個性:コジマ粒子 作:ドミナントソード♂
What are you fighting for ?
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「歓迎しよう」
懐かしい記憶だ。
「君は今この瞬間から、レイヴンだ」
初めてアーマード・コアに触れたあの日、あの時、あの瞬間から、俺は傭兵だった。
「好きなように生きて、好きなように死ぬ」
そうだ、そうだった。
「誰のためでもなく」
あぁ、そうだ。俺は傭兵だ。金のためなら、どんな依頼だって受ける。偽の依頼で騙されようが、力でねじ伏せる。
「それが、俺らのやり方だったな」
そうだ、俺は傭兵だ。それ以上でも、それ以下でもない。
個性がコジマ粒子だからって、周りに配慮する必要なんて無え。奴等は、俺の個性を、俺という一個人を否定しやがった。
復讐だ。
俺という存在を無かったことにした奴らへ、復讐だ。
あぁ、いいぜ、殺してやる。
総てを焼き尽くしてやる。
「いい加減にしろ! この馬鹿息子!」
ゲェッ!? セレン!?
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「ゴメンなさーい!」
って、あれ?
「な、なんだ、夢か。驚かせやがって……」
布団を被り直し二度寝をしようとしたが、世の中そんなに甘く無かった。
「ほう? 謝りながらの起床とは、いい心がけだな」
「……エッ?」
ギ、ギ、ギ、という擬音が似合いそうなペースで、ゆっくりと後ろを振り向く。
「さて、お説教の時間だ」
「ひぃぃぃぃぃぃっっ!!!」
いつものセレンよりも5割り増しで怖かった。
──1時間後──
「……」
「まったく、私がどれだけ対応に回されたと思っているのだ」
「……」
「少しぐらい、返事をしたらどうだ?」
「……ごめんなさい」
「お前の何が悪いことだったのか、分かるか?」
「……セレンに、迷惑かけて、ごめんなさい」
「……チィッ。そうじゃない。私が言っているのはそうではない。なぜ人を殺した?」
「……なぜ? なんでそんなこと聞くの?」
「ッッッ!? ストレイド、お前……」
セレンにとって、この反応は不気味という他なかった。殺しというモノは、いままで1度だって教えたことはなかった。だが、この反応はどうなんなのだ? まるで、人を殺すことが普通の人間のような──
「ストレイド!」
「……ごめんなさい」
──私は今、何を考えた?
「あぁ……クソッタレめ」
ガリガリと頭を掻き毟り、悪態をつく。
「……いいか、ストレイド。誰かの為に戦うんじゃない。己の為に戦うんだ。誰かの為に戦った結果、己の為に戦えなくなってしまっては、本末転倒だ」
その言葉には、先程までの怒りはなく、ストレイドの身を案じるものだった。
「ストレイド、頼むから、自分を大切にしてくれ」
そう言い残し、セレンは部屋から退出した。
「……自分を大切に、か」
果たして、その言葉は通じたのか。
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「アブ・マーシュ。貴様、どこまで知っている」
盛大に扉を蹴破り、研究室へと入ったセレン。
「いや、ちょっと今、先客がいるんだけど」
それに対しアブ・マーシュは、冷静に返答した。
「んっんん〜〜〜? なんだい? ナニナニ、なんか随分と切羽詰まってそうな声だったけど、どうしたんだい?」
その声の発生源は、アブ・マーシュの正面からだった。あまりに配慮に欠けた軽薄な声は、セレンの神経を逆撫でした。
「……誰だ」
「誰かって聞かれたら答えなくちゃねぇ? ま、主任と呼んでくれりゃあいいよ。え?名前はどうしたって? ほら、お互い裏の人間だし、そーゆー詮索は無しにしようぜ?」
「で、お前は誰だ」
「ありゃりゃ、欲しいのはこっちじゃなかったのね。うーん、誰って言われてもねぇ。どこまでなら話していいものやら」
「彼は、ヴィラン連合とちょっとした繋がりがあるんだよ」
「おいおい。そーゆー情報はポンポン出さないもんだぜ? なんだか一気に冷めちまったよ」
「ヴィラン連合との繋がり、か」
「あ、こいつやべえ。敵にしたら面倒なタイプだ」
「その一言で殆ど察したぞ。ほら、内部事情をさっさと話せ」
「た、助けてアブえもん!」
「お前もだ、アブ・マーシュ」
「……え?」
「お前も知っているんだろ?」
「やーボクわからないなー」
「ストレイドについて、キリキリ吐いてもらうぞ」
──あ、これダメなやつだ。
2人は、同じ結論に至った。
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「これは、思っていた以上に根が深いな」
「ま、しょうがないね。そーゆー時代だもの」
「そーゆー時代だからこそ、俺たちみたいなのが生きやすいんだよ」
お茶を啜りながら、2人の男がそう返した。
「ヴィラン連合。USJを襲撃した奴等は所詮捨て駒か」
「ま、そうだね。いわば、本命への布石ってやつだ」
「お前ら、他人事だからってなぁ……」
「やべ、怒ってる」
「だって実際他人事だしなぁ」
この2人、結構仲がいい。
「ストレイドは、これからも暴走するのか?」
セレンの問いは、本当にストレイドの身を案じたものだった。
「うーん……僕の見立てだと、そうだな。多くて、あと5回がいいところだな」
「……まさか」
「限界が来れば、もう助からないね」
「……そうか」
その言葉を聞いたセレンは、とても落ち着いていた。
「あら、やっぱり落ち着いてるね。血も涙もないって噂は本当だったかな」
「取り乱したところで何も変わらん。で、解決策は何かあるのか?」
「無いね。ま、首輪を外されないことを祈るしかないね」
「チッ」
「ま、諦めな。ストレイドにも、このことを伝えておきな。それが保護者としての責任ってやつだろ?」
「……協力、感謝する。失礼したな」
そう言い残し、セレンは部屋から退出した。
「やっぱり、大事なことだけは言わないのね」
「ギャハハハハハハ! そりゃそうだろ。じゃなきゃ、こんなことやらねぇっての」
「君も中々、難儀な生き方をしてるねえ」
「俺の使命なんだから、仕方ねえだろ」
「ま、仕方ないか。僕はただの研究者、君はただの監視者。目指す所は違うし、その過程もまったく違う。でも、協力することはある」
「頼むぜ、相棒。やることはまだあるからな」
第1部 完 (まだChapter2の途中
こうしてストレイド君は、首輪を外して超パワーを出せる回数が、多くて4回までと制限されたのだった。5回目はほら、ね? もう終わりを意味するしね。
本当は緑谷とかの、周りからの視点とか書こうと思ったけれども、AC的には無くした方がいいかなーと思い、やっぱり書きませんでした。
体育祭が書き終わったら、また投稿します。