ダンジョンで数多の魔剣に溺れるのは間違っているだろうか   作:征嵐

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第二話 迷宮都市

 

 「えーっと···最期にリディを見たのは何時だったっけ···?」

 「漢字が違うんじゃないかしら?」

 

 僕もグラムも意外と冷静だった。いや、だって···ねぇ?(意味不明)

 

 「案外、オラリオの酒場で魔石ダイヤでも集めてるんじゃないかしら?」

 「いや、さすがに僕たちを置いてアルバイトなんて···」

 

 しそうだ。「もー! どこいってたの! マスター!」とか言われそうだ。

 

 そんな未来を幻視していると、遠くから声がした。ちょうどオラリオの方から、男の叫ぶ声が。

 

 「おーい! 君達! 大丈夫か!?」

 「うぉ···!?」

 

 二人組の男。鎧と槍はそれなりの···訂正、()()()()()()()それなりの出来だ。冒険者、なのだろう。に、しても──

 

 「早いですね。今さっき、白髪の子が助けを呼びに行ったと思ったんですが。」

 「あぁ、いや、レベル3の俺たちにすればこの距離はまだ近い方なんだが···これは、君達が?」

 

 肉塊へと成り果て、未だに血でてらてらと光っている()()を一瞥し、次いで僕に視線が移り、最後にグラムに移り──止まる。いや、まぁ、分かるけれど。グラムは可愛いから。と、言うか、魔剣達は皆人外レベルの美貌を持っている。それはもう、SANチェックが発生するレベルの。グラム! かわいい! SANC1d6/1d10!

 ──現実逃避、了。

 

 「あのー?」

 「おっと、失礼。それで、怪我はないか? もし良かったら、オラリオまで同行するが?」

 「あー···じゃあ、お願いします。」

 

 道中、色々と(グラムが)質問されたけれど、それをのらりくらりと躱し、なんとかオラリオへ到着する。ただ、始めに驚きの声を上げて以来、一切話さなかった方の男。奴のグラムに向ける視線は要注意だ。舐めるような、そして隙を伺うような、気味の悪い視線。

 

 「いや、ありがとうございました! おかげで魔物にも遇わなかったし···」

 「···。」

 

 魔物が出てこなかったのは、始終不機嫌オーラを発しまくっていた──いや、発しまくっている(進行形)グラムの所為な気もするが。言わぬが吉。君子危うきに近づく前にそれを殲滅す。

 

 「私が顕現していると言うことは、貴方とは魂レベルで繋がっているのだけれど? マスター。」

 

 ふむ? つまり?

 

 「脳内の独白は控えなさい。と、言うことよ。」

 

 ぎゅう、と握りっぱなしだった右手に力が加えられる。···す"い"ま"せ"ん"て"し"た"。

 

 「はぁ···もういいわ。さっさとリディちゃんを探しましょう?」

 

 そう言って、グラムは大気に溶けるように消えて行った。魔力の供給を絶てば、当然のように魔剣少女は顕現できなくなる。つまり彼女たちは戦闘中に魔力を絶てば簡単に僕を裏切れるのだが──そんな心配は、とうの昔に卒業した。···一部、反逆の意思を持つ子もいるけれど。

 

 「探すって言ったって···」

 

 ぐるりと周囲を見回す。人、人、人、人、人、人、人、人、店、店、店、店、店────!!!! ···どうしろと?

 

 「お! そこの君!」

 

 面倒だ···いっそレールガンかオーア·ドラグでもぶっ放して()()()か···?

 

 「いや、洒落にならないよ? て、言うか呼ばれてない? マスター。」

 

 件のレールガンの声が鼓膜を震わせる。で、僕が誰に呼ばれてるって? きょろきょろと周りを──真後ろ!?

 

 気配を感じて振り返ると、黒髪ツインテロリ巨乳の紐──と、いつかの(さっきの)白髪赤目の子! 生きてたか!

 

 「はい? えっと、何か?」

 「君も、新しくオラリオ(ここ)に来た子だよね? よかったら、うちのファミリアに入らないか?」

 「さっきはありがとう! 僕が君と一緒に冒険したいから、って、神様に頼んだんだ! あ、えっと神様って言うのは──」

 

 目を輝かせるロリ巨乳と白髪赤目。神様、と、いうとこの紐が?

 

 「えぇ。そうよ、マスター。()()()はオリンポスのヘスティアね。」

 

 またも顔の横で声がする。この声は──アダマス、か。僕が所持する魔剣には神殺しも何人か(何振りか?)いるが、その中でもアダマスは桁外れの能力を持っている。が、まぁ、()()()()()()()()()使うことはないだろう。

 

 「えっと···ファミリア、って何ですか?」

 

 家族? 親友? 

 

 「うーん、まぁ、家族みたいなもの、かな?」

 「はぁ···別に、構いませんよ。確か、恩恵? を、貰う為には、ファミリアに所属しなきゃいけないんでしたよね?」

 「お、よく知ってるね?」

 

 ヘスティアに先導される形で歩きながら、説明やら自己紹介を済ませてしまう。ふむ、白髪の子はベル·クラネル、紐はヘスティア。覚えた。

 

 「それで、君の名前は?」

 「あ、僕は■■■■■────皆は、マスターって呼んでました。」

 「ふーん。じゃあ、ボクらもマスターって呼ぼうか、ベルくん。」 

 「あ、はい。そうですね。」

 

 暫く歩き、オラリオの端のほうまで来る。

 

 「さぁ、着いたよ! ここが今日から、君達のホームだ!」

 「······!」

 「···。」

 

 脳内がほぼ全ての魔剣少女からのブーイングで埋まる。···いや、分からなくもないけれど。ルンブレの一撃で壊れそうな廃教会が、そこには鎮座していた。

 

 「いや、まぁ、中は超ハイテクかもしれないじゃん? レールガンみたいな。」

 

 レールガン姉妹から同時に「そんなわけないじゃん」とツッコミが飛ぶ。タブーちゃんの貴重なツッコミシーンだ! わぁい!

 ──現実逃避、了。

 

 「まぁ、一度言った事を覆すのもアレだし。」

 

 と、まぁ、そんな感じで。

 

 所属ファミリアが決まった。

 

 

 

 

 





 「マスター。リディちゃんは見つかったのかって、お姉ちゃんが···」

 鼓膜を震わせるのはグラムの妹、もう一人の、《魔剣》。

 「···。」

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