真剣で人生を謳歌しなさい!   作:怪盗K

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皆さま、おはこんばんにちは。

評価、感想、お気に入り、誤字訂正ありがとうございます。

第18話となります。
ようやく、ようやく彼女を出せました。
描き始めた頃から数えると年単位とは……。
まあ、時間かけても書いていけること、皆さまに感謝感謝です。

それでは、駄文ですがよろしくお願いします。


第18話

 小雪に攻略され、何かが特別変わったという訳ではないが、何となく距離感が近くなったような気はした。

 それを察してか知らずにか、百代ちゃんも引っ付いてくるようになった。

 あぁ、そのいじらしさが可愛らしい。

 俺と小雪の間にあって、自分と俺の間にないものが存在してることを感じてるのだろう。知らず知らずのうちに、それを埋めようとしてるのだろう。

 

 愛いやつめ。そんな君が俺は好きだぜェ。

 

 

 小雪のせいで、俺の相手に求めるハードルは下がった。

 いや、どちらかと言えば、意外と人を信じられるようになったと言うか、こいつら、俺が思うより馬鹿なんだから、深く悩まなくていいって考えるようになった。

 やってくれるぜぇ、小雪よぉ。俺をここまで腑抜けさせるたぁよぉ。

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなでさらに時は消し飛ばされ、小学5年生となった。

 リアカーで日本横断してたらなんか神速の女と5回ほど事故ったり、松笠の古狼とかいうおじさんの戦艦に穴開けて一週間ほど命をかけた追いかけっこしたりしてた。

 てか、なんであの女行く先々でぶつかんの? 呪われてんの?

 

 百代ちゃんは最高学年となり、その発育具合はさらに磨きがかかっていた。

 小雪もマシュマロの食べ過ぎのせいか、体もマシュマロみたいに柔らかく抱き心地の良いものとなっている。

 

 我慢ができなくなってしまいそうな時がちょくちょく出てくるとか、最近の若い子はヤベーな。

 

 そんな感じで、誰も彼も成長期に入った少年期の最後の夏

 クソみたいな日差しがギラつき、何をしてなくてもじんわりと汗が滲む。

 

 いつもの河川敷、いっそのこと川に飛び込んで水浴びをしたい衝動に駆られながら、小雪と百代ちゃんの組手というには、ガチではなく、じゃれあいというには高レベルなやり取りを見守る。

 

 百代ちゃんは戦闘スタイルが確立されたのか、ゴリッゴリのパワーファイターだ。多少のダメージは最近会得したらしい、瞬間回復とやらで治してしまう。

 なんか、戦闘スタイル被ってる気はするが、百代ちゃんの方が小技の引き出しは多いし、川神波とか無双正拳突きとかの大技も持ってる。

 あれ? これ俺の上位互換?

 

 対して、小雪はヒットアンドアウェイ、トリッキーな身のこなしが持ち味だ。型にハマらず、それでいて、その基盤は積み重ねられた鍛錬に裏付けされた技術で作られている。

 小雪の戦い方で、特筆すべきは足の力だ。しなやかで、それでいて強靭な足の筋肉。そこから繰り出される一撃は、軽く出されたものでも人体を軽く粉砕してしまうものへと変貌していた。

 

 

「トォー!」

「ハハッ! ほんと、器用に戦うな、ユキ!」

 

 

 小雪が跳ね、蹴り、また跳ねる。

 百代ちゃんは見切り、受け止め、気弾を飛ばす。

 

 

「ほんま、最近の女子は怖いわー」

 

 

 この一年で百代ちゃんも小雪も、超人へとステップアップしてる。

 その力が俺に振るわれないことを切に願う。

 そんな見守る俺をよそに、ヒートアップしない程度で百代ちゃんと小雪は河川敷を少しずつ変形させていく。

 

「最近の修二君は、どこか清々しい顔をしてますね」

「おん? どうしたよ、急に」

 

 

 そんな折、笑みを浮かべた冬馬が、すすすっと近寄ってくる。

 何故か尻のあたりがヒュンッて寒気を感じた。

 

 

「前の何処となく憂いが見え隠れしてた修二君も素敵でしたが、今の修二君もすっごく魅力的ですよ」

「ひえっ」

 

 

 ねっとりとした声。

 いつの間にやら、冬馬はホモになっちまってた。この眼はガチだ。

 

 

「じゅーん!! お前なんでこんなになるまで放っといておいたんだテメェ!」

「オメェのせいだろうが! 若が薔薇の道に進んじまったのは!」

「俺が好い男過ぎたってかぁ! ありがとヨォ! クソが!!」

 

 

 とりあえず、冬馬とは距離を置こう。間に小雪か百代ちゃんを置くしかねぇ。

 

 

「へるぷみー! 小雪ちゃーん! 百代ちゃーん!」

「こらー! トーマ、修二のお尻を狙うなー!」

「やっぱり、お前ホモだったのか。前々から怪しいとは思ってたが……」

 

 

 君たち、助けを呼んだらきてくれるのはいいけど、頭上飛び越えて参上するのは止めない?

 ナチュラルに、人の身長以上の高さに跳躍しないでおくれ。

 

 

「おやおや、やっぱり修二君はガードがしっかりしてますね。あと、百代さん、私はホモじゃなくて、バイですよ」

 

 

 どっちにしろじゃい、俺のケツを狙うな。

 

 

「ったく、準! お前がしっかり面倒見て、ケツでもなんでも差し出してろ!」

「ふざけんな! 俺が何で若に掘られなきゃなんねぇんだよ!」

 

 

 うるせぇ! 俺は女の子しか受け付けねぇんだよ!!

 

 

「ったく……あん?」

 

 

 河原の土手の上、そこから誰かが俺たちを見ていた。薄汚れた服装に、顔を隠すように垂れ下がる前髪、そこから微かに覗く眼は不安そうに足元へと向けられる。

 なぁんか、会った頃の小雪を思い出すなぁ。

 準も視線に気づいたのか、土手へと顔を向ける。

 

 

「修二、あいつ知り合いか?」

「見たことねぇ顔だなぁ。うちの学校の奴じゃねぇよな、多分」

 

 

 ふむ、ふむふむふむ。なるほどなるほど。

 

 

「あれは逸材だな。将来はどエロいボンキュッボンな美少女になると見た」

「いや、なに言ってんのお前」

 

 

 俺の美少女スカウターでは、現在の美少女力は10だが、将来的には美少女力114514になると判定が出てる。

 それなら、いまのうちに粉かけておいて損はない。弱みがあるならつけ込むのもいいだろう。

 

 

「カッカッカッ、最近俺様の鬼畜っぷりが薄くなってた気がするんだよ。そろそろここいらで、俺が女の子を侍らせて不敵な笑みを浮かべる、そんな超絶ハンサム覇王だってことを分からせてやらなきゃなぁ」

「お、おう」

「ま、取り敢えずは餌を撒く。ああいうタイプは追えば逃げるタイプだからな」

 

 

 

 俺は、懐からサッカーボールを取り出す。

 

 

「お、おい、どうやってそんなところにしまってたんだ?」

「気にすんな。うーし、それじゃあ、お前ら、このボールを使ってリフティングパスゲームすっぞ。許されるのはワンバンまでだ」

「いいよー、修二、ボールちょーだいー」

 

 

 小雪ちゃんが、ボールを受け取り、器用に1人でリフティングを始める。足という部位を使うことに関して、百代ちゃん以上の技量を持つ小雪ちゃんにとって、リフティングなんぞ目を瞑ってても簡単だろう。

 少しボールで遊んだ後、小雪ちゃんは高く蹴り上げる。

 

 

「次は準ー!」

「っと、オーライオーライ。高く飛ばしすぎだろ」

 

 

 運動神経に優れた準も、危なげなくボールを受け止め、ボールを冬馬の方へ柔らかく飛ばす。

 冬馬もワンバンさせ、安定したリフティングで、百代ちゃんへとボールをパスする。

 

 

「思いっきり行くか? 修二」

「いや、勘弁してクレメンス」

「ちぇー」

 

 

 百代ちゃんが軽く蹴り上げ、ボールが50メートルくらいの高さまで飛んでいく。

 あのさぁ? 何でボール破けてないのか不思議なくらいのパワーで、蹴り上げる必要無いじゃん?

 高く蹴り上げた過ぎたせいか、ボールが風に煽られてあらぬ方向へと流れていく。

 

 

「あーあー、しょうがねえなぁ。……おん?」

 

 

 ボールが流れた先、遥か上空からの落下速度が加わったボールの行き先は、あの少女の真上であった。

 あのボールに当たれば怪我は必至、下手すりゃあ骨折とかの大怪我に繋がりかねない。

 

 

「やばっ、直撃コースだ」

 

 

 百代ちゃんも気づいたのか、焦ったように気を練る。気弾を飛ばして、ボールを弾き飛ばすつもりらしい。

 だがしかぁし! 俺がこんな美味しい場面を逃すわきゃあねぇだろ!

 

 

「とうっ!」

 

 気のパワーを全開だ! 一瞬で気を全身に練り込み、地面を蹴る。そのまま、土手の上に居る少女の元へと、ひとっ飛びで駆け上がる

 少女の眼前、俺が駆けた衝撃で、ふわりと風が舞い上がる。

 

 

「えっ?」

 

 

 浮き上がった前髪に隠れていた瞳は、驚きに見開かれていた。

 藍色の綺麗な目に、俺はニヤッと笑う。お姫様抱っこで抱きかかえ、落ちてきたボールを土踏まずで受け止める。

 

 

「大丈夫か? 嬢ちゃん」

 

 

 少女の顔を覗き込み、ボールを見ずに小雪の方へと蹴り飛ばす。

 小雪がウェーイと言いながら、オーバーヘッドシュートで準へと叩き込んでるのを他所に、俺は少女を下ろしてやる。

 

 

「悪かったな、怪我はねぇか?」

「あ、うん……」

「そりゃあ、重畳。お前さん、名前は?」

「み、京! 椎名、京……」

 

 

 椎名京、京ちゃんねぇ。よしよし、掴みは上々。

 やっぱ、なんか小雪に似てるなぁ。うーん、家庭に難あり、それに学校でも友達居なさそうな雰囲気。

 本人の性格も、ハッキリ言っちまえば根暗。不摂生のせいか、体つきも細い。

 こりゃあよぉ、女の子ソムリエとしてめちゃ許せねぇよなぁ。

 

 

「京ちゃんな、良い名前じゃあねぇか。よろしくな」

「あ、ありが……と」

 

 

 んじゃま、攻略開始だぁねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 京ちゃんを遊びに誘ったら、キョドりながらも、嬉しそうに混ざってくれた。準はまたかというような顔をしていたし、百代ちゃんも後でしばくって顔をしてた。

 小雪と冬馬は、いつも通りのニコニコした様子だったが、小雪が一瞬だけ京ちゃんを見定めるような目をしていたが、どうやら問題なかったようで、今ではむしろ京ちゃんを構うようにはしゃいでいる。

 

 

「へぇ、椎名さんは、やっぱり私たちとは別の学校だったのですか」

「う、うん。し、修二くんたちは、いつもここで遊んでるの?」

 

 

 京ちゃん、運動神経は優れてる。それこそ、準よりも動体視力や体さばきは上だ。何か武道でも修めてるのかと思ったら、案の定、弓道をしているらしい。

 そんな折、百代ちゃんが思い出したかのように、教えてくれた。

 

 

「確か、聞いたことがあるな。弓の椎名だったか、有名な武家だろ?」

「……うん」

 

 

 百代ちゃんが京ちゃんの家のことに触れると、京ちゃんの顔はあからさまに暗くなる。百代ちゃんも、触れちゃいけない話題だと察したのか、気まずそうに顔を逸らす。

 やっぱ、家庭のことは地雷っぽいなぁ。やっぱりこの川神、ロクな大人が居ないのでは?

 

「あー、まぁ、家のことはいいんじゃぁねぇか? 京ちゃんは京ちゃんなんだしよ」

 

 

 古い家によくあるような厳格な家だとか、両親がとんでもない奴だとか、ぶっちゃけどうでもいい。むしろ、良家の令嬢に悪いこと教えるとか、興奮しちまう。

 昼は貞淑、夜は淫乱とか、何処ぞのAVみたいなシチュだが、男が好きなシチュだから需要があるのだよ。

 

 

「修二、くん……」

 

 

 俺がそんなことを考えてたら、京ちゃんがどこか熱っぽい表情を向けてくる。

 ずっと欲しかったものを、あっさりともらえたかのような、そんな感じだ。

 チョロっ。俺ってば、なんかクッソくだらないことを考えてたんだけど。

 

 

「なぁ修二、確か、さっき聞いた学校、風間たちの学校だったよな」

「あん? そういやぁ、そうだな」

 

 

 京ちゃん、学校に友達が居ねぇか、今度風間たちに聞いてみるか。

 まあ、今はんなこたぁどうでもいいか。せっかく遊んでんだ、難しいことは後でいいんだよ。

 

 

 そんなこんなで、日が暮れるまでいろんな遊びに熱中した。

 

 三対三のバスケットボールをしたり、百代ちゃんと小雪がどちらが俺を空高く打ち上げられるかとか。ちなみに後者は百夜ちゃんの発案で、力一杯投げられて雲まで届くかと思った。

 マジでシバこうとされるよりはマシだが、小鳥ちゃんとこんにちはする羽目になるとはなぁ。

 

 

「んじゃあ、そろそろお開きにすっか」

「……そう、だね」

 

 

 日も沈み、カラスの鳴き声が夕暮れの河川敷に響く。

 俺がそろそろ解散するかと声をかければ、京ちゃんは残念そうにする。俺たちは明日学校で会えるが、京ちゃんは別の学校だからな。

 てか、そんなに家と学校が嫌かね。こりゃ、早めに風間に話聞きに行った方がいいかもしれんね。

 

 

「なぁに、また明日遊ぼうぜ、京ちゃん」

「……え?」

 

 

 俺は京ちゃんの頭を、くしゃくしゃと撫でてやる。その綺麗な藍色の目が、俺を見つめてくれる。

 ようやく、真っ直ぐ俺を見てくれたか。

 うっし、磨きのかかってない美貌の卵を、俺は大切に育ててやろう。

 

 

「んだよ、京ちゃんは可愛いんだから、笑ってくれよ。また明日って、笑顔で別れようや」

「……うん!」

 

 俺がそう言えば、京ちゃんはぎこちない笑顔を返してくれる。

 うんうん、やっぱ、暗い顔より笑ってる方が、女の子はイイネぇ。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

京さんの初登場回でした。
修二君は、京ちゃんが将来凄い美少女になることを見越して、粉をかけようとしてます。
これから、京ちゃん攻略のために、色々と手を尽くすでしょう。

さっさと原作に追い付かせたいけど、小学生編には京ちゃんとは別に、後一つ無印ヒロインのイベントもあるし、中学生編もある。

……いっそのこと中学生編、まるっとキンクリしてしまおうか……。


さてさて、今回はこの辺りで。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

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