個性:コジマ粒子   作:ドミナントソード♂

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幕間

 

 

 

What are you fighting for ?

 

 

 

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「歓迎しよう」

 

懐かしい記憶だ。

 

「君は今この瞬間から、レイヴンだ」

 

初めてアーマード・コアに触れたあの日、あの時、あの瞬間から、俺は傭兵だった。

 

「好きなように生きて、好きなように死ぬ」

 

そうだ、そうだった。

 

「誰のためでもなく」

 

あぁ、そうだ。俺は傭兵だ。金のためなら、どんな依頼だって受ける。偽の依頼で騙されようが、力でねじ伏せる。

 

「それが、俺らのやり方だったな」

 

そうだ、俺は傭兵だ。それ以上でも、それ以下でもない。

 

個性がコジマ粒子だからって、周りに配慮する必要なんて無え。奴等は、俺の個性を、俺という一個人を否定しやがった。

 

復讐だ。

 

俺という存在を無かったことにした奴らへ、復讐だ。

 

あぁ、いいぜ、殺してやる。

 

総てを焼き尽くしてやる。

 

「いい加減にしろ! この馬鹿息子!」

 

ゲェッ!? セレン!?

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

「ゴメンなさーい!」

 

って、あれ?

 

「な、なんだ、夢か。驚かせやがって……」

 

布団を被り直し二度寝をしようとしたが、世の中そんなに甘く無かった。

 

「ほう? 謝りながらの起床とは、いい心がけだな」

 

「……エッ?」

 

ギ、ギ、ギ、という擬音が似合いそうなペースで、ゆっくりと後ろを振り向く。

 

「さて、お説教の時間だ」

 

「ひぃぃぃぃぃぃっっ!!!」

 

いつものセレンよりも5割り増しで怖かった。

 

 

 

──1時間後──

 

 

 

「……」

 

「まったく、私がどれだけ対応に回されたと思っているのだ」

 

「……」

 

「少しぐらい、返事をしたらどうだ?」

 

「……ごめんなさい」

 

「お前の何が悪いことだったのか、分かるか?」

 

「……セレンに、迷惑かけて、ごめんなさい」

 

「……チィッ。そうじゃない。私が言っているのはそうではない。なぜ人を殺した?」

 

「……なぜ? なんでそんなこと聞くの?」

 

「ッッッ!? ストレイド、お前……」

 

セレンにとって、この反応は不気味という他なかった。殺しというモノは、いままで1度だって教えたことはなかった。だが、この反応はどうなんなのだ? まるで、人を殺すことが普通の人間のような──

 

「ストレイド!」

 

「……ごめんなさい」

 

──私は今、何を考えた?

 

「あぁ……クソッタレめ」

 

ガリガリと頭を掻き毟り、悪態をつく。

 

「……いいか、ストレイド。誰かの為に戦うんじゃない。己の為に戦うんだ。誰かの為に戦った結果、己の為に戦えなくなってしまっては、本末転倒だ」

 

その言葉には、先程までの怒りはなく、ストレイドの身を案じるものだった。

 

「ストレイド、頼むから、自分を大切にしてくれ」

 

そう言い残し、セレンは部屋から退出した。

 

「……自分を大切に、か」

 

果たして、その言葉は通じたのか。

 

 

 

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「アブ・マーシュ。貴様、どこまで知っている」

 

盛大に扉を蹴破り、研究室へと入ったセレン。

 

「いや、ちょっと今、先客がいるんだけど」

 

それに対しアブ・マーシュは、冷静に返答した。

 

「んっんん〜〜〜? なんだい? ナニナニ、なんか随分と切羽詰まってそうな声だったけど、どうしたんだい?」

 

その声の発生源は、アブ・マーシュの正面からだった。あまりに配慮に欠けた軽薄な声は、セレンの神経を逆撫でした。

 

「……誰だ」

 

「誰かって聞かれたら答えなくちゃねぇ? ま、主任と呼んでくれりゃあいいよ。え?名前はどうしたって? ほら、お互い裏の人間だし、そーゆー詮索は無しにしようぜ?」

 

「で、お前は誰だ」

 

「ありゃりゃ、欲しいのはこっちじゃなかったのね。うーん、誰って言われてもねぇ。どこまでなら話していいものやら」

 

「彼は、ヴィラン連合とちょっとした繋がりがあるんだよ」

 

「おいおい。そーゆー情報はポンポン出さないもんだぜ? なんだか一気に冷めちまったよ」

 

「ヴィラン連合との繋がり、か」

 

「あ、こいつやべえ。敵にしたら面倒なタイプだ」

 

「その一言で殆ど察したぞ。ほら、内部事情をさっさと話せ」

 

「た、助けてアブえもん!」

 

「お前もだ、アブ・マーシュ」

 

「……え?」

 

「お前も知っているんだろ?」

 

「やーボクわからないなー」

 

「ストレイドについて、キリキリ吐いてもらうぞ」

 

──あ、これダメなやつだ。

 

2人は、同じ結論に至った。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

「これは、思っていた以上に根が深いな」

 

「ま、しょうがないね。そーゆー時代だもの」

 

「そーゆー時代だからこそ、俺たちみたいなのが生きやすいんだよ」

 

お茶を啜りながら、2人の男がそう返した。

 

「ヴィラン連合。USJを襲撃した奴等は所詮捨て駒か」

 

「ま、そうだね。いわば、本命への布石ってやつだ」

 

「お前ら、他人事だからってなぁ……」

 

「やべ、怒ってる」

 

「だって実際他人事だしなぁ」

 

この2人、結構仲がいい。

 

「ストレイドは、これからも暴走するのか?」

 

セレンの問いは、本当にストレイドの身を案じたものだった。

 

「うーん……僕の見立てだと、そうだな。多くて、あと5回がいいところだな」

 

「……まさか」

 

「限界が来れば、もう助からないね」

 

「……そうか」

 

その言葉を聞いたセレンは、とても落ち着いていた。

 

「あら、やっぱり落ち着いてるね。血も涙もないって噂は本当だったかな」

 

「取り乱したところで何も変わらん。で、解決策は何かあるのか?」

 

「無いね。ま、首輪を外されないことを祈るしかないね」

 

「チッ」

 

「ま、諦めな。ストレイドにも、このことを伝えておきな。それが保護者としての責任ってやつだろ?」

 

「……協力、感謝する。失礼したな」

 

そう言い残し、セレンは部屋から退出した。

 

「やっぱり、大事なことだけは言わないのね」

 

「ギャハハハハハハ! そりゃそうだろ。じゃなきゃ、こんなことやらねぇっての」

 

「君も中々、難儀な生き方をしてるねえ」

 

「俺の使命なんだから、仕方ねえだろ」

 

「ま、仕方ないか。僕はただの研究者、君はただの監視者。目指す所は違うし、その過程もまったく違う。でも、協力することはある」

 

「頼むぜ、相棒。やることはまだあるからな」

 

 

 

 

 

 




第1部 完 (まだChapter2の途中
こうしてストレイド君は、首輪を外して超パワーを出せる回数が、多くて4回までと制限されたのだった。5回目はほら、ね? もう終わりを意味するしね。

本当は緑谷とかの、周りからの視点とか書こうと思ったけれども、AC的には無くした方がいいかなーと思い、やっぱり書きませんでした。

体育祭が書き終わったら、また投稿します。

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