ダンジョンで数多の魔剣に溺れるのは間違っているだろうか   作:征嵐

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 キャラ判別がしにくい、という指摘が噴出。対応策が思い付かないことに主憤死寸前。


第六話 対話

 

 「いや、僕、ヘスティア·ファミリアに所属してるんで···」

 「そうか。じゃあ挨拶しに行こう。」

 「ちょっと待ってくださいよ···」

 

 物凄くテンポ良く移籍の手続きを踏まされかけたな? 今。これが《勇者(ブレイバー)》か···。

 

 「まず、なんで、僕を勧誘するんですか? 僕はレベル1だし、ステイタスもオールIだし、発展アビリティもないし···」

 「でも魔法は使える。それも、格上の対魔導防御を貫通するような。」

 

 え? 何? どういうこと?

 

 「君がベートに魔法を使った時、彼には、ダンジョンでリヴェリアが掛けていた対魔導防御壁が残っていた。効果時間ギリギリだったとはいえ、《九魔姫(ナイン·ヘル)》、オラリオ最強の魔法使いの防御を破れるだけの魔法使いを欲しがるのは当然だろ?」

 「お前は難なく破っていたから、気付かなかったようだがな。」

 

 にこやかな団長と違い、目に見えて機嫌の悪い緑髪の麗人。あ、この人がリヴェリアか。

 

 「んー。」

 

 どうするか。じりじりと後退りながら頭を回す。別にヘスティア·ファミリアに思い入れがあるわけでもないし、移籍することに抵抗がある訳じゃない。僕としては。ただ、グラムやゲイボルクを筆頭とした北欧勢力は、やはり神ロキに良いイメージがないのではなかろうか?

 それに、どうせ移籍するなら、将来のことも見据えてヘファイストス·ファミリアに入りたい。よって、ここは。

 

 「お断りします。」

 

 言った瞬間に全力疾走でこの場を去る。万一、武力交渉になっても鏖殺は容易い。が、後処理が面倒すぎる。魔剣機関のように、「冥獣の所為だ。僕は悪くない。だから絶対に謝らない。」と言えば、「あ、そうなん?」で通る程、ここオラリオのギルドは甘くないだろう。

 

 「はぁ、はぁ、は──ッッ!?」

 

 唐突に足場が消える。これがチュートリアルで聞いた縦穴か。不味い。不味いぞ。何階層落ちr

 

 「ぐふっ」

 

 意外に浅かった。上を見ればダンジョンの壁や天井が見えるし、ちょっと助走すれば登れそうな程度の深さだ。これは──落とし穴か。···いやいやダンジョンに落とし穴とか冗談じゃ済まないでしょ···モンスターでも落とそうってか?

 

 「よいしょっ」

 

 軽く助走を付けて穴から出る。

 

 「大丈夫かい? 怪我は?」

 「あ、大丈夫でs···。」

 

 団長が心配そうに訊いてくるのでつい答えてしまった。まぁ、レベル1の敏捷Iじゃ、勝てませんよね。知ってた。失念はしてたけれど。

 

 「何なんですか? これ。」

 「これはモンスター捕獲用の落とし穴だよ。君は体重が軽いから、落ちただけで済んだんだね。」

 

 落とし穴と連動した重量感知式のトラップがあるらしい。いや、ほんと冒険者が落ちたらどうするの···

 

 「で、どうかな? 移籍が嫌だって言うなら、遠征の時だけ手伝うっていう契約でも構わないよ?」

 「···。」

 

 そんな腕を掴みながら言われても脅迫にしか感じな痛い痛い。腕! 握力! 離しt痛い!?

 

 「わかった! わかりました!」

 「そうか! ありがとう!」

 

 満面の笑みでダンジョンの奥へと進んで行く団長を眺めながら、頭の横で囁く声に耳を傾ける。

 

 「どうして、殺さなかったの? アレはマスターを利用しようとしているのに。」

 

 怒りと疑問で埋め尽くされた声。普段は冷静なグラムでも、やはりそういう点には反応するのか。

 

 「簡単だよ、グラム。あの人はただ、仲間の生存率を上げる為に、僕を利用しようとしている。勿論あそこで「仲間になる」と言っておけば、その庇護対象になれたんだろうけどね。僕はね、グラム。私利私欲の為でなく、誰かを守る為に武器を振るう人を尊敬してる。だから、彼に協力しようとした。それだけだよ。」

 

 だって、僕には出来ない事だから。僕は、僕の為、僕の魔剣たちの為にしか武器を取らない。だって、死にたくもないし、魔剣たちに死んで欲しくもないし。···あ、そうだ。クランベリー医師がいないから、魔剣たちの修理(メンテナンス)をヘファイストス·ファミリアに依頼しようとしてたんだっけ。完全に忘れてた。ヤバイな。何がヤバイって記憶力が悪すぎてヤバイ。

 

 

 

 ダンジョンを出てヘファイストス·ファミリアへ行く。桁! 零! 桁ぁ! と、見ただけで発狂しそうな武器が陳列されているウィンドウを一瞥して、ドアを叩く。

 

 「すいませぇぇぇん。ちょっといいですかぁぁ!!」

 

 中から聞こえてくるガチャガチャという金属音に負けないように声を張り上げる。が、反応なし。なので仕方ない。

 

 「魔剣修理の時間だオラァ!!」

 

 毒電波を受けてしまって、礼儀も何もあったものではないが、まぁ、ドアが開く。あ、いや、ドアは開いたんじゃなくて、僕が蹴り開けました。今は反省している。

 

 「ちょっと、なんなの!? 今は忙し──」

 

 最も手近にいた赤髪眼帯の女性に怒られる。ファミリア総出で品物整理でもしているのか、鎧を運ぶ者や剣の納められた箱を持ち上げようと四苦八苦する者がそこらにぞろぞろといる。

 

 「ちょっと、貴方···」

 「あ、いや、すいません。出直しますね。」

 「()()()()()()()()?」

 

 

 

 





 マジでどうしよう···

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