ダンジョンで数多の魔剣に溺れるのは間違っているだろうか   作:征嵐

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艦これはちょっとお休み(ごめんなさい)



 この小説において、魔剣少女たちは異常なまでに強化されています。


第一話 魔剣顕現

 

 迷宮都市オラリオ。すぐ側に超巨大建築物(建築?)の迷宮(ダンジョン)を構える、僕の住んでいた町から一番近い発達した都市だ。神々も降りてきているという、田舎者にとっては憧れの地である。

 

 「神々なんてそんなに良いモノでもないわよ? マスター。」

 

 顔のすぐ横で声がする。視線を向けても、そこには誰もいない。当然だ。戦闘でもないのに()()()()を顕現させられる程、僕の魔力は多くない。···と、言うか。

 

 「あんまりそういうコト言わない方が良いんじゃないかなー···。」

 

 なんかバチ当たりそう。天罰的なサムシングが。

 

 僕が···否、()()()歩いているのは見渡す限りの荒野··ではなく、見渡す限りの畑。僕は今日、オラリオに行く。一人旅、に、したかったのだけれど。

 

 「まーすたー! はーやーくぅー!!」

 

 最早点にしか見えない程の距離で声を張り上げる──どれだけの大声なのだろうか──のは、旅の道連れ世の情け、我等がバイト戦士にして僕の妹分、リディだ。

 

 「待ってよーリディー!!」

 

 この辺りに魔物は出ないし、出ても遮蔽物のないこの地理で見逃すことなどないだろうけれど、やはり大声は避けて欲しい。彼女には戦闘能力がないのだから。

 

 走ってリディに追い付くと、彼女は「楽しみだねー!」などとにこにこと笑いながら、今度は数歩だけ先を歩いている。

 

 「退屈ねぇ···。」

 

 またも顔の横で声がする。道中の魔物は悉くが彼女の一撃で木っ端微塵と成り果てた(彼女以外の魔剣はもっと暇なのでは?)からか、唯一──では、ないが、それでも「魔剣」の名を冠する彼女はつまらなそうに呟き続ける。

 

 「ねぇマスター? そのオラリオには、私が本気を出すに値する敵がいるのかしら?」

 

 完璧にして完全な魔剣の名に相応しい誇りを持つ彼女からしてみれば、そこらの雑魚の相手は不本意なのだろうか。なんか申し訳ない、が、最も慣れ親しんだ魔剣のうちの一人(一振り?)である彼女を使うのが、効率面で見ても最良なのだが······

 

 「まぁ、別に、構わないけれど。」

 「そりゃ、どうも。」

 

 なんとなく黙ってしまい──いや、魔剣少女たちは普段は黙っているが(例外多数)──歩くこと数分。

 

 「■■■■■■ーーーーー!!」

 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 オラリオまでもうすぐだと言うのに、魔物と戦う同世代くらいの男の子を発見してしまった。

 

 「 こ れ が 天 罰 か 」

 

 やはり口は災いのもとだ。

 

 一見すればライオンのような···いや、山羊、蛇、鷲、色々な生物が混ざりあった混合生物、キメラという奴だろう。手にした短剣をやたらめったらに振り回す白髪の少年。()()()()()()()()()()()()無様な戦闘に苦笑し──駆ける。

 

 「うおおおおおおお!!」

 

 キメラの(本体? と思しきライオン部分の)横腹に全力のタックルをお見舞いする。ダメージ0! 進捗駄目です! どころか反作用でこっちがダメージを被っている。

 

 「逃げて! 早く!」

 

 キメラを構成する生物の多数の目が此方を向いた瞬間に叫ぶ。

 

 「で、でも!!」

 

 見た限りでは何の武装もしていない僕の様相では説得力なぞ皆無! ですよね! が。そこまでは予想済みさ!

 

 「安心して! 僕は回避技術だけはずば抜けてるんだ! オラリオに行って、冒険者の人を呼んできてくれ!」

 「······わ、分かった!」

 

 少年は一目散に駆けていく。──僕の言葉を信じたからだよね? 逃げたいだけじゃないよね?

 

 「■■■■■■■ーーーー!!」

 

 逃げ出した食事を追いかけようとするキメラ。その行く手を阻むように回り込む。僕を敵と認識したのか、ただ食べる順番を変えたのか、白髪の少年に向いていた目も全てが僕を見据える。

 

 「おいで·········グラム。」

 

 右手を横へ差し出す。

 

 体内魔力が活性化する。

 

 大気のエーテルが収束する。

 

 体が変質する。

 

 体が支配されていく。

 

 ずっしりとした重みが手に掛かり。

 

 魔剣はここに顕現する。

 

 

 

 ────『魔剣グラム』顕現。

 

 

 

 右手には僕の体をゆうに超すほどの大剣が握られている。鋼鉄より硬く、氷より冷たく、炎よりも熱い。質量は極めて大きいが、自在に振れる。慣性は極めて大きいが、自在に制動できる。剣の腹、コアとでも言うべき宝玉に光が灯る。その色は蒼。包帯のような白い布の巻かれた柄を片手で握りしめ──宝玉が紅く光る。

 

 身体無き声が、今度は鼓膜を震わせずに直接脳に響く。

 

 「さぁ···始めましょうか? Get Ready?」

 「BLAZE!!」

 

 呼吸が合う──いや、僕の体は彼女のものだ。呼吸は()()()()()、剣が一閃される。

 

 ──────終。

 

 ただの一閃で、キメラは肉塊へと変貌を遂げた。

 

 「もうお仕舞い?」

 

 硬い柄を握っていた筈の僕の右手には、いつの間にか細く、柔らかい少女の手が握られている。僕の右で肉塊を冷ややかに見つめるスレンダーな少女──胸元の肌蹴たドレスのような装いに身を包む(ガーター美脚の)美少女。彼女こそが──

 

 「お疲れさま。グラム。」

 

 魔剣グラム。僕の所持する魔剣の中でも最高位から二つ目、Sランクに位置する魔剣だ。

 

 「えぇ。···ところでマスター?」

 

 僕の右手から手を離さないままに、微笑む彼女は爆弾を投下する。

 

 「リディちゃんはどうしたの?」

 「···ああああぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 





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