ヤンデレだらけの鎮守府   作: ^^) _旦~~

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始まりの日。大井と北上

俺は今夢でも見ているのだろうか。

 

昨日まで俺と目を合わせることすらしなかった大井が今私の膝の上に載って首筋に顔をうずめて甘えてきている。何があったかわからない。今朝執務室にいつも通り来たら秘書官の大井が突然膝の上に座ってきた。

 

前から、時津風や島風、雪風といったいわゆる『頭空っぽ』組と言われる艦娘たちはよく甘えてきていた。だが今私の膝の上で甘ったるい声を出して甘えてきているのはお断り勢筆頭のあの『大井』なのだ。

 

「提督?頭の撫で方がおざなりになってきてますよ?もっと優しくなでなでして~」

 

「あぁ……すまない。まだ書類が終わってないんだが……」

 

私は足が痛くなってきたので大井を下ろそうとする。だが大井は私にしがみついてきて

 

「やはり提督も私のようなブサイク(・・・・)にこうされるのは嫌ですか……?」

 

ん?何を言ってるんだ?大井が不細工なわけないだろう?

 

そう。彼女らは艦娘。人より優れた力を有し深海棲艦に唯一対抗できる《兵器》だ。最も私は彼女らに感情移入しすぎて兵器のように扱えないでいる。

 

「ふへへへ。提督やっぱりあなたは私達の提督です。だいすきですよ」

 

と言ってさらにつかまってくる力を強めてくる。

 

「大井、甘えてくれるのはうれしいが大本営に出さなきゃいけない書類がだな」

 

「むー!提督は私より書類のほうが大事なんですか?」

 

とほっぺをリスのように膨らませて抗議してくる。

 

言い淀んでいると

 

「……さすがにこの質問は私が意地悪でした。ですので、私がやりますから提督は私の事を抱きしめてなでなでしてくれるだけでいいです」

 

そう言って私に背を向けるようにして座りなおす。

 

ペンを持った状態で止まっている。

 

「えっと……大井?どうした?」

 

なかなか書き出さないので直接聞いてみることにした。

 

「『なでなで』と『ぎゅう』がまだです。それをしてくれないと私は動きません」

 

と言われたので、左腕で大井のお腹を引き寄せ右腕で頭をなでると、突然ものすごい勢いで机の上にたまりまくった書類を終わらせた。

 

それから数十分後には山のようにあった紙の山がきれいさっぱりなくなっていた。

 

「おお。すごいな大井」

 

と言って首筋をなでると、目を細めてゴロゴロと猫のような声を出して甘えてくる。

 

「フフ♪……あっ提督!もうお昼ですよ!」

 

「ん?もうそんな時間か。では間宮のところに「だめですよ」」

 

突然大井が私の言葉をさえぎってきた。

 

「お昼は私が作ってきますから少し待ってくださいね?絶対私以外の子と会ってはだめですよ?」

 

と言って小走りで執務室をでていった。

 

正直なぜ大井がああなったのかはわからない。何か悪い前兆かもしれないので早めに対処しておこう。

 

そう思ってとりあえず北上に内線電話をかけてみることにした。

 

ワンコールしないうちに北上の声が聞こえる。

 

「提督!?どうしたの!!?」

 

とずいぶん驚いた声だった。

 

「あぁ、すまない。北上に大事な話が合ってな。ちょっと執務室まで来てくれるか?」

 

「うん!いくいく!すぐに行くからちょっと待ってて!」

 

と通話が切れる。相当焦っていたようだったが何かしていたのだろうか?

 

するとすぐに扉がノックされる。

 

「提督?北上様だよー?」

 

「あぁは入ってくれ」

 

きいいい。と扉がきしむ音がする。

 

入ってきた北上は私服で白い花柄のワンピースを着ていた。

 

「非番なのにすまないな」

 

「んーん!大丈夫!提督のためならたとえ火のなか海の中、深海棲艦の群れにだって突撃しちゃうよ」

 

そう言って北上は扉の鍵を閉め、私の膝の上にまたがってくる。

 

「それでそれで?この北上様を非番で呼び出した理由とは?」

 

北上も大井同様私の首筋に顔を当ててゴロゴロと猫のように甘えてくる。

 

「いや、大したことはないんだが大井の様子が少し変でな?」

 

と言った瞬間だった。北上の様子が変わったのは。

 

「大井っち?どうして?どうして私がいるのにほかの女の話をするの?」

 

「き、北上?どうした?」

 

私は動揺しながら北上を離すと、完全に目から光が失われていた。

 

「ねェ、提督はさ?私と大井っちどっちが大事なの?」

 

光の失われた瞳がこの時はひどく怖かった。

 

「もちろん両方大切だが?」

 

「……うん。しってた。提督はそういうと思ってた。だから私は提督が好きなの。ねェ、わたしね?今練度98なんだよ?だからさ」

 

北上の唇が妙に色っぽく思えた。

 

「ちゅー。しよっか」

 

と言って北上の顔が近づいてくる。私は緊張と突然の事で跳ねのけることができなかった。

 

「んッ」

 

と私は抵抗することなく北上を受け入れてしまった。最初は唇だけの軽いものだったが、次第に舌を絡ませた深いものへと変わっていった。

 

私が北上になすすべなくされていると、突然北上の後方、扉からメキャメキャとドアから発してはいけない音を立てながら扉が開く。

 

「……クソビッチ。私の提督から離れてもらえませんか?」

 

とそこには12.7mm単装砲を北上の後頭部に突き付けている大井がいた。

 

「ハッ私の?練度65の芋虫がなにかいってるねェ」

 

今までではあり得ないことが起きている。大井が北上に武器を向け北上は大井に暴言を吐く。間違いない。大井だけじゃない北上もおかしい。

 

「今日は私の提督なんです。なんせ今日は待ちに待った秘書官なので。非番のニートは部屋に帰ってゲームでもしてたらどうです?」

 

「はー先輩に言う態度や言動じゃないよね?すこしさー常識ってのを学んだら?午後の秘書官業務は私がやるからもう大井っちは帰っていいよ」

 

と北上と大井はずっと言い争いを続けている。

 

「二人ともやめないか?」

 

「「でも」」

 

「デモじゃない。北上話はまた今度話す。すまなかったな」

 

「……いいよ。提督のせいじゃないから。そこのあばずれ泥棒ネコが悪いんだよね?」

 

と言って北上は執務室を出て行ってしまった。

 

 

 

 

 

やはりこの世界は何かがおかしい。

 

 

 


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