真剣で人生を謳歌しなさい!   作:怪盗K

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お久しゅうございます。

お時間がかかりましたが、第13話となります。

お待たせいたしました、どうぞお楽しみください。



第13話

「うぉおおおお! 修二ぃいい! お前って奴は、お前って奴はぁああああ!」

 

 

 目が覚めた俺が一番初めに見たのは、ギンギラギンギラくっそ眩しい上にむっさ暑苦しい泣き顔だった。

 おいこら、喧しいんじゃ。こちとら体張った一発芸かまして無茶苦茶痛かったってのによ。

 

 

「せめて、そこはよぉ。小雪ちゃんかモモちゃんだろうがよぉ」

 

 

 せめて美少女か美女を連れてこいってんだ。

 何が悲しくてむさい男の泣き顔で目ぇ覚さなくちゃならねぇんだ。この世界バグってんのか?

 

 

「修二! 目を覚したのか!」

「おめぇがギャンギャン喧しいからだよ。あーいって、爆発すんのは初めてだが、二度としねぇからな」

 

 

 ネタならともかく、リアルで汚ねぇ花火だは割に合わねぇ。

 今何時だ? ろくに首も回らねぇから時計見えねぇ。

 

 

「英雄、あれからどうなった?」

「お前が爆発した後か? あの爆発で怪我をしたものはお前のおかげでゼロだ。ただホテルの損害や、揉み合いになって転んだ者は居たがな」

「重畳重畳。あのヒットマンはどうなった? 改めてお礼参りしてやろうと思ってるんだが」

 

 

 せっかく旨いもんたらふく食って、ホテルの部屋を取ってるんだってナンパしようと思ってたのによぉ。全部台無しにしくさりやがって。

 

 

「ふむ……奴か……」

 

 

 英雄の顔が言いにくそうに渋くなる。

 

 

「なんだ、自決でもしたか? あのおっさん」

「……その通りだ。九鬼の部隊が捕獲しようとしたら、な。奥歯に毒を仕込んでいたようだ」

「まじかよ。ガチ勢怖いな」

 

 

 まあ、元々自爆用の爆弾持ってたしな、情報をゲロるくらいなら死ぬか。

 

 

「なぁんか、マジでジャンル違う世界に来ちまったなぁ」

「む? どういう事だ、修二」

「何でもねぇよ。てか、小雪ちゃん達には今回のことは黙っとけよ、流石に刺激が強すぎるわ」

 

 

 R18を教え込む気は満々だが、後ろにGやらはつけちゃならんからねぇ。モモちゃんはどうなんだろ、川神院って絶対裏社会に知られてはいそうな感じよね。

 

 めんどくせぇなぁ、前の俺はバイトしてヒモして女の子と楽しむだけの優雅な生活だったってのによ。

 

 

「しゃあねぇな、そのうち何とかすっか。とりあえず英雄、俺の診断結果とかってある? 割と思ったより重傷っぽいんだけど」

「おお、そうだったな。あまりにも普通に話してたから忘れてたぞ」

「正直身体の節々がいてぇし、右腕に至っちゃ感覚ねぇんだよ」

「というか修二、右腕が吹き飛んだのだぞ」

 

 

 は? ま?

 

 

「いやいやいやいや、待て待て。確かに右腕の感覚無いけどさぁ。そんな、隻腕になってるなんて………マジで無くなってるんですけどぉおおお!!」

 

 

 お、俺の腕ぇ!! 肘から先が無いんですけどぉ!

 

 

「俺のゴールデンフィンガーが無くなるとか世界の損失だぞ!? おい英雄! どうなってやがる!? 俺の腕どこに行きやがった!」

「落ち着け! 腕については医者からの言付けがあるのだ!」

「あぁ!? どうせおてて無くて辛くても頑張れとかだろうがよぉ!? そういうありふれすぎて、糞の掃溜に捨てられてるような台詞聞きたかねぇんだよ!」

「そうではない! 貴様の新しい腕が少しづつ生えてきているのだ! まるでエイリアンみたいでキモッ、と言っていたのだ」

「だぁれがエイリアンじゃごらぁ! テメェの脳髄、プレデターよろしく飾ってやろうかあぁん!?」

 

 

 あん? てか、生えてきてるの? マジで?

 

 

「…………俺って人間なのかな」

「正直エイリアンと言われても、我は納得してしまうぞ。それくらいにお前は酷い状態だったのだ」

 

 

 英雄が言うには片腕は消し飛んで、右半身のほとんどは炭化、脳味噌もシェイカーでかき混ぜたような有様だったらしい。

 どんな名医も匙を砲丸投げするくらいだったらしいが、病院に運ばれた頃には命に別状がないレベルにまで自己再生してた上に、右腕の断面もうねうねしてたとのことだ。

 

 

「こわっ、きもっ」

「その場に居合わせたほとんどの医療関係者が、今のお前のような反応をしていたぞ」

「そりやぁエイリアンを疑うわなぁ、誰だって疑う。俺も疑う」

 

 

 まあ、超人ボディとしか俺にも分からんしな。

 

 

「ところでよぉ、英雄、さっきから入り口に待機してるそいつ、誰だ?」

「む?」

 

 

 俺が大声で叫んだ時に気づいたが、一人、扉の前でこちらを窺うように佇んでいる。上手い具合に気配を隠してたが、俺のヒステリックボイスに反応してビビったな。

 

 

「何者だ! 姿を現せい!」

 

 

 英雄が喝と声を張り上げる。うるせーなぁ、もちっと声量落とせや、こちとら怪我人だぞ。

 

 

「申し訳ありません、立ち聞きするつもりはなかったのですが、お邪魔するわけにもいかず……」

 

 

 扉を開けて姿を現したのは、若い女だ。ウェイトレスの服を着てるが、所々焦げてしまっている。

 ……ふむ、胸は並だが、そそる目をしておるな。

 

 

「80点! いや、85点をやろう!」

「お、おう……あ、いや、はい、ありがとうございます?」

「んで、どこの誰よ。追加の刺客って訳じゃああるまいて」

 

 

 もしそうだったら、鬼畜略奪ルートに入るが。尊厳という尊厳を俺のジョイスティックで蹂躙してやるぞい。

 

 

「ふむ、確か九鬼が護衛で雇った傭兵だったな。名前は……確か忍足あずみ」

「ほんほん、あずみちゃんねぇ。どしたのよ、見ての通りあのバトルとかの苦情は受け付けられないんだけどさ」

 

 

 包帯ぐるぐる巻きの、肘から先がない右腕をプラプラさせる。

 あれかねぇ、仕事のお株を奪った形だし、逆恨みかな。

 

 

「ち、ちげ……違います。礼を言いに来ました。織原修二、あなたのおかげで、私たちは来客たちを守れたんだ」

「おん、その一言のためだけに待機してたんか、律儀なやっちゃなぁ」

「おお、そうであったか! ならば入れ入れ!」

「は、はい」

 

 

 英雄があずみちゃんを部屋に招き入れると、あずみちゃんは恐る恐ると言った感じで入ってきた。

 

 

「あ、そうだ、あずみちゃん、英雄はともかく、俺には敬語とかはいいからな。無理してる感ばりばりあるし」

「……慣れないことするもんじゃねぇな。ガキに気を遣われるなんて」

「かかか、猫被ってる女の子を愛でるのもいいが、やっぱ素直が一番だべ」

 

 

 そうやって俺が笑うと、あずみちゃんは少し肩の力が抜ける。言っちゃ悪いが、あずみちゃんはアウトロー側の人間だろうし、かたっ苦しいのは苦手なんだろ。

 

 

「とりあえず、改めて礼を言わせてもらうよ。あんたがいて助かった」

「あいあいどうも、俺も自己防衛しなきゃならんかったしな。ま、それでこの様だから格好はつかねぇが」

 

 

 しばらくはミサゴちゃんに看病してもらおっかなぁー。あんなとこやこんなとこまでお世話させるのも楽しみだ。

 

 

「そ、その傷のことなんだがよ」

「おん?」

「む?」

 

 あずみちゃんは言いにくそうに、まるで告白する中学生のように、もじもじしながら、

 

 

「あ、あたいに看病させてくれ! あんたの右腕の代わりにならせてくれ!」

 

 

 おんおん……あっ、ふーん。

 こいつぁ、鴨がネギ背負ってやって来たな。美味しくお食べと、天が囁いてやがる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一週間が経ち、俺の右腕は、手首の手前あたりまで再生した。日に日に伸びる腕に、俺を含めた皆が気味悪がった。

 小雪ちゃんたちには、一週間山籠りしてると英雄に説明させたから、しばらく姿を見ていない。

 

 そんな、右腕が不自由な生活だったが、全然困る事はなかった。

 

 

「あずみちゃーん、あーんで食べさせてー」

「あぁん!? それくらいテメェでしろよ! スプーンだから出来るだろうが!」

 

 

 あずみちゃんの右腕の代わりになる宣言から、俺は一晩であずみちゃんを看病と称して食べとった。右腕は不自由でも、股間の腕は万全だったからね。

 

 いやぁ、やっぱりあずみちゃん、俺に惚れてましたなぁ。チョロい、チョロすぎるよあずみちゃん。

 にゃんにゃんしながら聞き出したが、パーティ会場で変な子供が居ると思ってたら、身を挺して来客たちを庇った姿にときめいたらしい。

 

 あっ、ふーん。となったが、それはそれ。チョロインと呼ぶにふさわしいチョロさだったが、俺の目に狂いは無かった。

 

 

「チッ、しょうがねぇな。ほら、口開けろ」

 

 

 あずみちゃん、なんだかんだと言いながら甘やかしてくれるからな!

 

 

「あーん。うまうま、病院食って味気ねぇと思ってたが、意外といけるもんだなぁ」

「そうかよ……ったく、甘えたがりかよ。ほら、次は何を食いてぇ?」

 

 

 甘やかすの好きな癖に! ダメ男製造機の類でしょ! あずみちゃん!

 

 

「あむあむ、ところであずみちゃん、九鬼に就職したってマジ?」

「ん? ああ、元々傭兵してたのも金になるからだったからな。九鬼の従者部隊の方が給料良かったんだよ」

「ほーん、前の職場に知り合いとか居なかったの?」

「あー、まぁ、世話になった人も居たけど、そこまででも無かったしな」

 

 

 こ、こやつ、俺を追っかけて来やがってる。転職するって中々やりおる。

 ……まあ、ミサゴちゃんも離婚後追っかけて来たし、大概か。

 

 

「けふ、ごっそさん。そろそろ手首も再生するかな」

 

 

 もう右腕には包帯を巻いていない。正直右腕以外は完治してるし、やりたかないが、戦闘もやろうと思えばできる。ほんと、したかねぇが。

 

 

「ほんと、どういう身体してたら右腕が生えるんだよ。ありえねぇだろ」

「びっくりだよねー」

 

 

 とりあえず、右腕をサイコガンにする必要はなかったから良かった。あれはあれでカッコいいが、全身タイツで生活するのは流石にハードルが高すぎる。

 

 

「九鬼の従者部隊になるってことは、俺の腕が治っても俺の側に居るってことでいいのかな? あずみちゃんよ」

「な! それとこれとは別だぞ! 単に九鬼の金払いがいいからだよ!」

 

 

 まぁたまたぁ、照れちゃってぇ、このチョロインめぇ。

 てか、この世界、チョロイン多くね? まあ、いいけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺、完全復活!」

 

 

 汚ねぇ花火事件から二週間、俺の右腕は元どおりに完治した。快気祝いにあずみちゃんにゴールデンフィンガーを喰らわしたから、性能実験も万全だ。

 

 そんな俺は、久々に小雪ちゃんたちとのコミュを深めることにした。場所はいつもの河原、小雪ちゃんにモモちゃん、あとは冬馬と準に英雄というイツメンだ。

 

 

「んなわけで、てめぇら残り少ねぇ夏休み、遊び倒すぞ!」

「おー!」

 

 

 あと一週間を切った夏休み、地元の夏祭りはもう全部終わっちまったし、浜辺に海水浴か? 山登りでもいいな。

 

 

「うっし、山に登っぞ。確かモモちゃんの家の裏、山って言ってたよな」

「ああ、山を登るって、何するんだ?」

「山菜狩りでもすっかねぇ。夏の山には恵みが一杯だぜ」

 

 

 タケノコとかいいねぇ。炊き込みご飯にして、ほっくほくの炊き立てを山の木漏れ日の中でかっ喰らうとか。

 フキの佃煮もいいなぉ。お、こうなりゃもう、山行って山菜パーティするしかねぇな。

 

 

「修二ー、山菜って、修二が料理するの?」

「おうさ、一時期イクメンを目指した時期があったからな。こゔみえても有名料理店でバイトしてたこともあるんだぜ」

「へぇ、修二は料理もできるのですか。本当に多才ですね」

 

 

 おうおう、冬馬や、もっと褒めるがいい。

 

 

「ふむ、修二よ。山狩りならば、九鬼が所有している山があるが、どうする?」

「あー、小雪ちゃんたちも居るし、そっちの方がいいかぁ? だが、ぜってぇ従者部隊とかが付いてくるんじゃねぇの?」

 

 

 邪魔くせェレベルでまとわりついてくるんだよなぁ、九鬼の従者部隊って。忠誠心が高すぎるのなんの。

 

 

「そうだな、ミサゴとあずみを呼ぶとしよう。それならば修二も嫌ではあるまい」

「あー、まあ、そうだな。二人なら大丈夫だろ」

 

 

 なーんか、女で囲っとけばいいみたいに思われるのもアレだなぁ。いやまぁ、俺への対処としちゃあ合ってるんだけどもよ。

 

 

「ま、いいや。んじゃ英雄、準備頼むわ」

「ああ! 任せてくれ」

 

 

 英雄が道具やら何やらを、用意してくれるからいいとして。

 

 

「なぁなぁ修二」

 

 

 モモちゃんがニコニコと俺の方へとやって来た。その後ろには小雪ちゃんも居る。

 

 

「あずみって誰だ」

「誰だー?」

 

 

 だから、目からハイライト消すのやめーや。




ここまでお読みいただきありがとうございます。

まだまだ織原修二くんの物語は続きますので、これからもお付き合いいただければ幸いです。

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