個性:コジマ粒子   作:ドミナントソード♂

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──やるべきことは分かっているな

──はい

──手札はなるべく隠すべきだが、情報の為には本気を出すことも許そう

──はい。了解しました



第9話 初戦

 

さて、第3試合はタイマンでトーナメント戦だそうだ。んで、これから抽選で対戦相手を決めるらしい。だが、ここで2人が棄権した。なんでも、試合中の記憶があやふやらしい。ドーパミン垂れ流し状態だったらあやふやになるし、そんなもんじゃないですかね?

 

で、2人消えたから新しく2人、B組を選出。合計18名によるトーナメント戦となった。

 

18でトーナメント戦って、ちょっと難しくない? 16なら分かるけども。なんて無駄なことを考えている間に抽選が終わったようだ。

 

電子掲示板にトーナメント表が現れた。

 

えーとどれどれ? 俺は……おっ、あった。なんだこれ? シードか? シードだけど、一応戦うのか。ふーん。で、対戦相手は……え?

 

『ようし。それじゃあトーナメントは置いておいて、レクリエーションの時間だ!』

 

 

 

 

 

 

騎馬戦も無事に圧勝した俺は、レクリエーションに参加することなく、ドームの屋根に座り、勝利の余韻に浸りながら昼ごはんを食べていた。母親の愛情たっぷり弁当こそが至高。ハッキリわかんだね。

なんでA組の女子がチアの格好をしてるのかは謎。体育祭の熱気にやられたのかな?

 

さて、そろそろ現実逃避はやめておこう。

 

俺の対戦相手は『リリウム・ウォルコット』だ。まさか、ここまでフロムが汚染してきているとは思わなかった。お前、なんでこんなところにいるんだよ。字面からしてどう考えても外国人だろ。日本人じゃないだろ。

 

……とにかくだ。相手はリリウムと考えておこう。リリウムといえば、無駄に精度の高いライフルとレーザーとミサでチクチク削ってくるアンビエントを想像するが……さて、どれくらいリリウムなのかが問題だ。

 

ミサイルを撃ち込んでくるのか、レーザーを出すのか、銃を扱うのか、それともステルス系能力なのか……うむ、わからん。

 

ま、コジマパワーで蹂躙するぐらいしか思いつかないからなあ。だって俺、それしか出来ないし。

だが、これはあくまで体育祭だ。コジマキャノンを使ったら確実に殺しちゃうだろうし、かと言ってアサルトアーマーも危険度が高い。QBで背後に回ってぶん殴るか放り出すぐらいしか思いつかんぞ。

もう、それでいっかな。

 

食べ終わった弁当を鞄に仕舞い、下へと降りる。さて、第1試合まで暫くあるし、昼寝するか。

鞄を枕代わりにし、端の方で寝ようとした、が。

 

「すみません。あなたがストレイドさんで、合っていますか?」

 

声をかけられたので目を開けると、人が俺を覗き込んでいた。

 

「うん、そうだけど」

 

「申し遅れました。私、リリウム・ウォルコットと申します。初戦はよろしくお願いします」

そう言ってリリウムは、しっかりと腰を折って挨拶した。

 

「あっ、うん、こちらこそよろしく」

流石に向こうだけ礼儀正しく挨拶させるわけにはいかない。俺も起き上がり、しっかりと腰を折って挨拶した。

 

「よろしければ、少し、お話しませんか?」

 

「うん、いいよ。ま、座りなよ。立ち話もあれだし」

 

「では、失礼して」

 

そう言ってリリウムが俺の横に座った。

うん、百合だわ。

 

「んで、話って?」

 

「私は、イギリスから留学しに日本に来たのです」

 

「ほーん。留学生なのか。なるほど」

 

「ええ。なので、日本について教えて頂きたいのです」

 

「日本について、ねぇ……」

うーむ、特に何も思いつかんぞ。

 

「オールマイトが主に活動してる国」

俺が絞り出した答えは、こんなつまらないものだった。

 

「オールマイトは、いろんな国に行っていますからね。イギリスでも人気がありますよ」

 

「へぇ、イギリスでも人気なんだ。イギリスでは、オールマイト以外に誰が人気なんだ?」

純粋な疑問から聞いてみた。

 

「そうですね……デュアルフェイス、というヒーローが有名ですね」

 

「へー、デュアルフェイスって言うんだ。どんなヒーローなの?」

 

「そうですね……彼は、決してイギリス国外からの依頼は受けません。オールマイトは国外にも行きますが、彼は愛国者ですので」

 

「なるほど。イギリスの為に戦うヒーローなのか。カッコいいね」

 

「えぇ。過去にはジナイーダと共闘したこともあるのですよ」

 

「そりゃすごい」

 

ジナイーダと共闘ってことは、かなり強いんだろうなぁ。

 

「デュアルフェイスって、どんな戦い方をするんだ?」

 

「そうですね……彼は、グレネードランチャーを2つ背負っている為、とても動きが遅いです」

 

「うん……うん?」

 

「なので、グレネードランチャーを撃ち終えてからが本番です。グレネードランチャーをパージした後の彼は、身軽になったので高速で動き回ります」

 

「うん、まあ、そうだね」

 

「そして、撹乱した後、1人ずつ丁寧に気絶させていきます」

 

「丁寧だね」

 

「ええ、とても丁寧です」

 

デュアルフェイスと背グレって時点でそれ、どう考えてもジノーヴィーじゃねぇか。イギリスの依頼しか受けないってそれ、絶対危ない契約の関係で国から出られないだけじゃないですかやだぁ。ヒーロー名もそれ、表の顔と裏の顔って意味だろ。

 

「質問があるのですが、いいでしょうか?」

 

「答えられることなら、どうぞ」

 

「なぜ、制服なのですか?」

 

「ああ、これね。退院したばっかりだからさ、今日は体育祭って知らなかったんだよ。通常授業だと思ってたから、体操着は持って来てないんだ。だから制服でやってるんだ」

 

「なるほど。運が悪かったようですね」

 

「そうだな。運が悪かった」

 

体育祭って知ってたら、こんなことにはならなかったのにな。

 

「「……」」

 

どうしよう。この沈黙が辛い。なんか話した方がいいかな。いやでもなんも思いつかんしなぁ。

なんて事を考えてる間に、隣が立ち上がった。

 

「有意義な時間を過ごせました。感謝します」

 

「いや、俺はまったく役に立たなかっただろうが……まぁ、そう思ってくれたんならありがたいよ」

 

「試合では、お互い全力を出しましょう」

 

「そうだな。いい試合にしよう」

 

リリウムは立ち去っていった。

 

「腹黒淑女は、どんな手で来るのかねぇ……」

 

個人的に、イギリスだけは敵に回したく無い国だしなぁ。どうすりゃいいのかね。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

『これから始まるのはトーナメントのシード戦だ! 18なんて面倒な人数になっちまったから仕方ないな。まずはこいつだ! 退院して直ぐ来たせいで、体育祭だと知らなかった不幸な少年! 第1、第2種目で圧倒的なまでの速度を見せた男! ストレイドだ!』

 

──ワアァァァァァァァァァァアアア!!!

 

プレゼント・マイクの煽りに会場の熱気が上がった。凄い熱気だ。確かに、ストレイド君はどちらも1位で通過している。他の人たちは知らないだろう、彼が何を出来るのかを。第1種目は圧倒的なまでの速度でゴールしたから、誰も彼を見ていない。そして第2種目。第2種目でも、彼はずっとフィールドに居なかった。ずっと上空で待機して居た。麗日さんとは違い、空を飛ぶ事のデメリットがない。それだけで、途轍もなく強力な個性だ。でも、みんなは知らない。あの時、僕と一緒に居たあの2人しか、彼の本当の実力を知らない。

 

『続いては! あ、やべ、俺メッチャこの子応援してぇ。イギリスからの留学生! 名門ウォルコット家の優秀なヒーローの卵! その佇まいから溢れ出す、いいお嫁さんになりそうな空気! リリウム・ウォルコットだぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

──ワアァァァァァァァァァァ!!!

──リリウム可愛いよリリウム!!!

──リリウム俺だ! 結婚してくれえええええ!!!

 

……すごい、圧だ。同じ男として、あそこまでバカにはなりたくないなぁ。

 

リリウム・ウォルコット。イギリスからの留学生。騎馬戦では一緒に組んだけど、結局どんな個性なのかは詳しくわからなかった。

外国の生徒はどんな教育を受けて居たのか、どんな個性なのか、色々と気になる。今のうちにメモを取らなきゃ。

 

ノートを開き、白紙のページに新しくリリウムの項目を作る。

 

『それじゃあ、試合を始めるぜ!』

 

ストレイド君なら、絶対にこうする。

 

『レディー……ファイト!』

 

圧倒的なまでの速度を活かした速攻!

 

一瞬。瞬間移動だと錯覚するような速さで、ストレイド君がリリウムの背後に現れた。そして腰を掴み、投げ……ッッッ!?

 

『おぉぉーーっとぉ!? これはどういうことだ? ストレイドは腰を、リリウムは手を掴んだのはいいが、両者一歩も動かない!』

 

もしかして、ストレイド君の筋力が足りなかった? いや、彼は個性把握テストで上位にいた。つまり、能力を使用してもあまり効果がない分野でも優秀だった、つまり筋肉もあるはず! なのに、これは……いったい何が。

 

──ドヒャア!!!

 

爆音と暴風を撒き散らしながら、ストレイド君達の身体が1mほど浮いた。

 

──ドヒャア! ドヒャア! ドヒャア!

 

また、少しずつ浮いていく。

 

あれだけの推力を受けて中々上がらないということは……もしかして、身体を途轍もなく重くする個性とか?

 

『おっとお! ここでストレイドが手を離し、両者共に地面に着地……いや、ストレイドだけ膝をついている! どういうことだ!? 中々立たないぞ!』

 

これは……やっぱり、自分にだけ効果が発するんじゃなくて、対象に何かしらの効果を発する個性か?

 

『なんだなんだ、どういうことだ!? ストレイドが、勝手にフィールドの外へと向かって引き摺られていく! まるで、引っ張られているみたいに!』

 

……引っ張る? まさか、引力を発生させているのか!?

 

──ドヒャア! ドヒャア! ドヒャア!

 

『ストレイド頑張って前へ進むも、ほんの少ししか前へ進めない! 根気との勝負になりそうだ!』

 

あの、途轍もない推力を発生させる技を使っても中々進めないと考えると、個性を発動された時点で、僕は恐らく負ける。個性が発動するトリガーはなんだ? 可能性としては麗日さんみたく触られたら発動が1番あり得るけど、相澤先生みたいに、視界に入れば発動する可能性もある。

 

ストレイド君は……もしかしたら、詰んでいるかもしれない。

 

「────ォ……」

 

ん? ストレイド君の身体が緑色に包まれてる?

……まさか。

 

「みんな! 目を塞いで身を屈めて!」

 

「アアァァァァマアアァァァァァァァァアアアア!!!」

 

見たことがあったから、僕は咄嗟に身を屈めて目を隠すことが出来た。でも、初見の人はそうはいかなかっただろう。クラスのみんなにはギリギリで伝えたせいで、対応できなかった人も居るだろう。

 

強烈な閃光と爆音、途轍もない暴風が無差別に襲い掛かってきた。

 

『うぉぉぉぉ!? 目が、目が見えねえ!』

 

「ぐうぅっ!」

 

客席に居るからそれなりに離れているはずなのに、風が強く感じる。試合の続きを見るため急いで目を開けると、既に試合は終わっていた。

 

「そこまで! リリウム選手戦闘不能! 勝者ストレイド!」

 

──ウオォォォォォォオオオオオオオオ!!!

 

劣勢から一瞬で勝ったからか、歓声が最初よりも大きくなっていた。

 

「やっぱり、凄い……」

 

圧倒的な速度による瞬間移動、スタングレネードに爆風も付いているような、あの技。そして入学試験で見せた、手からビームを出す技。

 

応用が効き過ぎる。複数の個性を持って居ると言われた方が納得する、不思議な個性。

 

そして、USJで見せた、あの暴走状態。

 

君は一体、何者なんだ?

 

 




風邪引きました。書けませんでした。
あと2話ぐらいで終わると予想。
書き終わらなかったらまた来週月曜に1話だけ投下。

残りは雑談的なものです。

本当は緑谷視点は書かない予定でしたが、周りから見たストレイド戦と、リリウムの能力の推測をしたかったためこんなことに。ストレイド視点だと何をしたかが分かってしまうので、ね。

リリウムはB組ですが、B組にも個性はバラしていません。ほら、個性とかバラすべきモノじゃないですしね? たぶん偽の個性で申請してると思う。

リリウムっていい匂いしそう。紅茶とか似合いそう。はぁ〜リリウム可愛いよリリウム。

デュアルフェイス
みんなご存知ジノーヴィー。ぶっちゃけパチモンの方が強い。
今回ジノーヴィーがちょろっと出しましたが、これ以上本編に出る予定はないです。出たとしてもきっと死体です。

あんまりフロムの住人を増やすと作者の脳がキャパオーバーするのです。出すとしても主要キャラぐらいです。

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