金剛封鎖。
それは、背中から無数の鎖を出して相手を縛り付ける技。
座学も終わり、いざ実践となったのはこの世界で目覚めて1週間後の事だった。
「金剛封鎖っ!」
チャクラを練って私が出した鎖は、木遁で作った的を庭に縫い付ける。
鎖は鱗粉と同じく自由に動かせるようだ。
「初めてでこんなにも上手く封印術を使えるようになるとはね…。
今の感じを忘れないように。」
「はい!ありがとうございました。」
「うん、いい子だ。」
いい子いい子と優しく頭を撫でてくれるお父さんは、任務で忙しくとも私を可愛がってくれる。
「じゃあ、僕はそろそろ任務に行かないと…」
タダの子煩悩な父親にしか見えないが、霧隠れの上忍。
あまり、多くの時間は取れないでいる。
一応、有名な忍なのだが…
『外では…紅い疾風って呼ばれてるんだぜ、嘘みたいだろ?
多重人格だと言われても納得出来る。』
「お父さん、頑張ってね!」
「あぁ。いい子にして待っててね。」
…この1週間で、お父さんの実力も、優しさも知った。
だから、大丈夫。お父さんなら、無事に戻ってくる。
------------------------------------------------------------
「あとは〜豚肉〜。」
『卵もな。』
「あ、そっか。」
商店街で買い物をすると、微笑ましい物を見る目で見られ、時々お菓子をくれる人もいる。…子供って得だ。
私の肩にはチビサイズの重明が乗っており、私のボディーガードをしている。
「これで、終わり…かな?」
『レナ、早く帰ろうぜ…。』
「うん。」
途中、男の子の集団に囲まれてもみくちゃにされた重明は、げっそりとしている。
「重明、お疲れ様。…今日はアップルパイを作ってあげる。」
『…マジ!?早く帰ろうぜっ!』
------------------------------------------------------------
「遅いね…ご飯冷めちゃった…」
『アップルパイも俺が全部食べたしな。
…それにしても、なんか嫌な感じがする。何も…無ければいいんだが。』
「お父さんは強いもん…何も無いに決まってる…」
口ではそう言ってはいるが…不安な事には変わりない。
お父さんがこんなにも遅くなる事は、1週間の間無かった事だから。
「…修行でもしようかな。」
思い立ったらスグに実行。
座っていた椅子から立ち上がり、庭の方へ向かおうとすると…
コンコンッ
「はーい…どちら様ですか?」
「…先生…うずまきヤシロの部下です。」
『父親は…確か、下忍を受け持っていたな…。』
「今開けます。」
「あっ…娘さん…ですか?」
「…父に何かありましたか?」
ドアを開けると、怪我を負った部下達がいたが、父の姿は見当たらない。
そして、部下達の泣き腫らした目や掠れた声が私の不安を掻き立てる。
「…うずまきヤシロさんは…お亡くなりに…なりました。」
私の中で、何かが弾ける音がした。
まさかの退場