ダンジョンで数多の魔剣に溺れるのは間違っているだろうか 作:征嵐
「ふっ!」
「ばーん。」
「せいッ!」
「どっかーん。」
ダンジョン十層。未確認魔剣改め新参魔剣、『ティターニア=ネオ』の試射を行う僕の姿は、さぞかしシュールなモノだろう。
どこぞの山猫も斯くやというガンプレイを挟みながらの精密速射。ダンジョンの壁に弾痕の域に収まらないクレーターを穿つ高威力。──僕の背中に負ぶさるように実体化し、射撃の度に口頭で気の抜けた銃声を鳴らすドレス姿の少女。耳元で「ばーん」とか言われると凄くくすぐったいし、背中に暖かな体温が感じられて表情が引き締まらない。それでも馬鹿げた威力の武器を扱うのだから、と気合いを入れようとした結果、なんとも言い難い表情を晒している。
「はぁッ!」
「ばきゅーん。」
なんか すごい ぞくぞく してきた。
「···じゃなくて。試射はこれくらいにして、質問があるんだけど、いいかな?」
「んー? なーに?」
「何故ここ──いや、何故、魔界の外にいたの?」
こてん、と、またもや首を傾げられた。
「まかい?」
「そう。魔界。」
「わたしは···気づいたらここにいたよ?」
「···。そっか。」
暴走前の記憶が消えているのかな? だとしたらまだ完全に修復できていないのか···。
「あ、でもねマスター。」
「どうしたの?」
「わたしは間違いなく、ここで生まれた魔剣だよ。」
「ここって···オラリオで、ってこと?」
こくり、と彼女は頷いた。
ふむ? ブキダスさんがオラリオに居ると仮定して、だ。魔剣が造られた瞬間に暴走するなんてあり得ない。特にブキダスさんが造り出した魔剣は安定しているから、誰かが意図的に暴走させたり、大量のダメージを負わせでもしない限りは──あ? いや、そうか。意図的に暴走させなくたって、資格のない者が無理やり使おうとすれば暴走の危険性もある。
「なんにせよ、ブキダスさんがこっちに来ているのは確実かな。」
「でも、誰が持ち出したの? あんなオーパーツ、魔剣機関が持ち出しを許可するとは思えないけれど?」
グラムの指摘通りだ。ブキダスさんは魔石ダイヤさえあれば無限に魔剣を造り出し、運が良ければ既存魔剣の強化すら可能とする驚異の装置。まさに、
「盗まれた可能性もあるけれど···アレ、結構重いし嵩張るわよ?」
「え? でもアレ、飛ぶよ? ロケット付いてるし···。」
「え?」
本当にどんな技術なのだろうか。
「ま、まぁ、それは良いわ。魔剣機関から何の通告もないのだし、ブキダスが盗まれた、なんて事は無いんじゃないかしら?」
「うーん···まぁ、そうかもしれないね。」
魔剣機関は結構抜けてるからなぁ···しょっちゅう何かしらのお詫びとして魔石ダイヤ配り歩いてるし。美味しいからもっとやれって感じだけど。
「それで、ネオ。何か他に覚えてることはない?」
「んー。あ、そうだ。わたしがマスターと戦うちょっと前に、すごく強そうな奴が居たよ。」
「えーっと···冥獣のこと? さっき空洞に居た···」
「えっとね、先に空洞にいた弱い奴を、しゅんしゃつしたの。」
しゅんしゃつ···。瞬殺、か。
あのレベルの冥獣を瞬殺するとなると、最低でもルナティック級の冥獣かな? ネオが屠ったにしては死骸が綺麗だと思ったが、成程。新手が居たか。最悪、アビス級を相手取るのも視野に入れて──
「何の感情もなく、淡々と冥獣を殺してたよ。」
「···えぇ·········?」
何の感情もなく? 冥獣は手当たり次第に殺気をぶつけまくる。と、なれば、新たな魔剣でも居るのか? 全く、ここは魔界じゃないんだからもっと自重をだな···なんて考えていたら、グラム·オルタのおどおどとした声が鼓膜を震わせた。
「あ、あの、本当に魔剣なんでしょうか···?」
「と、言うと?」
「無感動、無感情に敵を滅ぼすのは、魔剣だけじゃありません···。」
「ハッキリ言いなさいな、オルタ。」
「ご、ごめんなさい、お姉ちゃん···。」
はぁ、と、ため息混じりのグラムと同じで、僕も今一つオルタの言いたい事が分からない。無感情に攻撃してくる奴なんて···あぁ、いや、待て、居た。いや、でも、そんな、まさか、そんな訳がない。ここは魔界じゃないんだ。そんな事があってたまるか。
「れ、霊獣なら、あのレベルの冥獣をしゅんしゃつ出来ると思います···。」
運が良ければ既存魔剣を強化できる(運が良いとは言ってない)
主は水着ガチャでダイン様の水着を狙った結果、AA超強化を8回とアンハッピーフライトの水着、それとセラエノ断章を引いたよ。
凄く···虚しかった。