ダンジョンで数多の魔剣に溺れるのは間違っているだろうか   作:征嵐

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 途中で全部消えて、気力0で書き直したから誤字脱字のオンパレードかも。


十八話 ソーマ·ファミリア

 ぐっすり眠って現在時刻は午前10時を過ぎたところ。雲一つない快晴だ。清々しい、という描写がピッタリと合う景色である。···僕の心情とは裏腹に。

 

 昨晩、グラムが何者かに襲撃を受けた。何処かのファミリアの冒険者、それも中堅クラスの身のこなしだったらしい。グラムに襲いかかったそいつは、その首と胴体を別れさせ、首だけをヘスティア·ファミリアのホームで寝ていた僕の所へ来させていた。下手人は勿論、グラムだ。目覚めた時にベッドのシーツが血で染まり、目前に男の生首が置いてあった時は流石に焦った。心臓が数秒止まった気がする。

 

 「それで? 胴体はどこ行ったの?」

 「さぁ? 誰かが食べちゃったんじゃない?」

 

 魔剣少女として顕現したグラムと一緒に、昨夜襲われた場所へ来ている。幸いにして、今日の目的地であるソーマ·ファミリアとは同じ方向だった。小さな路地の一ヵ所に、僅かながら血痕が残っている。首を撥ねられたとは思えない出血量だから、誰かが「後処理」をしたのは確実だ。

 

 「グラムが何者かを理解して襲った訳じゃなさそうだけど···」

 

 その存在を知っている相手が、武器の極致たる魔剣に一対一で襲いかかるとは思えない。

 

 「まぁ、どうでもいいか。」

 

 ソウルコレクター辺りに魂から情報を集めて貰うにしても、魂を回収できなかったのではまず不可能。殺したその場で魂をキャッチしなければ。

 

 「行こう。」

 「えぇ。」

 

 グラムが僕の右手に滑り込ませた、彼女のひんやりした左手の感触に戸惑いながら、僕はソーマ·ファミリアへ歩を進めた。

 

 「ソーマ·ファミリア」と彫られたプレートの掛かったドアを勝手に開ける。アルコールの匂いと一緒に、訝しげな視線も向けられる。まぁ、僕の年齢じゃ酒を買いに来た様には見えないだろうからね。当然だ。

 

 話を聞くと言ったな、あれは嘘だ。とでも言い捨てて火でも放とうか、という誘惑に駆られながら、手近な冒険者の男に声をかける。

 

 「すいません、神ソーマに会いたいんですけど。」

 「なんだ、坊主。主神のお使いか?」

 

 神同士のメッセンジャーだと思われているのか? 好都合だ。

 

 「えぇ、そうです。神酒がどうのって聞いてますけど、どこに行けば会えますか?」

 「そこの扉の奥だ。工房になってるから、火気厳禁だぞ。」

 

 目に見える武装もしていないし、ここに入る前にグラムも非顕現状態へ戻している。丸腰の子供なら、通しても問題ないと判断したのだろう。

 

 愚かしい。

 

 「失礼しまーす。」

 

 酒の並べられた棚の間をすり抜けて、工房へ続く扉を開ける──寸前で、背後から剣が振り下ろされた。

 

 「お前だな?」

 「何がですかね?」

 

 一本の長剣を顕現させ、凶刃を防ぎながら答える。

 

 「ジョンが尾行していたのは···ジョンを殺したのは、お前だな?」

 

 誰だよジョン。···いや、尾行だと? 昨日の冒険者か。あの人ジョンって名前だったのか。憎しみに歪んだ顔で斬りかかってきた男を蹴り飛ばす。酒の陳列された棚を盛大に倒しながら吹き飛ぶ男を見て、先ほど声を掛けた男を筆頭に、敵意を剥き出しにした冒険者たちが武器を持って向かってくる。あぁ···面倒臭い。

 

 「シャドウゲイト。」

 「あまり乱発しないほうが良いわよ?」

 「乱発とか卑猥なこと言わない方がいいよ?」

 「ちょっ!?」

 

 ──転移する。

 

 滲み出るように現れた、不自然な影···と、いうか、闇の中に体を入れると、冒険者たちと僕の位置がそっくりそのまま入れ替わっていた。杖棒『シャドウゲート』を用いての空間移動。闇の中を潜り抜けるようにして転移する。が、便利なだけに魔力消費も大きい。彼女の言うように、あまり乱発したくはない。

 

 「じゃあ、さようなら?」

 

 シャドウゲイト···宝玉を嵌め込んだ杖を持った左手ではなく、先ほどの一撃を受け止めた剣を持つ右手を突き出す。「何が起こったか分からない」といった表情の冒険者たちと、酒にまみれて昏倒している冒険者が一斉に炎に呑まれる。右手の長剣の銘は、『ガラティーン』。円卓の騎士ガウェインの持っていた、「太陽の剣」である。

 

 さて。酒が盛大にぶちまけられた場所に高火力を浴びせるとどうなるか。当然、引火炎上する。そして、アルコールというのは揮発性が非常に高い。空気中にも、微細なアルコールが飛んでいる訳だ。つまり。

 

 爆発する。

 

 左手を一振りして建物の外へ転移し、炎に巻かれるソーマ·ファミリアを眺める。途中で何度か爆発が起こり、何度目かで神ソーマが送還されていった。

 

 また転移してギルドへ行き、アリバイを作る。魔剣たちは当然、非顕現状態だ。これが···これが完全犯罪だ!! プロフェッサー·マスターと呼んでくれたまえ。

 

 「誰のお陰だと思っているの? プロフェッサー·マスター。」

 「ごめん、シャドウゲイト。やっぱそれナシの方向で。」

 「えー? なんで? カッコいいよ? プロフェッサー·マスター!!」

 「ガラティーンも、頼むからやめて···。」

 

 シャドウゲイトの場合はからかっているだけだろうが、ガラティーンは半分ぐらい素の可能性が残っている。

 

 「で、なんで尾行したりしたのか、分かったのかしら?」

 

 グラムの質問には聞こえていないフリで返す。はぁ、とため息が聞こえた気もするが気にしない。忘れてたなんて言えない。

 





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