ダンジョンで数多の魔剣に溺れるのは間違っているだろうか   作:征嵐

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 まさかこの私が魔剣ちゃん達の名前を間違えて表記したなんてありえない。ごめんなさい。いやほんとすいませんでした···。


第二十話 (圧迫)面接

 

 「えっと···。」

 

 三人用の丸テーブルに着き、団長とエルフの女性とがそれぞれ座る。確か、リヴェリアとか言った、オラリオ最高の魔術師···? そのテーブルを囲むように、ロキファミリアの冒険者たちが立っている。そんな筈はないのだが、彼ら彼女らの放つプレッシャーで、空気そのものに重量が付与されたようだ。

 

 「まずは、お礼を。この前は、僕たちを助けてくれてありがとう。」

 「え? ···あ、はい。」

 

 怪物祭のときのことだろう。あの後、魔力枯渇でぶっ倒れた僕を運んでくれたのは彼らだし、こちらもお礼を言うべきか? ちらり、と団長の顔を盗み見るが、相変わらずの微笑で心情は分からない。が、「まずは」と言った辺り、これが本題ではないのだろう。

 

 「···。」

 「···。」

 

 両者が沈黙し、テーブルに置かれた紅茶に口を付ける。美味しいなこれ。

 

 「さて、本題だけど。···君は、壊獣、というモノを知っているか?」

 「怪獣、ですか?」

 

 いきなり本気の声色になった団長の変貌ぶりに動揺する。オウム返ししちゃったよ···。怪獣、と言われても、ポピュラーな所では竜種···ファフニールとか、ワイヴァーンとかだろうか? いや、彼ら冒険者から考えれば、階層主と呼ばれる一部のモンスターも怪獣だろうし···。

 

 「そう。壊獣。破壊の獣だ。」

 「壊獣···? どんなモンスターなんですか?」

 「モンスター、と言っていいのかどうか分からないけど···それは、ダンジョンの地下、隔離された空洞に閉じ込められていた。」

 「いた? 過去形です···か?」

 

 相槌を打ってから気付いたけど···それ冥獣じゃないの?

 

 「そう。昔、僕らロキファミリアが交戦し、そこに閉じ込めた。」

 「閉じッ!?」

 

 冥獣と交戦して生き残ったことがまず驚きだ。魔剣なしで相手取れるようなヤワな存在ではないぞ、冥獣は。

 

 「だが先日、何者かによって倒されていた。」

 「は、はぁ。」

 

 ちびちびと紅茶を飲んで口元を隠す。苦笑の域に収まらないレベルの苦い笑いが浮かびそうだ。

 

 「そこに君の魔力の残滓があった理由を聞きたい。」

 「···。」

 

 紅茶が鼻から出た。鼻の奥が痛むのを我慢して口元を拭い、恨めしげに団長を見る。彼の表情は真剣だった。そして、僅かながら敵意すら宿している。「お前が嘘を吐くなら、我々は君を殺す。」と、そう言っている気がした。

 

 「···()()は『壊獣』ではなく『冥獣』という名前です。」

 「···それで?」

 

 僕が話したことに驚いて声を漏らした周囲の冒険者達と違い、リヴェリアさんと団長は冷静に僕を見据えている。

 

 「僕は、冥獣との戦いに特化した武器を持っています。」

 「この前使っていた武器のこと?」

 「はい。僕のスキルで呼び出せる武器、『魔剣』です。」

 「君はk···冥獣について、どこで知ったんだ?」

 「昔居た場所で、冥獣との戦いを生業とする人たちがいました。」

 「···そうか。」

 

 本当はスキルじゃないとか、その冥獣と戦う者たち(魔剣機関)に聞いた訳でもないだろ。とか言ってはならない。

 

 「じゃあ、あの地下にいた冥獣は、君が倒したんだね?」

 「えぇ。」

 

 また、「そうか」と呟いてカップに口を着けた団長は、側にいたアマゾネスの冒険者にお代わりを要求していた。空だったのか。

 

 「幾つか、質問がある。」

 「···どうぞ?」

 

 答えるかどうか、真実かどうかは保証しないけれど。

 

 「その魔剣は、無尽蔵に産み出せるのか?」

 「···は?」

 「もしも無限に産み出せるのなら、僕たちにも貸して欲しい。僕たちでは、冥獣に対抗できない。」

 

 何を言っているんだ? こいつは。僕の魔剣を、貸す? 脳内に吹き荒れる魔剣たちの声は、怒りと嘲笑で荒れ狂っていた。

 

 「殺すぞ(お断りします。)」

 

 おっと失礼。逆だ逆。

 

 「お断りします。」

 「···すまない。大切なものだったんだね。」

 

 当たり前だ。そもそも、最適化されていない有象無象では魔剣を持った瞬間に消し飛ぶ···いや、魔剣たちが「自分を振るうに相応しくない」と判断した瞬間に吹き飛ぶ。なんなら今ここで魔剣少女を顕現させるだけで、このホームは壊滅する。そんな魔力は残ってないけれど。

 

 「じゃあ、ロキファミリアに入らないか?」

 「お断りします。」

 

 あまり使いたくないが、緊急時の魔力回復手段がない訳ではないし、戦闘に発展する事なんて考えずに正直に答えていく。

 

 「魔剣の威力を教えてほしい。」

 「黙秘します。」

 

 即答。敵になるかもしれない輩に、誰がこちらの戦力情報を教えるかっていうんだ。居るとすれば、慢心しているか愚者なのか、でなければトラップだ。

 

 「残念だ。···これが最後の質問だ。···君は、僕らの敵か?」

 「···。」

 

 これが聞きたかったのか。僕を怒らせて、この質問をぶつける。僕が感情で動く相手かどうか確かめようという算段か。策士だな。正直言ってこの団長のせいで「このファミリア潰さない?」という魔剣たちの提案が吹き荒れているが。

 

 「貴方たちが、ヘスティア·ファミリアに敵対しないのなら、敵にはなりません。」

 

 どうよ。この大人な対応。「大人は自分で大人とか言わない」って? ぐぅ。

 

 「···それを聞いて安心した。ここから先は、上位ファミリアの団長としてではなく、冒険者同士の話し合い···交渉なんだけど。」

 「···。」

 

 何が上位ファミリアだよ滅ぼしてやろうか。と、主に邪悪属性の魔剣たちの為に最適化された部分の心が吼えている。

 

 「最近、ダンジョンでちらほらと冥獣を見掛けるんだ。君にはこれを討伐してほしい。勿論、僕たちロキファミリアも全力で支援する。」

 

 ···ちらほらってなんだよ魔界かよ。実はここはまだ魔界だった? 或いは、迷宮が魔界と繋がっているとか、迷宮は実は古代遺跡だった、とかか? 

 

 「まぁ、それぐらいなら。」

 

 と、言うか。この団長最後まで上からだったな? ほんと何なの?

 

 

 

      ◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

 

 その後、ロキファミリアの宴会に混ぜて貰ったが、話してみたら普通にみんな好い人だった。

 

 で、新事実。団長、僕より年上だった。それもだいぶ。···いや、うん。そりゃ上から目線で当然だったよ。むしろ僕の態度が問題だったよ。謝りに行ったら「知らなかったのかい?」と笑って許してくれた。···いい人?

 

 

 





 誰一人感想でミノ復活に触れない辺り、「あ、魔剣との絡みが大事なんやな」って思った。

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