真剣で人生を謳歌しなさい!   作:怪盗K

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おはこんばんにちは。
お気に入り、感想、評価、誤字報告ありがとうございます。

第19話となります。

それでは、駄文ではありますが、よろしくお願いいたします。


第19話

 京ちゃんと一緒に遊ぶようになり、そこそこの日数が経った。やっぱり、そもそも大人しい性格なのか、あまり声を上げてはしゃぐことは無かったが、楽しそうに笑うことは増えた。

 

 そんなある日、風間たちの遊ぶ空き地へと俺は足を運んでいた。

 

 

「よぉ、今日もクソ暑い中、仲の良いこった」

「お、修二! 久々じゃねぇか! なんだなんだ! 今日は遊びに来たのか?」

「修二ー! 一緒に遊びましょ!」

 

 翔一と一子ちゃんが、懐いた犬のように駆け寄って来る。

 夏ということもあり、一子ちゃんは薄着な上に、動き回るのが好きな一子ちゃんの裾がめくり上がりチラチラと健康的なお腹が見え隠れする。

 

 ンー! デイッモールト!!

 

 やはり、夏という開放的な季節はいい。女の子のガードも緩くなっているし、山海川とアバンチュールなイベントに事欠かない。

 それに、一子ちゃんの懐きようは、昔飼っていた犬のジョージを思い出す。あいつも俺が呼べば直ぐに駆け寄ってきたもんだ。

 

 

「ゲッ、修二かよ」

「なんだぁ? もっと嬉しそうな顔しやがれや、世界一のハンサム様だぞ?」

 

 

 そんな一子ちゃんに対して、岳人はまるで天敵でも見たかのような顔をしている。

 最近色気づいたのか、女子にモテようと筋トレをしているようだが、俺のハンサム力に怯えてるようだ。

 カハハ、俺に勝てるわきゃあねぇだろうがヨォ!

 

 

「フッ、貴様が来れば、特異点の乱れは最大限となる。そうか、時が来たのか……」

「相変わらず、いてェ奴だなぁ。まあ、将来のために、記録は残しといてやるか」

 

 

 優しい俺は、大和の奴の雄姿をビデオカメラに納めてやる。

 

 

「あー、悪いが、翔一、今日はオメェらと遊びに来た訳じゃあねぇんだ」

「ん? じゃあ、何しに来たんだ?」

「お前ら、椎名京って知ってるか?」

 

 

 俺が京ちゃんの名前を出した瞬間、大和と岳人、卓也は顔をしかめる。

 

 

「うげ、おまえ、椎名とかと知り合いなのかよ」

「……なるほど、椎名か……」

 

 

 あー、もうこいつらの反応でだいたい察した。

 

 

「確か、あのいつも一人で居る子だよね。その子がどうしたの? 修二」

「んにゃ、特になんもねぇよ、一子ちゃん。おい、岳人、お前もしかして、京ちゃんのこといじめちゃあねぇだろうな?」

「……な、そ、そんな訳ねぇだろ! 椎名のことなんて、知らねぇぞ!」

 

 

 

 あーはい、黒。とりあえず、岳人の顔を殴り飛ばしとく。

 女子にモテたいってのに、んなカッコ悪いことしてどーすんだよ、このダボがっ。

 

 

「ったく、まさかお前らが関わってるとはなぁ。まあ、クラスメイトみたいだし? 同調意識ってやつもあるんだろうさ? おい、大和、おめぇも岳人みてぇになりてぇか?」

 

 

 

 ふっとばされた岳人が、ピクピクと痙攣して泡を吹いている。それを見た大和は顔を青くして首を横に振る。

 俺は優しい笑顔を浮かべて、大和の肩に手を乗せる。

 

 

「それじゃ、詳しいこと教えてくれる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大和から詳しい話を聞いたら、発端は京ちゃんの母親にあるらしい。なんでも、他の保護者と不倫してたとのことだ。それももうズブズブの関係だったらしい。

 その話が学校内外ですぐさま広まり、淫売の娘というレッテルを京ちゃんは貼り付けられた。

 

 子どもってのは単純なもので、何か責め立てれるモノがあればそれを突つかずにはいられないのだ。

 ましてや、今回は大人たちが汚らわしいやら、尻軽とやら悪評を声を大にして話を広げてやがる。子どもからすりゃあ、意味がわからなくても、虐める理由にはなるだろうさ。

 

 さてさて、そんなこんなで、京ちゃんは、椎名菌やら、淫売の娘やら、色々言われているらしい。無視して、孤立させ、じっくりと嬲るようなそんなイジメ方らしい。

 

 

「なるほどねぇ」

 

 

 ぶっちゃけ、京ちゃんの母親より俺の方が尻軽だからなぁ。浮気、不倫は、実際にミサゴちゃんでヤッちまってるし。

 ミサゴちゃんだけじゃなく、あずみちゃんや亜巳ちゃんに史文恭ちゃん、ついこの前も、神速の女とまた事故って、そのまま交通事故ックスしたしなぁ。

 帝の奴も、浮気相手孕ませて大変なことになっちまってたみたいだし、ロクな奴がいねぇな? 川神には。

 

 

「おい大和! そんなことになってるなんて、俺知らなかったぞ!」

「キャップやワン子は知らなくて良いことだったんだ。下手に俺たちが首を出して、皆に飛び火させる訳にはいかない」

「大和……」

 

 

 翔一はいい子だねぇ。今にも何かしでかしそうだ。イジメに対して、義憤を燃やせるって奴は少なくないかもしれんが、そのために動けるのは本当に少ない。

 大和の言うことも、賢い立ち回りの一つだ。触らない、見て見ぬ振りをしてれば、対岸の火事で済むからな。

 

 

「まあ、だいたいは把握できたわ。ありがとな、大和」

「待て、修二。貴様、椎名京をどうするつもりだ」

「何だよ、大和。俺がお前らの学校に殴り込みに行くとでも思ったのか?」

「お前と言う特異点の行動は予測できない。ならば、お前がファミリーに害を為さないように、俺は釘を刺さなければならない」

 

 

 ほぉ、生意気にもこの俺様の行動に口を挟むつもりか。

 まあ、別にこいつらをどうこうする訳じゃねぇ。

 てか、殴り込みねぇ。それもそれで、いいんだが、ぶっちゃけ、他校で起こってるいじめの解決とか、面倒くさい、ダルい、女の子とイチャイチャしてたい。

 

 

「俺はもっとスマートなやり方でやるってんだ。と言うわけで、翔一、お前ら風間ファミリーに俺からミッションをくれてやるよ」

「修二、急に何だ? 椎名を助けるのか?」

 

 

 助ける助けないとか、んな上から目線で俺はヤラねぇよ。ヤリたいからヤル、気に入らないからぶん殴る。そんぐらいでいい、そんぐらいがちょうど良い。

 

 

「一週間、いや、二週間だな。二週間で、学校のイジメを解決しろ。お前ら皆んなでやりゃ、それくらいできるだろ」

「おい、修二! 何で、俺らがお前の命令でそんなことしなきゃいけねぇんだ!」

 

 

 いつの間にか復活した岳人が、俺に突っかかってくる。手が出てない辺り、俺に敵わないことを理解してるのだろう。

 まあ、お前らはボコボコにされても誰かの言いなりになるタイプじゃ無い。その辺りは、俺もきちんと評価してるぜ?

 

 

「只とは言わねぇよ。ホレ」

 

 

 俺は岳人に、異能で作ったピ○ポテトを投げ渡す。風間や大和にも、菓子を出して、投げ渡す。

 一子ちゃんには、裸のマシュマロを投げてやる。一子ちゃんは綺麗なジャンプを披露し、そのままマシュマロを口に入れてうまうまと顔を緩めている。

 カワイイ!

 

 

「一年分だ、一年分のお前らの菓子を出してやるよ。好きなやつを好きなだけな」

 

 

 ゲンナマは流石に小学生にはねぇ? その辺り、俺もまだまだ良い子ちゃんだろ?

 

 

「オッケー! 修二、お前からのミッション、たしかに風間ファミリーが解決してやるぜ!」

 

 

 翔一が、カッコよく指を突き出しながら、俺へと宣言する。他のメンツも、やれやれと言った顔をしたり、しょうがねぇなぁという顔だったりだが、号令一つでこいつらの意思が固まった。

 やるネェ、俺ほどじゃあねぇが、中々のハンサムっぷりじゃねぇか。こりゃ、一週間でも十分だったか?

 

 

「キャップが言うなら、僕も手伝うよ」

 

 

 今まで喋ってなかったせいで、影が薄かった奴がようやく会話に入ってきた。

 

「あん、お前居たの? モロチ○くん」

「師岡! 師岡だよ! そんな下ネタなあだ名じゃないよ!」

「あー、はいはい、分かったよ。パ○モロくん」

「だから、師岡だって!」

 

 

 うるせーなー、どっちでも大差ねぇだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 京ちゃんの学校のことは、取り敢えず風間ファミリーに任せるとして、俺は俺でやろうと思うことがあった。

 そのため、愛車であるリアカーに腰掛けながら、いつもの河川敷の土手で京ちゃんを待っていた。

 

 

「ハァハァ、修二……待った?」

「いんにゃ、全然待ってねぇぜ、京ちゃん」

 

 

 ランドセルを背負ったまま、息を上げている京ちゃん。学校終わった後と言ってたが、走ってきたのだろう。

 俺に早く会いたい、そんな気持ちが見える京ちゃんの態度がいじらしく、愛おしく感じる。

 

 

「さてさて、京ちゃん、今日俺は京ちゃんをどこに連れて行くと思う?」

「え……?」

 

 

 俺は京ちゃんの手を引き、リアカーへと乗せる。京ちゃんのキョトンとした顔が、やけに心地よく感じる。俺はリアカーを曳き、大地を力いっぱい蹴りだす。

 超人的な力で走り出したマシンは、殺人的な加速度を出し、街を駆ける。

 

 

「風を切り! 地を踏みしめ! どこまでも行こうじゃあねぇかぁ!」

「修二! どうしてこんなことを!?」

 

 

 京ちゃんは必死に、リアカーの取っ手にしがみついている。強すぎる風に目を瞑り、風に掻き消されないように慣れない大声を上げる。

 俺はそれを横目に高笑う。

 

 

「いいか! 京ちゃん! くっそくだらねぇ事ばっかだったらな、こうやって全部放り投げちまってもいいんだぜ!」

 

 

 家庭? 学校? いじめ? んなこたぁどうでもいい。んなもんは、鼻をかんで丸めたティッシュよりも価値がねぇ。

 この目の前の可愛い少女を、そんなクソくだらないしがらみが縛っちまってるのなら、それを解放してやるのは俺の様なハンサムの使命だ。

 

 だから、俺が手を引いて連れ去ってやろう。とっておきの策を教えてやろう。

 

 

「逃ぃげるんだよぉおおお! スモーキーぃいい!」

 

 

 カハハ、二週間ありゃあ、日本横断くらいできるだろ。北から南、美味いもの食って、温泉入って、いい旅になるゼェ?

 な? しがらみなんてくだらないだろ?

 楽しく生きようぜェ、京ちゃんよぉ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 京ちゃんとの二週間に渡る旅行は、日本を飛び出すこととなった。日本海を渡り、シルクロードを駆け抜け、ヨーロッパを横断し、アメリカを制圧前進し、太平洋を駆けた。

 そして──

 

 

 

 気づいたら、一ヶ月経っちまってた。

 

 

 

「いやぁー、国内で収まるつもりが、世界旅行になっちゃったよ」

「いや、おかしいだろそれ! 急に姿消したと思ったら、なんで地球横断してんの!?」

 

 

 久々に帰ってきた川神の地だが、流石に一ヶ月も顔を合わせてなかったら準のツッコミも新鮮味を取り戻す。

 俺の隠れ家兼ヤリ部屋マンションに、いつものメンバーが久々に集まってた。久々なのは俺と京ちゃんだけか? まあ、いいか。

 ちなみに、小雪と百代ちゃんからの折檻は既に済まされた後である。

 

 

「んだよ、きちんと書き置き残してたろ?」

「『旅に出ます。探さないでください』ってメモ書きだけな! ったく、俺や若はともかく、ユキとモモ先輩がどんだけ心配したと思ってやがる」

 

 

 しゃーないだろ、女口説き落としてる所だってのに、他の女に安否連絡とかしてられるか。

 その小雪とモモちゃんは、京ちゃんを交えてテレビゲームをしている。

 それ、俺がやろうと楽しみにしてた新作ソフトなんだけどなぁ……。

 

 

「んで、風間たちはどんな様子だったのよ。まあ、時間はたっぷりあったんだし、余裕じゃろ」

「ええ、彼らは上手くやってくれてましたよ。お陰でイジメは無くなり、学校はひとまず平和になったと言えるでしょう」

 

 

 冬馬は、俺が部屋に用意してたワイングラスで葡萄ジュースを飲んでいる。こいつもこいつで、子どもらしくねぇなぁ。

 

 

「そりゃあ重畳。まあ、誰がどうこうしたとかはいいや、面倒臭いし」

「それで、修二君の方はどうだったんですか? 京さん、随分と吹っ切れた様ですが」

「まぁな、もう京ちゃんも大丈夫だろ。イジメも、親も。それよりも、楽しいことがあるって知れたからな」

 

 

 俺は欠伸しながら、肌が黒く焼けた京ちゃんを眺める。

 佇まいは前と変わらない。だが、前にはなかった芯みたいなものが生まれている。オドオドと人の顔色を伺う様な怯えは無くなった。

 

 無くなったんだがなぁ……。

 

 

「修二、何話してるの?」

 

 

 京ちゃんが、俺の背後からしなだれかかってくる。甘い声を耳元で囁き、熱の籠った吐息が耳をくすぐる。

 

 

「ん、くすぐった。何でもねぇよ。ただ、京ちゃんも強くなったなぁと」

「そう、修二が私の話をしてくれてたんだ。両想いだね。結婚して?」

 

 

 背中から俺の胸元に回されていた手が怪しい動きをする。

 コラ! さりげに乳首を弾くんじゃありません!

 感じちゃうでしょうが!

 

 

「ったく、おませさんが」

「あたっ」

 

 京ちゃんの拘束を外し、京ちゃんにデコピンをする。

 ペッティングまではしてやるが、本番は身体が出来てからじゃあねぇとな。せめて高校に入ってからだわな。

 

 

「修二の愛が痛い……でも、痛いのも気持ちいい……」

「無敵か、こやつ」

 

 

 京ちゃんは確かに強くなった。イジメも家庭の問題も、自分で跳ね除けれるだけの芯を手に入れたと思う。

 だが、俺はとんでもないラブモンスターを目覚めさせてしまったのかもしれん。それくらい京ちゃんは、俺へと好意を向けてくれる。

 んー、重い愛も心地よい。悪くない、キャラが立ってるヨォ、京ちゃん。

 

 

「相変わらず、おモテになられるこって」

「カハハ、悪いこと教えただけだよ。ちなみに準、モテるのは俺がハンサムだからだ」

「そう、修二には悪いこと教えられちゃったの。恥ずかしくて人には言えないようなことをね、ぽ」

 

 

 頬に手を当て、顔を赤らめる京ちゃん。

 京ちゃんを侍らすのは気持ちいいが、ちょっとルート選択ミスると監禁ルート行きそうで怖いのよなぁ。

 まあ、そん時はそん時か。

 

 

「背中から刺されんなよ、修二」

「カハハ、安心しろよ準。俺がんなヘマするかよ」

 

 

 

 ピコーん!

 

 

 

 あれ? もしかして今、フラグ立った?




ここまで読んでくださりありがとうございます。

京ちゃんはパワーアップした! と言うわけで、第19話でした。

京ちゃんに関しては、修二くんは問題そのものを人に丸投げしました。ぶっちゃけ、本人も言ったように面倒臭いからです。

そんなことより、京ちゃん自身に、自信や楽しみを覚えさせてあげる方が修二くんらしいなと思い、こんな風に仕上がりました。

さてさて、次回予告は『修二、死す!』みたいなテロップを流す感じで想像していただければと思います。


では、これからもよろしくお願いします。

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