PKプレイヤーの憂鬱   作:セットヌードル

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PKしたらアイテム全部手に入るらしいので、となると展開が変わってしまうので新しく始めることにしました。オリジナル設定でそのままいこうとも思いましたが、アイテム手に入る方が進めやすかったのでやり直すことにしました。

この話は最初の奴と何も変わってません。次回から少しづつ変えて行きます。


新版
01 ロールプレイしてたら本物になったでござる


「――死ね」

 

 プレイヤーネーム“saradakonbu”は和気藹々と楽しみながらモンスターを狩っていたプレイヤー3人に背後から近付き、一番近くの一人の首を斬った。続けざまにソードスキルを叩き込む。まだレベルが高くなかったのかそれだけでそのプレイヤーは電子の海へ消えていった。スキルを使ったことにより若干の硬直があったが、突然のPKプレイヤーの出現に他のプレイヤーも硬直していたので問題はない。スキル硬直が解けると共に依然として硬直する残りの2人へ斬りかかる。そこでやっと2人は武器を構えたが少し遅かった。saradakonbu――サラダ昆布は相手の体勢が整うよりも早くそれを崩す。それから範囲系のソードスキルを発動、間もなくパリンッという心地の良い音がサラダ昆布にPK完了の知らせを届けた。

 

「良し、次だ」

 

 世界初のVRMMORPG、Sword Art Online、略称SAOのサービスが開始され数時間が経過。皆がこの世界に感動したり、レベリングしたりと楽しんでいる中、彼はひたすらにPKを行っていた。

 理由はただそうあろうとしたからである。つまり、ロールプレイをしていたのだ。ロールは謎の暗殺者、もしくは狂人。何故そのロールに至ったかは単純に、彼が直前まで読んでいたライトノベルがその手のものだったからである。付け加えるなら、初のPKでボーナスもらえないかなぁ的な目的もあった。因みにボーナスはない。

 そんな理由で彼はログインするなり初心者を狙い開始早々にPKを行うことができた。それはSAOが世界初のVRMMORPGということで手を出したゲーム初心者も多く、自分よりも実力が下の者を見つけるのが容易であったためである。

 サラダ昆布はその後もPKを続け先程の3人で合計12人のプレイヤーをPKすることに成功した。

 

「やっちまえ!」

 

 しかし、サラダ昆布は無双の最強ゲーマーというわけではない。むしろゲーマーというにはいささか実力が足りない気もする。それにも関わらずPKを連続12回も成功できたのは基本的に弱そうな装備や動きがぎこちないプレイヤーを背後から近付いたり、奇襲をしていたからである。それとPKによって得られる経験値の多さによる恩恵が大きかった。要はサラダ昆布のプレイスキルは平凡なものであり、同じレベル帯の初心者マークの外れたプレイヤー数人に囲まれれば負けるのは必至である。

 しかも自分のカーソルは犯罪を犯したことを示すオレンジ色。正義感にかられた彼らから逃れるすべはない。こんなことなら狩る場所を帰れば良かったとサラダ昆布は後悔した。

 

「オーケー、俺の負けだ。スパッといってくれ」

 

 サラダ昆布は武器を投げ捨て手を上げた。勝つ見込みはない。無駄なことはしたくはなかったのだ。悪足掻きというのは疲れるし意味はない。

 

「死ね!」

 

 今まで散々自分がかけてきた言葉と共にサラダ昆布の身体に剣が迫る。あー、デスペナってなんだっけ、なんて呑気なことを考えているとサラダ昆布含めた彼らは光に包まれ、その場から消えた。

 

 

 

 

「これは……はじまりの町か?」

 

 サラダ昆布の目の前に広がったのはログイン時に訪れた"はじまりの町"である。サラダ昆布が周りを見渡すとそこには全プレイヤーと言っても過言ではないくらいの数のプレイヤーがいた。なんぞ、とサラダ昆布は首を傾げる。そんなサラダ昆布の耳にログアウトができないという言葉が届く。マジで、と確認すると確かにあるはずの場所にログアウトのボタンはなかった。

 

『ようこそ、私の世界へ――』

 

 サラダ昆布が頭をハテナで一杯にしていると上空に顔なしのフードが現れた。血が滴り落ちるような不気味な演出である。そしてそのフードは自身をSAOの制作者である茅場晶彦であると名乗りSAOがデスゲームであることを告げた。

 

「……」

 

 皆がふざけるな、帰せ、と叫んだり悲鳴をあげるその最中、一部では一人のプレイヤーに視線が集められていた。その視線の先にあるのはオレンジ色のカーソル。そう、サラダ昆布である。オレンジ色のカーソルそれは犯罪を犯したプレイヤーに与えられるペナルティ。サラダ昆布が犯罪者だということは確定しており、しかも彼の周りにいたのは転移の直前までサラダ昆布をPKプレイヤーとしてPKKをしようとしていたプレイヤーである。

 

「そいつを捕まえろ! 人殺しだ!」

 

 誰かが叫んだ。瞬間、弾かれるようにサラダ昆布は駆け出し、群衆の中を駆け抜ける。その時、サラダ昆布の浮かべた表情は――笑みであった。別段、狂人であるとか逆行が好きという訳ではない。人を殺してしまったという事実、約10000ものプレイヤーが敵だという現実、そしてペナルティによって制限されたこれからの生活、それら全てを一度に突き付けられ、顔の表情筋がバグったのだ。

 

「そういや、そういうペナルティもあった……!」

 

 他のプレイヤーが混乱しており、乱雑としていたためなんとか逃げることに成功したサラダ昆布だったが、その先で武装したNPCに遭遇し襲われた。それも必死で避け逃げる。とりあえず今は思考に割ける時間と場所が必要だ。そう考えたサラダ昆布は全力ではじまりの町から去っていった。

 

「どうしてこうなった!」

 

 

 ――これはPKプレイヤーのお話

 

 

 

 


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