サーヴァント達の家族になりたいだけの人生だった。 作:Fabulous
私は酒が好きだ。酒はいい。嬉しい日はもっと気分が良くなり悲しい日は辛いことを忘れることが出来る。おまけに旨いとくれば呑まない理由など無い。米から造った酒もいい。ハチミツで造った酒もいい。果実で造った酒もいい。
「だがやはり親父殿が造る酒は格別だな」
私は酒樽で酒造に勤しむ親父殿に向けて言った。
親父殿はこの衛の国にて酒造を生業としている職人だ。親父殿の造る酒は旨い。この味を知ってしまったら他の酒が子供騙しに思えてしまうほど旨いのだ。村の中でも評判で遠方の町より噂を頼りにわざわざ足を運ぶ飲んべえも多くいるほどだ。私も酒が呑める頃になるとよく親父殿に酒をせがみ困らせたものだ。
母と一緒になる前は中央の役人をしていたらしいが地方に赴いた際に出会った村娘と恋に落ち母である村娘が私を身籠ったことを切っ掛けにそのままこの地に移住して、職を辞し村娘の家の家業である酒造を継いだ奇特な男だ。普通は娘を中央に呼び寄せるなり、適当に金や口利きをして妾にするのが特権階級のすることだが親父殿は母が慣れ親しんだ村を離れたくないと言う思いを汲み、それまで手にしていたと強大な権力をあっさり手放し市井の一人となった。当初は慣れぬ環境や仕事に体を壊すこともあったがその度に母が支え、村でも評判のおしどり夫婦として有名になるほどだったと言う。
だが私が10歳の時、不幸にも母は流行り病で病死してしまった。それ以降、親父殿は私に厳しく教育を施した。剣術の先生を呼び寄せ指南をしたり自分で歌や詩の手解きもした。その甲斐あってか私は村の男たちよりも優れた教養と武を身に付けることが出来た。ところで私の親父殿は全くもって無口だ。母である妻を早くに亡くした故か、男手一つで娘の私を育てている苦労故か、それとも生来のものなのかは分からんが兎に角喋らない。勉学の時は指導のため喋るがそれ以外となるととんと口を開かなくなる。母のことも死んだとしか伝えられず、今私が言った親父殿の半生も村の大人たちから聞いたことで親父殿からは一切聞いていないし訊いても喋らない。
そんな親父殿だが一度だけ感情を露にしたことがある。あれは私が12の時、親父殿の造る酒が気になり夜中にこっそり酒蔵に忍び込んだ。酒樽の上に登り柄杓で酒を掬おうと身を乗り出したが体勢を崩してそのまま酒樽の中に落っこちてしまった。全身の穴と言う穴から入り込んだ酒は12の頃の私にとっては強烈すぎた。消え行く意識の中、親父殿の名を叫び続け物音に気づいた親父殿によって命からがら助け出された。幼いながら酒樽一つ台無しにしてしまい親父殿に大変な迷惑を掛けてしまったと思った私は怒られることを覚悟したが、親父殿は私を抱き締め涙を流して安堵の声を出した。親父殿の熱い涙に触れた私は初めて自分がこの人に愛されている事を知った。
親父殿の下で私は村でも評判の男勝りな女に成長した。勉学でも喧嘩でも同年代の男が束に成っても勝てないほどであり「もし男に生まれれば高級官僚か将軍に出世したろうに」と口々に惜しまれた。そんな己の才に自信と希望を持った私はより見聞を広める為諸国を旅することを決意し親父殿にその旨を打ち明けた。反対されても押し通す覚悟だったが予想を反し願いはすんなり受け入れらた。その際に親父殿が珍しく口を開き『体に気をつけろ』と一言だけ言われた。親父殿らしいと言えばらしいがなんとも味気ない別れの言葉だった。
その後暫くして諸国からの旅が一区切りし私は国へと帰った。衛の国の君主に謁見するためだ。諸国では多くの事を学んだ。親父殿の事もあって私は官僚になり、この国をより良き方向に進ませる手助けになりたいと思った。その為私は王に己の学んだ事、感じたことを事細かく精一杯説明し、自分が如何にこの国の助けになるか説明した。
だが結果は酷いものだ。王も官僚たちも私の話など歯牙にもかけてはくれず半ば強制的に宮廷から追い出された。私が女だからかと役人に詰め寄れば役人は、
「それもあるが一番はお主が未熟だからだ。お主の考えは役人なれば誰もが考え誰もが成し遂げる事が出来ぬ夢物語だ。」と吐き捨てられた。
人生で初めての挫折だった。自分が天才だと思い上がってはいなかったが少なくとも優秀だとは思っていた。諸国を巡り世の矛盾を正し自分なりに国を発展させるため意気揚々と宮廷に乗り込んだ。私の言葉に皆が賛同してくれると思っていた。だがそれが女だからと見下され役人の世界でも下の下の出来損ないと言われ誇りも何も脆く崩れ去った。
それからと言うもの私は荒れに荒れた。些細ないさかいに乗り込み生傷を作り真っ当ではない仕事で安酒を買い漁り多くの道を踏み外しいつその辺の溝で死体に成ってもおかしくない生活を暫く続けた。この頃はまさに人生で最悪な日々だった。世の不条理に腹が立ち己の生まれに腹が立ちそんな己の荒れ様に腹が立った。不味い酒でも呑まずにはいられなかったが毎日浴びるように呑んでも一向に気分は晴れなかった。むしろ苛立ちは増すばかりであり何度も故郷に帰ることを考えたが、何も成せず何にも成れず荒んだ今の己の姿を故郷の親父殿には到底見せることは出来なかった。気づけば親父殿と約束した、『体に気をつけること』すらも満足に守っていない自分が恥ずかしかった。いっそ虎にでも成って山の奥にでも逃げ込みたかった。
しかし、その後転機が訪れた。いろいろあって燕の国に流れた私はそこで思いがけず朋友を得たのだ。共に歌い楽器を奏で久しぶりに旨い酒を酌み交わし、私はこれまでの自棄を反省することとなった。改心してからは各地の賢人や豪傑と書状や酒を酌み交わし誼を通じた。彼ら彼女らとの関わり合いで私は己の矮小さを痛感しながらも更なる知識と経験を求めていき、そこで生きる道を学んだ。
そんなある日、私の元に始皇帝を暗殺してほしいとの願いが届けられた。私は暗殺を生業としている訳ではなかったが恩ある人からの頼み故引き受けた。また彼の秦はいま最も勢いのある列強でありこのままではこの燕の国や親父殿の住む衛の国もいづれは飲み込むとされるていた。君主始皇帝は苛烈な人物でありそんな男に私の故郷を蹂躙させたくはなかったことも、暗殺を引き受けた理由であった。
私は暗殺の為にあらゆる準備をした。始皇帝に謁見するための計画、命を奪うため毒を焼き入れた匕首を、協力してくれる仲間を。そんな全ての準備を整えた私は、親父殿に最後の別れをするために今日故郷に帰ってきたのだった。
「親父殿の造る酒が恋しくてつい帰って来ましたよ」
久々に、本当に久々に帰ってきた私に対して親父殿はいたって平常だった。変わったところと言えば少し白髪が増えたぐらいでありいろいろ変わってしまった私を出迎えても、「お帰り」と一言だけ言ってすぐに酒造に戻ってしまった。拍子抜けと言えばその通りだがありがたくもあった。親父殿に今日と言う日を娘との最後の日だと悟られたくはない。己の娘が始皇帝を暗殺しようなどと知ればどんな親でも止める筈だ。この計画は万全の物でなくてはならない故、親父殿にとってこれが娘との今生の別れだとは絶対に感づかせてはいけない。その上で、私は親父殿に会いに来た。会いに来てしまった。
我が家では料理は親父殿の仕事だ。その日の夕食もいつも通りのなんの変哲もない庶民の献立だ。食事中の親父殿はいつにも増して無口になる。この時間帯は我が家が最も静かになる時間なのだ。私と親父殿の食事の音が僅かに鳴るがこの空間ではそれも気になってしまう。
「ところで親父殿。今私は燕の国にて暮らしています」
親父殿は相変わらず無口で箸を進めているが私はこの沈黙に堪えきれず、遂に今日ここに帰ってきた目的を果たすべく行動した。
「実はそこでよい人と恋仲に成りました」
親父殿の箸が止まる。初めて私を見つめてきた。流石に一人娘の縁談は気になるようだ。
「つきましては親父殿にお話が……」
「子供か?」
「違います!」
私をなんだと思っているのだ。そこまで尻軽ではない。
「私も向こうも共に思い合う仲で燕の国にて嫁入りをしたく思います。そうそう此処へは戻れぬ為挨拶に参りました」
当然そんな相手はいない。全ては真っ赤な嘘だ。だが「これから始皇帝を暗殺しに行きます。成功しても失敗しても死にますのでさようなら。」と言うよりは遥かにマシな筈だ。
「………………そうか、達者でな」
しかし私の万感の思いを込めた嘘を親父殿は二言で終わらせ再び食事を始めた。そんな冷たい態度に私は心中で親父殿に怒った。
(はぁ!? それだけだと!? 普通己の娘が縁組みするのだから相手はどんな奴だとか何処に惹かれたとか訊くものだろ!?)
この日のために三日三晩作り話を考え相手の容姿や出逢いのなれそめや子供の名前まで用意してきた私は肩透かしをくらった。だが同時に最も困難な課題を達成出来た為、これで明日は心置きなく出立出来ることに肩が軽くなった。
夕食の後に一人晩酌をするのが私のこの家での日課だった。ここに帰ってきた二番目の理由は、恐らく人生最後の酒をどうしても親父殿の側で親父殿の造った酒で呑みたかったのだ。
「親父殿?」
縁側で一人呑んでいた私の側に酒樽を持った親父殿がやって来た。なんと親父殿の手には酒樽の他に盃が握られていた。驚くべきことかもしれないが親父殿は酒が殆ど呑めない。酒造の際の味見ですら極力避けるるほどであり晩酌する姿など私は一度も見たことはない。
親父殿は私に何かを言うわけでもなく酌をした。慌てて盃を取り出しそれを受けると今度は親父殿も酌を求めた。
「親父殿、無理なさらずとも……」
私の心配を他所に親父殿は頑として盃を下げなかった。観念して酒を注ぐと親父殿はニヤッと笑って酒を一気に飲み干した。
「お、親父殿!?」
親父殿の造る酒はキツイことで有名だ。酒豪と言われる者すら酔い潰れさせるほどでありそれを一気に呷った親父殿に驚いた。
「娘よ、実はな……酒は呑めるのだ」
「へ?」
「酒の勢いでお前が産まれてしまってな。それ以来酒は断っていた」
親父殿の告白はまさに衝撃だった。
なんと親父殿がまだ役人だった時代、一目惚れした母を口説こうと酒の力に頼った夜、気づけば一線を越えてしまっていたらしい。
「勘違いするなよ。母のことは愛していた。少し順番が違ってしまったがな」
「ははは……知ってますよ」
こんな会話を親父殿と一緒に酒を酌み交わしながら出来るとは思えなかった。
初めて知った。親父殿が酒を呑むとこんなにも饒舌だったこと。こんなにも父と娘の語らいが楽しいこと。親子で呑む酒がこんなに旨いこと。そして親父殿の酒癖がこんなにも悪いことを。
(不味いな……ついうっかり全てを打ち明けてしまいそうだ。よしんば言わなくても泣いてしまいそうだ。)
私が涙を必死で堪えていると、親父殿が私を優しく抱き締めた。訳も分からず混乱していると親父殿は絞り出すような声で、
「達者でな……ッッ!」
家を旅立った際と同じ言葉だったが私には全く違う言葉に聞こえた。
私は宙に浮いた両の手を親父殿の背にぎこちなく回し小さく「はい」と答え一滴だけ涙を流した。
(始皇帝はもう目の前だ。あと十歩……ッ!!)
私の目の前には驚愕の表情を浮かべる始皇帝がいた。この日のために用意した計画は最後の最後に狂ってしまったが嘆いたところで後の祭り。私は一か八かの賭けに出た。
だがその時、私の殺意に満ちた思考の底から、母が死んだ夜の親父殿が浮かんだ。
母を失い失意に暮れる親父殿の背中。このうえ私娘までも……
「あっ……」
一瞬……ほんの一瞬揺らいだ、揺らいでしまった覚悟。それに伴う肉体の乱れを始皇帝の側に侍る優秀な兵たちは見逃さなかった。
「ぐぅッ!?」
私は床に叩き付けられ一切の動きを封じられた。視界には既に始皇帝は居なく、手の届かぬところに逃れてしまっていた。
「はは……最高の別れ酒と思っていたが、最後の最後に未練酒だと気づくとはな……」
未練を捨て覚悟を決める為の酒だった。言葉ではなく、酒で別れを告げようと思った夜だった。だが、結局私は酒に酔ってしまった。酔いを断ち切れなかった。
「おのれ賊めが!差し金は誰だ!言わねば八つ裂きにしてくれる!!」
兵が剣を抜き放ち振りかぶる。どうやら私は死ぬようだ。私は始皇帝を殺そうとした。ならば彼方も私を殺す道理はある。これから私の身に降りかかる事は雨のように至極当然の報いだ。
「いやいや……生まれてこのかた親の顔も知らぬ身なれ故、一度天下に挑む大博打を打ってみようと思った次第。結果は御覧無惨に負けはしましたが小娘一人に右往左往我先にと逃げ出す始皇帝の尻、確と見届けた。あの世への良き土産となりましょうぞ」
「貴様!!!」
怒りの刃が身体中を切り裂き血が飛び散る。背中が燃えるような痛みと共に腹がせり上がる感覚を覚えそのまま吐血する。悲鳴を上げようにも噴き出す血で息すら吸えない。
目が霞み頭がぼんやりとしてくると不思議と痛みは和らいだ。
(やれやれ……酒に呑まれ二日酔いとは……親父殿を笑えぬな)
どうか己の死後、親父殿に責が追われぬように天に願うしかないのが最後に浮かんだ思いだった。
荊軻 絆レベル5イベント
ある晩、荊軻が突如私の部屋を訪れそのまま強引に腕を引かれ彼女の自室へ連れ込まれた。
「マスター、イケる口だろ? 付き合え」
どう見ても目が据わっている。助けてくれ。
「うふふふ……今日はとても気分が良いのでな。マスターも是非共に酒を酌み交わそうではないか」
既にアルコールの臭いが部屋中に漂酔っている中、荊軻はいつものサバサバとした雰囲気とはうって変わりずっとニマニマ笑っていた。したたかに酔っている荊軻は樽に入った酒を枡で掬い私に差し出してきた。これは逃げられないと悟った私は覚悟を決めて枡酒を一気に呷ると荊軻は感嘆した。
「おお~~良い呑みっぷりだな! 私も私もと……」
それから二人で酒盛りが続き数時間が経過した。私はべろべろに酔っ払い荊軻も私ほどでもないが顔を赤らめ饒舌になっていた。
「フフフ……くふふふ……いや~~愉しいなぁ。ではそろそろ真打ち登場だ。じゃじゃあーん、この酒だ!!」
荊軻は一本の酒瓶を目の前の卓に取り出した。既製品の様だがラベルは中国語でプリントされておりどんな酒なのかは分からない。
「ほらっ! 呑んでみろ!」
荊軻は開栓した酒を新たに盃に注ぎ私に差し出した。正直なところかなり一杯一杯で断ろうとしたが無理矢理口に捩じ込まれた。
「旨いだろう? 旨いだろ! カルデアにあった酒でな。大陸出身の職員の私物を譲ってもらった。その者の生まれ故郷に古くから伝わる酒蔵でしか酒造していない酒とのことだ」
私は荊軻の話を半分聞きながら強烈なアルコールの刺激に飲み込もうにも飲み込めず、口に含んだまま顔をしかめた。彼女はそんな私の状態など知ったことかと話を続ける。
「その者の故郷ではこんな言い伝えがあるらしい。ある時、衛の国より男が移り住んできた。その男は寡黙で多くを語らなかったが酒造りの腕は随一で村長に気に入られ村に快く迎え入れられた。それから男は村に住み着き名酒を造り続けその名声は大陸中に轟きあの始皇帝もこの酒を愛飲したという」
荊軻は何処か嬉しそうに語っている。酒はその間もどんどん荊軻の口に運ばれていく。
「この話の面白い所はな……なんとその男は村長の娘を娶り生まれた娘に酒蔵を継がせたのだと! ……ククッ……アハハハハハ! 親父殿が再婚!? あの堅物が!? キャハハハハ!!」
傍若無人。まさにその言葉が当てはまるように荊軻は今日一番の笑い声を上げ近くの空瓶をそこらに投げ飛ばし卓に何度も拳を打ち付けた。彼女がカルデアに来てから何度かこういった状態になるのを見てきたがここまで愉快に騒ぐのは初めて見た。彼女は親父殿、と言った。つまりこの酒を造った先祖は彼女の父と言うことになるのか?
「アハハハハ……ハハハハ……ハ……ハハ…………よ、よかった……グス……よかったよぅ……ふぇえエエぇェえ~~!」
先程までカルデア中に響くのではないかというほど笑っていた荊軻は、今度は大粒の涙を流しながら子供のように泣きだした。私は落ち着かせようと側によると彼女は急に私の首根っこを掴み抱き寄せた。
「グス……うぅ……呑むぞ。呑んで、呑んで、呑んで呑んで飲みまくるぞー! マスターもどんどん呑めーー!!」
またしても荊軻は豹変し私を更なるアルコール地獄へと引きずり込んだ。最終的に彼女は匕首と酒瓶を振り回し、涙を流し嗚咽を上げ爆笑し酒を呑みまくっていた。
私は生きて帰れるのだろうか?
「ふぅ~~~~呑んだーっ」
私は用意した酒樽を殆ど全て空にしそのまま寝台に寝転んだ。マスターは何時だったか厠に駆け込みそのまま出ては来ぬがまぁ良しとしよう。
「親父殿……やはり貴方の造る酒は格別だ」
死ぬ間際も英霊という存在に成ってからも私は親父殿のことだけが気がかりだった。生前はただの民で英霊でもない親父殿のその後など確かめる術などありはせず、私の連座で死罪にでもなっていたらと想像し幾度となく心を裂いた。だが偶然にもこのカルデアに喚ばれ、更にはこの親父殿の酒に出会えたのは奇跡と言っても過言ではない。一口で親父殿の造った酒だと分かった。あれから2000年以上の時が流れたのにも関わらず、この味は何処も変わっていなくむしろより旨くなっていた。
「不出来な親不孝者でごめんなさい。聖杯で貴方に会えたらそう言おうと思っていたが……やはり親父殿には敵わん」
親父殿の心配など方便だ。本当は私の方が貴方に会いたくて会いたくて堪らなかった。義侠だなんだと言われようが結局、私はずっと貴方の娘だった。もう一度貴方の待つ家に帰りたかった。
「ただいま……親父殿」
私は最後の一杯を呑み干しそのまま眠りに着いた。耳元で優しく笑う男の声が聞こえた気がした。
バットエンドだけではないので安心を。