ダンジョンで数多の魔剣に溺れるのは間違っているだろうか   作:征嵐

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第五話 成長

 迷宮でベルをとっ捕まえてホームへ帰宅する。ホームへ帰宅って意味被ってるな。ホームへ戻る。が、的確か。日本語は正しく使いましょう。

 

 それで、何故僕がこんな現実逃避をしているのか、と言えば。それは僕に跨がって頭を抱えている黒髪ツインテロリ巨乳の紐──神ヘスティアの所為だ。いや、神ヘスティアには何の落ち度もないし、そもそもの原因は僕なのだけれど。

 

 「なんなんだい!? このステイタスの上がり方は!?」

 

 先にステイタスを更新したベルのように大幅に──異常な程、大幅にステイタスが上昇した、という訳ではない。むしろ、その逆だ。今の僕のステイタスは──

 

 

 

 ───────────────

 

 Lv.1

 

 力:I 0

 

 耐久:I 0

 

 器用:I 0

 

 敏捷:I 0

 

 魔力:H100

 

 ───────────────

 

 

 スキルと魔法は相変わらずだが、あぁ、いや、()()()()()相変わらずという、まぁある意味当然の事象が起こっている。

 

 「きっちりと、説明して貰おうか!!」

 「ベルとリディはもう寝てるんですから、静かにしてくださいよ。神ヘスティア。」

 

 リディは明日も朝からアルバイトだそうだ。ほんと、どういう勤務時間してるの······。年中無休、朝の4:00から夕方16:00までは確実。加えて秘密のアルバイト···うわぁ、僕はもう酒場に足を向けて寝られないな。

 

 「あ、ご、ごめん···。それで?」

 「僕のスキル、愚かな卑怯者の鍵(ワールドイズマイン)の効果を覚えてますか?」

 「えっと、魔剣を顕現可能、魔剣少女の顕現可能、心を通わせる事で性能上昇。だったよね?」

 「お、正解です。」

 

 指折り、スキルの内容を諳じる神ヘスティアに驚きを隠せない。

 

 「当然だろ? 君も、僕の大事な家族なんだから!」

 「イケメンですね。···で、話を戻しますけど、僕にできる事は『魔剣の顕現』だけなんですよ。」

 

 魔剣を顕現させるだけ。つまり、()()()使()()()()()()()()と言うことだ。僕が彼女たちを振るい、僕が彼女達の魔導を使う訳ではない。その、逆。()()()()()()()使()()ということ。魔剣を使う時、僕の貧弱な体では魔力は追い付いても肝心の動きに追い付けず、反動で死ぬという無様極まる状況に陥る。それを避ける為に、彼女たちは僕の体を魂レベルで()()()する。

 つまり、魔剣を振るう意思は僕のもので、魔剣に流す魔力も僕のものだが、それを行使、実行する身体は僕のものではないということ。そりゃあ、魔力以外のステイタスは上がらない。

 

 「···まぁ、こんな感じですかね。」

 

 一通りの説明を終える。

 

 「···そう、だったのか。」

 

 一切の疑いを持っていない瞳で、神ヘスティアは僕を見据える。そう言えば、神々に嘘は吐けないんだったか。···カンタレラの嘘泣きが通じるかどうか、今度実験してみようか。

 

 「でもなぁ···そうすると他のステイタスが上がらないんだよなぁ···あぁ···どうしよう···。」

 「いや、そこは、なんとかしますよ。」

 

 頭を抱えて悩む神ヘスティアに適当な言葉をかける。あぁ、と、言うか。

 

 「寝ていいですか?」

 

 今、日付が変わった気がする。時計なんてものはないけれど。

 

 「まぁ、そこは僕の方でも考えてみるよ。おやすみ、マスターくん。」

 

 

 で、翌日、と言うか朝。僕は大変な事に気付いてしまった。そう。

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 「すいませんでしたっ!!」

 「ごめんなさいっ!!」

 

 僕とベルの声が朝の酒場に響きわたる。頭を下げている為に分からないが、酒場の中からは苦笑の雰囲気が漂ってくる。これは···助かったか?

 

 「アンタら昨日の食い逃げ犯だろ? 出頭とは、また随分と殊勝じゃぁないか。」

 

 骨の鳴る音が聞こえてくる。···あ、死んだな(確信)

 

 後ろ襟をがっしりと捕まれる。ちょ、え?

 

 「ほら、アンタはもう行きな。」

 「あ、はい。本当にすいませんでした!!」

 

 ベルがつったかつったかと走り去っていき、見えなくなる。

 

 「えーっと···」

 「なんでアンタだけ残ったのかって?」

 「あい。」

 

 と、言うか、どうもこの人が相手だと魔剣達が浮き足立つというか、落ち着かないようなので女将の前職とか詳しく···鍵師ではない? あ、やっぱり? 他人の空似だったか。

 

 「アンタの分は、昨日リディが払って行ったよ。ほれ。」

 「あ、どうも。」

 

 今日払った分の袋を返される。リディ、お前、神なのか···? 拝んどこ。

 

 開店準備に勤しんでいるリディに合掌して感謝の念を送る。しあわせれんせい! なーむー。···おっと、別アプリの宣伝はやめておこう。グリモアに消されてしまう。

 

 その後、数十分ほど、「あんな良い子に金を払わせるとはどういう事か」みたいな説教を延々と受けて、ようやくダンジョンへ向かう。

 

 「げ。」

 「ん?」

 

 運悪く──いや、普通は幸運と感じるのだろうが──ロキファミリアの一団と遭遇してしまった。しかも、ダンジョン内部で。

 

 「···。」

 「あ、君は···昨日は済まなかった!」

 「!?」

 

 すわ戦争か。と身構えた僕の予想を裏切って、ロキファミリア団長の小人は僕に頭を下げた。

 

 「昨日はベートが君と、君の仲間を侮辱してしまった。本当に、悪かったと思っている。」

 「あー、いえ、怒ってないので、頭を上げてください。」 

 

 僕が怒ったのは魔剣たちを侮辱されたと()()()からで、別にベルや僕自身なんて()()()()()()()

 

 

 「ありがとう。で、本題なんだけど、君の持っていたあの魔導書。あれは何の魔法が顕現するものだったんだい?」

 「···。」

 「あぁ、うん。そうだよね、勿論、身内以外に手の内を明かすべきではない。当然だね。」

 

 いや、唐突すぎて付いていけてないだけなんだけど。謝罪から一転、詰問されてるってどういうことなの···。

 

 「そこで、提案なんだが。──」

 「···。」

 

 演出の為か、まぁ十中八九そうだろうけど、そこで間を開けるのは狡いと思う。此方も、どんな条件が出てくるのか気になるじゃあないか。

 

 「──ロキファミリアに入らないか?」

 

 

 

 

 




 何でステイタスが上がらないの?
       ↓
 ソウルを介して魔剣を使ってるから
       ↓
 ソウルってなーに?
       ↓
   何かすごい身体


 誤字報告ありがとうございました···。謎なミスしてるな···。

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