」を起こさせても無駄だ。()()()憧れ、俺の中にはないんだ。ああ、本当はさ、お前の事だってどうでもいいんだ」

 

 

一夏は左腕を伸ばす。

少女の首が突然締まる。

離れているのに左腕で掴まれているみたいに。

 

 

「でも、あいつを連れていかれたままは困る。拠り所にしたのはこっちが先だ」

 

 

一夏は左腕を重いっきり引っ張る。

少女はそれに連れられて落ちてくる。

 

 

「返してもらうぞ」

 

 

 

ーーーー っ

 

 

 

ーーーー ろ

 

 

 

ーーーー ちろ

 

 

 

落ちろ

 

 

落ちろ

 

落ちろ

 

落ちろ

 

落ちろ

 

落ちろ

 

落ちろー!

 

 

 

落ちろ!!

 

 

落ちろ!!

 

 

落ちろっ!!

 

 

 

ザシュッ

 

 

 

 

 

「お前が、墜ちろ」

 

 

 

 

 

 

少女は墜ちていく。

崩れ去りながら。

 

 

 

「まるで、骨か、百合だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この事件から暫く立ち桜舞い散る春。

 

 

 

桜並木を二人の人物が歩いていた。

一人は長かった黒い美しい髪を少し短く切り、少し前の事件で片目を失った箒。

もう一人は青い着物を着て箒と並んで歩く一夏。

 

 

「久しぶりだなお前とこうして並んで歩くのわ」

「ああ・・・懐かしいな、小さい頃こうして並んで歩いてみんなでお花見してたな」

「思い出したのかあの頃の記憶」

「ああ、断片的にだがな。それより急ごう箒、皆が待ってる」

「ああ、そうだな。行こうか、一夏」

 

 

 

 

君がいて、そばにいてくれるだけで、幸せだった。

 

 

 

 

二人は一緒に歩み続ける。

この繋がりは誰であろうと切り裂けない。




ちょっと漫画版も混ぜてみました。


一夏→中学二年生の時に事故で昏睡状態。
高校一年生の時に目覚める。
記憶喪失に。
直死の魔眼持ち。
箒と交際中


箒→保護プログラムにより親戚の黒桐家に引き取られる。
千冬に頼まれ一夏の世話をする。
白純理緒により左目を失明。
一夏と交際中

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