ダンジョンで数多の魔剣に溺れるのは間違っているだろうか   作:征嵐

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第三話 恩恵

 

 僕とベルは神ヘスティアに恩恵を刻んでもらい、早速腕試し、という事でダンジョンへ行こう! とした矢先、ギルド職員に捕まってしまった。今は冒険者登録を済ませてチュートリアルを受け、初期装備の支給を終えてやっとこさ迷宮に入ったばかりだ。

 

 「に、しても。まさか恩恵がここまでシビアとはねぇ···。」

 

 独白しながらウエストポーチに手を突っ込み、一枚の紙を取り出す。そこには僕のステイタスが表記されている、のだが。

 

 ────────────────────────

 

 Lv.1

 

 力:I 0

 

 耐久:I 0

 

 器用:I 0

 

 敏捷:I 0

 

 魔力:I 0

 

 

 魔法:

 

 スキル:愚かな卑怯者の鍵(ワールドイズマイン)

     ·魔剣を顕現可能

     ·魔剣少女を顕現可能

     ·心を通わせる事で性能上昇

 

 ─────────────────────────

 

 全く、笑いが出る程にシビアだ。神ヘスティアは僕のスキルはレアだから、落ち込む方がバチが当たる、などと言っていたが。

 

 と、そういえば。

 

 「ベルはどこだ?」

 「ん···さっき···もっと下に行くって···逝ってた。」

 

 その時点で伝えて欲しかった、と思いつつ。

 

 「下に···って、レベル1じゃ無理だろ、初期装備なんだし··。···おいで、ネクロノミコン。」

 

 ───魔力が渦巻く。

 

 ───本来は無色無性質のそれに特性が与えられていく。

 

 ───性質は極めて邪悪。吐き気を催す冒涜的存在へ。

 

 ───魔力が固まる。

 

 ───形状は本。

 

 ───銘は『死霊秘法』。

 

 

 ─────魔導書『ネクロノミコン』顕現。

 

 

 手に少し湿った革の感触があり、膨大な知識と尋常ならざる邪悪が流れ込んでくる。···SANチェック! の、筈なのだが、生憎と()()()()で揺らぐ精神ではない。この系統の魔導書は()()()()()()()

 

 「■■■(さがせ)。」

 

 指示を飛ばすと、本が少しだけ開き触手が溢れるようにして蠢き出る。そしてそれらは迷宮の壁を這い進み、下層へと潜って行った。

 

 「見つけた···第5···階層···。」

 「■■■■(よくやった)。」

 

 ネクロノミコンへの魔力供給を絶ち、全速力で下層へ走る。道中では一匹もモンスターに遇わなかった。これは幸運EXですわー。と、そんなことは無いらしい。五階層に着くや否や、ミノタウロスに追われるベルが目に入った。

 

 「ベル!!」

 「ま、マスター!? たす···」

 

 いや、無理だろう。1レベルの冒険者二名ではミノタウロスは倒せない。ここでベルが出すべきだった声は「逃げろ」だ。まぁ、分かるけれど。怖いし。キモいし。

 

 「本当に···面倒だ。」

 「あら? こんな場所で私を使うのですか? 主様。」

 「うん···風情の欠片もないけれど。我慢してくれ···雪月花。」

 

 ───魔力が渦巻く。

 

 ───大気のエーテルが収束する。

 

 ───体が変質する。

 

 ───魂が変貌する。

 

 ───身体は支配され、彼女は僕を使いこなす。

 

 

 ───魔剣『雪月花』顕現。

 

 

 「破ッッッッ!!」

 

 抜刀──居合。剣閃は飛び、剣線に沿ってミノタウロスの首を撥ねる。

 

 「雪見で···あら、もう終わってしまったの?」

 

 硬い柄を握っていた筈の右手は、いつの間にか柔らかな雪月花の左手を握っていた。どうして、こう魔剣たちは少女の姿を取りたがるのか。魔力消費もあるというのに。

 

 「それは勿論、主様と一緒にいたいからでは? 皆様の心は、貴方の下に一つですから。」

 「一つでは無いんじゃないかな···。」

 

 口許を扇で隠して目で笑う彼女に苦笑を返しながら、僕はベルの元へ歩き···背後に殺気。

 

 「オォォォォォォォォォォ!!!!」

 

 ミノタウロス───もう一体の!?

 

 雪月下が右手の扇を虹色の太刀(雪月花)へ変化させる。魔剣少女は、自分自身を武器として扱える。──僕よりも上手に。本当に、何故彼女たちは僕を使い、僕を慕うのか。

 

 「煩いですよ?」

 

 流れるような所作で雪月花(少女)が持つ雪月花(太刀)がミノタウロスの胸骨──あるのかは知らないが──の辺りに突き立つ。と同時に、ミノタウロスの肩から反対側の脇腹までが袈裟斬りにされる。

 

 「え?」

 「あら?」

 

 雪月花一人での同時斬撃はまだ出来なかった筈だが···と、後ろに誰かいr ···ミノタウロスが爆散し、血液が降り注ぐ。雪月花はいつの間にか魔力供給を絶って消失しており、僕だけが血みどろになった。

 

 「···大丈夫?」

 

 ミノタウロスを斬った金髪のおねいさんが首を傾げながら尋ねる···はい。審議開始。

 

 「美人だし許す。」

 「美人だし許す。」

 「美人だし許す。」

 「美人だし許す。」

 「美人だしry」

 「美人ry」

 「美ry」

 

 満場一致。賛成多数。閣議決定。許す。···一部の魔剣少女が凄く怒ってるけれど。

 

 「えぇ。大丈夫です。」

 「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 まぁ、さっきの雪月花の斬撃でベルも似たような状態だし、俺に怒る権利は無いけどね!

 

 「あ···。」

 「あ、すいません。後で言って聞かせておきます!」

 

 ベルを追って走り出す。魔剣少女の事を聞かれることは避けるべき、という判断だ。断じて美少女と二人きりという状況に耐えられなくなった訳ではない。断じて。

 

 「おーい! ベルー!」

 

 迷宮を出て、道行く人々にじろじろと見られながら──何見てるんだ──ベルを探す。ネクロノミコンでも出してSANチェックテロでもしてやろうか! はいはいテロ準備罪。

 

 全く、一体何処にいっt···ん? いい匂い。香ばしい、食欲をそそられる···酒場だ! わぁい!! ベル? 後回しだっ!!

 

 豊饒の女主人、と看板の出ている酒場に入る。血? アルカードがprprして取ってくれました。描写するとほぼR18だからね! 仕方ないね! ···で、だ。何故、初見のはずのこの酒場から、聞きなれた声がするのか。

 

 「···いらっしゃーい! あ、マスター! もーっ! どこいってたの!?」

 

 ────僕には預言者の才能があるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 魔剣は割りと適当に出してるんで、出してほしい娘とか居ればお気軽にドゾ

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