ダンジョンで数多の魔剣に溺れるのは間違っているだろうか   作:征嵐

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第十五話 時神の鎌

 薄暗い、高さも5、6メートルほどの空間に、三つの超越存在が圧倒的な力の奔流を垂れ流していた。

 

 

 一つは、僕の右手でコアを紅く輝かせている最上にして完成された武器。『魔剣グラム【極】』

 

 一つは、魔剣グラムのブレイズドライブをその身に受けながらも、未だ攻撃の意思も殺気も健在の怪物。ワンドメイス型冥獣。

 

 一つは、僕の左手で神々しいまでの輝きを放つ神の武器。『アダマス【極】』

 

 

 「どうでもいい話なんだけどさ、冥獣は一匹見たら百匹いると思え。魔剣機関はそう言ってたけど···それエンドレスだよね? 一匹につき百匹居るんなら、百の百乗の百乗の···って続くと思うんだけど。そこのところ、どう思う?」

 「本当にどうでもいいわね···」

 

 グラムの呆れたような声に笑いの成分が含まれているのを確認する。うん。破損には至ってないようで安心だ。

 

 「ねぇ。まだやらないの?」

 

 左側、アダマスが不満げな声を上げる。いや、もう勝負はついたようなものだし?

 

 アダマスが顕現した瞬間に、最早勝敗は決していた。

 

 ギリシャ神話において、オリンポス十二柱の神の最高位、大神ゼウスや海神ポセイドンの父であり、時の神であるクロノスが振るい、自らの父であり、空の神とも、空そのものともされる神ウラノスの()()を切断した鎌、アダマス。その権能は────時間の停止。

 

 砂埃や砕けた岩の破片が空中で停止し、重力に抗っている。

 

 冥獣が攻撃姿勢で停止し、大きな隙を見せている。

 

 どういう理屈か、光や空気、電子や分子の運動は止まっていないので、僕が傷つくことはない。優先度も、アダマスを持つ僕が最上位であって、砂埃に突っ込んで行っても、その粒子に阻まれたり、体がズタズタになったりはしない。

 

 「お前は別だけど、ね。」

 

 悠々と冥獣の下まで歩き、グラムとアダマスで攻撃を加えていく。一発ではかすり傷程度かもしれないが、数十、数百と重ねれば、いつか死ぬだろう。死ぬまで、何分でも何時間でも何日でも、延々と攻撃を加えてやればいい。

 

 そんな考えを裏切るように、十数回目の攻撃であっさりと冥獣を構成するエーテルが爆散した。

 

 「あれ? 意外と弱かったな。」

 

 思えば、何日間も攻撃を加えなければならないような強力な冥獣であれば、止まった時間の中であろうと行動できた。覚悟損だな、これは。

 

 「お疲れ様、アダマス。」

 「この程度なら、私が出る必要も無かったんじゃないの?」

 「んー。そうかもね。」

 

 苦笑を交わしてから魔剣二人を非顕現状態へ戻す。止まっていた時間が動き出すのに合わせ、砂埃が舞い、岩の破片が辺りへ飛び散り、冥獣が消滅していく。

 

 「ドロップアイテムとかありませんかね···新しい魔剣とか、魔石ダイヤとか。水晶でもいいなぁ···。」

 

 冥獣のいた場所に落ちていたのは、手のひらにすっぽりと収まるサイズの魔石。魔石と言っても、魔力変換効率の凄まじい魔石サファイアや、魔剣の強化に最適な魔石ルビーではなく、ギルドで換金できる、オラリオでも一般的な「魔石」だ。

 

 「え? なに? ハズレ?」

 

 レアドロップと呼ばれる、希少部位や希少素材の類の入手確率は、運に拠る所も大きいが、冒険者の熟練度に左右される。と言ってもコンマ数パーセントの域だが、命を張って戦う冒険者にとっては大きい値でもある。希少素材があれば上質な武器や防具が作れるし、それがあれば生存率はかなり上がる。

 

 そして、今回顕現していた二人、魔剣グラムとアダマスの熟度はどちらも最大(75)。レアドロップ率もかなり高かったし、魔界にいた頃は、実際にかなりのドロップ率を誇っていた。

 

 「うわぁ···ハズレか···。」

 

 故に、期待が大きく、外した時のショックも大きい。

 

 「帰るか···。」

 

 俯き気味に、空洞の横穴から出ようと歩を進める。流石に、縦穴を垂直に昇る訳にもいかない。昇る手段はいくつかあるが、どれも魔剣を使う為、縦穴の出口で他の冒険者に見られる可能性があるからだ。うーん。僕の成長がはっきり分かるね。今までだったらここで垂直上昇した上で出口でロキファミリアに遭遇してた。

 

 「でも、マスター。ここってかなり下層だよ? どちらにしろ、武器は必要なんじゃない?」

 「仰る通りだよ、レールガン···。」

 

 完全に失念していた。いつどこから魔物が「こんにちは! 死ね!」してくるか分かったものじゃない。

 

 咄嗟にレールガンを顕現して、構えながら進んでいく。なるべく、上に上に行くように心がけながら、かつ慎重に歩いていく。何分歩いたのか定かではないが、見慣れた景色が視界に広がり、落胆の声を上げる。砕けた岩、天井の縦穴。先ほどの空洞に間違いない。そして、ここに至るまでに分岐点はなかった。つまり。

 

 「ここを昇るしかない、と。そういうことですか。」

 

 縦穴を見上げ、溜め息を吐く。ぽっかりと空いた穴は、奥が見通せない程度には長く続いていた。まぁ、かなりの距離を落ちてきましたし?

 

 「と、言うか。僕以外の冒険者が落ちたら詰みだよね。これ。」

 

 飛行アビリティとか転移魔法でもあるなら別だが。かなりのレアスキルだろうし。そもそも冥獣を倒すつもりなら魔剣は必須だ。

 

 「さて···。登りますか。」

 

 





 参考資料:wikipedia

 冥獣が出たという事は···分かるな? 原作で新しい魔剣が登場したとしても、対応できるということだ! やったね!

 さしあたっては···トライデント=メルトが欲しかった。(引けてない) バスにゃんサマーも出したいなぁ···

 ウサ耳ジャガノが実装されたら出します(預言)

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