赤毛の末裔少女   作:ココスケ

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第27話

身だしなみを整えてからリビングへと出ると2人とも既に起きており、椅子に座っていた。

 

昨日の事があったため少しドキドキしながらも、2人に声をかける。

 

「…おはよ〜」

「レナ、おはよう。」

「おはよう…リンゴくれ。」

 

ウタカタの遠慮無しの要求に、座ったままでは届きそうで届かない場所にリンゴを出して私はウタカタの隣に座る。

 

イチゴを出してヘタを取ってから木皿に盛り、やぐらに目線を向ける。

 

「やぐらは?」

「…俺も、イチゴ。」

 

私の皿と同じ量のイチゴを出し、ヘタを取ってから皿に盛ってやぐらの前に出すと、赤い顔で大事そうに受け取った。

 

リスのように頬を膨らませながら美味しそうに食べているが、顔の赤みは引いていない。

 

「レナ、やぐらと対応違いすぎだろ…」

 

横でリンゴを食べるウタカタが、不服だと言わんばかりにボソリと呟く。

 

「だって可愛さが違うし。」

「確かに可愛いが、そういう問題か?

付き合いたての恋人みたいな雰囲気出してたが…」

 

その言葉に反応したのはやぐら。

今まで以上に顔を真っ赤にして、目を泳がせながらウタカタに反論する。

 

「な…そういう関係じゃないし…べ、別に好きとか言ってねぇしっ!」

『言ってないだけで好意はあるんだな?』

 

鎧のようになっている為顔が見えないが、見えていたらニヤニヤと笑みを浮かべていたであろう重明が面白がっている事を隠そうともせずにやぐらを揶揄う。

 

「か、揶揄う(からかう)なにょっ…揶揄う(からかう)なよ〜っ!」

揶揄う(からかう)なにょ(笑)』

「くっ…憶えてろよ、この羽虫めっ!」

『あぁ、お前がレナを好きって事と反論で噛んだ事、しっかり憶えてやるよ。』

「〜っ!この虫野郎っ!」

 

地団駄を踏み、重明への怒りを顕にして拗ねたやぐらだが、完全にオモチャにされている。

 

「やぐら、本当にレナが大好きだな。

アカデミーから…いや、一目惚れしたから3歳の時からの長い初恋だしな。」

 

こちらもニヤニヤしながらオモチャにする気満々のウタカタ。

 

「な、ウタカタ…違うしっ!

別にそういうんじゃ無いし…は、初恋とかじゃ…!」

「へぇ、好きじゃねぇんだ。

レナが男連れてきたらどうすんだ?」

「え…ダ、ダメっ!

男、ダメ、絶対!…やっ!」

 

やっ!て…可愛い。

 

やぐらをウタカタがオモチャにしてそれにプンスカとやぐらが怒るのを可愛いと言いながら私が笑う。

そのサイクルを繰り返し、いつの間にか出会いから約10年も経っていた。

 

ウタカタと私は上忍になりやぐらは水影になって変わったことも多いが、変わらない事も多い。

 

…主にやぐらの可愛さとか、全員が人見知りだとか。

 

その後、やぐらのいじりは家を出るまで続いた。

 

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やぐらが水影になり、私と鬼鮫とウタカタで任務に当たるようになった。

まぁ、余程大きな任務の際に動くだけで普段はやぐらの護衛任務についているのだが。

 

やぐらも水影としての職務に慣れてほぼ定時に帰ることが出来ているのだから、中々優秀なのだろう。

 

「レナ〜ブドウ頂戴…種抜きで。」

「あ、俺も。」

「ん、はい。」

 

会議が終わり、疲れたのかぐったりしながらブドウを要求してきたやぐらと、便乗してブドウを食べるウタカタ。

 

水影就任から約1年。

15になり、将来の為に婚約者を…という話が大きくなり、躱すのに神経を尖らせているのだ。

 

才能がある忍は、次世代の為に子供を作れという周りからの重圧がのしかかるのだ。

若くして水影になったやぐらは、余計にだ。

出来るだけ早く結婚し、多くの子供(次世代)を繋いでいく事を周りから求められていた。

 

だが、やぐらはそういった事に消極的であった。

 

…理由は分かっている。

好きな人()がいる為他の人を好きにはなれず、そんな状況で結婚なんてしたくないのだろう。

 

やぐらの好意に気付いてはいるが、本人から〝告白〟をされておらず、私から付き合おうと言える勇気も無い。

 

私にとっても、頭が痛い問題だ。

やぐらがこの状況であれば、もうすぐ私達にもそんな話が回ってくるだろう。

 

特に、私はうずまき一族の末裔…一族の血と封印術を次世代に繋がなければならない。

 

「レナ〜…」

「ん?」

「可愛い…」

「ほ、褒めても果物しか出せないんだから…!」

 

頭を撫でられ私を可愛いと言うやぐら。

 

「…イチャつくなら2人きりでやってくんね?」

 

遠い目をしながら文句を言うウタカタは、既にブドウを食べ終わっていた。

 

「…イチャついてなんか…」

「いや、イチャついてやがる。

お前の顔がだらしなく溶けていた。」

「…え、そこまで分かりやすかったのか!?」

「あぁ。レナが大好きだって表情で語っていた。…さっさと告白しやがれチキン野郎。」

「チ、チキン野郎!?」

 

ギャーギャーワイワイと騒ぐ親友2人。

変わらないな…と思いつつ、完食したブドウの残骸と皿をしまう私だった。


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