真剣で人生を謳歌しなさい!   作:怪盗K

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皆さま、おはこんばんにちわ。

感想、評価、お気に入りありがとうございます。

何とか連日投稿、筆が乗れば速いものですね。

では、駄文ですが、どうぞよろしくお願いします。


第28話

「ごめんね! 修二君!」

 

 俺がお空の星になりかけた後、落ち着いたのか。清楚ちゃんは平謝りをしていた。

 いやまあ、俺が悪いんだけどね。こうなることは分かってたし。

 

 

「ふん、清楚、謝る必要などあるまい。それより! 覇王たる俺を差し置き、彼女がいるだと!?」

「いやまあ、百代ちゃんだろ、小雪だろ……えーと」

「しかも複数か! 巫山戯るのも大概にせよ!」

 

 

 そんなこと言ったって、しょうがないじゃないか!

 

 

「まあ、そんな俺だぜ? 今ならまだ引き返せるぞ」

「ううん、私たちは引かないよ。ようやく分かったんだもん。前に進んで、掴んじゃうよ。だって私覇王だもん……ああ、覇王に撤退の二文字は無い。お前を俺のものにすることから、世界の征服を始めるとしよう」

 

 

 くはは、そりゃあ、世界征服よりも大変だぞ?

 俺が笑いながら、清楚ちゃんの肩を借りて歩を進めると、校門のあたりに人影が見えた。

 

 

「やれやれ、随分と好き勝手やってくれたねぇ」

 

 

 

 黒幕は遅れて登場するとは言うが、ようやくお出ましだな。

 幅広の帽子に、夜会ドレスと喪服を掛け合わせたような小洒落た格好をした婆が待ち構えていた。

 

 

「……マープル」

 

 

 清楚ちゃんがその名を呼ぶ。

 

 

「テメェが噂に聞くマープルか。よろしくな、織原修二だ」

 

 

 俺がフレンドリーに手を差し出すが、婆は無視して扇で口元を隠す。

 

 

「よろしくするつもりはないが、九鬼家従者部隊序列二位のマープル、アンタが引っ掻き回してくれた武士道プランの提唱者だよ」

 

 

 そのしわがれた声と刻まれた皺は、目の前の老婆が積み重ねた歴史の重さを思わせる。

 星の図書館とか、世界の歴史を全部暗記してるとか大層なこと言われてるらしいが、俺に言わせりゃあ歴史の勉強しすぎて懐古主義こじらせた婆だ。

 

 

「清楚。悪いけど、項羽にはまだしばらく眠っていてもらうよ。まだアンタが目覚めるには、ちと早過ぎるんだよ」

 

 

 だから、そんなことふざけた言えるんだろうな。

 しかし、そんなことを言う婆に、清楚ちゃんは凛とした顔で言葉を返す。

 

 

「マープル、ごめんなさい。項羽はもう、マープルの都合で動かないよ」

「はぁ、そりゃそうだわね。言ってみただけだよ。仕方ないね。ひとまずは、様子見させてもらうよ」

 

 

 おん? 意外と物分かりがいいな。無理やりにでも項羽ちゃんを眠らすくらいしてくるかと思ったが。

 

 

「だが、織原ボーイ、アンタはやり過ぎた。いくら帝様がねじ込んだからって、ここまで派手にやられちゃあ、私も黙ってられないよ」

 

 

 やり過ぎただぁ? 寝ぼけてる子に、一緒に遊ぼうぜって声かけただけじゃねぇか。

 てめぇらがこいつらに何一つ上げなかったもんだから、それを見せてやっただけだろうがよ。

 

 

「はっ、何だ、思い通りにいかなくて怒っちまったか? これだから、年取って考えが凝り固まった奴はいけねぇや」

「ふん、何も全部予定通りに進むと思っちゃいないが、アンタは少しばかり予測がつかなさ過ぎるからね」

 

 

 俺の行動を予測するなら、俺と骨の髄まで向き合わなきゃなんねぇんだよ。心でぶつかってこねぇ奴に、俺の心が分かってたまるか。

 

 

「だから俺をどうにか排除しようってか。随分と大盤振る舞いじゃあねぇか」

 

 

 なぁ? 爺。

 俺がそう声をかければ、校門の影から金色の闘志を纏ったヒュームの爺が姿を現す。

 

 

「ふん、俺としては、武士道プラン自体はどうでもいいのだがな。この計画に手を貸すように約束をしていてな、それを潰させる訳にはいかんのだよ」

「久しぶりだなぁ、爺。ポックリ逝っちまったのかと思ってたぜ」

 

 

 帝と一緒に、ドイツで遊んだ時以来か? えぇおい、もうボケちまったか?

 

 

「ふん、相変わらずふてぶてしい小僧だ。初めて会った時から気に入らんかったのだ」

「そうかい! 俺は案外嫌いじゃなかったぜぇ!」

 

 

 遠慮なく殴りかかれるからナァ!!

 

 

「ジェノサイドチェーンソー!」

 

 

 爺の必殺技。最強にして絶対の一撃が俺に迫る。

 回避、不可能。防御、不可能。躱せぬほどに鋭く、防御など意味をなさない。いなそうとしたところで、今の俺では、その威力を殺しきれずに致命的なダメージを食らっちまう。

 だが、俺は嗤う。ずっと考えてた、必殺の一撃をどう凌ぐか。

 

 

「くは、くははは。反応装甲って、知ってる?」

 

 

 爺の脚が俺の身体に直撃した瞬間、爆発が起こる。血が飛び散り、爆風と爆炎がお互いの身体を包み込む。

 俺は肩口から血を噴き出させながら、ぼろ布になった服を破り捨てる。まるで動画を逆再生させるかのように、新しい皮膚が傷を覆う。

 爺の足から、吹き出した血が地面に垂れる。

 

 

「なるほど、考えたな。馬鹿げた方法だが、お前なら理に適っている」

「だろ? ちなみに、川神流の人間爆弾が元ネタな」

 

 

 ちなみに百代ちゃんが使うときは皮膚の上から外に爆発させるらしい。でもあの爺のキック、雷撃帯びてるから、触った時点でアウトなんだよな。仕方ねぇから、触れた皮膚ごと吹き飛ばすしかなかった。

 

 

「だが、一流に二度同じ技が通じるものか! ジェノサイドピアシクル!!」

「そりゃあ、こっちの台詞だボケェ! ジェノサイドジェノサイド、更年期障害でイライラしてんのか老いぼれがァ!」

 

 

 爺が選んだのは、横なぎではなく、足刀による刺突。腹を狙った一撃、しかし、その動きは今までのものよりも読みやすい。上下左右どこから来るか分からない範囲攻撃よりも、一点で攻められた方が攻撃範囲が狭く避けやすい。

 それでも避けきれず、わき腹を大きくえぐられながら、俺は気を練る。それは俺が鉄心の爺さんに教えてもらったとっておきの切り札。

 

 

「顕現の参! 毘沙門天!!」

「何ッ!?」

 

 

 突如として俺の背後に現れた神仏、その足が爺を踏みつぶさんと振り下ろされる。

 確かな手ごたえ、だが、浅せぇ!!

 咄嗟に腕でガードした爺に、俺はさらに気を練りだし、追撃を加える。

 

 

「かーらーのー! 顕現の七・神須佐能袁命 八岐斬り!!」

 

 

 仏と並んで現れたのは武神。その手には巨大な剣を持ち、神速の一撃が一瞬にして八つ放たれる。嵐を起こす神に相応しい、暴風雨のごとき剣戟。

 しかし、爺は全てを受けながら、膝をつくこともなく、その拳を振るう。

 

 

「舐めるなぁ! 猿真似で俺を圧せると思ったか!」

「ぐっ、らぁ!」

 

 

 鼻っ面を殴られ、俺は仰け反るも拳を振るう。しかし、それは空を切り、爺は仕切り直しと言わんばかりに距離を取る。

 

 

「……鉄心の技を使ったのは驚いたが、気の練りが足りんな」

「強がんなよ。ちょっと痛かったんだろ?」

 

 

 反応装甲で執事服は破けてるが小さな火傷と裂傷程度、今の奥義ラッシュも、戦闘不能には程遠い程度にしかダメージが入ってないだろう。やっぱり、付け焼き刃じゃ、鉄心の爺さんほどの威力はねぇか。

 爺が手のひらに気をエネルギーとして集める。少しの溜めのあと、それは濁流のごとく俺の目の前にあふれ出す。

 

 

「エネルギーウェイブ!」

「ッ、川神流 星砕きぃ!」

 

 

 俺も咄嗟に同様のエネルギー波を飛ばし、相殺させる。

 次の一手が来る。爺の気配が迫る。

 

 

「百式羅漢殺!」

「川神流 無双正拳突き乱れ撃ち!」

 

 

 エネルギー波を目くらましとして利用し、爺が自身のダメージを厭わず、エネルギーの奔流の中から姿を現し、まるで無数の拳に分裂したかのような攻撃を繰り出してくる。

 俺も同様にラッシュを繰り出す。

 アァ!? ラッシュの速さ比べか! 面白ぇ!

 

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!」

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラぁ!」

 

 

 ぶつかり合う拳がそのまま衝撃を生み出し、グラウンドはさらに破壊され、でこぼことした地形へと変わっていく。

 俺の口角が上がる。爺も楽し気に笑っている。

 

 

「無駄ぁ!」

「オラァ!」

 

 

 お互いの拳がお互いの顔面を吹き飛ばし、俺は校舎へと、爺は校門へと叩きつけられる。

 

 

「ぺっ、やるなぁ! 爺!」

「……ふん、やはり気に食わん」

 

 

 口の中に溜まった血を吐き出し、俺は口を真っ赤に染めながら叫ぶ。

 ああ、楽しい。生きてる実感を感じる。

 爺との戦いは予想外だが、こんなことなら少しは婆にも感謝してやる。

 

 

「まだまだいけるぜぇ! メルツェェェル!!」

 

 

 俺は拳を握り、爺へと向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side:葉桜清楚

 

 

 おい、清楚。修二は負けるぞ。

「項羽?」

 あの馬鹿。ヒュームに食らいつく為に、ペースを考えずに大技を出し過ぎだ。あいつの気が膨大なものだとしても、ヒュームより早くバテる。

 

 

 私の中の項羽が、目の前で繰り広げられる戦いから、修二君の負けを分析する。

 修二君の傷は最初、全て再生するように治っていた。しかし、今では小さな傷は放置されているのか、少しずつ傷が増えてきている。

 修二君の方もヒュームさんに攻撃を当てているが、有効打はヒュームさんの方が多い。殴って殴られて、吹き飛んで吹き飛ばされて、それでも二人は笑いながら立ち上がってまたお互いを殴り合う。

 自然と、私の足が二人の元へと一歩踏み出した。それを、マープルが咎めた。

 

 

「悪いが清楚、いや、項羽かい? アンタは見てな。ったく、ホントに末恐ろしい餓鬼だよ。アンタより、あいつの方が覇王みたいじゃないかい」

 おい、俺より覇王らしいとはどういうことだ。

 

 

 心の中で項羽がマープルの言葉に否を唱えるのを聞きながら、それでも私は無視してマープルに問う。

 

 

「……ねぇ、マープル」

「なんだい? 清楚」

「私たちってさ、英雄のクローンなんだよね。私は項羽で、義経ちゃんたちも、昔に凄い活躍をした英雄たちで」

 

 

 今まで、義経ちゃんたちと一緒に、英雄である誇り、英雄である責務、英雄である自負、英雄である未来、そんなものを背負っていたのだろう。

 この身体を構成する遺伝子が、血に刻まれた記憶が、そんな鎖を作っていたのだろう。

 義経は義経らしく、弁慶は弁慶らしく、与一は与一らしく、項羽は項羽らしく。

 

 

「でも、英雄ってその遺伝子じゃなくて、その生き様が作るものなんだよ」

 ………

「……」

 

 

 そう、英雄とは未来を指す言葉ではないのだ。そして、過去を具体化する言葉でもない。

 今を生きる、自分の信念を貫き通す者を指す言葉なのだ。

 

 

「前だけ向いて、背中だけしか見せてくれない。でも輝いてて、手を伸ばして、それでも届かない。だから憧れる、惹かれる」

 

 

 我こそは、我こそはと先駆ける者。何者でもない彼が、その姿を見せてくれたのなら、英雄のクローンなんていう大層なものを持ってる私が負けちゃあ、名前負けも甚だしい。

 だから、項羽、行こう。あそこに。覇王が傍観者じゃ恰好つかないでしょ?

 しょうがあるまい。お前ひとりでは、奴の相手は骨が折れそうだからな。何より、お前は俺で俺はお前だ。

 

 

「清楚、まさかアンタ、あの男に本気で惚れたってのかい?」

 

 

 マープルが呆れたように問う。それに私たちは声を高らかに答える。彼と同じように、自分の心を貫き通そう。

 

 

 

「「うん、ああ。私は、俺は、あの人の、あいつの」」

 

 

 

 ようやく英雄というぼんやりとしか見えていなかったものに、手が届いた気がした。

 

 

 

「「隣に立つ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガス欠が近い。傷を治す気が足りない上に、攻撃も千日手となり始めた。この爺、攻め一辺倒かと思えば、存外に防御の方も硬ぇ。

 攻めるに難く、守るに足らず。有効な攻撃は奥義しかなかったから、連発すれば、流石にフルコースで顕現を使ったのはやり過ぎだったか。

 

 

「どうやら、決着が近いな。随分と器用に闘うが、経験が足りんな。未来のお前と戦いたかったぞ、出来上がっても無いその子どもの身体であるのが口惜しいほどに」

「はっ、テメェの老いぼれて萎びた股間に比べりゃあ、ピチピチで羨ましいだろ?」

 

 

 軽口をたたきながら、少しでも呼吸を整え、気を全身に巡らせる。臓腑を活性化させ、残り少ない切り札を頭の中で数える。

 顕現は覚えた分は品切れ、なにより消費が激しい。自爆特攻は回復しきれないからトドメ以外には使えねぇ。

 

 

 

「トドメだ。今の貴様では防ぎきれまい」

 

 爺が振りかぶる。それは今まで何度も振るわれた、爺が積み重ねた武の歴史の集大成。

 

「ジェノサイドチェーンソー!!」

「っ!」

 

 反応装甲を使おうと、気を狙われた場所に纏わせるが、爺がそれすら叩き潰すつもりで、脚に気を纏わせてるのが分かった。

 まじぃ!? これは防げねぇ!

 

 

「抜山蓋世ッ!!」

 

 

 その瞬間、爺が吹き飛んだ。

 それを成したのは、横合いから飛び込んできた、虹彩を赤く染めた項羽ちゃんであった。

 拳を振り抜いた姿勢から、俺の前に仁王立ちで立つ。

 

 

「……項羽ちゃん?」

 

 

 俺は呆けたように、その名前を呼んだ。

 そんな俺に、項羽ちゃんが喝を飛ばす。その声は、覇王らしく威厳に満ち、そして清楚ちゃんの優しさがあった。

 

 

「負けるな修二! 私の好きになった男の子なら、勝って!」

「……」

 

 

 その声を聴いたとき、心の底から何か力が湧いてくる。

 体はボロボロで、気はすっからかんに近い。廃車寸前な有様の癖に、胸の真ん中にあるエンジンだけは、早く走らせろと喧しく喚いている。

 

 

「……なるほどな。そうだな、勝たなくっちゃなぁ」

 

 

 惚れた女にかっこ悪いとこ、見せらんねぇよなぁ。

 惚れられた女にいいとこ、見せてぇよなぁ。

 

 

「悪りぃな爺、サシの闘いだと思ってたが、これも俺のハンサムさが粗相しちまったってことで」

 

 

 視線を上げれば、爺は変わらぬ姿で立っていた。

 

 

「ふん、構わん。一人も二人も、誤差程度だ」

 

 

 よく言うぜ、慢心じゃねぇってのが、腹立つところだ。

 

 

「行くぜェ! 清楚ちゃん、項羽ちゃん!」

「うん!」「ああ!」

 

 

 俺は彼女たちと手を重ねる。繋がった手から、荒々しい気とそれを導く柔らかな気が流れ込んでくる。

 爺も拳を振りかぶり、そこの気が収束される。

 

 

「覇王咆哮拳!」

「俺の前で覇王を名乗るとはな! 修二!」

「おう! ありったけだ、もってけ! 川神流! 星殺しぃいい!」

 

 

 爺から放たれた桜色の気と、俺たちから放たれた極彩色の気がぶつかる。

 

「「「はぁぁあああ!!」」」

  「ォオオオオオ!!」

 

 

 やがて光は臨界点を迎えるように、爆発を引き起こす。夜を迎えたはずだってのに、まるで昼間のように明るくなる。清楚ちゃんが優しく微笑み、項羽ちゃんが不敵にほほ笑む。

 それに俺は、砕けた歯を見せて笑い返してやった。

 

 

 

 

 

 

 光が収まった夜空の元、立っていたのは俺と、そして清楚ちゃんたちだけだった。

 遠くには、ヒュームの爺が仰向けに倒れているのが見える。

 

 

「……ガス欠だ。もう何も出やしねぇ」

「お疲れ様、修二君」

 

 

 倒れそうになる俺を、清楚ちゃんが支えてくれる。

 

 

「あー、疲れた。ほんとチート過ぎんだろ、爺。主人公補正だけじゃ勝てねぇとか信じらんねぇ」

「ふふ、だったら、愛の力って奴かな?」

「かもな。てけ、こそばゆいな、おい」

 

 

 あー、意識ブラックアウトしそう。身体も動かねー。動かないから清楚ちゃんのお胸に寄りかかるのも仕方ないよねー。

 そんな風に気を抜きそうになった俺の目の前で、倒れていた爺がこともなげに立ち上がる。

 

 

「くだらん餓鬼の戯言だ。ふざけるのも大概にしろ」

「……おいおい、マジかよ」

「嘘……2人がかりでの全力だったのに」

 

 

 爺が一歩、俺たちに近づいてくる。

 清楚ちゃんが、俺を庇うように胸の中に抱き込む。

 

 

「そこまでだぜ、ヒューム」

 

 

 しかし、爺はその聞き慣れた声に足を止める。

 

 

「帝様……」

「子ども相手にムキになりすぎだぜ。もう勝負はついただろ。それ以上はしつこい爺って言われてもしょうがねぇぞ?」

 

 

 いつの間にか、マープルの隣には帝が立っており、その後ろには侍るように従者部隊が並んでいた。

 

 

「帝様、なぜこちらへ来られたのですか?」

「そりゃおめぇ、面白そうなパーティーがあるってんで急いで飛んできたんだよ」

 

 

 あーくそ、身体が動けばあの軽口殴りつけてやんのによ。何だよパーチーって、俺がボコられんのがそんなに面白ぇか? えぇおい。

 ん? でも俺も爺がボコボコにされてたら指差して笑うな。

 

 

「ヒューム、あんた上手く誤魔化してこっちに来たんじゃなかったのかい?」

「……」

 

 

 マープルが爺を咎めるように目を細めるも、爺は何も言わずに服についた砂を払い落としている。

 

 

「はっはっはっ! 変なところもなけりゃあ、アリバイも完璧だったぜ? ただ、俺の勘の方が一枚上手だったって訳だ」

 

 

 いやだから、マジでそのチート能力どうにかしろよ。全部勘の一言で片付けるのお前の悪い癖だかんな。

 

 

「やれやれ、ほんとうに大したお方です」

 

 

 マープルも帝のクソゲーっぷりには、肩をすくめるしか無いらしい。そりゃまぁ、色々計画立てても、全部勘とか言うので看破されたりするからな。

 俺絶対帝とカードゲームとかしねぇもん、あいつリアルでデスティニードローとかしてくんだもん。

 

 

「お前らの負けだよ。ヒューム、マープル」

「……是非もありません」

「……」

 

 

 帝の宣言に、ヒュームは潔く頭を下げ、マープルは不満げに顔を逸らす。

 

 

「んじゃ、でしゃばった審判役はここらでお暇するとすっか。おいヒューム、行くぞ」

「はっ」

「マープル、尻拭いは自分でしろよー」

 

 

 帝はそう言うと、手をヒラヒラと振りながら爺を連れてどこかへと姿を消した。いやまじ、なんなんアイツ? 好き勝手言ってそのまま帰って行ったんだけど?

 残されたのは、俺と清楚ちゃんたち、そしてマープルの婆さんだけだった。

 ……いや、どう収拾つけんだ、これ。




ここまで読んでいただかありがとうございます。

何かバトルしかしてねぇな、このラブコメ主人公と思いながら、書いておりました。まぁ、恋愛フラグも建ててるのでその分苦労してもらいましょう。

原作最強格のヒューム卿が相手でしたが、修二くんは頭あっぱらぱーなので、普通に喧嘩吹っかけております。
最後は石破ラブラブ天驚拳と叫ばせるか迷いましたが、流石に真面目にまじこいの技で頑張ってもらいました。


ではでは、どうぞ次回もよろしくお願いします。

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