筆が乗れば早いのですが、社会人になり筆を取るまでが中々時間が取れないこの頃です。
お時間いただきますが、少しずつでも書いていこうかと思います。
それでは、よろしくお願いいたします。
山でバーベキューをしたら山火事になって大惨事になりかけたり、いつぞやの暗殺者のお代わりが今度は帝のところに襲撃に来たり、そんなこんながあって、いつの間にか、俺は小学五年生へと進級していた。
ぶっちゃけ、小四だろうが、小五だろうが、俺からしたら大差ない。せいぜいAAカップがAカップになったくらいだ。
ちなみに百ちゃんはCで小雪ちゃんはBだ。
最近の子はいいもんくってやがんなぁ。
今日も今日とて、ヒュームの爺は帝と一緒に海外に飛んでってる。
そして、俺はその間の監督者として川神院に預けられていた。そろそろ独り立ちさせてもらってもいいんじゃないっすかねぇ。
まじ、俺の今の身体じゃ、保護者が必要なのはわかるけどよぉ……。
何が悲しゅうて、スパルタガチ勢の群れに放りこまれにゃならんのだ。
まあ、釈迦堂のおっさんや鉄心の爺さんはそれぞれ酒やエロ本を与えてれば、それなりに便宜を図ってくれる。だぁがしかし、あのジャッキーもどきは真面目に鍛錬しないとネチネチうるさいし、それ以上にしつこいのが一人居てねぇ。
「おーい、修二。試合しようぜ」
「なあ、百ちゃん。君は美少女なんだから、少し落ち着いたほうがいいじゃねぇかねぇ? 少なくとも、俺は試合よりもいちゃいちゃのほうが有意義だと思うんだよネぇ?」
学校も休みだったし、川神院の割り当てられてた一室でゴロゴロしてたら、この欲求不満の塊が、四六時中バトル漫画の世界に俺をいざなってやろうとしてくれやがる。
だーかーらー、俺はバトル漫画よりもラブコメのほうが好きなんだよ。
「爺に壁超え認定されたんだろー、いいだろー、遊んでくれよー」
「あーもー、疲れんだよ。百ちゃんはじめ、その壁超えとかいう奴らと殴り合うの」
チョロい美少女がたくさん居るから、ラブコメの世界だと思ってたんだがなぁ。それ以上に血の気の多い奴らが多い。
「爺の言う、基礎鍛錬とか退屈なんだよ。同じような型を何度もするって」
「まぁ、百ちゃんも俺と一緒で天才派だからなぁ。気持ちは分かるが、まだ体も出来上がってねぇ、精神も未熟ってんじゃ、基礎鍛錬で土台固めろってこったな」
「修二はどうなんだよ。むしろ、おまえのほうが年は下だろ?」
「俺はハンサムだからいーの。そも、俺は武術家って訳じゃねぇの。だから、無理に鍛錬する必要も、強くなる必要もねぇのさ」
「ほんと、やる気ないのに、強いよな。修二」
ま、餓鬼の頃から、割かし何でもできたタイプだったからな。
「んじゃま、百ちゃんは早くあの万年ジャージにところに戻りな。今頃お冠だろうさ」
百ちゃんのさらさらの髪を少し強めになでつけ、百ちゃんを残して部屋を出ていく。
不満げな百ちゃんが、恨めし気な目線を向けてきていたので、カカと笑い声を返しておいた。
ぶっちゃけ、退屈なのは今だけだと思うぜ? 百ちゃん。世界は、思ったよりも少しだけ広いんだから。
川神院を抜け出し、色んなところで時間を潰し、日も沈んでしまった。
なんか大和が高学年から助けてくれとか頼ってきたから、とりあえず、ヘタレな大和ともども拳でのしてきた。
まあ、大和たちを殴る必要はなかったが、まあ、ノリで。
それにしても、一子ちゃんは全く大きくならねぇなぁ。他のみんなはスクスクだってのに。
「そこんとこどう思うよ。俺の目測じゃ辰子ちゃんはDに届いてそうなんだが」
「いきなり何言ってるのさ。うちに可愛い妹をそういう目で見るのは止めてくれないかい?」
あぁん? あんな兵器ぶら下げて引っ付いてきやがるのがいけねぇんだろうがよ?
ぶっちゃけ、ミサゴちゃんもあずみちゃんもどっちかってっとスレンダー系のスタイルだから、ぽよんぽよんな甘いのが食いてぇんだよ。
「もしそんなことしたら、あんたを竜の前に簀巻きにして放り出すよ」
「すいません、まじすいませんっした」
自分でもびっくりするくらい綺麗な土下座が出た。
時刻は夜、場所は親不孝通りということで、まるでカツアゲされてるような気分になってくる。
人の目が付かない場所を指定したのはこちらだが、もっと洒落た場所でもよかったのかもしれない。
「ほら、今月の分を寄こしな」
普通にカツアゲだったわ。つらたん。
「あいよ。ほれ、みんな大好き諭吉さんだ」
亜巳ちゃんへ分厚い封筒を差し出す。
金の重みをしっかりと感じるように、亜巳ちゃんは手で少し上下させた。
「いつもより多かないかい? 特別何かあったわけじゃないだろ?
「あ? そろそろ亜巳ちゃんも進学だろ? それに、ガキ4人ともなりァ入り用だろうサ」
「そりゃあ、そうだけどさ……、約束と違うじゃないかい」
歯切れが悪そうに、封筒を仕舞うこともできず、亜巳ちゃんは眼を泳がせる。申し訳なさやらなんやら、天秤にかけてるんだろうさ。
ククク、そろそろ攻め時かね。
「なら、亜巳ちゃんがその分を払ってくれりゃぁいいんじゃねぇかな? ほら、俺が言ってるのがどういう意味か、亜巳ちゃんなら分かるダろ?」
「……やっぱりそういう話かい」
「なぁに、何も無理にさせようって訳じゃあねぇよ。たぁだ? 辰子ちゃんたちに美味いもん食わせてやりテェよなぁ? ちっとばっかしオジサンと楽しいことをすれば、それが叶うんだゼ?」
ちなみにほぼ毎日餌付けしてるおかげか、ほっぺにチューくらいは簡単にしてくれるようになった。エンジェルはいまだにツンツンしてやがる、ゲームするとき張り付いてくるから素直になれてねぇだけだがな。
チョッロ。
竜? 最近は簀巻きにしても、腕力で破ってくるからコンクリ風呂に詰めてるよ。なんか日に日にムキムキになってねぇか? アイツ。
キッモ。
「…………はぁ、分かったよ」
呆れたように、長いため息の後に亜巳ちゃんは了承をした。
ククク、亜巳ちゃんも発育はいいからな、今夜はしっぽりと楽しめそうだ。
亜巳ちゃんは金の入った封筒をカバンにしまい、そして、代わりに
ゴリッゴリに硬そうな鞭を取り出した。
「ワァオ☆」
変な声出た。
そりゃあ、俺もそういうプレイをしたことあるし、そういうグッズにお世話になったこともある。
だが、亜巳ちゃんがいきなりそういうグッズを取り出すとは、夢にも思ってなかった。
「この前、あんたがウチに置き忘れた雑誌にこういうのが載っててさ。好きなのかなって思って買ってみたんだ。そしたら、思った以上に手に馴染むのさ」
亜巳ちゃんは鞭をしならせ、それと連動して空気の弾ける音がする。元々鋭く尖らせていた瞳は、爬虫類じみた獲物を見る眼へと変わっていく。
少女から女どころか、色々飛び越えて女王様へとジョブチェンジしようとしてやがる。
「あー、その、亜巳さん? じょ、冗談ですよ、ジョーダン。僕がそんなお金を盾に女の子に悪いことしようとする訳ないじゃないですか」
「いいのさ、修二。アタシはアンタのこと、好きだからね」
亜巳ちゃん、いや、亜巳さんが一歩、距離を詰めてくる。俺は得体の知れない怖気に、詰められたキャラと同じだけ足を引いた。
まだローティーンの小娘に、圧倒されたのだ。この俺が!
「……あぁ、口に出しちまえば、スッキリするね。そうさ、アタシは好きなんだよ、アンタのことが。私らには、大切なものは家族しか居なかった。みんなで一緒に居れればそれでよかった。例え、それで貧乏だったとしても、人並みな幸せってのが難しくてもね」
そう語る亜巳ちゃんの顔はたしかに、アイツらの姉の顔だった。
「それなのにさ、アンタはズケズケと土足で割り込んで来て、私らを掬い上げちまったんだよ。こんな紙切れだけじゃないよ?
辰も、天も、竜も、みんなアンタのことを待つようになっちまった。いつの間にか、家族同然になってたのさ」
「そりゃあ、辰子ちゃんも、まぁ、エンジェルも可愛い娘だからな。粉かけるのは当たり前だわな」
「それでもいいさ。アタシはアンタが好きなことに、そんなことは関係ないんだからね」
「あ、あいにくと、俺彼女持ちなんだわ。だから、浮気なんて不義理はできねぇんだわー、残念だわー、マジ残念だわー」
「修二、あんたも、馬鹿だねぇ」
亜巳ちゃんの手の輪郭がブレる。握られていた鞭は音速を超え、俺の首をからみ取り、主のもとへと獲物を引き寄せる。
そのままの勢いで、亜巳ちゃんにキスされる。
鞭に首を絞められ、脳への酸素の供給が止められる。靄がかかった思考を、唇からの熱が情報として流れ込んでくる。
「逃がさないよ、修二」
「……上等だ、分からせてやんよ、小娘ちゃんが」
過程はちょいと思ってたのと違うが、予定通りってことでひとつ。
ぶっちゃけ、一回戦、二回戦までは押され気味だった。覚醒した亜巳さんは強敵だったが、こっちはスタミナで勝負した。
あやうく、豚に落とされるところだった。あぶねーあぶねー。
「んー、んー?」
「どうかしたのですか? 修二、しきりに周囲を見回して」
亜巳ちゃんが亜巳さんへと進化した翌週、俺は変な感覚に囚われていた。
「いやね、冬馬、俺ってばぶっちゃけ視線とか、殺気とかってのにすげー敏感なのよ。そのシックスセンスが、見られてるはずなのに、見られてねぇのよ」
見られているはずなのに、気配とか全く感じない。
まるで、研究者が実験動物を観察するような、そんな無機質な視線だ。
今現在居る学校の校舎だろうが、川神院の自室だろうが感じるが、そのくせ、山中とか親不孝通りで夜遊びしてる時には感じない。
「やっぱり、人間の枠組みからはみ出してるよなぁ。お前」
「しゃあねえだろ、感じるもんは感じるんだからよ。あぁもう! なんだこりゃあ、気づくと気になる!」
一度気づいてしまうと、気になって仕方がなくなる。
ハゲが遠い目して、失礼なことを言ってくるが、制裁する気も起きない。
「うーん、僕はよく分かんないけど、なんとなーく稽古の時、こうしてきそうだな~って感じることあるよ」
うんうん、小雪ちゃんも順調に人街への道を歩いて行ってるねぇ。
百ちゃんが、足技だけなら互角とか言ってたし。百ちゃんと互角って、それ、意味わかってんの?
「ああもう、しゃあねぇ、ちょっと派手なことしてみるか」
実際、心当たりというか、思いついてることはあった。
盗聴器、隠しカメラ、その類だったら、俺の感じてる違和感の正体に説明はつく。
だが、見つけられなかった。俺の行動範囲、荷物、それらに付けられてないか調べたが、白、全く痕跡すら見つからなかった。
手作業やらで探すのに限界がある。
「お前ら、電子機器手元に持ってるか?」
「いや、まあ、俺も若も持ってるが……。何する気だ?」
「まあ、とりあえず、携帯とかは電源切っておけ」
気っていうのは便利だよな。川神流は気を純粋なエネルギーとして放出したり、ヒュームの爺さんは電撃として足に纏わせたりできる。
ぶっちゃけ、何でもできる便利エネルギー的なものと思ってる。
手の中で、気を練る。百ちゃんがビームとして、ヒュームの爺さんが電気として、表出させてるように、磁気として作り上げる。
そして、波として、周囲に送り出す。
小雪ちゃんたちの間を駆け抜けていく。
………………みっけ。
「やぁってくれるねぇ。まったく、そりゃあ、気づかないわけだ」
俺は小雪ちゃんのバッグから、小さな機械を引っ張り出す。
表の世の中には出回ってなさそうな、少なくとも、普通の電化製品店では買えそうにないやつだ。
「さすがに俺も、自分以外に仕掛けられた盗聴器には気づかねぇわ」
なにそれーと覗き込んでくる小雪ちゃんをよそに、盗聴器を手の中で握りつぶす。
冬馬と準は、何やら青い顔になってる。そりゃあ、小雪ちゃんのカバンの中から盗聴器が出てきたんだ、不気味だろうさ。
「カカカ、売られたケンカは、のし付けて返してやらなきゃあねぇ。なあ、準くんよぉ?」
「なんでそこ俺に同意求めたの!? やめて! お前今めっちゃ怖い顔してるから! 何その犬歯! お前そんなのあった!?」
川神じゃあ派手なことできないから、百ちゃんじゃないが、俺もストレス発散したかったところだ。
いやまあ、爆破事件とか派手は派手だったけど、自分で花火上げたいんだよ。
どこのどいつか分からんが、ボッコボコにしてやんよ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
時期的には前回から少し飛ばしております。
修二が小学三年生から四年生に進級しており、他の面々も少し成長しております。
年表管理とかガバガバなので、原作時系列と差異があるかと思いますが、大きな心で許していただければと思います。
次回はバトル回です。