PKプレイヤーの憂鬱 作:セットヌードル
SAOのPKってペナルティに対してメリットが無さすぎるので、それじゃぁPKをオッケーした理由がないと思ったのでここでは「PKするとモンスターよりも経験値が多目にもらてる」という設定を用います。アイテムドロップにしようかとも思いましたが、ゴドフリーさん死んだときとかそういう描写がなかった気がするので経験値の方にしました。
オレンジのペナルティやアイテム、武器の扱いの設定も調べても良くわからなかったので、一応独自設定といことで、あと圏外村とかも。
これを受け入れられる方は続きをどうぞ。無理な方はそっとブラウザバックしてください。
旧02 詰みかけたけどなんとかなりそう
はじまりの町を抜け、ある程度フィールドを進んだ先でサラダ昆布は頭を抱えた。
「えっと……確か、オレンジのシステム的なペナルティは……圏内に入れないだったか? 圏内に入れないとなると回復アイテムとか買えないし、武器が壊れても買えないし、腹減っても食えないし、眠くなっても寝れない。あっ、でもドロップアイテムとか……1層でそれはないか。……あとは他のプレイヤーに警戒され、いやデスゲームになった今ならそれどころじゃないか……詰んでね?」
カーソルがオレンジに染まったプレイヤーはペナルティとして圏内に入ることができない。第1層は最初の階層なので安価で回復アイテムや武器といった必要最低限のものは買えるし、ここが現実となった今では必須とも言える寝床も安全に確保することができる。そしてそれらは圏内と呼ばれる簡単に言えば決闘意外でHPが減ることのない安全圏にあるのだ。逆に言えば圏内意外にはそういった施設はほぼ存在しない。圏外村というものがあり、そこにはアイテムが売っていたり安全圏でないことを除けば圏内と同じような役割を果たす場所もある。しかし残念ながら1層には存在していない。
一応オレンジからグリーンに戻れるクエストがあるが内容もどこで受けるかもサラダ昆布は知らなかった。
「マジでヤバいんじゃないか……?」
所持している武器の耐久値は半分を切っている。回復アイテムはそこそこの数を所持していた。余裕はないが焦るほどのものでもない。そう言いたいが状況を考えるとやはり厳しいものである。
武器やアイテムが有限だという問題を理解したサラダ昆布は更なる問題、食事と睡眠の問題について考え始めた。SAOはゲームでありながら空腹と眠気を感じるのだ。現実さながらのそれは抗うことができない。サラダ昆布は元々夜型の人間で夜更かし大好きっ子であるが、無理して二徹が限界である。しかし戦いながら、他のプレイヤーを警戒しながらと緊張状態が続く中でとなると1度徹夜できるかどうかも怪しい。もし寝落ちしたとすればモンスター達に殺されるか、あるいは他のプレイヤーに捕まるか、最悪殺される。なにしろサラダ昆布はオレンジだ。デスゲームとなった今、人殺しに手を染めようとするプレイヤーがいないとは言い切れない。グリーンのプレイヤーと犯罪者であるオレンジを比べればやはりオレンジの方が精神的には殺しやすいのだ。そうなるとやはりオレンジであるサラダ昆布は狙われる。
「そうだ、仲間を集めれば」
サラダ昆布のようにデスゲーム開始前にPKをしてしまいオレンジとなったプレイヤーがいないとは言えない。他にもPKはしていないがフレンドリーファイアなど可能性はいくらでもある。そういったプレイヤーを集めて組めば圏外村や回復アイテムや武器のドロップなどがある層まで耐えることができるかもしれない。
サラダ昆布はそう考え、フィールドをさ迷い始めた。幸いPKをしていたため、通常のレベリングをしているプレイヤーよりはレベルが高いので真っ向からの戦いならドジを踏まない限り負けることはないだろう。モンスターも最初のフィールドよろしく強くはないので、例外を除けば負けること、死ぬことはない。
「あれは……」
しかし、絶対ではないため他のプレイヤーには見つからないよう
サラダ昆布は事前に調べていたネットの情報を思い出しながら少年へ哀れみの視線を送る。だがすぐさま考えを変え、リトルペネントの群れに突撃した。
「――助太刀だ」
「ああ、助かっ……!」
「……カーソルのことなら後だ。今はこいつらが先だろ?」
突然の乱入者がオレンジであることに驚いた少年だったが、少年を攻撃する気配がなかったので助太刀を受け入れた。
サラダ昆布の考えはこうである。困っている少年、それを助ける俺、オレンジはデスゲーム開始前にたまたま近くにいたプレイヤーに当たっただけなんだなどの無害アピール、一応命の恩人であることもあり俺を信じる少年、助けてくれと懇願、武器とかアイテムとかの問題解決。という計画性もなにもない単純な考えである。
「ありがとう、助かった。俺はキリト」
「サラダ昆布だ」
「……サラダ昆布?」
「いつもこのハンドルネームなんだ。……こうなるなら真面目な名前にすりゃ良かったよ」
少年――キリトが途中で手に入ったドロップアイテムをお供えするという行為に首を傾げながら見守り、サラダ昆布はオレンジである嘘の理由と自己紹介をできるだけ明るく、人畜無害な振る舞いで行った。
「見捨てないでくれると助かる」
「……ああ、見捨てないよ。大丈夫だ」
困った顔で笑いながらサラダ昆布は武器やアイテム云々の話をした。そして頭を下げるサラダ昆布。その姿にキリトは受け入れしばらくは共に行動するという話で落ち着いた。サラダ昆布の知らぬところではあるが、キリトははじまりの町でクラインというプレイヤーを見捨ている。見捨てたといってもそれはキリトが勝手に思いこんでいることであったが、人の良いキリトはそのことに罪悪感を感じていた。そのため見捨てないでくれといったサラダ昆布の願いを断るという選択肢はキリトにはない。
「……あっ」
「どうしたサラ?」
サラダ昆布と呼ぶのはどうしても間抜けっぽいのでサラと呼ぶことにしたキリトは突然呟いたサラダ昆布に声をかけた。
「あー……いや、大丈夫」
そう言って笑うサラダ昆布。彼は気づいてしまった。自分が人を殺したにも関わらずそのことを気にしていないとに、気がついたのだ。人を殺したという事実に困惑はしたが、それに対し罪悪感を感じていない。ゲームだからなのか、血もでないし悲鳴もなかった故のリアリティーの低さのせいか、デスゲームの茅場晶彦のせいだという免罪符があるからなのか、彼は殺人を許容した。
――サラダ昆布は人殺しである
その事実をもう一度確認し、しかし彼は何も思わなかった。
(知らなかったし仕方ないよね。うん、俺は悪くない)
それらしい理由をつけてサラダ昆布は自分が殺人に対して感情を抱いていないことを納得した。
しかし、そうではない。サラダ昆布が殺人に何も思わないのは彼が――
(というかまぁ……他人なんてどうでも良いしね)
――クズだからである。
因みに主人公は改心も救済もされません。途中でヒロインぽいのが出てくるかもしれませんが、改心も救済もされません。クズはクズのまま最後までクズです。
いえす、クズ!