ダンジョンで数多の魔剣に溺れるのは間違っているだろうか   作:征嵐

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 つなぎの話


二十七話 回想1

 暴走した魔剣少女が現世を彷徨することは、実際のところそこまで珍しくはない。魔剣機関にも対策本部が頻繁に立っていたし、魔剣使いや勇者もよく駆り出されていた。強力無比な魔剣が暴走するのは、その依り代である「ガワ」──つまるところ、魔力の結晶体である魔剣が壊れた場合だ。それでも魔剣使いとの信頼関係や絆の強さ次第では、逆に暴走し強力さを増した力を振るってくれたりもする。が、逆に、魔剣との絆が不十分だった場合は──「存在そのもの」がバラバラに散り、色々な場所で、暴走した魔剣として出現する。その薄れきった存在の核を強化し、実戦に耐える形になるまで育て上げる、といった事もしていた。僕の持つ中では···マビノギオンやアルカードがそうだ。

 

 で、何故こんなことを今さらになって思い出したのか、と言えば。

 

 「暴走してる魔剣、誰?」

 

 僕は、魔剣機関から出された討滅依頼を悉く無視し、暴走した魔剣たちの存在の欠片を集め、元あった姿に戻してきた。記憶や、思い出、経験、そういったモノは、かけがえのないモノであるハズだから。──で、だ。僕は魔剣機関が討滅依頼を出す都度に、余さず出撃していた。だから「暴走した魔剣」なんてものはいない筈だが···

 

 「新しく魔剣が発見されたのか?」

 

 冥獣と同じく古代の武器である魔剣たちは、たまに新しい娘が発見される。今回もそのパターンの可能性があるが···

 

 「魔剣機関め。把握していなかったのか?」

 

 魔剣機関が認知した瞬間、討滅依頼が出される手筈に──いや、人間界では奴らの腰も重いのか? 支部がない、なんて、そんな弱っちい組織ではないし。

 

 「マスター。なんとか、助けてあげられませんか?」

 「そうだな、マスター。助けないにしても、せめて我々が裁くべきだ。」

 

 思考の淵から僕を引きずり出したのは、二人の魔剣少女の声だった。マビノギオンと、イノケンティウス。どちらも、暴走していたのを僕が討伐·回収した娘だ。それだけに、暴走することの怖さを知っているのだろう。記憶が薄れ、何故、自分が暴走しているのかも分からぬままに、もて余した力を解放する···。

 

 「···言われなくても、そのつもりだよ。」

 

 足跡を辿って、どんどん迷宮の奥へ進んでいく。機嫌よさそうにしている二人は、いつの間にか実体化し、僕の両手を占領していた。

 

 「どうかしましたか? マスター。」

 

 微笑しながら首を傾げるマビノギオン。左手を引いて先に歩いて行ってしまうイノケンティウスに付いて歩きながら、逆に問いかける。

 

 「どうか、って···何が?」

 「だって、マスター。すごく怖い顔を···いいえ、すごく、()()()()()()顔をされていますよ?」

 「···そうだな。まるで悪事の露見した罪人の様だぞ。」

 

 いや、別に悪事を働いた訳じゃないのだけれど···。そう、だね。怖い。僕の知らない魔剣がいるかもしれない事が、というよりは、この、デジャヴを感じる状況に。

 

 

  




 次回、回想2にて、伏線回収(予定)


 予定は未定で不安定。

 感想ありがとうございます!! 下がり続ける評価に怯え日々の癒しになりつつある。

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